作戦執行②
「このビルにこもって一日が経ちますが……本当にこれでいけるんですか?」
「まあまあ、ボクを信じてください。生半可な実力者を、皇は派遣しませんよ」
嘘だけど。
未だに、彼らは、ボクのことを尊治王からの援軍だと思っている。
そろそろ気がついてもいい頃だと思うが、六波羅探題軍によって、この四条御所ビルの通信は全て妨害されている。
そのため、彼らはもう気づく術がないのだ。
「それに、正成さん。今、このビルには食料が足りていません……。これでこの篭城戦勝てますかね?」
「土岐さん、その心配はありません。もうそろそろ突撃してくると思いますから」
それを聞いて、土岐は違和感を覚える。
「こっちには、重要な人質がいるんですよ? 普通は、慎重になって、突撃が遅れるのでは?」
「それは、『普通では』のことです。彼ら、足利兄弟と新田の次期当主は普通じゃありませんですから。力も発想も」
いや、力が異常だからこそ、発想も異常だと言えるだろう。
持つ力が多ければ多いほど、戦略の幅が広がるというものだ。
「それに、大事な人だからこそ、早く助けようと躍起になりますよ」
それが彼女を人質にした要因の一つなんだけど。
「おい、土岐! 敵勢に動きがあったぞ!」
そう言ったのは、共犯の多治見さん。この人は完全なる武闘派で、ボクの戦略について何も言ってこないから、ボクにとってとても都合が良い。
「動きとは? 具体的にお願いします」
「正成さん、何か、若いヤツらが四人前線に出て来たんですよ」
若いヤツら? きたきたきたきた! 待ってました!
ボクは急いで、窓側によって、外を見る。
二十階建ての最上階からだが、目の良いボクは、この距離なら彼らの顔一人ひとりを視認できる。
たしかにそこには、ボクが会いたかった方々が連なっていた。
さて、ショータイムといきますか!
……なんつってね。
ボクは感情を抑える
▷▷▷▷
「え? セイナちゃんも人質に? それは本当なの、義貞?」
「ああ、女の子二人人質にするなんて、なんて野郎だッ!」
「だからこそ、俺らで助けなきゃな、兄貴」
「とりあえず、どう倒すんですか?」
「はい、一親さん。僕が考えた作戦はこうです」
……………………………………………。
「え? それって危険じゃないですか?」
「どうしたぁ? ビビッたのかよ、一親?」
「そうですよ。一親さん、俺らが誰だか忘れたんですか? 剣舞大会ベスト4ですよ?」
「皆さん、そうですけど……自分は……」
「ンああ、もう! そんなの気にしてんじゃねぇよ!」
「とりあえず……」
僕は息を吸ってから言う。
「今は信じるしかないですよ。僕達の力を!」
僕らは互いに顔を合わせる。
皆、凛々しい顔をしている。
流石だ。もう覚悟を決めている。
「それじゃあ、やろう……僕達の人質救出作戦を!」




