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【書籍化!2章完結!】悪役令嬢のダイエット革命!〜前世の知識で健康美を手に入れてざまぁします!~  作者: 冬月子@書籍化決定!悪役令嬢のダイエット革命5/1発売
2章 ダイエットの秘訣は東洋の島にあり!

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書籍発売記念 カミルとアルフォンス殿下

1章が始まる前の頃のお話しです。

僕は、人の美醜にさほど興味がなかった。整っているかどうかは見れば分かる。だけどそれが好意に直結するわけでもなければ、心を浮き立たせる理由にもならなかった。

だから、貴族の男たちがこぞって言い寄るルチア嬢にも、僕の心は微動だにしなかった。


確かに、彼女の容姿は愛らしい。潤んだような大きな瞳は庇護欲を誘うのだろう。くっきりとした目鼻立ち、触れれば折れてしまいそうなほど華奢な肢体――世間がこぞって称賛する理由は、理屈では分かる。

ただ、それが魅力的かと問われれば、僕には首を縦に振れなかった。


むしろ、もう少し肉が付いた方が健康的で良いのでは、などとのんきに考えてしまうあたり、僕の感覚はやはりどこか、世間とはずれているらしい。


***


そんな僕は、宮廷医師という立場上、時折アルフォンス殿下と顔を合わせることがあった。

年に一度の定期健診。僕にとってそれは、いつもと変わらぬ仕事の一つに過ぎない。王宮の廊下を歩けば、すれ違う侍女たちが揃って目を伏せる。時たま、流し目を向けてくる者もいたが、気に留める余裕もなかった。


「失礼いたします」


簡素な一礼とともに扉を開けると、殿下はすでに窓際の椅子に腰を落ち着けていた。診察は滞りなく進んだ。脈を取り、瞳孔を確かめ、いくつか問診を交わす。

殿下は検査の間、さして緊張する様子もなく、むしろどこか退屈そうに天井を眺めていた。


「異常はございません。引き続き、睡眠と食事には気をつけてください」

「分かったよ」


面倒くさそうな返事だった。毎度の事とはいえ、もう少し真剣に聞いてほしいものだと思いながら、僕は道具を片付けはじめた。

するとア殿下が、おもむろに口を開いた。


「お前は、婚約者はまだなのか」


 かすかに眉が動いた。


「お恥ずかしい限りで……。忙しくて、まだ縁がありません」

「気楽なものだな。……なあ、どんな令嬢と婚約したいんだ?」


少し間を置いて、考えてみる。だが答えが出るよりも先に、殿下が軽く身を乗り出した。


「やっぱり、ルチアか? ルチアほど美しい令嬢はいないものな。ああ、駄目だぞ。ルチアは俺のだからな」


僕はちらりと視線を上げた。

エリザベートという婚約者がいながら、よくもそんな事が言えるものだ。そう思ったが、口には出さなかった。王族の軽口に言葉を挟む必要はない。


「……確かに、ルチア嬢は可愛らしい方ですが、個人的には健康面の方が気になりまして。もう少し体重が増えた方が、身体には良いかと思われます」


 殿下は思わず吹き出した。


「健康を重視するとは、お前らしいな! 美しさよりも健康を気にするのはお前ぐらいなものだよ」


特に反論もなかったので黙っていると、殿下は続けた。


「それじゃあ、ルチア以外ならどんな女性がいい?」

「……そうですね」


少し考えてから、正直に答えた。


「エリザベート嬢のように、芯の強い方であれば素晴らしいと思います」

殿下の目が丸くなった。


「エリザベートだと? あんな醜い白豚がいいというのか?」


――醜い。

その言葉が、妙に耳に引っかかった。


「醜くはないでしょう。確かに体重の管理という点では課題がありますが……厳しい王妃教育にも音を上げず、礼節も完璧に身につけておられる。ご自身の考えもしっかりとお持ちだ。十分に素晴らしい方だと思いますが」

「はあ? 本気で言ってるのか? いくら勉強が良くたって、あの見た目だぞ」


 僕には、殿下の言いたい事がいまひとつ理解できなかった。


「見た目が良くなければ、婚約者にする価値もないと?」


 僕が問い返すと、殿下は鼻で笑った。


「当たり前だろう。毎日顔を合わせるんだぞ。それに――」


 殿下は足を組み、どこか忌々しそうに続けた。


「あいつは生意気なんだ。女のくせに、やたら博識ぶって。こちらが何か言えば、すぐに口答えをする。王妃になる女が、王になる俺に意見するなど言語道断だと思わないか」


僕は答えなかった。

答えられなかった、というのが正確かもしれない。殿下の言葉を聞きながら、僕の頭の中には、今日廊下で見かけたエリザベートの姿が浮かんでいた。


彼女とは、一度口論になって以来、交流が途絶えている。それでも遠目から見た彼女は、侍女たちに囲まれながら、分厚い書物を小脇に抱えて歩いていた。その顔には疲労の色があったが、背筋は真っ直ぐに伸びていた。彼女はこちらに気づかなかったようだったが、僕はその背中が廊下の奥へ消えるまで、ただ見送った。

なにも変っていなかった。あの目は、賢そうに澄んでいたままだった。


「……殿下は、エリザベート嬢、とお話になられてるんですか?」

「話す気にもなれん。顔を見るだけで食欲が失せる」

「……そうですか」


僕は短く返す。それ以上は何も言わなかった。言ったところで、殿下の耳には届かないだろう。

彼女ときちんと話をすれば、その人となりはきっと分かるはずだ。志の高い、努力を惜しまない女性だと。恋心こそ抱かなくとも、尊敬くらいはするだろうに。けれど僕は医師であって、殿下の価値観を矯正する立場にはない。


ただ――と、道具を鞄に収めながら、僕は密かに思う。

芯の強さを生意気と呼び、知性を疎ましいと感じる人間と、生涯を共にしなければならない。

エリザベートにとって、それはどれほど息苦しいことだろう。


「カミル、お前は本当に変わった男だな」


殿下が呆れたように言った。


「エリザベートを褒めるなど、この宮廷でお前くらいのものだぞ」

「……そうでしょうか」


僕は鞄を持ち、静かに一礼した。


「では、また来年伺います。どうか体調にお気をつけて」

「はいはい」


軽い返事を背に受けながら、僕は部屋を後にした。廊下に出ると、行きよりも少し、足取りが重かった。

いくら勉強が出来たところで、あの見た目だぞ――

殿下の言葉が、頭から離れなかった。


……僕は変わっているのだろうか。

殿下の言いたい事は分かる。世間の大半がそう考えているのも、知っている。令嬢の価値は容姿から始まる。それがこの社会の共通認識だ。

だが、どうしても腑に落ちなかった。

いくら見た目が整っていても、中身が釣り合っていなければ意味がないだろう。美しい顔は、その人間が誠実かどうかを保証しない。賢いかどうかも、芯があるかどうかも、何一つ語らない。

むしろ逆だと、僕は思う。見た目など、さして重要ではない。中身こそが、人を人たらしめるものだろう。

……もっとも、それを口にすれば、また「お前は変わっている」と笑われるのだろうが。

僕は小さく息をついて、足を進めた。


――その数か月後、僕は別人のように変わったエリザベート様と再会することになる。

絞り込まれた輪郭、凛と背筋の伸びた立ち姿。誰もが目を奪われるほどの変貌に、僕も思わず息を呑んだ。

だが僕が惹かれたのは、その美しさだけではなかった。

誰かに言われたからではなく、自らの意思で変わろうとした、その芯の強さに――気づけば、目が離せなくなっていた。

だけどそれは、もう少し先の話だ。


カミルは内面に惹かれたんだよってお話でした。


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下記にリンクを掲載しておりますので、ご興味がございましたらご覧いただけますと幸いです。

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挿絵(By みてみん)

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