真実②
まず、加賀お姉ちゃんについてです。
彼女は伊賀の里で育てられた生粋の間者、忍です。ちなみに、そこでボクたちは出会いました。ちょっとした縁で伊賀にいたんですよ。
数年前に、その優秀さから、幕府直属の忍となり、行動していました。
あなたと同じ中学に入り、近づいたのは、幕府の命令だったからです。
元はと言えば、源氏の源頼朝が築いた幕府ですが、支配しているのは、平氏の北条家。
源氏である足利家が、そのことを不満に持っていて逆らうかもしれない。そう幕府が心配するのは当然です。
だから、足利家を監視する目的で、派遣されたのが彼女でした。
赤橋登子とよく一緒にいるのは、そういう繋がりがあるからです。
もちろん、登子も幕府側の人間ですからね。それは、剣舞大会でよく分かったと思います。
あなたに言いたいのは、その二人があなたについて調べているのみならず……。
あなたの暗殺すら考えているということです。
正直、幕府からしたら、足利家は諸刃の剣。上手く使えば敵を斬りますが、扱いを間違えれば自分で自分を斬ってしまいかねない。
その中でも、足利高氏を敵に回すことは危険だと剣舞大会において証明された。
危険すぎる毒は処分しなければいけない、と判断されたのでしょう。
土岐らの反乱を知っておきながら、あなた方を「お詫び」として京に送り、京の治安を守っている大仏を鎌倉に派遣させたのが何よりの証拠です。
まあ、はっきり言って、あの二人が相手でも、高氏くんには勝てないと思いますけどね。
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そうやって、正成くんは僕の顔色を伺いながら、説明した。
加賀が忍……。たしかにそれなら、加賀が秘密情報を手にしていたのかという疑問が解消される。
しかも、加賀は妙に目が良かった。それも、あいつが修行で手に入れた能力なのだろう……。
でも…………。
「意外に驚かないのですね」
正成くんが尋ねる。驚きはしない。人付き合いの上で、「相手をあまり信用するな」と言われたし、実際、あまり信用できていなかった。
僕の周りは、僕というよりむしろ僕の権力に魅力を感じて近づいてきた。彼らを信用するのは、無理な話だ。
だからこそ、友だちが裏切ったところで、それは「よくあること」だった。
そう……そんなこと、もう……。
「もう馴れっこだから、ね」
馴れっこのはずなのに……。
あいつに、加賀に裏切られるということは、心が受け止めようとしなかった。
「流石ですね、『足利家次期当主』は違いますよ」
「え?」
今、ものすごく引っかかったワードが……。
「足利家次期当主? それは兄さんじゃないか? 僕になるわけがない……」
しかし、なる可能性がないわけではない。でも、それは僕にとって最悪の可能性だ。
………………まさか。
「高義さんのことですよね? 彼は……死んでしまいますわ。……薬に体を犯されて」
パリンッ…………。
幻聴だろう。
僕の中で何かが割れる音がした。




