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【書籍化】悪役令嬢のダイエット革命!〜前世の知識で健康美を手に入れてざまぁします!~【3章スタート】  作者: 冬月子@悪役令嬢のダイエット革命2卷8/1発売!
3章 サロン《ラ・ベル・レジスタンス》と悩める令嬢たち――甘い誘惑と危険な計略

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SIDEクラリッサ

痩せさえすれば、きっと全て上手くいく。綺麗になりさえすれば、今まで上手くいかなかったことが嘘みたいに動き出して、夫はもう一度私を見てくれるようになるのだと、まるで救いを求めるような気持ちで、その薬に縋りついていた。

最初は半信半疑だったけれど、痩せ薬は驚くほどよく効いた。


食卓に並ぶ料理を見ても、ちっとも食欲がわかない。それどころか胃がムカムカしてきて、私は皿を下げさせた。

空腹そのものが消えていたのだ。


その代わりに得たものは、目に見える結果だった。

日に日に緩くなるドレスの胴回り。体重計の数字が減るたびに嬉しくなった。

周囲の誰もが褒めてくれた。


「まあ、綺麗になったわね」

「見違えたじゃない」

「羨ましいわ」


その言葉が何より嬉しかった。


「え……」


慌てて髪を掴む。

指先にほんの少し力を込めるだけで。絡みつくように何本もの髪が指の間に残った。

ぞっとした。


「いや……」


鏡を見てはっとした。

そこに映っていたのは、まるで病人だった。頬は不自然なほど痩せこけ、肌は青白く、生気を失っている。浮き出た鎖骨は痛々しかった。


それでも、薬をやめられない。止めたら太る気がして、それが何より怖かった。また醜いと思われるのではないか。また見向きもされなくなるのではないか。

そんな恐怖が胸の奥で黒い泥のように広がり続けていた。


そして何より苦しかったのは、主人の態度だった。痩せれば何もかも上手くいくに違いない。主人だって振り向いてくれる筈よ、そう思っていた。

なのに――、現実は違った。


産後に体重が増えた頃、彼は露骨に私を避けていた。同じ屋敷に住んでいるはずなのに、ほとんど会話はしなくなった。

だけど痩せて、産前の体型を取り戻してから態度は随分と優しくなったと思ったのに――。


「最近、顔色が悪いな……」


それだけだった。

心配はされることもなく、さらに追い打ちをかけるように「鶏ガラみたいな身体じゃ抱く気がしない」と目を逸らされた。

とてもじゃないが、妻に向ける態度ではなかった。

「肥っていてみっともない」と言われたから、痩せたのに。

以前と何も変わらないどころか、以前より距離ができている気さえした。


「どうして……」


私は綺麗になったでしょう?

痩せたのに。努力したのに。

……どうして誰も愛してくれないの。


ふと、私の頭を過ぎたのはエリザベートだった。


かつてのエリザベートは、私たちの笑いものだった。太っていて、冴えなくて、陰では悪役令嬢だと囁かれていた。

彼女を見れば、自分より下がいるのだとどこかでほっとしていた。

なのに今はどうだろう。夜会に出れば、誰もが彼女の名前を口にする。

美しくなったと。彼女のようになりたいと。

彼女の開いたサロンは連日予約で埋まり、令嬢たちは競うようにその扉を叩く。

美しさ、成功。信頼。全部。全部。

私が持ってないものを、エリザベートは持っている。


「どうして……私だって痩せたのに……」


唇が震える。


「どうして、あの人だけ……」


自分でも分からないまま、私はふらりと立ち上がっていた。

気付けば、私の足は彼女のもとへ向かっていた。


***


サロンの前。夕暮れの日差しが石畳を照らしていた。

ちょうどエリザベートが外へ出てきたところだった。

隣には彼女の夫であるカミルもいる。

二人は何か話していた。仲睦まじげに、ふとした瞬間に自然と笑い合った。当たり前のように、互いを信頼しきった笑顔だった。

その光景が、私には眩し過ぎた。


「どうしてよ……」


息が荒くなる。胸が苦しい、頭が熱い。

薬を飲み始めてから続く動悸。

眠れない夜、理由もなく湧き上がる苛立ち。

全てが一気に膨れ上がる。


「どうして、貴方だけ幸せなのよ…」


叫びながら飛び出した。

エリザベートが振り返る。何が起きたか分っていない、驚いた顔。

その顔が余計に腹立たしかった。


「貴女のせいよ!」


私は駆け出した。ただ胸の中の怒りをぶつけたかった。

その瞬間だ、エリザベートを庇うようにカミルが咄嗟に前へ出た。


「危ない!」


本当ならエリザベートに刺さる筈だったナイフは、カミルの腕に突き刺さった。

私は突き飛ばされ、地面を無様に転がった。


「カミル!」


エリザベートの悲鳴が響く。

視線を上げれば、カミルの腕からは鮮血が流れていた。ぽたり、ぽたりと石畳に堕ちた血が赤い染みを広げていく。


「わ……」


震える声が漏れる。

先程まで脳を焼いていた怒りは消え、代わりに押し寄せるのは恐怖だった。


「わ、私……」


目の前には怪我をしたカミル。青ざめた顔で彼を支えるエリザベート。

異変に気が付き、周囲から人々が集まり始めた。


誰もがこちらを見ていた。

その視線に晒された瞬間、ようやく私は我に返った。


自分が何をしたのか、どれほど愚かなことをしてしまったのか。


その事実が、冷たい水のように頭から降り注ぐ。取り返しがつかないことをしてしまったのだと――私はそこで初めて理解した。



一旦、ここで連載をお休みさせていただきます。

おおよそ2〜3週間程度の休載になる予定です。3章完結まではほぼ執筆を終えておりますが、今までの話を加筆・修正し、さらなる完成度を目指したいと考えています。最後までお付き合いいただけましたら幸いです。どうぞお楽しみに!


そして『悪役令嬢のダイエット革命~〜前世の知識で健康美を手に入れてざまぁします!~』が2卷が、いよいよ本日発売となります!

本編は加筆修正を行い、さらに書き下ろし番外編も収録しています。

そして今回も、風ことら様が素敵な挿絵をご担当くださいました。可愛らしいサクラや、格好良く描いていただいたツキシマをぜひご覧ください。

ツキシマ、渋くてめちゃくちゃ格好いいです!ジャンもいます!

下記にリンクを掲載しておりますので、ご興味がございましたらご覧いただけますと幸いです。どうぞ、よろしくお願いいたします!


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