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真実②

まず、加賀お姉ちゃんについてです。


彼女は伊賀の里で育てられた生粋の間者(スパイ)、忍です。ちなみに、そこでボクたちは出会いました。ちょっとした縁で伊賀にいたんですよ。


数年前に、その優秀さから、幕府直属の忍となり、行動していました。


あなたと同じ中学に入り、近づいたのは、幕府の命令だったからです。


元はと言えば、源氏の源頼朝(みなもとのよりとも)が築いた幕府ですが、支配しているのは、平氏の北条家。


源氏である足利家が、そのことを不満に持っていて逆らうかもしれない。そう幕府が心配するのは当然です。


だから、足利家を監視する目的で、派遣されたのが彼女でした。


赤橋登子(あかはし とうし)とよく一緒にいるのは、そういう繋がりがあるからです。


もちろん、登子も幕府側の人間ですからね。それは、剣舞大会でよく分かったと思います。


あなたに言いたいのは、その二人があなたについて調べているのみならず……。


あなたの暗殺すら考えているということです。


正直、幕府からしたら、足利家は諸刃の剣。上手く使えば敵を斬りますが、扱いを間違えれば自分で自分を斬ってしまいかねない。


その中でも、足利高氏(あしかが たかうじ)を敵に回すことは危険だと剣舞大会において証明された。


危険すぎる毒は処分しなければいけない、と判断されたのでしょう。


土岐らの反乱を知っておきながら、あなた方を「お詫び」として京に送り、京の治安を守っている大仏(おおらぎ)を鎌倉に派遣させたのが何よりの証拠です。


まあ、はっきり言って、あの二人が相手でも、高氏くんには勝てないと思いますけどね。


▷▷▷▷


そうやって、正成くんは僕の顔色を伺いながら、説明した。


加賀が忍……。たしかにそれなら、加賀が秘密情報を手にしていたのかという疑問が解消される。


しかも、加賀は妙に目が良かった。それも、あいつが修行で手に入れた能力なのだろう……。


でも…………。


「意外に驚かないのですね」


正成くんが尋ねる。驚きはしない。人付き合いの上で、「相手をあまり信用するな」と言われたし、実際、あまり信用できていなかった。


僕の周りは、僕というよりむしろ僕の権力に魅力を感じて近づいてきた。彼らを信用するのは、無理な話だ。


だからこそ、友だちが裏切ったところで、それは「よくあること」だった。


そう……そんなこと、もう……。


「もう馴れっこだから、ね」


馴れっこのはずなのに……。


あいつに、加賀に裏切られるということは、心が受け止めようとしなかった。


「流石ですね、『足利家次期当主』は違いますよ」


「え?」


今、ものすごく引っかかったワードが……。


「足利家次期当主? それは兄さんじゃないか? 僕になるわけがない……」


しかし、なる可能性がないわけではない。でも、それは僕にとって最悪の可能性だ。




………………まさか。




「高義さんのことですよね? 彼は……死んでしまいますわ。……薬に体を犯されて」



パリンッ…………。


幻聴だろう。


僕の中で何かが割れる音がした。













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