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ヒトの骨格を持つ蠅の魔物に滅ぼされゆく世界を救う物語/アストリア戦記  作者: シューゲツ
第0章. The Engagement of Steady Diamond/揺るぎなき金剛石の約束
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第14話. 誰かを認め、信じ抜く力

[AI非使用]

 "否定や拒絶"

 そういった感情を精密に感知し、黒き楔刃を生み出し、心窩に打ち込み攻撃…操る敵、ノクティーヌ。

 彼女は、ハエの魔物であるヴェスパの…人間そっくりな女性タイプ…。

 ここでの敗北はこの国、シルベニアだけでなく人類を明確な危機に晒すことになる。


 その敵の誘いに対し、スターユは―。


 "断る"


 と、確かにそう言った。


(アイツの誘いを断ってくれたのは、嬉しい…けど、否定することでアイツの能力を食らってしまった…!今の私じゃ、もう敵の能力を中和できない!!)


「ふふ…終わったわね。すっからかんのあなたにはもう、成すすべは、ない!」

「スターユ!?あなた、なにやってるの!!?あなたがやられたら…みんなが!」

 私はもう、冷静ではいられなかった。今にも気持ちが溢れ出しそうで、決壊する寸前まで来ていた。


「アリシア様―」

 スターユは、眼前の敵を真っすぐ見据えたまま告げる。

 確かに敵の能力は食らっているが、それに動じる様子は微塵もない。


「あなたは、この国の王女です」

 彼の眼差しが、私に向けられる。その表情は穏やかで温かく、テラスの花々やシルベニアの城下町の夜景と重なり、どこか、私の一番よく知る懐かしい人物の面影があった。


「あなたのお父様のお力は"誰かを認め、揺ぎ無い意志で相手を信じ抜くこと"。その力を、あなたも受け継いるはず──」


「俺は、あなたについてゆきます」



「あなたは、ひとりじゃない──」



(……!)


 その瞬間、私の中で燻っていた何かが弾けた気がした。

 これまでに感じたことのない、長い長い夢から目が覚めたような、不思議な感覚。


 私は、目の前の"敵"ばかり見ていて…それも、自分だけで何とかしなくちゃいけないと決めつけていて、

 大切なものを見失っていた。


 私の目的は、アイツを嫌って、否定して、打ち負かすことでは、ない。

 この国を、あるべき姿に導くために、もっと雄壮に…強くなって、乗り越えなくては…!


 私は、彼に『相手に気持ちを伝える魔法』の話をしたことを思い出す。

 スターユは、私と一緒に戦おうとしてくれている。


 お父さんの、力……そうだ—。

 意思の力で戦えるのは、自分だけじゃ、ない!


「—アリシア様、俺に、力を貸してください」


「…!?急激に私の否定の刃が消えていく…!?」

 いつの間にかアリシアを包囲していた無数の黒き楔刃は、その数や一個一個の大きさを半減させている。

 ノクティーヌは身を起こし、即座に腕を掲げる。


「土壇場で感情を変換したわね…!?でももう遅い!私が合図すれば一斉にあなたを襲う!」

 ノクティーヌがパチンと指を鳴らすと、残っていた鋭い刃が一斉にアリシアに射出され、耳を劈くような音とともに、襲い掛かる。


(さすがにこれは、ただでは済まないはず…!これで終わり!)


 刃を全て使い切り、ノクティーヌは横たわっているはずのそれを目視し、確かようとする…。


 が、そこに存在していたものは、ノクティーヌが予想していたものと、大きくかけ離れていた。


 "揺ぎ無き金(ダイヤモンド)剛石の方陣(ファランクス) !!!"


 スターユとアリシアは共に光輝く宝石のような護壁を身に纏い、構えつつノクティーヌを見据える。

 黒き楔刃による損傷の形跡はなく、それはスターユに突き刺さっていたものも含めて悉く中和されていた。


 相手に気持ちを伝える魔法―。


 王女としてのあり方を見失いかけていたアリシアへの、スターユの想いが届き、

 揺るがぬ意思の力を互いに重ね補う、攻防一体の奥義を生み出した。

 "王女と、それを守るもの"として或ることに心の重きを置いた二人には、最早ノクティーヌに対する拒絶の感情は薄く、黒き刃は重ねられた揺ぎ無い意志により、否定の在りかを"かき消された"。


「!?」

 ノクティーヌがその姿を確認してから、一呼吸もしないほどの次の瞬間、二人はノクティーヌを目掛けて急接近する。


(意志の力によるアーマー!?こいつら、私の攻撃で怯まず、同時に突撃してくる!!否定や拒絶の意思もさっきより明らかに薄い!これ以上刃を継ぎ足せない…!)


 彼女自身を守る黒き楔刃の防壁はまだいくらか存在はしていたが、彼らはそれに一切怯む様子はなく、刃は次々に弾かれる。攻撃を叩き込む至近距離まで接近していた。


「ノクティーヌ、まったくあなたの言う通りね」


「生きることが、"競争"だというなら、あなたを乗り越えてみせる!」


 次の瞬間、ノクティーヌの動きが止まった。

 "硬直"…何が起こったか、理解を巡らせる…。


(なんだ・・・私は、何を食らった)


 ノクティーヌの眼前には、スターユが大剣を振り下ろした"後"の姿、彼女を鋭く捉える瞳、翻る純白のマント。

 相手を拘束するほどに強力な、大剣を使ったスターユ固有のウェポンバッシュ—。


 そして、次の瞬間には彼女は後方に凄まじい勢いで吹き飛び、城の最上階から宙に放り出されている。

 衝撃により断片的な認識ではあったが、一瞬その眼前にあったのは、アリシアが蹴りの構えをとり渾身の一撃を放つ姿—。


 スターユによって硬直させられたノクティーヌは、アリシアによって"蹴り飛ばされ"ていた。


 ノクティーヌを強烈な蹴りで吹き飛ばした直後、アリシアは後方に身を翻し、跳躍—。

 スターユの身の丈に迫る大剣の側面はそれを受け止め、彼女の両脚は目いっぱい力を蓄えた後、"猛然たる意志"の力で蹴り弾く跳躍とともにアリシアを剣で振り放つ。


 彼の大剣によりカタパルトの如くその身を高速で繰り出したアリシアは、やがて宙に放り出されたノクティーヌに追いつき、最上階の高度から地上へと殴り、叩きつけた。


 彼女の拳がノクティーユの腹に叩き込まれる瞬間、それは金剛石の如く輝きを放ち、地面へと真っすぐ勢いをつけ急降下し大地へと直撃する。城の正門前に衝撃の轟音が響き渡る。


 アリシアは、ノクティーヌが地面へと墜落し叩きつけられるその姿を視認した後、城内の異変に気付く。

 その場には、いつの間にか、ヒトの四肢を有する蠅の魔物—ヴェスパが既に侵入してきていた。

 ノクティーヌが警護と称して引き連れてきたのだろう。

(やっぱり、アイツ…今日のために準備してたのね…。でも…!)


 彼女はその勢いのまま、門の外壁に脚をつき、壁に着地する体制となった後。地面へと直撃したノクティーヌを定め、外壁を蹴り飛ばした。彼女にとどめを刺すべくアリシアは拳を握りこむ。いつの間にか、彼女は"揺るぎない意志"の底が見えないほどに力が漲っていた。


(ここで終わらせる…全部!)

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