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【書籍化】悪役令嬢のダイエット革命!〜前世の知識で健康美を手に入れてざまぁします!~【3章スタート】  作者: 冬月子@悪役令嬢のダイエット革命2卷8/1発売!
3章 サロン《ラ・ベル・レジスタンス》と悩める令嬢たち――甘い誘惑と危険な計略

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1話 いつかの会話

『聖なる微笑みは王宮に咲いて』――通称“王宮聖女”。


煌びやかな王宮を舞台に、聖女のように清らかで心優しいヒロインが、個性豊かな美貌の青年たちと出会い、絆を深めながら恋を育んでいく乙女ゲームだ。

もともと私はゲームにそれほど興味がある方ではなかった。けれど、職場の同僚に熱心に勧められたことがきっかけで、何気なくプレイを始めた。

それが、思いのほか面白かった。


攻略対象たちは、それぞれが個性的で魅力的だった。少し俺様なところはあるけれど、いざというときは誰より頼りになる王子。誠実で包容力あふれる騎士団長。冷徹な秀才と噂されながら、ヒロインの前でだけ優しい表情を見せる眼鏡の側近候補。当時の私は恋人もおらず、気がつけば彼らの物語にすっかり夢中になっていた。

けれど、それ以上に大きかったのは、同僚と「あのルートが良かったよね」「あのイベントは反則でしょ、泣いたわ」と語り合う時間だったと思う。

昼休みや仕事帰りには自然とそんな話題で盛り上がった。次は誰を攻略するのか語り合い、ときにはイベントやコラボカフェにも足を運ぶ。好きな作品について語り合う時間は、何よりも楽しかった。


そんなある日のことだった。

昼休み。社員食堂で昼食を取っていると、向かいに座る同僚が身を乗り出して尋ねてきた。


「――で、あんたは誰が一番好きなの?」


さっきまでカレーをすくっていたスプーンを、私の目前へと突き出してくる。苦笑しながら、「ちょっと、危ないわよ」とその手をそっと押し戻した。


「うーん……そうねぇ」


私はトンカツを一切れ箸でつまみ、しばらく考え込んだ。

攻略対象は誰もが魅力的だった。王子も騎士も、それぞれ捨てがたい。ルートごとに違う魅力があって、スチルはどれも息を呑むほど美しかった。


「やっぱりアルフォンス殿下かしら。金髪碧眼で、絵に描いたような王子様だもの」


「えー? あの俺様っぷり、ちょっとモラハラっぽくない?」


同僚が苦笑する。


「そんなことないわよ、紳士的よ。ああいうタイプって、自然とリードしてくれそうじゃない? 頼りがいがって素敵だと思うの」


「そうかねぇ……」


同僚はアイスティーのストローをくるくると回しながら首を傾げる。


「『俺について来い』感が強すぎるんだよね。ゲームでもエリザベートに『王妃たる者はこうあるべきだ』って説教ばかりしてたしさ……」


「あれは王太子としての立場があるから、仕方ないじゃない?」


「いやいや、あれは絶対プライベートでも言うタイプだって」


「もう、偏見なんだから」


顔を見合わせ、二人でくすくすと笑う。

他愛のないゲーム談義。

けれど、その笑いがひと段落したところで、不意に一人の人物が頭をよぎった。


「でも、一番気になるのは……エリザベートかしら」


その名前を口にした瞬間、同僚が盛大に目を見開いた。


「えぇっ!? 悪役令嬢の!?」


「そう」


「趣味悪っ!」


失礼な反応に思わず苦笑する。


「別に好きってわけじゃないのよ。ただ、気になるの」


エリザベート・グラシエル。

公爵家に生まれた令嬢であり、第一王子の婚約者。そして、この物語における悪役令嬢だ。

主人公に嫉妬して嫌がらせを繰り返し、最後には罪を暴かれて断罪される。そんな、いかにも乙女ゲームらしい役回りの人物だった。


「確かに婚約者を取られそうになって、不安になる気持ちは分かるわ。でも、もっと堂々と戦うべきじゃない? 陰でこそこそ嫌がらせなんてするから印象が悪くなるのよ」


「いや、悪役だからでしょ」


同僚が呆れたように肩をすくめる。

けれど私は納得できなかった。


「いいえ、そんなことないわ! エリザベートだって、公爵令嬢なんだからもっとやりようがあったはずよ。嫉妬して嫌がらせをするくらいなら、振り向いてもらえるように努力すれば良かったのよ」


画面の向こうに映るエリザベートの姿を思い浮かべる。

ふわりと波打つ金髪に、高価なドレスを身にまとった公爵令嬢。だが、その姿はとても美しいとは言えなかった。肥えた体を揺らしながらヒロインを執拗に虐げる姿は、プレイヤーの目にはひどく醜く映った。


「あとね」


私は腕を組みながら真面目な顔で言った。


「健康的じゃないから、痩せた方がいいわ」


「そこ!?」


同僚が思わず吹き出した。


「だって明らかに太りすぎじゃない。階段を上っただけで息切れしてるし、ドレスもきつそうだし」


「見るところがおかしいのよ!」


「絶対に身体に悪いもの。まずは食生活の改善から始めるべきだと思うの」


「はあー悪役令嬢なら悪役令嬢らしくすべきじゃない?」


「そんなことないわ。私だったら、まずは自分を磨くわ。痩せて綺麗になって、周りのみんなを見直させるの。ヒロインとも仲直りできるなら努力するし、婚約者の王子ともちゃんと向き合う。それでも駄目なら、お互いに納得できる形で婚約を解消するべきよ」


気づけば熱が入っていた。


「……悪役令嬢だからって、理不尽に破滅するのを黙って待つ必要なんてないと思うの。私なら絶対に運命を変えてみせるわ!」


同僚は一瞬きょとんとしたあと、声を上げて笑った。


「あははっ、本当に――らしいなあ」


その笑顔は、もう思い出せない。

声も、仕草も、名前さえも。


あれから長い時間が流れた。

そして――、私はその乙女ゲームの世界に転生してきたのだ。よりにもよって、主人公でもなければ、攻略対象でもない。断罪され、婚約破棄され、すべてを失う運命にある悪役令嬢――エリザベート・グラシエルとして。


大好きだった王子様は、ゲームで見たような頼れる俺様キャラではなく、自分の都合ばかり押し付けるモラハラ男だった。ヒロインもまた、健気で純真な少女などではなく、実際にはしたたかで腹黒い娘で、とても仲良く出来そうになかった。


けれど、私は諦めなかった。

前世で語った通り、まずはダイエットから始めた。

泣きたくなるような食事制限もして、運動もした。


その結果、私は健康的な身体と自信を手に入れた。

そして婚約を破棄し、自分の力で未来を切り開いた。


――そう。私は前世の宣言通りに痩せて、破滅する運命そのものを変えてみせたのだ。


断罪されるはずだった悪役令嬢は、今では王都でダイエットサロンを経営し、多くの女性たちの人生を変えている。


《ラ・ベル・レジスタンス》


それは、ただ香水や化粧品を売るための店ではない。

外見を飾るだけでなく、内面からも健やかで、しなやかに、美しくありたいと願う女性たちが集う、新しい時代のための場所。


「美しくなる」とは何か――その意味を、根底から問い直す場所なのだ。


――しかし、最近の私は……。

そんな誇らしい看板を前にしても、素直に胸を張れずにいた。


「……はあ」

3章スタートです!

3章ではサロンを舞台に、色んな令嬢の悩みを解決していきます! ライバルサロンの登場で波乱の予感……?

しばらくの間、2日に1回更新予定です。よろしくおねがいします。


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