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スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜  作者: 鳥助
第一章 スラムの孤児

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5.ゴミの回収(1)

「じゃあ、早速やり方を教えるぞ」


 男性はそういうとゴミ箱に近づいていった。しゃがみ込んで、ある部分を指差した。


「この角にストッパーがある。そのストッパーが両端、二か所にあるから、まずそこを外す」


 男性は片方のストッパーを外し、移動して反対側のストッパーを外した。すると、ゴミ箱の前面が開き、中にあったゴミが外へと溢れ出てくる。


「この状態にしてから、ゴミを回収する。これが台車だ」


 男性は道に置きっぱなしにしてあった台車を持ってきた。台車には一メートルくらいの長方形の箱が乗っており、その台車にはスコップが刺さってある。


 スコップを手にすると、溢れ出たごみの前に立つ。


「それで、このゴミをスコップですくって、台車の箱に入れる」


 男性がスコップをゴミの中に差し入れ、それをすくうと台車の箱に入れた。なるほど、やる事は分かった。


「じゃあ、お前やって見ろ」

「はい」


 男性からスコップを受け取ると、私はゴミの前に立った。先ほどと同じようにスコップをゴミの中に差し入れ、それを持ち上げて台車の箱に入れた。


「よしよし、そんな感じだ。じゃあ、まず台車の箱にゴミを沢山入れてくれ。どうせ、一回じゃ全部は運べないから、自分が台車を押せる量でいいぞ」

「分かりました」

「終わったら声を掛けてくれ。そこで、休憩してるから」


 説明が終わると、男性は路地の壁側に座り込み、欠伸をすると目を閉じて眠り始めた。あとは、私の仕事らしい。


 折角、貰った仕事だ。褒められるような仕事をして、お金を貰いたい。


「よし、頑張るぞ」


 私は気合を入れると、ゴミの山にスコップを突き刺した。


 ◇


 ゴミをスコップですくって台車の箱に入れる作業は結構重労働だった。だから、スコップには少ししかゴミが乗せられなかったし、台車の中に溜めるのは時間がかかる。


 それでも、休みなく動き続けてなんとか台車の箱にいっぱいゴミを乗せる事が出来た。沢山入れたけれど、これはちゃんと押していけるのかな?


 一旦スコップから手を離し、台車の取っ手を掴んで押してみた。……重い。でも、動かせない訳じゃない。これなら自分でも押していけるから、今度からこの量を詰め込めばいい。


 まだゴミは残っているけれど、全部は運べないと言っていた。だったら、今度はこのゴミを捨てに行くのかな?


 私は男性に近づき、声を掛けた。


「あの、終わりました」

「ガー……」

「……あの、終わりました!」

「ガッ! ……ん、おう」


 二回目の声かけて起きてくれた。男性は目を擦って、ゆっくりと立ち上がる。


「んー、まだ寝たりねぇなぁ。おっ、そこそこ箱に入ったんだな。台車は押せるか?」

「押せたので大丈夫です」

「なら、町の外にゴミを捨てに行くぞ。付いてきな」


 やっぱり、次はゴミ捨てだ。私は台車の取っ手を掴むと、力一杯押した。男性は通りに出ると、町の外に向かって歩き出す。


「ゴミを捨てるのは北側の門から出る必要がある。北側の門を抜けた先、歩いて三十分くらいの距離に森があるんだが、そこにゴミを捨てる穴がある。その中に捨ててくる感じだ」


 北側の門……。ちゃんと場所を覚えておかないと、一人で捨てに行く時に困りそうだ。絶対にこの一回目で行く道を覚えるんだ。


 私は辺りをキョロキョロと見渡して、北側の門に続く道を覚えていく。どれも似たり寄ったりの建物だけど、ちょこちょこ目印となるお店の看板がある。それを目印に歩いて行けば良さそうだ。


「そうそう。町の外に出るには、通行証が必要だ。これが、その代わりになる」


 そう言って、男性は一つの小さな板を取り出した。その板には文字が書かれており、紐が通っている。


「これを門番に見せれば、問題なく町の出入りが出来る。もし、おかしな行動をしたら咎められるから、普通にしてろよ」

「普通ですね」

「そうそう。変に怯えていると、怪しい人物だって思われるからな。スラムの子供だからって、そこはちゃんとしておけよ」


 怯える様子を見せずに普通にか。突然、表の世界に来たから正直怯えている。誰かがスラムの人間が表に出てくるんじゃないって言って、殴りかかって来る可能性も考えられるからだ。


 過去に表の通りで物乞いをしていたスラムの人間がいた。それなりに儲けたみたいだけど、最後には悪い人間に袋叩きにされて死んだっていう話を聞いた。スラムの人間っていうだけで、人間以下の扱いをされてしまう。


 だから、私も気を付けてこの道を通らなければいけない。目立たずに、視線を合わせずに、黙々と仕事を遂行する。


 ただ、歩いているだけなら野次が飛んでくることもあるけれど、ゴミの入った台車を押しているんだから、児童労働に見えるかもしれない。


 そうしたら、変なやっかみを受けなくても済む。うん、堂々としていよう。そうしたら、きっと自分の身を守れる。


「ほら、見えてきた。あれが北側の門だ」


 男性が指差す方向に高い壁に囲まれた、大きな門があった。

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