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其の二十 セブン(2021年6月)

MMとなつきに対する敵意をむき出しにする彗星。

そんな彼に近づく1人の男。

そして好き放題騒ぎ盛り上がる、掲示板に対するなつきの心の声は?

〈接近〉

 彗星は書き込みをした後、「なつきの部屋」を見続けている。菓子パンを食べ空腹を満たした。

 若干の後悔。

(またやってしまった。これでもうなつきは本当に・・・。)

 書き込みの削除も試みるが、削除ボタンがない。この部屋は削除が出来ないようだ。

(もう仕方ないだろ。それになつきもMMも許せない。)

(なつきも。MMがいながら、なぜ俺ともやり取りしたんだ?)

 比較的新参の彗星は、なつきが余程の相手でもない限り、基本的には返信をするという性格を知らない。自分は特別だと勘違いしていても仕方ない面もある。

 部屋の書き込みは徐々に増えている。しかしまだ昼間という事もあり、大幅に増えている訳ではない。


匿名「誰?彗星?なつき、浮気してたんか?w」

匿名「間男乱入で結婚生活に暗雲??」

匿名「この垢名は流石にない。引くわぁ。寒気がするもん!」

匿名「氏ね氏ねはダメよー♡」

匿名「M君を助けるんだもん!!!byなつき♡」


 匿名掲示板であるため、好き放題、愉快犯のような書き込みが増えていく。垢名からか、彗星に対する批判的な書き込みも少なくない。

(俺が悪いのか?俺は被害者だろうが。)

 再び感情が昂る。

 更に、HN付きの書き込みもいくつかある。


HN:セブン

掃溜めがますます醜くなってますね。

そろそろ黙っていられませんよ?


HN:暁

垢名アウトだろw M君アンチの俺でもコレはやらないwww


HN:レジ袋

またかよ?いい加減にしろって言ってんだろ!!!彗星?誰だよお前!!!


 HN付きは明らかに彗星に批判的だ。

(はぁ?俺が悪い?なんでだよ!)

 怒りが増す彗星。

そこにDMの着信を知らせる通知が鳴る。

「なつき!?」

 部屋を見たなつきが連絡をくれたのかもしれない。そう思う彗星だが、相手は違った。


夢:

お前面白いな。俺もお前と同じよ?

MMが憎くて仕方ない。話さないか?


(誰だ?こいつ。)

 おそらく普段の彼なら返信しない。

 しかし今の彗星は誰かと話したかった。

 彼にはもうなつきはいない。そして彼を批判するような部屋の書き込み。

(耐えられない。)

 彗星は夢に返信した。


彗星:

俺もMMが大嫌いだ。


 彗星が夢とやり取りをする間も少しずつだが、部屋の書き込みが増えていく。彗星に対する批判。一方MMを叩く書き込みも一定数ある。

 そこに1件の匿名の書き込み。


どいつもこいつも外野がガヤガヤうるせーよ!なつきが悪い?Mさんが悪い?わからない外野が騒ぐなよ!!ばーか!!!


 夢との会話を終えた彗星。夢の言う事は単純だった。

・なつきの側には常にMMがいる。なつきはMMに対し盲目的であり、MMを常に正しいと思い込まされている。

・夢自身もなつきを攻撃する者を何人も裁いたが、なつきから感謝された事は一度もない。

・なつきの周りの守護者も何人か知っている。彼らはなつきを守りつつも、本音ではMMを疎ましく思っている。そして彼らも味方であるが、なつきとのワンチャンを狙っている。

・MMを孤立させたい。なつきとDMをしていたなら、何かないか?彼らが仲間割れするようなものがあれば助かる。探してなければ相談して欲しい。


 彗星はなつきとのDMを読み返す。

 夢をどこまで信用していいのか。それは分からない。しかし彼も明らかにMMを憎んでいる。

「俺と同じだ。」

 夢は非常に理性的で落ち着いた話し方の男だった。おそらく彼も、MMとなつきのせいで辛い思いをしたのだろう。

(これか?)

 なつきやMM、そして仲間の男達にダメージを与える可能性があるDM。なつきがMMに関する彗星の質問に答えたものだ。

「これが、効果あるのか?」

 なつきの仲間達に効果があるのかは、分からない。しかし彼自身は、非常に傷つきしばらくは不安定になった事ははっきり覚えている。

「まずはやってみるしかないよな。」

 彗星は再び、「なつきの部屋」に書き込む。書き込み自体は夢のアドバイスに基づき、シンプルなもの。


HN:彗星

なつきには仲間もいるみたいだけど、なつきはMMにしか興味ないよ?いつまで2人の仲間を続けるんだ?


更になつきとのDMのスクショ。


彗星:

なつきはMMってヤツと仲良いの?リプを見ていてもそうだし。掲示板でもたまにそう書かれてるよね?

Natsuki:

うん。仲良くしているよ。毎日話してる。

どうして?

彗星:

なつきには他にも味方する人いるんでしょ?その人たちみんな仲良いの?

あと、俺もなつきの味方のようになれる?

Natsuki:

うーん。彗星さんは味方とは違うかな。

味方の人達は、今は私に画像を欲しいとか言わないし。私が困った時に助けてくれる。だから仲良くなったの。

それと、Mさんは、味方の人とも違うの。

もっと特別。

Mさんが動揺したり悲しんだりしたら、私は嫌だから。だから私は、もう屈しないって決めた。


〈匿名〉

 マシリトは「なつきの部屋」の騒ぎを見つつ、グルチャに入る。


マシリト:

いるかい?


(なつきのスクショ、連投かよ。それに彗星ってヤツ。)

 MMが入ってくる。

 マシリトはMMが大丈夫なのか気にしていたが、前回同様、MMというキャラクター、アイコンが叩かれているだけだ、という趣旨の返事である。

(いやいやいやいや笑。今回は君ら2人、中の人同士の関係がネタにされていると思うけどな。なつきもだけど、Mさんもなんかズレてないか?笑)


 マシリト自身も昨晩のユダが晒したスクショに驚き、今度は彗星とやらのスクショである。

 正直、2連発は堪えなかった訳ではない。しかし、このグルチャや個別DMでMMの冷静だがなつきの意思を尊重し優しい、という人柄を理解しつつある事、更に彼女持ち・同棲中という背景から、なんとか乗り越えている。

(これ、やつき界隈のやつらは相当堪えてるぞ笑)

 そして、なつきもやって来た。


マシリト:

なつき、大丈夫か?

Natsuki:

大丈夫ってどういう意味?


(あら。機嫌悪い?Mさんも何か言ってくれよ笑)

マシリト:

いや、ほら。例の部屋な?昨晩遅くにユダ。あれは高校生ってヤツか?それに昼間は彗星ってヤツ。続けてスクショ晒されたろ?落ち込んでないか?大丈夫か?

Natsuki:

落ち込んでなんかないよ!

そんなことより、あれ。本当に腹が立つんだけど!

高校生さんも彗星さんも。あんな事する人だとは思ってなかった!

それに何なの?部屋の人達も。

私とMさん、何も悪い事してないよね?


(あー。まぁ、そうだな。悪い事はしてないな。)

マシリト:

少し落ち着け、なつき。確かに悪い事はしていない。でも敵を刺激はしたのかもしれない。そうだよな?Mさん。

ついでだけど、2人は会った事あんの?顔とか声って。


 なつきとMMは2人同時に「ない!」と否定。

 なつきの説明では、晒されたなつきの情報ばかり自分が知っているのはフェアではないと、MMも彼の名前や年齢、職業と合わせて、顔や音声データをなつきに渡した、という事らしい。

(そういう事か。その発想はなかった。)

(でもそれがなんで、あんな「声聞いたことあるもん!!!」みたいな言い方になっちゃうんだ?なつき笑)


マシリト:

分かったよ。そういうことか。

あと、もう1つな?彗星のスクショ。

彗星達と俺達が違うのは当然だと思うし、なつきの言っていることはありがたい。でも何でMさんを特別扱いみたいに言った?

それに何でアイツらにあんな事話したんだ?アイツらなつきの味方って訳じゃないし。

Natsuki:

ユダって人はMさんが実在しないとか煽るから。腹が立つでしょう?だからはっきり「いる」って言っただけだよ。

彗星さんは何だろ。好きになられても困るし、聞かれたから?味方とは何が違うを答えただけ。


(なつきの言うことは正しい。でも何だ?やっぱり良いんか?これ。誰にでも相手を選ばず言うことをか?どうなんだ?それにMさんが特別って理由の答えになってない笑)


マシリト:

わかった、わかった。それでどうする?

2人ともブロックしてるし、このまま放置する?

ただまぁ、掲示板は鬱陶しいよな?俺がなんか書き込むか?もちろん、何を書くかは、2人と相談してな?


 MMは放置でも良い、としつつ、そろそろ部屋についても対処をしたい、自身が書き込んでも良いとの意見。


マシリト:

Mさんて表出ないんじゃないの!?ついに掲示板デビューか?なんか最終局面ぽくて、胸熱展開だな!

Natsuki:

みんなは知らないかもしれないけど、Mさんも書き込みした事はあるよ笑

いつもの掲示板じゃないけど。

外の掲示板とかチャットに「匿名」でね?もちろん、2人で相談してからだけど。

それで今回だけど、私にやらせて?

2人が言う通り、そろそろあの部屋もどうにかしたいと思う。

マシリト:

え??

なつきが!?大丈夫なのかよ?なつきも表に出て良いのか?なつきが書いたらいろんなヤツらが群がって来るぞ!?

Natsuki:

大丈夫だよ!1人でチャットに入る訳じゃないし。掲示板だよ?誰か来ても相談すれば良いし。2人とも助けてくれるんでしょう?笑

それにもう、今日の昼間も書いたよ?

マシリト:

なに!?もう書いた?

なつきっぽいの、ないだろ?分かる?Mさん。


 MMがある書き込みを指摘する。自身のことを「Mさん」と呼ぶのはなつきかマシリトのみ。マシリトかと思ったが、違うならなつきしかいない、と。

 マシリトは慌てて部屋を見返す。

(あった・・・けど。これ?マジ?)


マシリト:

まさかだけど、「外野がガヤガヤ」「ばーか!!!」ってヤツ?あれ、なつきなの!?

匿名っての。随分とまぁ・・・。

Natsuki:

心の声が漏れちゃったかも?笑笑


 話し合った結果、今回はなつきの強い意志を尊重することとする。なつきはすぐにでも書き込みに行く勢いだったが、そこはMMが止め、明日夜に決行するこことした。

 更に、書き込む内容はなつきに任せるが、マシリトからはくれぐれも相手を煽らないよう、念押しがされる。


Natsuki:

わかった!煽ったことなんてないし!

大丈夫だよ。任せておいて!

マシリト:

それと。

今回の件、セブンにも伝えておくぞ?驚かれても困るからな。


(まじかー。なつきがやるかー。煽ったことないなら昼の書き込みはなんなんだ?笑)

 マシリトは若干の緊張を感じながら、別の事も思う。

(なつき、強くなったな。)

 彼はグルチャの内容をセブンにDMし、彼女の横で眠りにつく。


〈訣別〉

 その後、0時。

 マシリトのDMを受け取ったセブン。

(ふむり。)

「あれから1年以上か。姫も強くなったものだ。」

 彼は、昨年からのなつきとのやり取り、交流を思う。自身が晒してしまった直後のなつきは、非常に危険な状態だった。掲示板は乱立し、外部アダルトサイトにも拡散された。特に掲示板にはなつきとのメールのやり取りが晒されるケースが目立った。

 見かねたセブンは、何度も詫びるメールをなつきに送り、掲示板ではなつきを擁護。現在の守護者の位置に落ち着いた。

(しかし。)

 夏以降、MMが現れ少しずつセブンの立ち位置は変わった。当初は何者かも分からぬMMへに懸念を抱き、彼との連携直後は考えが分からずイラついた事は何度もある。

 しかしMMはセブンの想定を遥かに上回る立ち回りを見せた。

素直に話を聞かせることが難しいなつきに考えを理解させ、Twitterでのなつきに対する攻撃を大幅に削減。

 更に拡散された外部のアダルトサイトの書き込みの大半を削除に追い込んだ。その方法も具体的にセブンは聞いている。セブンも同じ事ならもう出来る。

 そしてマシリトから聞いた、なつきが作ったというグループチャット。

(私は蚊帳の外か笑)

「自ら出ると言うとはね。いや、もう出たのか。うちの姫も随分と強くなったものだ。匿名でのあの言い方はどうかと思うけどね笑」

 マシリトから聞いた日中の書き込み。匿名とはいえやるようになったと、セブンは思う。


「さてさて。」

セ:深夜に申し訳ないが、時間はあるかい?

裏垢無一郎ではなく、表の趣味垢からDMを送る。

(そういえば、彼にだけこちらだな笑)

程なく返信がある。

セブン:

明日に向けて寝不足にするつもりはないが。

いくつか聞きたいんだ。教えてくれ、M氏。


 MMとのやり取りは30分ほど。彼の回答にセブンは満足していた。

(ブレないね笑 相変わらず100点満点以上だよ。)

 おそらく、彼には自身の考えも正しく伝わっただろう。

「悪いが部屋を少し汚すよ?姫が自ら出るなら尚更ね。私からの花向けだ。」

「M氏。姫を頼んだ。」


 深夜2時。

「なつきの部屋」にセブンのメッセージが書き込まれる。そこには1枚のスクショが貼られている。


HN:セブン

この荒れっぷり。見苦しい事この上ない。

諸々考えたが私は訣別する。

あとはM氏に委ねる。

《追伸》

荒らしている低脳連中にも、訣別=敵対ではない事くらいは理解できるね?

君らの事は私もずっと見ているよ。


 スクショは先ほどのセブンとMMのDMの一部。

セブン:

君が日々見えないツイートを繰り返しているのは何故だい?

MM:

セブンさんは分かっていると思いますが、なつきは普通の女の子です。

元々彼女はTwitterで普通の日常を楽しみたかった。日々の出来事をツイートやリプのやり取りしたり、画像を上げたり。

でもそれが出来なくなった。

だから僕がそれを叶えている。なつきのリプを見れば、彼女が楽しんでいることも、普通の女の子だということも、わかるでしょう?

セブン:

ふむり。

最初に聞いた時は理解出来なかったが、今は良く分かるよ。

姫はとても楽しそうだからね。

もう一つ。

君は姫の最初の罰部屋から、今までを全て知っている。

それでもブレずに彼女を守り続けている。それは、何故だい?

MM:

誰にでも間違いはあります。それはなつきだけでなく、もちろんセブンさんにも。

特になつきは若く学生です。彼女には将来もあるし、夢もある。

そんな彼女の一度の間違いをいい大人が叩き続ける。

それが正しい事だと思いますか?

誰でも、やり直す事が出来るんです。

セブン:

最後の質問だよ。

そろそろ私は役割が変わったと思うんだ。

君との連携、議論は楽しかった。最初はどうかと思ったがね笑?

この先、私が常に動くという事をしなくとも、君は姫を守れるかい?

MM:

セブンさんの考えは理解出来ているつもりです。

これまでと何かが変わっても、変わらずなつきを守り続けます。

それに今は、守る者は他にもいます☺︎

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