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不撓不屈《ふとうふくつ》

OS25年10月9日月圏7番地

焼肉屋襲撃事件から二日たった今日、竜之佑は月に設置されたDOSの月本部に来ていた。

ここ月圏7番地は他に商業施設や政府の重要施設が立ち並んでいる番地でどこよりも発展している番地と言っていいほどだ。

そんな7番地の半分以上がDOS月本部の土地となっているのだがそんなに土地がいるのかと言われたら竜之佑自身も分からないところである。

月本部はもともと軍事基地だったと言う事もあって広大な滑走路までもついているのでとても広い。そんな広大な土地のせいでモノレールや車、自転車などを使って移動している人が大半で、そんな理由で使うなら飛行場として使えばいいのにと言う意見もあったが通らなかったらしい。

だが竜之佑はそんなことを言うが乗らなくても『不死鳥』の力を使えば飛べるのでそう言ったものに乗ることはほとんどない。

竜之佑は本部入り口からひとっ飛びで、ある施設に着く。

その施設は重大会議やあらゆる情報が毎日飛び交う会議の為だけに作られたと言ってもいい施設である。現に会議以外で使っているイメージが全くない。

この施設は屋上を含んだ計六階建ての建物である。

竜之佑は施設の入り口前で速度を落として、無事に着地し自動ドアを通り抜ける。

一階は受付に加え大きいカフェテリアとなっていて、そのカフェテリアのカウンター席で長く整えられている髪を頭の後ろで束ねている人が座っている。その人は本を片手で持ってコーヒーを嗜んでいる。

竜之佑はその人の元に行って、肩をポンポンと叩いてから隣の席に座る。

竜之佑は「お待たせ」と言って、店員さんに隣の人と全く同じにブレンドされたコーヒーを頼む。

その人は本の裏表紙から開いて、挟んでいた栞を先程まで読んでいたところに挟む。

その人は笑顔で竜之佑の方へ顔だけ向いて「お疲れ様」と一言だけ言う。

彼の名はアレス・ヴェルメーノ・ロスタロス。アレスは五年ほど前から竜之佑の専属秘書として一緒に働いている。専属秘書に就いた経緯は元々竜之佑とアレスは中学時代からの友達で先輩後輩関係ではあるものの仲がよく、それに加えて竜之佑の専属秘書として務まる人がなかなか居なかったと言うことからアレスを緊急招集したのである。それからと言うものアレスは竜之佑が苦手とする事務作業をメインに秘書として部屋の掃除や普段の生活を手伝っている。

アレスは髪型のせいで女性とよく間違われるが、全くもって男で筋トレも空き時間にちょくちょくしているので、男らしいがっしりとした身体である。

そんなアレスと今日の予定をざっくりとおさらいしてコーヒーを飲みきり会計を済ませ、今日は早速会議室に向かうためエレベーターホールへと向かう。

エレベーターを待っている間、今回の会議の内容を竜之佑とアレスは振り返る。

今回の会議では先日の焼肉屋襲撃事件の首謀者の服用したとみられる薬についてで、入手先や効果などの会議だそうだ。そのため犯人の男が拘束された状態で会議室に連れられて会議に参加するとのこと。

エレベーターが来たので乗り込み、乗ってから三十秒ほどして目的の会議室である特大会議室のある三階に辿り着いた。

三階の廊下を歩いていると特大会議室で会議を行う人のために設置された特別待合室(1)から出てくる男ら二人がいる。その二人は特大会議室の前まで来て竜之佑たちを見つけて足を止める。

竜之佑はその人たちが自身の知り合いだと知っているので早足で近づく。

竜之佑は右側に立っている三十代半ばで黒一色の服装で冬に近づいているからロングコートのような服を来ていて、サイドのラインに金色が入っていて胸元辺りにあたる所にはあらゆる称号がついた羽織りを着ている男に飛びつく。その男は慌てながらも受け入れるように竜之佑の頭を撫でる。

彼の名は麻乃圭介と言う男でここDOS月本部の本部長でもありDOSの全隊長でもある男だ。

そんな麻乃の右に立っている男は麻乃とほぼ同じような服装で羽織りには首元に白いモフモフが付いている羽織りを着ている。

その男は竜之佑のよくする行動にいつも通り呆れ頭を抱えている。

彼の名は尾崎真と言う男で麻乃の専属秘書兼SPである。尾崎は元軍人の父を持ち幼少期から筋トレさせられまくり、あらゆるスポーツを叩き込まれ、武術も黒帯まで昇格した超エリート人間でまさに護衛師として産まれて来たような人だ。そんな尾崎は創設当初からずっと麻乃の専属秘書である。

そんな仲睦まじいところに走って入ってきたアレスは、麻乃に対する無礼を抑えるために竜之佑をひっぺ剥がそうとするが、普段からトレーニングを欠かさない竜之佑との力の差で剥がすことが出来ない。それよりも竜之佑の離れたくない力ではなく掴まる力があまりにも強すぎて麻乃がだき潰れそうである。だが麻乃が一声かけると一瞬にして離れる。竜之佑は少し不服そうに頬を『むすー』と膨らませているが明らかに無礼だと判断しているアレスは竜之佑の頭に一発ゲンコツをお見舞いする。竜之佑はアレスからのゲンコツを食らって明らかに痛くないぐらいの強さでやられたのにも関わらず痛そうに頭を抱えている。

それから数秒ほど痛いと言いたげに演技して、竜之佑は楽しみきったらしくいつもの冷静な竜之佑に戻る。

竜之佑はなんで麻乃が居るのかと首を傾げて質問する。

麻乃もその質問に疑問で、竜之佑から話を聞いているうちに分かったのは、竜之佑たちのDOSメンバーに麻乃らが会議に参加すると言う話は回っていないようだ。

竜之佑たちは会議室前で立ち話をしてから五分ほどして、麻乃が「会議室で時間まで待っていよう」と切り出す。

竜之佑らは会議室へと入る。会議室には数名だけ室内の暖房が聞いた部屋で椅子に座って、今回の会議内容の確認をしている人たちが先客で居る。演題の方では司会者が資料の確認をしている。

すると、竜之佑らが入ってくると空気がピリッと冷たい空気感に変わり咄嗟に皆立ち上がる。そして一礼をする。

おそらく就いている部隊が竜之佑の一番隊や麻乃の本部長よりも下だからだろうと言うのと、よくニュースで話題になっている二人が揃っているからであろう。竜之佑と麻乃はニコリと笑顔を送り、その隣を落ち着いた感じでアレスと尾崎は歩く。そして竜之佑らは会議室の前の方の席に座る。

麻乃と竜之佑は席に付いて早々、今回の会議で使う資料に目を通す。

今回は資料が裏表A4で印刷された資料が全部で二枚用意されている。

一枚目は先日の焼肉屋襲撃事件についての資料で、犯人の個人情報や被害者の名前、被害状況などそして薬の流通先についてが事細かく書かれている。

二枚目にはその薬に関する資料である。どうやら今回の事件で新たに進展がようでびっしりと書かれている。

竜之佑は一通り資料を見て後ろに立っているアレスに資料を渡す。麻乃も見終わったらしく、後ろに立っている尾崎に資料を渡している。

アレスと尾崎は二人で話し合いながら資料の確認をしている。竜之佑と麻乃は今回の会議について話している。

竜之佑は二枚目の男から出てきた薬の成分について問う。

「今回の事件、加害者が飲んだとされる薬、あれは謎の黒いマントの人に渡されたと取り調べでそう言う証言があった。それから薬の効果によってかはまだ分かっていないんだが、巨大化に加え筋肉増強や歯の成長などが見られた。あれは薬によるものなのか?」

「おそらくとしか言えないぞ。」

「何でだ?」

「成分に関することは今回は全面的に関わったがそれは会議まで話すことを難く禁じられていてな、言えないんだ。」

「てことは、かなりの機密情報ってことか。それにそれがもしあの組織に繋がるものだったら。」

「もしそうだった場合かなりやばい。あの組織がもし関与していた場合はお前らを動かさなければならなくなるだろう。」

竜之佑は思い悩む表情で麻乃を横目に正面を見る。

もしあの組織が裏で手を回すようなことをしていた時、この星は消滅の一途を辿っている可能性が高い。それは薬の成分がどう言う結果であるかによる。結果がもし自分らでも解毒可能な簡易的な物であった場合は対処がしやすい。だが、外部の影響を受けないものだった場合それはこちらが不利になる。

竜之佑は今後のリスクについて考えていると、後ろのアレスと尾崎から資料が竜之佑と麻乃の手元に戻って来た。

四人は時間が来るまで最近はどれだけの戦果(せいせき)を挙げれているかの話をする。

竜之佑は最近の事件解決件数、麻乃はここ最近のデスクワークのスピード、アレスは竜之佑から押し付けられた仕事の量、そして尾崎は麻乃の部屋の掃除率などといった内容でまるで高校生四人が話している感じにほんわかした空気感であった。

そんな話をしていると会議の時間となったのと会議に出席する人が全員集まったようで司会者が会議を始める鐘を鳴らす。

最初の議題は資料の一つ目である先日の焼肉屋襲撃事件の捜査結果などである。

今回の会議では事件の加害者も参加することになっているので男は手錠をかけられた状態で警察に連れられて会議室の扉を開けて入ってくる。

男は設けられた椅子に手錠のせいでどさっと座らされる。そんな行動を目にしたお偉い様方は冷たい視線で彼を見る。そして彼に聞こえるのではと思う声量で蔑む発言をしている。そんなことをしているお偉い様方を見て竜之佑は呆れる。だがそんな中に一人だけ寛大な心で見守る男が居る。その男の名はウェストネール・カルロス・マインドーサである。よくニュースにもなっているがウェストネールは裁きは下すには下す。だが罪を行った人に罪の意識を持たせることが容易く出来るらしく、警察よりも事件が早く解決すると話題になっている。

そんなウェストネールが席を立って男の元に行く。ウェストネールは男の前に立ち、鍛え上げられた身体を男の視線より下に落とす。その行動を見ていた他のお偉い様方が口々に「やめてください!」「そんなことを罪人なんかにしなくていいです!」などヤジを飛ばす。一人の議員がウェストネールに近づいていく。それを見ていた竜之佑は即座に『不死鳥』を発動。羽を五枚ほど飛ばして議員の目の前に出現させる。その羽は燃えたぎり議員を燃やそうとする意思が見られる。議員は竜之佑の方を「なぜ止める!」と怒鳴りながら見る。だが竜之佑はそれに相反して羽とは真逆の反応を示している。羽は燃やそうとしてくるのに視線からは凍りつかせてくる、まさに両極端な状態である。そんな態度を示している竜之佑は口を開く。

「あなたはウェストネールさんの行いを目にしてないんですか。耳にしてないんですか。それで知らないと言い張るおつもりなら今からでも遅くないので病院の受診をオススメします。」

議員は震えながら自身の席に戻る。

竜之佑は議員が席に着くまで見守り、着いたのを見て『不死鳥』の力を解く。

竜之佑はいつもの表情へと戻るため一息付くとウェストネールがこちらを見て、ニコリと微笑む。竜之佑もそれに合してニコリと返す。

ウェストネールは男の方へ視線を戻して下から眺めるように見る。

「私はウェストネールと申します。あなたがどんな罪を犯したかは知りませんが、それで多くの人間が傷つきました。」

そう言って手錠で思い通りに動かない手をウェストネールは握る。その行動を見てまた議員が動きそうになったが竜之佑がきつい視線を送る。

ウェストネールは気にしない感じで続ける。ウェストネールは『赤い』目を瞑る。数秒してウェストネールは目を開く。その途端、目は『紅く』輝き出す。

ウェストネールは三十代を過ぎて真の力『アポロン』に目覚めて心を読めるようになったのである。だから事件解決で話題になっているのはそう言うことである。そんなウェストネールは男の過去を心を読んで見る。その結果、取り調べで語ったことと大差ない過去が見えたことにウェストネールは、涙してその事実を大声で言う。

お偉い様方は疑うような目であったがウェストネールの話を聞いてから、皆ウェストネールの思いに傾いていく。いわば同調圧力である。皆、席を立ち拍手をしている。

司会者は鐘を強めに鳴らして会議を仕切り直す。ウェストネールは立ち上がり自身の席に戻る。

司会者はウェストネールが席に着いたのを見て、竜之佑に今回の事件について話してくれと言われていたので、その指示に従って竜之佑は席を立って司会者の席より下に設置された演説台に向かい話出す。

竜之佑は演説台に立ち今回の事件について男のことを中心に話す。なぜやったのか、薬は誰から貰ったのか、薬を飲んでどうだったか、そして薬の副作用として何かあったかなど、徹底的に取り調べに行った内容を話す。その話には裏付けが出来ているので竜之佑は自身を持って話す。

それが終わり男は警察にまた連れられて帰っていった。皆男のことをジロジロと見ている。だが来る時とは打って変わって「まぁ許してやろ」と言わんばかりの目になっていた。

司会者は竜之佑に席に戻るよう指示する。竜之佑は再度指示に従って自身の席に戻る。

竜之佑が席に戻ったのを司会者は確認し、会議室に設置してあるモニターを降ろしてくる。モニターでは事件当時の防犯カメラを事細かく区分分けして話す。

最初は薬の使用時による身体の変化について話す。皆あらゆる仮説が飛び交っている。この中に答えがあったとしても誰も覚えちゃいないだろう。そして次に話したのが謎の黒いマントの人についてだ。

男の語った情報によって捜査は早く進みそうではあるが、『黒いマント』という情報だけで探してもヒットする人が山ほどいてなかなか見つからないだろう。それを分かっているのにも関わらず、正体が如何とか、店員の誰かではないかとか、竜之佑と麻乃にとってくだらなく思える会議をしている。なので二人は静観している。

二人は場合、こういった場では静観してより良い情報をとにかく取り込むタイプではあるのだが、知っている情報しか耳に入って来ないので、そのまま反対の耳から抜いておく。それを理解しているアレスと尾崎も静観体制で腕を組んで立っている。

その話がようやく終わったと思うと突然、司会者が「これからは事前に残るようにと言った方だけ会議室に残ってください。」と言う。

事前に言われていた人たちは自身の席で一息ついている。事前に帰るよう言われていた人たちは退出していく。事前に指示を受けていなかった議員たちが慌てて司会者に『残る』か『残らない』かを訊いている。竜之佑たちも訊いていなかったのだが、ウェストネールが残るよう一言入れてくれたから自身の席で待つ。

竜之佑は慌てる議員たちを見て、訊いていない時点で残る可能性は低いだろうなと憐れみの目で見つめる。

関係者以外の議員たちが立ち去ったのを見て、司会者は会議を仕切り直す。

まず、資料が全員に渡される。

その資料にはこう書いてあった。

「薬の解明が完了した。」

と書いてあった。

竜之佑は思わずその資料を見て立ち上がる。

竜之佑は机を思い切り叩きつけ、麻乃に向かって「どうゆうことだ、これは!」と問いただす。

麻乃は竜之佑の行動に驚いて目を丸くする。だがすぐにいつもの冷静な顔に戻り、立ち上がっている竜之佑の両肩をポンポンとやさしく叩く。そして麻乃は首を横に振って「落ち着け」とアイコンタクトを図る。

その意図を読み取ったようで竜之佑はそれを見て、苛立ちを隠す気『0』で舌打ちして席にどさっと座り込む。

司会者が全員が黙るのを見計らって話し始める。

「まず最初に、先日上がった薬の成分の解明についてなのですが責任者の方に話してもらいます。」

そう司会者が言うと会議室の扉の近くにいつの間にか座っていた白衣を着た三人の化学者が演台に向かって出てくる。

化学者たちの一人は演台へ行きパソコンを開き、その演台に設けられてある接続穴にコードを、そしてそのコードをパソコンに接続する。もう二人は裏手に周り、何やら誰かと話している様子である。話し終わったらしく、会議室の上からステージに付いてる巨大なモニターをボタン一つで上から降ろしてくる。そのモニターには先程繋いでいたパソコンが映し出されていて、マウスをあちこちに動かして動作確認をしている。動作確認が出来たらしくて演台にいる人がマイクに向かって話し始める。

「今回、私たちは政府からの要請で加害者の男が飲んだ薬の解析を致しました。その結果、薬の成分にここOSの核と同じエネルギー成分と思われる物質が体内に消化されていないものを検出しました。」

それを聞いた瞬間、竜之佑は席を立ち上がり研究者たちに向けて罵声を挙げる。

「ふざけるな!そんな結果誰が認めるんだよ!今回の調査が政府からの要請だとしてもそれを元に捜査が出来るわけがない。もっとマシな解答はないんか!大体、OSの核と同じエネルギー体が見つかったとしてもそれをどうやって薬に取り込む?そしてどうやって人間に害なく飲ませるんだよ!」

そう怒鳴ると隣にいた麻乃が机に置いてある水のペットボトルを掴んで立ち上がり、竜之佑の肩に触れて首を横に振る。

竜之佑は露骨に舌打ちをして、麻乃からペットボトルを受け取り座る。それと同時に麻乃も一緒に座る。

麻乃は竜之佑に「落ち着け」と一言だけ言う。

それに反抗する気だったらしく前のめりになった竜之佑よりも早く、化学者が口を開く。

「確かに、竜之佑さんが言うにあまりにも確証が薄く推測に近い結果ではあります。ですが、化学者として言えるのは可能性の話をするのでなく、確証がある話をすることを第一優先にしています。と、言うことから分かるように理論が合致するのはこれしかないのです。」

竜之佑は化学者の言っていることがあまりにも理論に基づいていなかったが、化学者がそれしかないと言っているのだから確証はあるのだろう。それに元から自分らじゃ掴めなかったものを掴めた可能性があるのだ。

そう思い、竜之佑は席を立って謝罪する。

でも引っかかることがあったので竜之佑は化学者に再度質問する。

「なぁ、その話が正しかった場合政府や星民《せいみん》への被害が出る可能性は。それにその力を利用することが出来るのか。」

化学者は考えこむ感じに黙る。竜之佑は「答えろ!」と頭ごなしに言おうとした。でもそんなことしたら先ほどの謝罪の意味がなくなると瞬時に判断し、竜之佑は「答えてくれ」と言う。それと同時に竜之佑は化学者を信頼する強い眼差しを送る。

化学者は深呼吸をしてからマイク越しで話す。

「あくまでこれも可能性の話なのですが、大混乱に世界は堕ちるでしょう。それから質問にもあったようにこの薬の成分の利用ですが、出来ると考えます。更に薬の成分として種族、年齢、性別関係なく多くのDNAが検出されました。このことから薬を作る過程で多種多様な人から血をもらい、そこに流れる『真の力』の成分を抜き取り薬の成分として含ませることが出来るのであればその可能性は跳ね上がるかと。」

「それって薬の作る過程であらゆる犠牲が発生していると言うことになるぞ。」

「えぇ。だからこそ敵は捕虜を利用、もしくは難民を利用して『真の力』を奪い取っているかと。」

竜之佑は化学者の言っていることが正しいならと思い一つの仮説が立つ。捕虜の利用している場合、ある団体がそれに当てはまる可能性が上がる。

化学者はさらに深い呼吸をして話を続ける。

「さらにDNAを利用しているなら生きている人のDNAを利用していないと『真の力』を使うことは出来ません。」

「つまりなんだ、今回のように筋肉の増強する能力が使われたがそれを持っていた人はまだ生きているってことか。だからその人の捜索をするってこと。更に製造元の特定ってことか。」

「話が早いようで何よりです。そのために皆さんだけは残っていただきました。それが今回の私たちの任務です。」

任務という言葉に引っかかりはするが製造元と被害者たちが生きていることが分かれば、可能性と言う話では無くなり確実な物となる。それにこの話をしているのはDOS関係者と警察、消防、そして自衛隊だけで頭が硬い政府関係者は全くいないから捜査は迅速に進むだろう。今の政府のお硬い方々がいたら捜査を止めらていただろう。

竜之佑は化学者と向き合い姿勢を正して宣言する。

「我々、DOSはその可能性の確立のため捜査を進めます。警察、消防、自衛隊と協力を要請します。どうか一緒に捜査をお願いします。これは時間との勝負でもあります。被害者の救出の為協力をお願いします。」

化学者はその返答を待っていたらしくニコリと笑い期待の眼差しとともに竜之佑を見る。

「こちらからもお願いします。これだけの力があれば大きな力が掛かって見つかると思います。よろしくお願いします。」

 



会議は無事に終わりせっせと片付けが行われている。

その片付けを横目に竜之佑と麻乃たち四人は自席で用意されたペットボトルの水を手に話している。

今回の任務は長期的な捜査となることから事前に準備を積んでおく必要がある。

その為にも数日後に迫っているDOS入団試験がどれだけ大事になってくるかが身に沁みて思う。

竜之佑は会議中に思ったことを話す。

「なぁ今回の任務、捜査の進めていく中で『ブラックユニバース』が絡んでくる気がする。薬を飲ませるような強引なやり方、それに捕虜を取るようなやり方、捜査中に任務阻止のために介入してくる気がしてならない。」

『ブラックユニバース』

この団体はユラ・アータルが亡くなったと言うニュースから三年後のクリスマス、12月25日に出来た団体。

簡単に言うと政府から抹殺命令が出ている指名手配犯しかいない極悪犯罪組織である。あの時のクリスマスは誰もが災厄だと証すほど酷い話であった。


あの日は雪がシンシンとOS中に降る日であった。

そんな夜、ブラックユニバースのメンバーの幹部十人が今は解体されたが当時はとても重要でだった政府施設を強襲。政府関係者を百人近く殺害し、屋上にてサーチライトに当てられる中、組織の長の一人が政府関係者の一人の首を持ち上げて宣言した。

「我々ブラックユニバースはこの糞みたいな世界の考え方や政府の考え方とは違うやり方で世界を統一し戦争、差別がない平等な世界を創る。この世界を変えると今ここに宣言する。」

その後、数分後跡形もなくブラックユニバースメンバーは消えたという事件が起きた。

これは政府側もひた隠しにすることをやめ徹底抗戦の体制を取ったことで有名となっている。更に、実行犯である十人はいずれも未成年であるだろうと言われている。


そんなブラックユニバースが介入してくる可能性が今回非常に高い。

強引さ、傲慢さ、躊躇いの無さ、それらを鑑みてあり得る話である。そうなってくると戦闘も視野に入れておく必要になる。だが指名手配をされてはいるが顔写真が存在することはなく捕獲は困難だろう。

麻乃はその話を受けてDOS内のチーム再編成をしようと動くらしく尾崎に準備をするように言っている。

尾崎はメモ帳を取り出し、言われた事をメモりすぐに取り掛かるようで本部の誰かに無線電話(この世界はアイコミュで電話が出来る)をする為、竜之佑らから離れる。

その瞬間を待っていた様子の麻乃はこの場にいる誰もが聞こえるぐらいの大きさのため息をこぼす。

「もし仮にブラックユニバースが介入してくることがあれば、操作は困難になるなぁ。」

「ですね。このタイミングで来た場合は準備が出来てないんで厳しいかと。」

「そうだな。入団試験が終わってからにしてほしいぐらいだ。」

「入団試験に入ってきたらどうする?そんなことがあったら取り返しがつかない事態になるぞ。」

「そうなったらお前が止めてくれ。俺らじゃどうしようもない。」

「そうですね。頼んだよ、竜之佑」

そう言ってアレスは竜之佑の肩にポンと手を乗せる。期待する気持ちが高いのは分からなくはない。純粋な戦闘力だけで測ったら竜之佑がDOS随一なのだから仕方ない。それにこの事態を知っているのは今のところ竜之佑一人である。

竜之佑は諦めて二人からの期待を受け入れる。

そうしているとちょうど電話が終わったらしく尾崎が帰ってくる。

小走りで帰ってくるので竜之佑は首を傾げて訊く。

「どうした?」

「竜之佑、いい報告だ。新装備の調節が完了したとのこと。今すぐ来てくれたら最終調整出来る、だそうだ。」

竜之佑は尾崎の言ったことに感極まって力み過ぎたらしく座っていた椅子を吹き飛ばしてしまう。

麻乃とアレスはその光景を見て重いため息を溢してしまう。それを見ていた竜之佑と尾崎は首を傾げてきょとんとした顔で二人を見る。



話の区切りをつけて四人は次の仕事へ向かうため、会議室を後にする。

四人はビルのエントランスまでは一緒で麻乃と尾崎は地下駐車場に停めた車で本部に移動、アレスも地下駐車場に停めたバイクで本部へ、竜之佑は『真の力』である『不死鳥』を使って本部まで飛んで向かうことになった。

建物を出たのは皆ほぼ同じなのだが圧倒的に直線で進むので竜之佑が一番に本部に着いた。

本部に入ってエントランスの先に行き、エレベーターに乗る。エレベーターは竜之佑が乗ったのを確認すると、コントロールボタンの下から普段は開くはずもないパネルが動き出し、そのパネルが開くと綺麗に薄く折り畳まれたキーボードが機会音を立てずに出てきた。

竜之佑はキーボードで感覚的に覚えた『27』文字のパスワードを入れる。

入力が確認できたようでキーボードがまた綺麗に折り畳まれて仕舞われていく。キーボードが仕舞われた後、同じ場所から小さなパットが出てきて人の手形を取るようナビゲートする。

竜之佑はその手形に合わせて自分の右手をそのパットの上に乗せる。するとパットはすぐさまスキャンを始める。

スキャンは五秒足らずで終わりパットも仕舞われていく。

そうするとようやく行き先が書いたボタンがパネルから一個ずつ出てくる。

本部の地下はこの月本部のどの施設よりも地下深くまで行けて、最下層はなんと四十階まである。因みに四十階は麻乃団長がよく居る団長室や各隊の長が普段いる階なので一般隊員からしたら事実三十九階までなのだが、それでも広い。竜之佑の場合は第一部隊隊長と言うこともあって四十階に隊長室と第一隊室があるので竜之佑自身は地下四十階立てと思える。

だが本日の目的は新装備の調節が出来たとの尾崎の情報があったので装備開発などをする工房がある十二階を目指す。なので『12』と書いてあるボタンを押す。すると『12』と言うボタンは橙色に光りエレベーターは十二階に向かって動き出す。

エレベーターは十二階できちんと止まりドアが開く。

ドアが開くと工房へ直結しているので鉄臭さと男臭さ、そして炙ったような何かを燃やしたような焦げ臭さなどが工房内に充満している。

その匂いを竜之佑は鼻で感じ取り『いつも通り』と心の中で安堵の気持ちが湧いた。

工房をテクテクと歩いていると目的の人を見つけて竜之佑は駆けつける。どおやら竜之佑を待っていたらしくタバコを片手にパットを見ている。

竜之佑はその男に近づいていくと男は気づいたようでタバコの火をすぐさま灰皿で消し、パットを小さな手帳ぐらいに折りたたみズボンの後ろポケットに入れて、竜之佑に向かって敬礼をする。

竜之佑は直っていいぞと言わんばかりに右手で合図を送る。男はすぐさま直り用意していた新装備のところまで案内するそうでその部屋まで歩き出す。竜之佑はその後ろから足取りを合わせてついていく。

着いた先は小さな囲まれた部屋で白一色に染められた部屋で他の色がない。

中に入るとそこには明らかに誰が見てもブレスレットが置いてある。周りと見回すと失敗作も山のようにあるがそのブレスレットだけは完成品ですと、ブレスレット自身が語りかけてくるように部屋の明かりに照らされている。

竜之佑は思っていた物とは別物すぎて唖然していた。

「これは一体なんだ。新装備と言われて期待してみたらブレスレットって、ふざけてるんですか。」

男はその反応に笑う。どうやら期待通りの反応だったようで面白おかしく竜之佑を笑う。

「ハハハ、それはそうだろうな。これはブレスレット型の装備品でな、試しに付けてみてくれ。」

男はブレスレット型の装備品を手にして竜之佑に渡す。竜之佑は言われるがままにそのブレスレット型の装備品を右手首につける。すると手首に付けた瞬間、手首に完全固定されて前後に動かない。もちろん抜けもしない。

どうやらブレスレットは付けた瞬間、竜之佑の生態に反応したようで、起動音とともに血のような赤い色の光りをブレスレット全体に走る。

それを感心して見ていると男が話し出す。

「そいつは装着時、そのように締め付け滅多には外れない仕組みになっている。竜之佑、今度は手の甲の方を見てほしい。」

そう言われて手の甲の方を向けると付けた時にはなかった投映機能があるらしくパネルが出てきている。

「そのパネルは使用者が装着した事を確認した段階で使用者の情報を取り込むのと同時に、ブレスレットに格納されている投映システムで動き出す。そのパネルではあらゆる操作が可能だ。試しにアタックモードと書いてあるやつを選択してくれ。」

竜之佑は言われた通りにアタックモードを選択してパネルで選択する。

するとブレスレットから黒い物体が生えてくる。その物体は竜之佑の身体をみるみるうちに纏わりついてくる。

「おいおいおいおい、これなんだよ!」

「ハハハ、安心しろ。それはアタックモードの機能だ。最初は慣れないだろうがとりあえずは気にするな。」

そう言われるが安心しようがないぞと思い、目を瞑る。黒い物体はとうとう全身にピッタリとくっつく。だが身体に張り付いている感覚が全くと言っていいほどなく、竜之佑は思わず口をあんぐりと開けてながら目を見開く。

男は少し笑ってからアタックモードの説明をする。

「驚いただろう。このアタックモードはブレスレット本体に1mmにも満たないぐらいに超圧縮された超硬度な物体を使った最新技術を注ぎ込んだ代物で、見てわかる通り格納式の『鎧』だ。この装備には小さいファンを格納されていて熱い環境だったり寒い環境だったりと、どんな環境下でも使える。更に、使用者の情報をある程度入れているで、もちろん竜之佑好みの見た目にも出来る。この機能さえあれば戦いそのものの環境が変わし、時代がまた動くだろうな。」

男は竜之佑に向かって自信満々に腕を組んで良さを伝えている。

「すごいな、このブレスレット。気になるのだが、この物質はどれくらいの強さまで耐えられるんだ。」

「う〜ん……。おそらくだがダイナマイトの爆発を直接受けるのを二十回は確実に耐えるだろう。薄く圧縮してあるから脆いように思うが強度も圧縮してあるからな。そう簡単に人間様の皮膚を傷つけることは出来ないだろうよ。」

男はそう説明してから「そして」と続けようとした時、工房内に戦闘配備を知らせる警報アラートが響く。

竜之佑と男は真上を見上げて力強い目で睨む。

竜之佑はこうしちゃいられないと少し慌てながら部屋の扉を開ける。男は竜之佑を引き止めようと「待て」と声をかける。竜之佑はその声に気づいて男の振り返った。男は少しの沈黙の後、話し出した。

「……一つ、お前は無理しがちだ。帰ってきたら状態を見たいから寄ってくれ。後は存分に使ってこい。」

そう言って男は竜之佑に期待する眼差しで敬礼をする。竜之佑も敬礼をして走って出ていく。


 

男は敬礼して竜之佑を見送り、敬礼から直り一つだけ言わなかったことを後悔した。

「あのシステムのことについて言わなかったが、あいつならいずれ気づくだろうな。」

そうやって一人で呟いた。

 


 

竜之佑は走って工房に接続しているエレベーターに乗り、地下十階を目指す。

八階から十階にらコントロールセンターがあり、そのうちの十階には一番隊から三番隊の特務隊の階である。緊急時はここで指令を隊員たちに支給されたインカムを通じて連絡を送っている。

その十階に到着すると騒がしい音がドアが開いた瞬間にエレベーター内まで響き渡る。

竜之佑は指令隊員のもとに駆けつける。それに気づいたようで皆一瞬だけ竜之佑に敬礼をして仕事に戻る。

「今、どう言う状況だ。」

そう竜之佑が問うと一人の指令隊員が話し出す。

「先ほど火星圏二番地と土星圏六番地の圏境にて泥男が暴れているとの情報が入りました。今対応に向かわせています。」

「対応している隊は。」

「四番隊です。」

「その他の隊にも連絡は。」

「対応するように連絡は入れました。ですが二番隊は圏境のトンネルを崩されてトンネルにて立ち往生しています。現在その対応中。近くでパトロール中だった七番隊、八番隊は救助作業中。他隊は別任務中で対応が不可です。」

竜之佑は指令隊員の淡々とした感じに少し関心を覚える。竜之佑は指令隊員の言ったことを噛み砕きながら考える。この状況だと動ける者が少ない。二番隊は向かったはいいがトンネルが破壊されて立ち往生。三番隊はおそらく太陽での任務中で他地域への移動が出来ないだろう。五番隊はどうしたと疑問に思った竜之佑は指令隊員に訊いた。

「五番隊は今何をしている。」

「五番隊は例の件で捜査を続けているので無理かと。」

竜之佑はその返答に少し腹が立ち誰にも聞こえない大きさで舌打ちをこぼす。

竜之佑はさらに考えこむ。この状況では誰も四番隊の援護が出来ない。一番隊の隊員たちは今日は個人個人で各地をバラバラに動いているので無理だろ。唯一容易に動けるのはおそらく竜之佑本人だけだろう。本来、違う部隊がどうにか行かせるのが本来のセオリーとかなんだろうがそんな生ぬるいことを言っていたら終わりな気がする。

竜之佑は思い切って指令隊員に告げる。

「俺が行く。その方が早いだろ。」

指令隊員たちは竜之佑のその解答に驚き目を丸くして答える。

「それはダメです。この本部に残っている隊員は貴方だけなんですよ。ここをおろそかにするだけは絶対にあってはいけません。」

「だが今動けるのは俺だけだ。こうしている間も民は苦しめられている。星民を安心させるのが俺らの目的だ。それでもなんだ、見て見ぬふりでもしろと。」

そう竜之佑が正すと指令隊員は苦い物を食べたかのような顔になって竜之佑と真正面から見合った。

「どうなっても知りませんよ。」

「大丈夫だ。ここに一人だけ呼んでおく。あとはそいつに任せろ。」

「ほんと、あんたは自由人だ。それでも……。それでも頼りにしてますよ。」

そう告げて苦い顔から戻り、竜之佑に敬礼をする。他の指令隊員たちも竜之佑に向かって敬礼した。

「あとはこちらの指示に従ってください。発射装置は準備させています。って言ってもいつも指示なんて聞いちゃいませんけどね。途中まではお供させていただきますからね。」

そう言われて竜之佑は痛いところを突かれたので、竜之佑も苦い物を食べた時みたいになる。

その反応に指令隊員は鼻で笑い竜之佑を送り出す。

竜之佑は走ってエレベーターに向かって『30』と書いてあるボタンを押す。

エレベーターは緊急時ということもあって早く降りていく。

エレベーターは無事三十階に着いた。

この三十階には任務の時にだけ使うことが出来る『超大型全方位発射装置』が備え付けられており、これを使えばどんな遠くの任務でも、これを使って最短で現場に飛んで行ける代物だ。この装置を使う時、発射される者は発射装置に接続されたミサイルのようなポットに入り発射される。

これを作るのにあたって遠心力を使用するために巨大な空間が必要だった為に、三十階とされている場所は実際は三十五階にあたり三十階から三十五階は発射装置がある階となっている。

だがこの装置のデメリットとしては飛ぶ力、つまり『真の力』として飛行能力が無かったら使えないのである。なので竜之佑は『不死鳥』を持っているので使えるのである。

発射装置は準備が出来たらしく火星方面にまっすぐ飛べるように調整がされている。

竜之佑は早速、ポット内に乗り込む。

すると乗り込んだことを認識したようで、ポットの扉が閉まる。それと同時に先ほどまで黒かったポットが外の景色が見えるように透明ガラスのようになり、右前方にはどうゆう技術で見えているのか分からないが先程の指令隊員の顔がライブで映し出された。

「いいか、竜之佑。お前はこれから火星方面に飛ばされる細かい調整は竜之佑がやってくれ。あとはいつも通りに。」

指令隊員はそれだけ言い渡してぷつんと消える。

竜之佑は発射準備が出来たことを外の作業員にハンドサインを送った。それが見えたらしく作業員は発射ボタンを長押しした。そして発射カウントが場内に響く。

インカムでは指令隊員が話している。

「火星方面発射口準備完了。隔壁の開放完了。発射位置調整完了。発射準備完了。超電圧発射装置回転率上昇中。発射まで残り十秒。9……8……7……6……5……4……3……2……1……」

そしてついに…。

「発射!!」

発射の声が聞こえた瞬間、後ろからけたたましい音を立てて発射装置がポットを勢いよく押し出す。

ポットは地下に設置された管を勢いよく通っていく。発射してから二十秒ほどすると白く輝く光が見え出す。すると、インカムでは今度は発射の時とは違うカウントを始めている。

「発射口まで残り十秒。竜之佑、真の力の用意を。」

竜之佑は指示通りに真の力『不死鳥』を顕現する。

そうしていると発射口に着いた瞬間ポットは外に勢いよく飛び出す。それと同時にポット前方に人一人が通れるぐらいの脱出口が開く。その瞬間、椅子ごと竜之佑は外に放り出された。竜之佑はその瞬間、自身の背中から赤く燃えたぎる翼を広げる。

竜之佑は翼を大きく羽ばたかせ、目的の火星圏二番地に全速力で飛んでいく。


 

 



その頃、火星圏二番地では泥男が大暴れしている。

四番隊は苦戦を強いられていた。何せ交戦しているのは火星圏の中でも一番と言っていいほど発展が進んだ街でショッピングモールが立ち並びマンションや高層ビルなど人が如何にも密集しそうな街となっていて、住民を庇いながらの戦闘だからである。街の人たちは七番隊と八番隊が進めてくれたことでなんとかなった。それでも暴れている奴が厄介で『泥使い』なので、地面に足をつけたら最後で底なし沼らしく、泥に足を取られた瞬間ありえない速さで一瞬で飲み込まれていく。それに加え、暴れた場所に飛び散った泥も飲み込む力があるらしく足場がどんどんと消えていく始末で常に移動し続けるしかない。

それをどうにかしようと四番隊隊長の『松嶋陽菜』たった一人で泥人間の気を惹きつけている。

他の四番隊隊員は隊長のサポートに徹しているのと、もう泥に飲み込まれてしまい戻って来れない状態である。

陽菜は属性を使い分ける弓使いで近距離戦に不向きでかなり相手が悪い。隊員はそれのカバーに回っているのだが、相手は泥に飲み込んだ物を自在に操れて簡単に出し入れが出来るようで、飲み込んだ瓦礫や車を投げつけてくる。それをなんとか隊員たちが切り崩して陽菜が泥に効くであろう炎の矢や水の矢を当てるのだが全く効かない上に攻撃回数もなかなか当てられない。

そうして交戦を続けていると指令部から動きがあったらしくインカムから起動音が聞こえ指令隊員から指令が届く。

「こちら月本部。そちらは第四部隊隊長松嶋さんで合ってますか。」

松嶋は弓を持って再び距離を取って弓を弾きながらインカムに向かって話す。

「こちら松嶋です。良かった通信が取れて。応援はあるでしょうか。ていうか早く欲しいぐらいです。」

「今、一人だけ向かっているところです。」

「一人!?……冗談はよしてください。何せこんな相手一人来たところで片付けられるような敵じゃないですって。」

陽菜は指令隊員との話に夢中になっていたため、敵から意識が外れておりその隙を突かれて、泥男はこれでもかと言うほどに自信の泥の体をデカくして四番隊隊員全てを見下してくる。

「これでお前らは俺の身体の一部となる。じゃあな若い隊員さんたちよ!」

泥男はそう言って、上に向かって高く飛び上がりぼたぼたと泥を垂らしながら飛びかかってくる。

その瞬間、上空から赤い光線が降り注いできた。その赤い光線は熱く光り、まるで太陽が目の前を通過したような熱い痛みが走った。

それをまともに受けた泥男は「熱い熱い熱い」と身を抱えて叫ぶ。

すると泥が赤く熱い光線を受けたことでどんどんと固まっていく。まるで泥を放置したかのように固まっていく。

陽菜が関心して見ているとインカムに聞き馴染みがある憧れの声が聞こえてきた。

「戦いとは相手に合わせて戦い方を変える。そして決して目を逸らしてはいけない。それは鉄則だぞ!」

その声は確実に陽菜に向けた言葉で力強い信頼できる声である。その声が聞こえた瞬間、そこにいると分かるかのように陽菜は上空を見上げる。見上げるとそこには憧れの存在が空高く翼を広げて居る。

「え〜聞こえるか?こちらは特務隊一番隊隊長、佐久本竜之佑だ!」

その声がした瞬間、陽菜の体には鳥肌が全身に立ち安堵の気持ちが一気に押し寄せてきた。おそらくかなりの笑顔になっていたらしい、竜之佑がインカム越しでツッコんでいる声が聞こえてくる。

竜之佑は固まった男に向かって急降下して足蹴りをお見舞いした。男はモロに蹴りを受けて吹き飛んでいく。

竜之佑は蹴りを入れてからすぐ体制を作って炎の翼で上手く着地する。

陽菜は着地した竜之佑(憧れ)のところに全速力で向かう。陽菜は竜之佑のところに行って目をキラキラと輝かした。竜之佑はその輝きに驚いた様子で陽菜のことを見てニコリと微笑んだ。

「よくここまで耐えてくれた。あとは俺がなんとかしよう。」

「いえ、私もやります。」

「なんだっけ、一人増えたところで無理だってことだっけ。」

そうやって竜之佑は先程の陽菜の発言のこと揶揄う。陽菜は痛いところを見事に貫かれたようでつい「うっ」と何かが刺さってしまったような声が漏れた。竜之佑はクスクスと笑い続ける。

「図星って感じだな。じゃあ俺はその言葉に甘えるよ。実際一人で泥人間を相手には出来ない。協力、よろしく頼むよ。」

松嶋はその答えに驚いたのと、同時に憧れに頼まれたのが嬉しくて堪らなくなる。

「分かりました。幾らでも私の言葉に甘えてください!」

「それは控えておくよ。」

そう言っていると泥人間がまたドロドロになって復活して来る。どうやらかなりお怒りなご様子で泥や瓦礫などをあちこちに撒き散らしている。

「他の四番隊はサポートを、俺らの援護を頼む。これは総力戦だ。よろしく頼む。」

そう言って竜之佑はいつも通り左手で刀の鞘を抑えようと思った瞬間、肝心な刀を忘れたことに気付いた。通りでなんか足らないと思う。竜之佑は少し焦ったがブレスレットに何かあるのではと思った。

竜之佑はブレスレットをいじっているとある項目に目がいく。それはアタックモードの項目に『モード変換』と書いてあるものを見つけて竜之佑は迷わず押す。

すると、欲しかった刀が空間を歪ませて急に出てきた。もちろん刀は本物で嘘偽りもないものである。どういう原理で届いたかは分からないがなんとか闘えそうだ。その他にも身体にも変化があって背中にはいつも身に纏っている赤いマントが着く。更にいつもの竜之佑が身につけている服が鎧として変わる。

松嶋もそれに気づいたようで口元を上向きに微笑む。

「それではあの泥男をやろうか。」

「はい!」

陽菜は竜之佑にいい返事を返してここのどこよりも高い場所に行き、弓を引いていつでも放てるようにした。

竜之佑も後ろに左足を下げて刀の柄に右手を添えた。そして思い切り踏み込んで泥男の真下に潜り込む。その勢いは凄まじく地面が円状に割れ目が出来るほどだ。竜之佑は真下に潜り込んだ瞬間、迷わず刀を上に向かって振う。

皆様、こんにちは♪またはこんばんは♪

お久しぶりです、小説家の入谷です。

今回は本書を読んでくださり誠にありがとうございます。

一話の投稿からかなりの期間を空けてしまい大変お待たせしてしまって、すみません。

ですが、今こうやって投稿出来ること、とても嬉しく思います♪


今度の投稿がいつ出来るかは分かりませんが、また長くなるかもしれませんが、頑張って執筆するので長い目で待っていてください。

それではまた次回!

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