真実
「まあ、近距離で銃を構えても、どうせ防がれるんで、こんな脅し意味ないですけどね」
正成くんは銃を下ろした。顔は笑みを描いていて、少しだけ空気が軽くなった気がする。
「それにしても、総大将である君がなんで僕の前に?」
「総大将?」
正成くんは、腹を抱えて、大声を上げて笑った。目を見ると少しだけ涙を浮かべている。
「ボクが総大将? そんな馬鹿な。この計画はボクが考えたものじゃありませんよ。ボクは彼らに手助けしてあげただけです」
え? 正成くんじゃない?
「じゃあ、誰が……?」
正成くんは、待ってましたとばかりに無邪気な子どもの楽しんでいる顔をした。
「そーれーはー。帝ですよ。帝」
帝? 尊治皇のことか?
この国の皇が反乱?
「驚くのも無理ないけど、よく考えてください。数十年前にも、皇族が反乱したことがあったじゃないですか? これは起こっても仕方ないことですよ……この腐敗した国においては」
腐敗した国……。そうなのかもしれない。僕のような「ボンボン」には、見えないところで、不幸でいる人たちがいるのだろう……。
ここ最近の、私欲のための剣舞大会、壁の向こうの貧困の現実を通して、僕は少しずつこの国、幕府の政治に疑問を抱くようになった。
「高氏くんも、思い当たる節はあると思います。このテロは、帝がその腐敗した幕府を転覆するための計画の第一歩……だったのですが、残念ながら、彼らはテロ初心者だったので、こんな簡単に失敗しましたけど……」
「君は……帝の使いなのか?」
「違います。たしかにボクも幕府に不満いっぱいで、叛逆する身ですが、帝との繋がりはないです。ですけど、今回、土岐と多治見が不穏な動きをしていると、そのバックに帝がいるという情報を手に入れたので、これを利用しようと考えたんですよ」
僕の前に手をかざし、「まあ、それは置いといて」と、正成くん。
「本題に入りましょう。ボクが高氏くんに会いに来たのは他でもありません。伝えたいことがあるからです」
「伝えたいこと?」
「そうです。あなたは視野が狭い。周りが見えていないのです。あなたには、広い視野が必要ですから、あなたが見えていないことを伝えようと思ったのです」
正成くんは、語り始めた。僕の知らないことを。僕の知らない僕の周りの状況を。




