表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新青天の霹靂  作者: まめ
第二章 オープン記念パーティーで
11/51

青天の霹靂10(廉と豪造の話し合い)

「父さん、本気で行かせる気ですか?」

ちょっと怒り気味に廉は言う。

「本気じゃ」

それに、豪造は、あっさり言う。

「いつまでも、閉じこめておくことはできまい。多少、危険はあるが、廉夏は身をもってそれを知っている」

「しかし」

豪造はこれまで、廉夏に危険がないよういつでも目を配ってきた。

「今後、廉夏を守るのは儂じゃない。寂しいが、お前達じゃ。世代交代の良い時期じゃ。今回が、お手並み拝見の場としては、一番良い」

いったい豪造に、どんな心境の変化があったのだろう。

「それに、今回は一宮の二女があれを買っている」

調べられることは、調べたってことか?

「ここまでわかって言て、お前が何も手が打てんとは言わせぬよ」

豪造に試すようなことを言われ、廉の頭には、カーッと血が上る。

だから、技と笑みを作り言う。

「それこそ、まさかでしょう? これでもあなたから、京極を受け継いだという、私には、自負がある。息子さんを差し置いて、冬眞から、その場を奪ったのに、私には立ち止まっている時間はありません。だから、信頼されこそすれ、疑われるのは心外と言うもの」

廉の瞳には、はっきりとわかる怒りが現れていた。

豪造と廉の間にピーンと糸が張り詰めた。

コチコチと時計の音がやけに大きく響いた。

ずっと、続くかに思われたその静寂を破ったのは、豪造だった。

深い溜め息を付くと、豪造は言う。

「お前のことは、信頼しておるよ。実子の冬眞よりもな。儂はある意味、冷徹なのかもしれん」

「それは、冬眞には言わないで下さい。あいつも、私と一緒であなたに認められたくて必死ですから」

「分かっておるよ。でも、お前儂よりも冬眞を買っているな」

「そうですね。彼は私と同種ですよ」

「同種とな?」

「ええ」

「どんな同種か、是非聞きたい」

「あなたに認められたいってお互いに思っていますよ」

「そうか。でも、お前を信頼してなかったら、お前にも託したりせぬよ」

それは会社のことだけではなかった。

廉は豪造の言わんとしていることを正確に悟る。

それは、廉夏のことだった。

廉夏を育てたのはある意味、廉だった。

それがさし向けられたものだと、今気づいた。

やられたと思った廉。

でも、いつかこの人を越えてやると思う廉だった。

ひそかな、野望。

でも、とても面白そうだ。廉が子供のように、その時のことを思い、ワクワクする。

「今回の主役は廉夏たちじゃ。お前は極力、オブザーバーに徹しろ」

「御意」

頭を下げる廉。

「お前にはある意味、貧乏くじを引かせたな。すまない」

「もったいないお言葉にございます。己で選んだ道、一度として貧乏くじを引かされたなどとは思ったことはありません。むしろ、逆でしょう。当たりくじでしょう」

「お前は自らドブに行くと申すのか?」

「ドブなどとは、思っていません。している間、とても、楽しめました」

過去形で話す廉に豪造は気付くが何も言わない。

廉がこれからなそうとしていることは、もう豪造が口出しすることじゃないからだ。

豪造は廉がなそうとしていることを分かっているようだ。

冬眞はそれを前に、どういう答えをだすか、見ものである。

それが分かり、廉は笑う。

「でも、彼方から、学んだ経営学は、私にとって、今や、本当に宝になっております」

廉はにっこり笑う。

こういうクタックなく笑った笑みを見たのは久方ぶりだ。

このとき、豪造は自分が築き上げてしまった物を悔やんだ。廉夏と廉から両親を奪い、更に、廉からは笑みと戸籍まで奪い、冬眞からは戸籍を奪ってしまったのかと、豪造は悔やんだ。

ずいぶん、大きな代償である。

「お前がなそうとしていることは、儂には正確なことは分からんが、反対はせん。お前が一番よいと思う形で、選択しろ。それが、儂がお前にしてやれる唯一のことじゃろう」

「もったいないお言葉にございます。私はあなたから、たくさんの物をいただきました。たぶん、冬眞があなたから直接、それは学びたかったもの。私はそれを学べました。それは、一言では、言い表せない物にございます」

深々と廉は頭を下げる。

「頭など、下げるな。ワシは今、後悔でいっぱいなのだからな。そんなワシから、最後の命を下す。今回は、あやつの力を確かめるってことで、お前は極力オブザーバーに徹しろ。あやつらが欲しいと思う情報だけを与えてやれ」

「御意」

こうして、終わった二人の会談を廉夏と冬眞は知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ