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新青天の霹靂  作者: まめ
第五章 新章
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青天の霹靂43(豪造の罪)

「そもそも、菅野さんと家の爺様がもめた理由もそこにある」

「?」

みんな、首を傾げる。

廉はなぜ、知っているのかと、日向は思うと、廉がその答えをくれる。

「これは菅野さんが教えてくれたことだ。爺様はけして言わないだろうと。なぜなら、それは自分が卑怯な手を使って、戦時中を生き延びたからだ。でも、戦時中は、それが普通だったんだ。でも、菅野さんは、それを由としなかった。そのせいで、菅野さんは恥の汚名を着せられた」

「なぜ?」

廉夏は、分からず聞く。

「爺様はたくさんの兵士を守るために一人の兵士を生け贄に捧げた。一方、菅野さんは誰の犠牲も出すことなく降伏した。結局、日本は負けたのだから、どちらが良かったのかは、分からない。でも、二人の間で、その後、物議を醸した。爺様には一生ついて回る贖罪の念、一方、菅野さんは大将が降伏したというレッテルがついて回る。どちらも負け戦の前には、些細なことだが、当人達にしてみれば、大きなことだ」

「そんな、過去が二人の間に……」

日向は驚く。

「そうだ。爺様は、その犠牲にしてしまった家族に、金を送っていたらしい。申し訳なく思ってな。でも、もう辞めてくれと言われたそうだ。子供も大きくなり、戦後すぐの時のような混乱した時代ではないから、自分達だけで生きていくと。貴方にはすごく感謝してるけど、私は貴方を許せない。あなた方は助かるために、やむなくと言うかもしれないけど、人一人の命の上でそれが、成り立っているということを忘れないで。それは、正義とは言わない、まして生き残れただとは言わせない。私は貴方を許せない。って、はっきりそう言われたそうだよ」

「そうだね、家族にしてみれば、許せないよね。そんなの」

「ああ、だから、菅野さんは怒ったそうだ。『みんなを助けるためとは言え、一人を犠牲にするのかと。それなら、なぜ自分を差し出さなかった?』って、怒ったが、そこから生きて戻るのには、爺様の頭がいたことは菅野さんにも分かっていたそうだ。それに対して、爺様は『みんなを助けるためにはあれしかなかった』と言ったそうだよ。『だったら、なぜ自らが降伏すると言う道を選ばなかったんだ』と怒ったらしい。『お前は、降伏した際に、目の前に積まれるだろう恥の汚名から逃げたんだ、人一人の命と恥の汚名どちらが重いか良く考えてみろ。いずれ、お前も分かるだろう。それが、分かったとき、改めて勝負しよう。今のお前とは、やりたくない』と、そう言ったそうだ。たぶん、爺様も自覚していたんだろう。それこそが、恥だと言うことを。だから、何も言い返さなかったらしい」

「難しいね。確かに、菅野さんの言うことは分かるけど、降伏したところで、確実に助かる保証はないもん。どちらに、すべきかは、後の世に問うしかないことだもんね」

「ああ。だから、菅野さんも言っていたよ。『後の世に問わなければ、分からないことだったと。爺様に言い過ぎたと。だから、俺を助けたのは、その時の謝罪を兼ねてだと、笑っていた。だから、爺様を認めてやれってな。これも、後の世に分かることだ。今は分からなくても、いずれお前も認めるときがくるってな。俺の言っていることが、間違っているなら、老いた後言え。聞いてやるよ』ってな」

クスリと、笑う。

「菅野さんの言ったことは分かったよ。でも、それが、言えぬまま、菅野さんは逝ってしまった」

廉は静かに涙をコボす。

「菅野さんは、きちんと知ってたと思うよ。たぶん、お爺ちゃんと廉兄のこと気にしてたと思うよ。だから、ほら言ったとおりだったろって、笑ってたと思うな」

廉夏は言う。

「ああ、それも誇らしげにな」

廉の、涙はもう止まっていた。

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