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其の三 MM(2020年10月)

守る者セブンに届いた守る者を自称するMMからのメール。

2人はなつきを守るために共闘を始めるが・・・。

そしてもう1人の守る者が生まれる?

〈共闘〉

 早朝5:30にTwitterの通知が届く。DMである。


MM:

@xxxxxxxx


(またか)

 セブンはMMから送られたリンクをクリックし確認する。

 やはり。なつきを攻撃するユーザーの垢。セブンは淡々と通報処理を行う。

MMとのDMでの会話以降、こうした日々が続いている。セブンからMMに連絡する事もあるが、大半はMMからの連絡である。

 ある日は、仕事終わりにDMの着信に気づくが、14:00の着信であり、セブンには対応不可能な時間である。笑うしかない。


MM:

@yyyyyyy

なりすまし


 なりすまし。

 なつきの垢そのものを偽装する。アイコンやHN、プロフィールもそのままに。しかしツイートの内容はなつきが過去に渡した画像が晒されたものなど、裏垢そのもののような垢となっている。なつきには相応な頻度でなりすまし垢が出現する。

 セブンが送られた垢のリンクをクリックすると、【アカウントが凍結されています】と表示される。

(これじゃあ出番がないじゃないか笑 それにしても彼は本気か?)

 MMとの会話らしい会話は、初回の一度だけである。趣旨は次の通り。

・自身は那月を守ると決めている。人に語るような理由はない。

・Twitterの垢は1人の通報では潰し切れないことから協力を求める。発見時は相互に連絡し合う。

・他のコミュケーションは不要。

(随分な言い草じゃないか笑 最低限の礼儀はあるかもしれないが人間味はない。)


 さらになつきスレと呼ばれる複数の掲示板に増殖するHNがMMのレスについては、1度を除き自分ではないとの回答。

・表に出ないよう那月から言われている。

・自身の投稿は一度のみ。


 「複数の大人が自分は安全な場所から、1人の社会人ですらない若い女性を攻撃することは看過出来ない。相応の対応をする。」というもの。

 セブンは晒し掲示板にはそぐわないその書き込みを明確に覚えている。そしてそのレスに対して好意的な意見は見た記憶がない。


匿名「やれるならやってみろ」

匿名「マジになるなw」

匿名「何様だお前w」

匿名「だったら他の晒されてる女もどうにかしてやれ」

匿名「なつきより◯◯を助けてよ!」


 このように揶揄するような返信が多数付けられていた。

(あまりにも青臭い。皆分かっていながら遊んでいるんだ。それに・・。)

 セブンはMMが彼女のことを「那月」という本名を呼び捨てにしている事に、理由のない苛立ちを感じている。

 更にTwitter(表)での彼女とのやり取り。彼女のMMに対するリプは、その年頃の女性らしい極めて普通のものである。時には恥じらうような言葉も散見される。

 鍵垢であるMMのツイートが見えないその特異なやり取りは、明らかに一部の人間には良くも悪くも刺さっている。暁などは面白がってわざわざ私にDMで報告してくる。

(なぜわざわざ表でやるのか?裏のDMで勝手にイチャコラしていれば良いだろうに・・)

 その奇妙なやり取りの理由もMMからは聞いたものの、セブンには理解できなかった。


 姿形どころか、意思すら分からない男。

 昼夜早朝を問わず対象を見つけては垢や掲示板のリンクのみDMで送信し、彼女以外とは味方であってもコミュケーションは取らない在り方。

「目的には共感する。だが、やり方に共感することは難しい。」


〈もう1人〉

 マシリトはなつきからのDMを確認する。

 「頑張って(^-^)」という一文。早朝から仕事に向かう旨の連絡に対する返事だ。

 職場の後輩に勧められてTwitterを始めたものの、初心者の彼は流れててくるTLを眺めるだけの日々を過ごしていた。

 そんな彼の日常は8月以降、変化していた。

ある日、目にした異様なTL。普通の女性のものと思われる垢に対して卑猥なリプが並ぶ。女性のエロ画像に見たことのないような掲示板と思われるスクショ。リプの中にはリンクのようなものにパスワードが記載されたものもある。

(このリンクを踏んで大丈夫なのか?)

 異様なやり取りに対する強い興味を自覚しつつも、触れてはいけない空気を感じ、リンクの先に踏み込む事には躊躇していた。

 リプをした垢のプロフィール画面を見る。マシリトには信じがたいプロフィール。ツイートやリプは卑猥な画像やテキストが並ぶ。

(なんだこれ?こんなの良いのか?)

 強い関心を自覚しつつも、やはり踏み込む事にリスクを感じる。マシリトは男の垢をコピーしTwitterを閉じた。


 マシリトは5年以上付き合った彼女と同棲を開始している。仕事を終え帰宅した彼は、食事を済ませ酒を飲んだ後、彼女とベッドに入る。

 疲れていたのか、彼女はすぐに寝息を立て始める。一度寝てしまうと余程のことがない限り起きることはない。彼は若干の罪悪感を意識しながらTwitterを開く。掲示板のリンクが記載されたリプを探すが出てこない。

(削除したのか?)

 彼はコピーしておいた男の垢を検索する。ユーザー欄には出てこない。男に対するリプが並ぶ画面から垢のリンクをクリックしてみる。

【アカウントが凍結されています】

(凍結?凍結ってなんだ?何が起きている?)

 マシリトはNatstukiという女性へのリプを舐めるように確認し始める。感情の昂りを感じつつ、未知の出来事に対する好奇心を抑えることはもう出来ない。

 日常のやり取りに混ざる卑猥なリプ。

(あった!)

 昼間とは別の垢からのリプ。

 そこに掲示板へのリンクとパスワードが記載されている。最早、躊躇する気持ちはない。

 彼はリンクをクリックし、掲示板を開く。


 あの夜から、マシリトはありとあらゆることを知りたい欲求にかられている。

 掲示板とは?その掲示板にて罰として晒される女性。そこに至るまでのチャットルーム。40年近く生きてきた自分にはまだ、全く知らない世界があったのだ。

 見よう見まねでNatsukiに卑猥なメールやリプをしても反応はないまま。自身のTLに表示される不釣り合いなリプが恥ずかしくなり削除した。

 しかし関心は高まるばかり。Natsukiをフォローし、何度もDMを送った。彼女は間を空けつつも必ず返信してくるようになった。

 掲示板に晒された経緯や本当に困っていること。そのような話を短文、時に長文で返してくる。Twitterに垢を作り、初めての1人の人間との長いやり取り。いつの間にマシリトはなつきに愛着を感じ始め、日常的な会話をするようになっていた。

 そんな日々が2ヶ月ほど続いたある日。仕事終わりになつきにDMをすると珍しくリアタイで返事が来る。いい機会だ。彼は気にしていたことを尋ねる。


マシリト:

仕事終わったよ。なつきに2つ聞きたい。

MMってのはホントに大丈夫なのか?

付き纏われているなら俺がDMで話す。

あと例の暁って奴は?しつこいのか?

Natsuki:

お疲れ様(^-^)

Mさんは大丈夫だってば。味方の人。

暁は困ってる。ブロックしたのに垢を変えたみたいで、DMが良く来る。私は好きで晒してないって伝えたけど信じたかわかんない。

マシリト:

MM、本当か?DMしてもフォロリクしても無視だ。なつきから俺が味方だと伝えれば、返事くらいくれるんじゃないか?

暁の事は俺も協力したい。

Natsuki:

Mさんにそういう事するのはやめて!!

彼には私から誰とも関わらないようにお願いしてるの。マシ君を無視してると知って逆に安心した(^-^)

彼は味方だって言ってるの、信じないの?

マシリト:

はいはい!わかったわかった。

暁に関しては俺も考えがある。なつきに迷惑かからないようにするから、良いよな?

Natsuki:

わかった


 なつきとやり取りが深まっても残る懸念。

(MMって誰よ?なんなんだ?彼が俺を無視するから安心?笑)

 マシリトは彼の話題を振るとなつきが明らかに不機嫌になることを理解していた。その理由は分からない。ただ、なつきは表で何度も彼に楽しそうなリプを返している。あれもなんなのか。


(俺にはリプなんてしたことないよな笑)

 そんな事を考えながら、彼は暁のプロフィール画面を開く。なつきと知り合ってまもなく3ヶ月。その間も、数は減っている印象だが、しつこくなつきを攻撃するようなポストやDMを繰り返す男。もしかしたら8月のなつきに対する嫌がらせもこの男の仕業ではないのか?

 マシリトは暁にDMを送る。


マシリト:

よぉ、俺はマシリト。なつき側の人間だ。

お前は何が狙いなんだ?なつきをどうしたい?あれだけ表で煽ってるんだ。シカトなんか、しないよな?返事来いや。


(俺、煽りすぎか?笑)

 Twitter初心者の自分が、他人を煽るようなDMを送る。まさかこんなことになろうとは。

 しかし彼は、妙な感情の高まりを感じている。

(なんなんだ?この感じ。漫画だな、これ笑)

 1人の女性をめぐる戦い。敵と味方。

 敵は明らかに複数どころか多数。

 一方味方はいるのかいないのか。掲示板で名を聞くだけでなく、実際にHNを付けてレスをするセブン。彼のTwitterは分からない。それにマシリトにとってはあまりにも不自然な存在のMM。しかしマシリトは最早なつきを守りたいのだ。

 返事はすぐにあった。


暁:

随分な言い方だなwガキか?レジ袋といい、そちらの陣営はセブン以外はマナー知らずばかりか?w

そんなに喧嘩腰になるなよ?お里が知れるぜ?

マッシーで良いよな?www


(レジ袋?それにセブンを知ってる??なんなんだ?コイツ・・・)

 自分なりには煽ったつもりのDMを送った。躊躇もあった。

 なのになぜ、この男はこんなに平然とふざけてるんだ?マッシーだと?

 得体の知れない男と対峙することになったマシリトは、自分が姿の見えない相手に対し、緊張していることを自覚する。

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