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【書籍化!2章完結!】悪役令嬢のダイエット革命!〜前世の知識で健康美を手に入れてざまぁします!~  作者: 冬月子@書籍化決定!悪役令嬢のダイエット革命5/1発売
2章 ダイエットの秘訣は東洋の島にあり!

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閑話 誰かの葬式

焼香の煙が、ゆらりと天井へ昇っていく。

白い菊の匂いが、やけに濃い。鼻の奥にまとわりついて、離れなかった。

私はただ、そこに座っていた。

会社の同僚――“紫園絵莉奈”の遺影が、やけに綺麗に笑っているのを、ぼんやりと眺めながら。


「何で死んじゃったんですかー!」


泣き声が隣りから聞こえてくる。静かな部屋にやけに響く。

普段は媚びるように笑ってばかりのくせに、こういうときだけ声が大きい。涙でぐしゃぐしゃの顔をして、けれどどこか芝居がかった仕草で、肩を震わせている。


前方の棺の横では、初めて見る絵莉奈の両親が、声を押し殺すように泣いていた。

年老いた背中が、小さく揺れている。

ああ、そりゃ、泣くよな。

頭の隅で、ひどく乾いた声がする。親より先に死ぬ子供なんて、どんな理由であれ、それだけで親不孝みたいなものだ。


「これから、あたし……誰に仕事、頼ればいいんですかぁ……」


嗚咽混じりのその言葉に、私は思わず眉をしかめる。

――知るかよ。こんな時にもそんな心配事かよ。


喉元まで出かかった言葉を飲み込む。こんな場所で吐き出すほど、私は馬鹿じゃなかった。


ねえ。明日から、誰が私の話を聞いてくれるの?

仕事の愚痴も、どうでもいい上司の話も、

……ねえ。乙女ゲーム、どうするのよ。

新作、もうすぐ発売だって、あんなに楽しみにしてたじゃない。

「絶対一緒にやろうね!」って、あんた、あんな顔して約束したくせに。


――嘘つき。


遺影の中の笑顔は、やっぱり穏やかで。

あのときと同じように、何も言い返してこない。


「……一人でやるの、つまんないじゃん」


こぼれた声は、自分でも驚くほど弱くて。

誰にも聞かれないように、唇を噛む。


煙の向こうにいるあんたは、もう、どこにもいないのに。

ねえ、絵莉奈。


***


式場の外に出た瞬間、張りつめていた空気がふっと緩んだ。

けれど、その分だけ現実が剥き出しになる。


冷たい風が頬を撫でる。

さっきまでまとわりついていた線香の匂いが、少しずつ薄れていった。


私と後輩は、無言のまま並んで歩く。


「……っ、うぅ……」


隣では、まだぐずぐずと泣いている。

鼻をすする音が、やけに耳についた。


「……先輩、知ってます? 絵莉奈……先輩、駅で人、助けたんだって。落ちた人を庇って、それで死んじゃったんだって」


静かに言い切ると、風が一瞬だけ強く吹いた。


「知ってるよ。ニュースにもなったじゃない」


馬鹿みたいに、お人よしで。何事にも、まっすぐで――不器用なくらい一生懸命だった、あんた。

だからって。まさか、駅のホームから落ちた誰かを庇って、自分が死ぬなんて――そんな結末、誰が想像するのよ。


「……本当に、馬鹿だよね」


胸の奥で吐き捨てたはずの言葉は、驚くほど軽くて。

そのくせ、どこかに引っかかって、消えてくれなかった。


「絵莉奈先輩らしいですけどねえ」


「でも、もしかしたら乙女ゲームに転生してるかもよ」


ぽつりと零した私の言葉に、後輩はぴたりと足を止めた。

涙で濡れたままの顔が、今度は呆れたように歪む。


「……先輩こそ、何言ってるんですか。頭、壊れました?」


「えーあんたに言われたくないね」


軽く肩をすくめてみせると、後輩は盛大にため息をついた。


「なんかさ、携帯の最後の画面、さ。“王宮聖女”のアプリ開いたままだったらしくて」


風が、髪をかすめていく。

どこか遠くで電車の走る音がした。


「……まあ、人を庇って死んだら転生、とか。よくあるじゃん」


「トラックじゃなくて電車だから、無理じゃないですか?」


即座に返ってくるツッコミに、思わず笑いそうになる。


「かねぇ」


「現実的じゃないですよ、絶対」


「夢くらい見させてよ」


軽く返したはずなのに、声は思ったよりも掠れていた。

少しの沈黙。


「でもさ。だったらいいなって、思うじゃん」


後輩は何も言わない。


「もしそうならさ。あの子のこと――」


そこで言葉が詰まる。

……そんな都合のいいこと、あるわけないのに。


「……ちょっと、羨ましいなって」


やっと絞り出した声は、やけに小さかった。


後輩の視線が刺さる。


「先輩、絵莉奈さん死んじゃったのに、よくそんなこと考えられますね」


まっすぐで、少し責めるような声。

私は、少しだけ空を仰いだ。


「……まだ、現実感ないんだよね。つい先週まで一緒にいた人が、急にいなくなるとかさ」


青すぎる空が、やけに遠い。目を開けてられないほど、眩しくて。


「理解が追いつかない」


後輩は黙っている。

私は、少しだけ笑った。


「……私にとっては、たった一人の友人だったし」


その言葉に、後輩は一瞬だけ目を見開いて――


「先輩、オタクでぼっちでしすもんね」


容赦のない一言が返ってくる。


「うるさい」


即答すると、後輩は小さく鼻をすすりながら、少しだけ口元を緩めた。

さっきまでの泣き顔が、ほんの少しだけ崩れる。

その空気に、ほんのわずかだけ救われる。


「……あーでも」


わざと軽い調子で、言葉を継ぐ。


「王宮聖女の次の新作、発表してたのにさ。遊べなかったの、残念だったよね。絵莉奈」


「……新作、あたしが一緒に遊んであげますよ。代わりに仕事手伝ってくださいね。」


不意に投げられた言葉に、私は一瞬だけ足を止めた。

……ああ、こいつ。さっきまで泣いてたくせに、もうそんなこと言えるんだ。


「……あんた、まだ“王宮聖女”も序盤までしかやってないじゃん」


「ゲームって飽きちゃって。あーでも先輩のおすすめの転生もの乙女ゲームの漫画なら読みましたよ」


「原作やれ」


「面倒です」


即答。ここまで清々しいと、逆に腹も立たない。

ふっと、息が抜けた。


「……転生かぁ」


後輩が、空を見上げながらぽつりと呟く。


「転生したら、先輩はなにしたい?」


唐突な問いに、私は少しだけ考えるふりをしてから、肩をすくめた。


「そりゃ、前世チートでどっかん金儲けよ」


「うわ、夢が現実的」


「うるさい」


けれど、口元は自然と緩んでいた。


「前世チートって何ですか?」


「知識無双。未来知ってるとか、現代知識で成り上がりとか。そういうやつ」


「へぇー、なるほど……そういうのがあるんですね」


後輩は、妙に真面目な顔で頷く。そして、すぐににやっと笑った。


「あたしは普通にモテたいです」


「普通とは」


「王女になって、贅沢しながらイケメンに囲まれて、逆ハーレム作りたい」


「欲望に忠実すぎるでしょ」


思わず笑う。後輩も、つられるように笑った。

その笑い声が、やけに軽くて。やけに現実的で。


――ああ、生きてるんだなって思う。


「……でもぉ」


笑いが少し落ち着いたところで、後輩がぽつりと続ける。


「絵莉奈さんなら、どっちですかね」


その名前に、空気がほんの少しだけ静まる。

私は、少しだけ視線を落とした。


「……あの子はさ」


考えるまでもない。


「どっちも選ばないでしょ」


「え?」


「たぶん、また誰かのために動いてるよ」


王女でも、聖女でも、平民でも。なんなら、悪役令嬢でも。どんな立場でも、きっとあの子は変わらない。


「お人よしで頑張り屋なあの子のことだからね」


「……確かに、そうかもしれませんね」


きっと、どこにいても一生懸命に生きてる。そんな姿が、容易に思い浮かぶ。

本当にそうだったら良いのに。そして、もう一度会えたら――。

ただそれだけの願いが、胸の奥でじわりと滲む。


――まさか、その願いが思いもよらない形で叶うとは。このときの私は、まだ知らなかった。

まさかの前世編となります。3章も執筆予定で、サロン経営をテーマにしたお話になります。ライバルサロンの登場で波乱の予感……?現在も執筆中ですので、エリザベートの活躍をお待ちいただけますと幸いです。

新作の『竜人に拾われた奴隷は運命の番でした ~最強種に溺愛されて一人前の淑女になるまで~』も宜しければ。2万文字でサクッと読めますので、是非。


そして、拙作『悪役令嬢のダイエット革命~〜前世の知識で健康美を手に入れてざまぁします!~』が書籍化いたしました!

5/1発売予定!早いところでは、書店に既に並んでいるみたいです。下記にリンクを掲載しておりますので、ご興味がございましたらご覧いただけますと幸いです。

新しいスイーツを発明するエピソードなど、書き下ろし多数! 電子特典SSにはカミルとのはじめてデートなど……WEB版より本編も大幅加筆しております。どうぞ、よろしくお願いいたします!

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