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エピローグ

本日同時投稿の二話目です。

前話に本編の4があります。お気を付けください。







 



「なあどうして毎回毎回、いきなり人の上に乗るんだお前は」

「だってここは私にとっても気に入りの長椅子なんだもの」

「……言えばちょっとはどくぞ?」

「それじゃあ意味がないの」


 クロエセリアの長椅子で、いつものように午睡を楽しむソラリス。

 気配を消して近づいて、その腹の上に今日も座ってやる。


「俺は眠いんだよう」

「ああら、昨日寝ずの番をした兵士たちの方が、きっと眠いわ。先生は寝過ぎよ」


 本当は知っている。

 ソラリスが眠いのは、いつも夜に紛れてクロエセリアの為に動くから。


 昨晩フェルディナンドを捕らえておいた部屋で騒ぎがあった。そして、当初の予定に入っていなかった、ロンダールの同行が急遽決定したのだ。マクスール辺りは真相を知りたがっているようだが、クロエセリアは詳しく詮索するつもりはない。

 ロンダールのことは臣下として信用している。

 そしてソラリスのことは――彼になら何をされても構わない。



 彼女も昨夜は遅くまで仕事に追われた。

 ほんの少し休みたくて、ソラリスの胸に倒れ込む。硬くて、長椅子の寝心地には程遠いが、これはこれで悪くない。


「おいおい、幾らなんでもこれは警戒心無さ過ぎだろ……」

「だって、返礼ばかりで疲れちゃったんだもの。いつもの書類仕事の方が楽」


 執務机には今も山になる釣り書き。

 フェルディナンドを捕縛した途端、独立の話が表に出た途端、近隣諸国からは祝福の書簡と共に大量の釣り書きが届いている。今も届き続けている。

 彼女の婿選びが、エルクラルドの管轄で無くなった端からこれだ。


「面倒なら、返事書きを手伝ってやるから」

 ぽんぽんと頭を軽く撫でられる。慰めは嬉しい。珍しく優しいソラリスも嬉しい。

 でも彼に手伝ってほしいのは、そういう事じゃない。


「いいの。少し休んだら自分でやるわ」

 そう言って、ソラリスの上でごそごそと位置を変え、寝やすい体勢で丸くなる。

 首と鎖骨の間辺りに顔を埋めるようにして、偶然を装って首筋をひと舐め。

 明らかに赤くなる肌と、上がる体温にほくそ笑む。


 このまま誘惑して、全て食べてしまえたらいいのに。この気持ちが全て伝わればいいのに。

 ナリサを手に入れて、でも絶対にソラリスの手に返すつもりが無いことを知ったら、彼はどうするだろう。

 ――だって私のモノならば、先生は私から離れられないでしょう?


 彼の正体を知った頃、マクスールに成人したソラリスを直に見せてやりたいと思っていた。でも今は違う。

 クロエセリアにしか見えないソラリス。

 彼を誰にも見せないで、彼女だけが愛でられるなんて、なんて贅沢で素晴らしいのだろう。


 兄の手綱を切ったように、ソラリスの理性が切れるのが楽しみでならない。

 警戒心が無いなんて、とんでもない。


 無防備なのは彼のほう。



 ・・・・・・・・・・



「これは何の拷問だよ。なあ、わざとなのか、からかってるのかよ」

 自らの上で小さな寝息を立てるクロエセリアを撫でながら、ソラリスは熱い溜息を吐く。


 エルクラルドの先王を通してなら牽制をかけられたが、他国となるとそうもいかない。

 何しろソラリスは、クロエセリア以外の誰にも見えないのだから。

 夫候補に名乗りを上げるなんて真似が、許されるはずもない。

 けれど届いた見合いの釣り書きには、相当気分を掻き乱されるものがある。

 実際、二年前もそろそろ婿をと届いた釣り書きを見て頭に血が上り、先王に釘を刺し、フェルディナンドの失脚への足掛かりになる書類一式を王妃の書類に忍ばせるという真似をしてきたのだ。お家騒動で足元がぐらつくのは帝国で実証済みだ。大抵は身内がごたつくと、飛び地の領地(外野)にまで構う余裕が持てなくなる。

 因みに全く反省はしていない。自分も随分立派に汚い大人へと育ったものだ。


「ああーもう、喰われたって文句言えないぞっ」

 クロエセリアは夢でも見ているのか、幸せそうにくすくす笑い、寝返りを打った。

 ちょうど近くに彼女の横顔が晒されて、我慢がきかずに頬に口づけを落とす。

 彼女自身に婿なんて選ぶなとは言えないくせに、届いた話は片っ端からこっそり壊している。


「……これが惚れた弱みってやつかねえ」

 先生風を吹かせて乱暴に誤魔化すのも、そろそろきつくなってきた。

 もう一度溜息を吐いて目を瞑る。


「一体誰が誰に惚れてるの?」

 慌てて目を開けると、クロエセリアとばっちり目が合った。

 彼女の若葉のように美しい緑の瞳は、鼠をいたぶる猫のようにらんらんと輝いている。




 美しく強い獣のあぎとは、決して獲物を離さない。


 ソラリスが想いを白状させられるのは、あとほんの数分先の話。


 エルクラルド女王の見えない王配との婚姻式に、他国の参列者が首を傾げるのは、一年ほど先の話。




 おしまい


 最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。


 #ヤンデレ小説かいたったー という、ツイッターの診断からお題を頂きました。以下。

 アルカは、9RTされたら『S』な『大公』と『闇落ちしそう』な『先生』の組み合わせで、ヤンデレ話を書きます。

 http://sindanmaker.com/482075


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