エイミーとベティーナ
森を掻き分けて進む一矢達の目の前に少し開けた場所が広がる。
「今日はこの辺で野宿しましょ」
エイミーの提案で一矢達は立ち止まる。
「ちょっと~。そう言うのはリーダーの俺に言わせてよ」
「また子供みたいなこと言って。じゃあ『リーダー』さんお願いします」
一矢は咳払いをする。
「今日はここで野宿ッスーー!」
クレアが高らかに宣言した。
「ちょいッ! 俺に言わせてって言ったじゃん!」
「すいませんッス。リーダーのわたしが言うべきかと思ったッス」
「マジでリーダーの座取るの? 俺の立場は?」
「一矢さんは『愉快な仲間A』ということでお願いします」
「モブ? この森ナンバーワンをモブ扱いですか?」
「はいはい。もう良いから薪を集めましょ。二人一組でね」
薪を集めに一矢達は別れるが、一矢とクレアの声がいつまでも聞こえてくる。
「まったく。あいつらちゃんと集めてるのかしら」
ベティーナと一緒に薪を探すエイミーは愚痴を漏らす。
「エイミー殿……」
ベティーナが薪を拾いながら口を開いた。
「エイミー殿は一矢殿の事をどう思っているんですか?」
エイミーはドキリとして薪を拾う手を止める。
エイミーが振り返るとベティーナが真っ直ぐ見つめ返してきた。
「……どうって」
「好き……なのでしょうか」
エイミーの心臓がハネ上がる。
「好きって、何言ってんの」
エイミーはベティーナから視線を反らして薪拾いに戻る。
「一矢殿に恋愛感情を抱いていらっしゃいますか?」
「そ、そんなわけないでしょ? あたしは魔族で一矢は人間よ? ないない」
エイミーは笑いながら答えるがベティーナの方を見ようとしなかった。
「一矢殿の良いところは人間も魔族も同じように接するところだと思います」
「……そうね」
暫しの沈黙が二人の間に流れる。
「あいつはバカでスケベだから」
エイミーは努めて明るくそう言った。
「私は一矢殿が好きです」
エイミーは薪を取り落とす。
「私はこの旅で死んでも構いません。一矢殿の為なら」
エイミーはベティーナの言葉以上に、動揺する自分に驚きを隠せなかった。
「や、止めた方が良いわよあんな奴。女と見たら見境無いし、きっと浮気するだろうし、ベティーナは綺麗なんだからもっと良い男が似合うんじゃない?」
「私は一兵士として沢山の男性に囲まれて生きてきました。女らしいことなんて何一つせずに」
エイミーはベティーナを見る。
「女の子らしいことに憧れる自分が居て、寂しく思う事もありました」
エイミーはベティーナと出会ったばかりのことを思い出した。
「でも一矢殿と戦ってみて分かったんです」
「えっ? 戦ったの!?」
ベティーナは頷く。
「任務や武術大会とは違い、一矢殿は私に自分でも驚くほどの力を出させてくれました。そして全てを受け止めてくれた。今の私の全てを」
ベティーナはエイミーに微笑む。
「だから私はもっと自分の気持ちに正直になろうと思いました。そして一矢殿に一生ついて行こうと決めたんです」
エイミーはベティーナの真っ直ぐ過ぎる瞳から視線を反らした。
「……そっか。良かったじゃない。さぁ、薪も集まったしそろそろ戻りましょう」
エイミーはそう言ってサッサと来た道を引き返していく。
ベティーナの心境は複雑だった。




