絢爛豪華《けんらんごうか》
2705年
政府は『宇宙にはまだ有限資源がたくさんある。ならそれを使おうではないか』と考え、宇宙開発を例年よりも早く進ませた。
その結果、火星、月、木星に地球と同じ様に星に住む生命体を発見した。
この大発見から翌年2706年、四つの星で共同平和同盟が結ばれ、様々な食事や文化、人種などが地球や他の星に宇宙エレベーターや宇宙船を通して行き来するようになった。
この一件から数百年と数ヶ月が経ち共同平和同盟が過去の産物になって来ていたある日のこと、事件は突然起きた。
月には二年ほど前に作られた全ての星の活動状況を観測、記録する観測基地があった。
そこに勤めている一人の女性が地球で言うところの優雅なティータイムを楽しんでいたころ、月の観測基地で妙な現象があらゆる星で、同時多発していると他の観測基地から通信が入ってきた。
その通信をティータイムを楽しんでいた女性は受け取り、ティーカップを机に置き早速その現象の解析を始めた。
数時間後、AIの力も借りて人の力では一週間ほど掛かるであろう解析結果が出た。
結果、自然現象の一種でそれが過剰に観測機に反応したのでは、とAIそして研究者全員で出した結果だった。
現にここ最近に観測機のメンテナンスを行なったと言う話を聞いていない。
この結果を受けて安心した研究者は、政府に向けて解析結果の書いてあるレポートを即座に送った。
このとき誰もが安心しきっていた。だがこの結果が後に起こる事件解決に遅れた原因となってしまう。それも誰も知らなかった。
その時は突然で、この現象が起きてからちょうど二日ほど経ったころであった。
昨日、観測基地ではモニターごしで自然現象のもととなる核(地震で言うところの震源地のこと)を発見した研究者たちは付きっきりで常に観測していた。その核はゆっくりとどこかに向かって進んでいたのだが、今日急に忽然と塵も痕跡も残らず消えたのだ。
研究者は最悪の事態を考えて血眼になって核の所在を探った。
捜索開始から半日と数時間、研究施設のある月から遥か遠くにある太陽系の真ん中と言われる太陽の近くに核を発見した。だが昨日と違って周りから謎のモヤの様な物を吸収している。モニター越しではあるものの、そのモヤははっきりと見える。
研究者はモヤの正体を探るべく、寝る間も惜しんで調査を続けた。
発生から三日が経ち四日目に突入しようとしていた頃、モヤの正体を掴めないまま核は謎のモヤを吸収するのを止めて、発生初日とは比べ物にならないほどに核は大きくなっていた。
核は大きくなっただけで以前みたいに忽然と姿が消えたりする様子が全くない。そのはずだったのだが半日が経って地球の東半球では夕日が見える頃、事態は一変した。
なんと核が白い閃光とともに激しい爆発音と大気を揺らすほどの衝撃が太陽系全土を襲った。
それをもろに受けた研究者たちは目を瞑り衝撃を抑えるため、地面に伏せた。
衝撃と光が収まったと思い目を開けると、核は塵一つ残さず太陽の近くから消えていた。
研究者たちは驚く間も無く急いで核の所在を追った。だがあの一瞬にして核は完全に消えていた。そしてあれほどの爆発と衝撃があったのにも関わらず太陽系の星々が変形していたりしていない。
だが、衝撃は確かなものだったようで観測基地の窓ガラスや壁はボロボロに壊れている。
そして辺り一面はかなりの地獄絵図で、衝撃波のせいで飛んできた破片にやられて無重力空間に浮いている遺体が無数にある。それに加え、周辺機器は跡形もなく破壊され機能する感じが全くない。その割には酸素供給システムはギリギリ生きているようである。
研究者たちは生き残った人だけで脱出をするため、ここから一番近い地球に救難信号を送り、空の酸素ボンベに酸素供給システムを使って酸素マスクを人数分作り、装着して救援を待つ事にした。ただ待つだけだと時間の無駄と思った数人の研究者は生きているシステムや機器がないか懐中電灯を持ち合わせて団体で無重力空間を移動する。
捜索の結果、一つだけ電源が入る生き残っているパソコンがあった。
それを使って核の捜索と周辺の異常がないか生き残った研究者たちで知恵を絞って捜索した。調査していると世界の常識をもひっくり返すほどの驚きのデータが先程の一瞬で出ていることに一人の研究者が気づいた。このデータを今すぐにでも送らないと取り返しのつかない事態へと発展してしまう可能性が高い。その時、外でボロボロになって床なのかも分からない床が揺れるほどの音が響いてきた。
研究者の一人が音を正確に聞き取っていたようで、瓦礫を避けながら音がしてきた方が見える窓に近づいていく。その瞬間、壁を壊してくる物体が突っ込んできた。
その物体は赤くバチバチと音を立てて燃えていて、研究者たちにみるみると近づいてくる。
音がする方に近づいていた研究者は燃える物体に飲み込まれて全身が一瞬にして塵と化した。
研究者たちは急いで突っ込んできた物体と反対方向に逃げようとしたが物体の進む速さと暑さに負け、全員炎の中へと飲み込まれてしまった。
その物体は全員を飲み込んだ後、完全に止まった。
すると、あらゆる方向から観測基地に向かって物体が突っ込んでくる。
三時間後、観測基地があったとは思えないほど跡形もなく消えていた。
その死の現場にきた救援要請があったので来た救急隊はその現場の現状を伝えるべく、政府に連絡を一本入れようとした。
だがその救急隊も燃える物体の近くを行き過ぎて、帰ってくる事はなかった。しかし救急隊の千分の一秒の差でなんとか連絡は送れて、このおかげもあって事態は早く解決へと進んだ。
その結果が出たのはこの事件から二日後だった。
この頃、地球では東南半球全土が消えて火星の様な真っ赤な土地と月の白い大地、真っ青な海王星らしき土地など太陽系では見覚えのある土地がくっついる。それについて生きている人たちの中ではSNSを通して『世界の終焉』を説いている。
そんな中、政府はこの一連の事件について一区切りを付けるため全世界一斉生放送をすることにした。
生き残った人々はモニターやアイコミュなどを使って生放送が始まるのを待った。
生放送の時間となってロンドンにあるウェストミンスター宮殿前と中継が繋がった。そこには演説台が用意され、その演説台には世界政府副代表の元オランダ大統領、ウェストネール・カルロス・マインドーサが立っている。ウェストネールはうかない顔をしながらもカメラに向かって話し出した。
まず世界政府代表であるオランダ大統領、ハビネール・カルロス・マインドーサのことをツラツラと語り出した。
結論、彼は亡くなったと言った。事件当日、ハビネールはアメリカでの会議に参加しており、アメリカは飲まれてしまい、事件の被害者となった。
そんな謝罪から入ったがようやく本題の内容に入った。
本題に入る前、ウェストネールは深呼吸をし、震えている心と身体を落ち着かせている。その行動から重い内容のだと読み取った視聴者たちはウェストネールが話し出すまでじっくりと待った。
そして落ち着いたウェストネールがカメラを真っ直ぐと見る。その目からは、まるでこの放送を見ている視聴者たちに「覚悟しろ」と訴えてくるような視線である。視聴者たちは固唾を飲んで今か今かと待った。
ウェストネールは視聴者たちの覚悟を受け取ったかのように待ち、話し出した。
「先日、太陽系全体で恐怖の事件が起きました。皆さんもご存知かと思います。その事件について調査を行なったところ驚きの事実が発覚しました。この事件は『事件』ではなく世界規模、いえ星規模の自然災害が起こりました。それは太陽系の主要な星、そして太陽系外縁天体がたった一つの星になってしまいました。その写真をお見せします。
こちらの写真を見てください。」
そう言ってモニターやアイコミュに映ったのは二枚の写真で、その二枚に写っていたのは太陽系全体のビフォーアフターの写真で、左にあるビフォーの写真は太陽などの星が本来の形で散り散りになっている写真である。だが右に置かれたアフターの写真ではあんなに点でバラバラだった星たちが一つの塊となって大きな球体となっている。
その写真を視聴者は見て真っ先にウェストネールが見せている写真を疑った。
だがそれはお見通しだったようで自然災害から免れた宇宙ステーションからの中継が繋がってそれが本当の事だとすぐに思い知らされた。
「この現象を受け、私たち世界政府は話し合いの結果、これは自然災害であるのと同時に何かをきっかけに起きた現象だと結論を出しまして、この現象に名をつけることにしました。もちろんこんな悲劇に名だのいらないと思いますが、今後語り続けるためには必要と考え、我々はこの現象を『オンリーワンスター現象(Only one Star phenomenon)』と呼称することにしました。これを視聴しているみなさんもご存知かと思いますが、この現象により多くの被害がが出ております。現段階で把握している限りで地球の半分、東南半球がすべて消失しました。これを受け、二次被害をなくすため月や火星、木星との協力体制をさらに強化していきます。そして現象は……」などと会見映像が三時間ほど続いた。
普段ならこう言った会見の放送などは視聴率が落ちるのだがこの放送は今まで見たこともない100%に近い視聴率を叩き出した。それほど全世界が注目して見ていたって言うのが分かる。
特に視聴者たちが目を黒い狂気の目にした内容が犯人を言及する内容だった。
「私たち世界政府は調査をする段階で犯人らしき人間を特定し、足取りを現在も追っております。そいつの名はユラ・アータル氏。彼は研究者として数々の功績と実績を、残してきましたが、ここ数日、謎の男との交流があったとの証言がありました。現象が起こって以降、彼は姿を消して今も逃亡をしております。見つけた際は必ず通報するようにお願いします。」といった犯人らしき人物がいたっと言う単純な内容で追及するほどではなかったが今の社会には逆効果だったようで瞬く間に内容は会見後、SNSに雨で増水した川のように情報が流れていった。
動画サービスやサブスクでは考察動画や危険だと訴える動画あらゆる人の目によって次々と出た。SNSでは一部でネットミームなどが流行り出した。
しまいには、『ユラ・アータル反対派』と『ユラ・アータル賛成派』と称してデモや暴動が世界各所で起こった。
翌年、暴動がさらに激化して派閥同士での戦争が各地で起きた。
この事態を政府は早く収束するため、各地に自衛隊を派遣した戦争は収まる様子がなかった。ましてや自衛隊の勢いより遥かに派閥の勢いが強く圧倒された。
そんな時、北アメリカのある小さな町で倉庫が全焼する火事が起きた。その火事は無事鎮火されて一人の焼死体だけが出てきた。DNA検査の結果、その焼死体がユラ・アータルのものだと分かった。
そのニュースは瞬く間に星中に発信され、戦争は収束の一途を辿った。
収束後、世界政府は、「今後、こういった戦争は必ず起きる。ユラ・アータルという人間以外で今後現れるかもしれない影響力のある人間は出てくるだろう。その勢力に真っ向から対抗する力が必要となる。だから政府直属の武装組織を立ち上げる。」と大々的に宣言。
翌年の三月下旬。
東海では桜が例年通り満開になったというニュースが連日放送されている頃のことであった。
政府は政府公認の武装非営利組織『DOS(Defense Only one Star)』という組織を立ち上げ、団長として元日本軍人で大佐を務めた『麻乃圭介』が抜擢された。
同年六月には、政府が改革を目的に世界共通の年号『OSR(Only one Star Reform)』が制定した。
これには「ややこしい」、「せっかくの名前がダサい」など大反発で変更案が出たが、皆それどころじゃなくなって結局その案はボツとしてどこかへ消えていった。
こうしてすべてが綺麗さっぱりに片付いたと誰もが安心して何気ない生活をしているがOS現象によって家をなくした人や難民が倍増するという問題が発生した。それに加え、OS現象の謎やユラ・アータルが焼死体として突如として現れたこと。それらが未だに解明されないまま、雪のように深く積まれ永久凍土のように解けることのないものとなった。
OS25年10月7日地球圏15番地
年号が世界的に変わってから六年がたった頃、一つ一つ地域ごとに区画を作り、それぞれに番号をつけるという政策を政府が義務化した。
その政策には反対意見もあったが賛成意見が大多数だったため反対意見は負け、政策によって義務化され使い始めると案外悪くなかったのか今では馴染み深いものへとなっていしまい、隣町と言えばいいのにかっこよく言う奴が現れるほどになった。
それから十年とちょっとたったが以前として平和な日々が流れていった。だがその裏にはまだ飢餓や食糧不足、住居がない人が依然として残っている。だが確実に減っていっている。
もちろん事件はなくなる事なく毎日起きていた。
だが、こちらも以前のように戦争や紛争ごとは確実になくなっていっている。
ここの地域は元は地球だったのだがOS現象の影響で地球と金星が入り混じる地域である。
最初数年間は暴行事件が多発していてかなり問題になっていた地域で、DOSが動く事態になる一歩手前まで荒れていたのだが、番地長の働きによって件数が激減。ここ数年は暴行事件が起きたって言う話は聞かなくなった。
そんな地球圏15番地は地球の文化を色濃く残してあった地域で、ピザ屋やパスタの店などのイタリアン料理屋が立ち並んでいたのだが、暴行事件の影響で店じまいをしてしまう店があちこちで発生し、今では焼肉屋や牛丼屋、ラーメン屋などの店が立ち並ぶ地域となった。
その地域の中でも有名な大通りの一角に大きな看板を壁に付け、夜の街を煌びやかに輝かせる人気焼肉屋さんがある。
この店は唯一、OS現象前から営業している店で昔は『ミシュラン候補』とも謳われていたほどの知る人ぞ知る超名店だったのだが、OS現象後はあらゆる年齢層でも入りやすい超人気焼肉チェーン店となった。
そんな人気焼肉屋にはある一人の男が働いていた。
その男はここの焼肉屋の黒に統一された制服をその身に纏い、お盆を片手に店内を縦横無尽に歩き回り、客の要望にすぐに答え、玄関に付いたベルの音が聞こえたらすぐに客を玄関前でお出迎えしている。
彼の名はグラン・ノワール。
グランはこの焼肉屋の接客担当長に務めている。
接客担当長という仕事の名前上、ものすごく位の高い仕事に客には思われることが多々あるが、普通の接客担当者となんら変わらない。だがグランの場合は接客担当者たちが競い合うことで有名な大会、その世界大会で二年連続優勝を果たした今を駆けるトップ接客担当者としてこの店の看板男となっている。
中でも凄いのがその『技術』である。通常の接客担当者は一人で一組を接客するのだが、グランの場合は同時に三組までのお客様を接客出来るらしく審査員曰く、「三組を同時に接客することはかなりの離れ技術をしているのにも関わらず、1組1組の対応が懇切丁寧に行われるている。」だそうだ。実際この店に来た人たちの感想としてよく上がるのがグランの接客の技術について語っているひとが多い。
そんなグランの一週間での収入額はなんと100万越えであると噂されているが本人の口から言われたことがないので未だ未知数だそうだ。
今日この日は、今大ヒット公開中のハリウッド映画で活躍した俳優陣とスタッフ数人、そして監督、合わせて総勢二十人で映画が無事に公開されたことを祝して、大宴会が宴会席にて行われている。宴会会場は一階にあり二階も宴会会場がもう一つあるのだが、一番大きな宴会会場は一階なので一階にいる。
監督はもちろんのこと、俳優陣がかなりの人気者が揃っていて、今回の主役を務めたビギラス・アータルはOS現象の首謀者の実の息子なのだが、今では皆そのことを忘れて彼の演技に魅了されている。他にも主役級が勢揃いした今回の映画は全世界で週間興行収入一位を叩き出した。
そんなハリウッド映画関係者を接客しているのは、もちろんグラン一人だけである。
グランは忙しなく席を転々としながら接客をする。
厨房では今日がシフトではない予定のない人も集まって数十人で汗水全身から垂らしながら料理を作る。
そんな事も露知らずハリウッド映画関係者の方々は意気揚々とビールを飲んだり、談笑したり、焼肉を楽しんでいる。
それが一番望まれるのだがアルコールが入ると気分が高揚する人はいる。それがハリウッド関係者にいるとは思いたくない。たった一人ルールを犯して一般女性の席にほっつき廻っているハリウッド俳優の男がいる。
その男は今回の映画で主役のサポート役として活躍、他の映画では主演を務めたりするほどの実績と人望を持っていて、『世界一のマッチョ』として世界を飛び回っている男だったはずなのだが、アルコールが入るとダメ男に成り下がるようだ。他の席に行っては、綺麗だねと決まり文句を言って連絡を交換したり(無理やり)ハリウッドの裏側をベラベラと語たるなどしている。それを受けている女性たちは口元だけ笑顔を見せているが目が笑っておらず、完全に軽蔑する目となっている。そんな顔をしているのにも関わらず楽しそうな満面な笑みを浮かべている。
それを見過ごすはずもないグランは、注文の品が載ったお盆を厨房横に設置されたカウンターに置いてほっつき廻っている男の居る方へ足早で向かう。
グランは男の横にスッと立ち、楽しげに談笑する男の肩に優しく触れて男の目線と同じ高さまで体を落として話した。
グランはいつもの優しい言葉を使って話しているがかなり目が穏やか過ぎる点から怒っているだろうと分析しているグランと同じ仕事に就いた同僚が「終わったな」とカウンター前でボソッと独り言を言った。
だが男は、グランの感情とは真反対で違う女性の客たちと話すのが夢中になっていてグランの方なんて気にする様子がない。それに加え、服は乱れ半分上裸になっているほどでなんとも見苦しい格好なんだって言いたくなるほどだ。
それでもグランは起こる様子を見せることなく、男に優しく話しかけた。
「お客様、この店では他のお客様と話せる特別サービスなどは一切しておりません。そして有名人だからと言って、そういう事が出来るなど出来ません。ですのでご自身の席にお戻りください。ルールを守れないのであれば問答無用でこの店を出てってもらいます。」
そう言うとようやくグランがいることに気がついた男は怪訝な顔をしながらグランの下に見るような目で話し始めた。
「あーん?別にいいじゃん、今はもう、あれ。あれ、えーっと、そう!お友達になったのこの子達とは!ねぇ君も若いからわかるでしょ。見て!この子達綺麗でしょ!だからー別にー、ヒッック。あーなんだっけ。そう!だから別に良くない?いいよね?」
と、その巨体で話してきた。
男はアルコールが完全に全身に周り、脳の判断力が落ちきっている。
グランは周りに居る女性の客の方を見ると、嫌そうな目をする人と苦笑いを続ける人がいて、グランと目が合うと「助けて」と訴えてくるような目からの圧を感じた。
グランは無理やりにでも剥がしてやろうと上着を引っ張ろうとした瞬間、男の反射神経の良さと瞬時の判断能力の差によって一瞬にしてグランの手を弾かれてしまった。
男はグランは睨みつけながら、床を思いっきり踏んで立ち上がりグランを物理的に上から見下ろしてきた。
「おい、聴いてたか。俺はこの女の子たちと一緒にお話しするんだよ!邪魔するんじゃねえーーよ!ヒッック。ヒッック。そんなやるなら殺るか?あん!?」
そう言って威嚇してくる男の反応を見ていた同僚が「やばい!」と口に出して、グランを止めるためにカウンターから離れた。
前にも似たような事があった時も、グランが対応した。その時は男たち数人だったのだが、一瞬のうちに男たちをこてんぱんにしてしまった。それも威圧と峰打ちだけでだ。
同僚は急いで向かうが手遅れだったようで、完全に二人だけの領域と化している。
グランは男に威圧的な態度を取られ、グランも男に威圧的な視線を下から見上げる感じに送った。
その目は男と全くの別物で圧倒的な力の差と気迫の差を感じるような目で、まるで確実に獲物を獲るために獲物のネズミを見張る鷹のような鋭く尖った目である。一歩間違えれば確実に狩られるような目で男を見る。そんな目にも負ける劣らずグランの目は勝ち上がってくる一度は負けて強くなって帰ってきた、まるで勇者のような小さいけど折れない心を持ったような目をして男を見る。睨み合いが始まって五秒ほど、グランは口を開き話した。
「そこまで言うならいいですよ。殺れるもんなら殺ってみてくださいよ。出来ないって言うのであれば、店のルールに従ってください。」
そう言うと途端に男の額から大量の冷や汗を出し、顔が真っ青になりながら、せかせかと自分の席に戻りながら身だしなみを整え、鞄の淵についているポケットからタバコの箱を取り出して、またせかせかとしながら喫煙ルームへと向かっていく。その様子を見ていた客たちは一瞬の出来事に場が騒然としている。グランは何もなかったように笑顔に戻ると、周りも先ほどまでの賑やかな雰囲気に戻った。
グランは迷惑がかかっていた女性の客たちのところに謝罪しに行く。
謝罪が終わりグランは仕事に戻るためカウンターに戻る途中、同僚に出くわすとグランは今日『1』と言っていいほどの笑顔を見せた。同僚はそんなグランに呆れてため息を溢して、何があったかを訊く。
「で、お前さんよ。この前とは違って手は出さなかったんだな。俺は手を出すんじゃないかと心配したぜ。」
「すまない。迷惑をかけたな。」
「謝らなくていいよ。で、どうやったらあんな威嚇体制ビンビンの男に勝ったんだ?」
そう言って先輩ずらをしてくる同僚を、グランは先程男にやった目をする。
同僚はその目を見た瞬間、悍ましくて触れ難いものをグランの目の圧から感じた。その瞬間、賑やかな筈の店内の音が一瞬にして消え去ったように聞こえるほど、静かで冷酷で、同僚が咄嗟に思ったことは『怖い』という恐怖の感情であった。
目の圧を解いた途端、賑やかな雰囲気が少しずつ正常に戻ってきた。
同僚は冷や汗をかいて立ち尽くしていた。
「お、お前。どうしたらそんな目が出来るだ?」
「さぁ、それは分からないね。」
グランはそう答えてカウンターの上に置きっぱなしにしていたお盆を持って、本来の業務に戻る。
一方その頃、グランの目の圧に負けてタバコを吸いに逃げてきた男はというと、タバコに火をつけ一回だけ煙を大きく吸って、後は吸い殻入れに潰して入れてしまい、グランに負けたことを愚痴っている。
すると、喫煙ルームの扉が『ギィ〜〜』というぎこちない音を立てて、男一人しかいない喫煙ルームの部屋の扉が開くような音がした。男は酔っ払っているとは思えないほどの反応速度で開く音がした扉の方を見た。
だが、そこには人っこ一人居らず、ただ扉が開いているだけでもう一つの重たいスライドドアから賑やかな音が漏れ出ているだけで誰もいない。男は風のせいだと考えたが不意にグランのことを思い出して、逆ギレしながら扉を雑に閉めて、吸い殻入れのある方に振り返りタバコを箱から一本出した。
早速、火をつけるため右のポケットからライターを出してライターに火を灯した瞬間、誰も居なかったはずの喫煙ルームの奥から足音がした。その足音はどんどんと男に近づいてくる。
男はタバコを吸う手を止め、床を眺めて固唾を飲み込み、恐る恐る下がった顔を上げると、そこには先ほどまで居なかった黒いマントを羽織った大柄な人が佇んでいた。
男は黒いマントの人を恐怖の目で見つめ、もう一度固唾を飲み込む。目を何度も擦って何度も見上げたがそこに黒いマントを羽織っている人がいるのは変わらない。
男は深呼吸をし、恐怖心を押し殺して思い切って話かけた。
「お、お前さんもタバコを吸いに来たのか?よかったらあげるけど……」
そう言った瞬間、黒いマントの人は男に向かってゆっくりと長い上半身を腰から曲げて、見えない顔が男の顔とスレスレのところまで来た。
男は避けようか迷って一歩身を引いた途端、つい数分前のことを思い出して自分の気持ちを押し曲げて黒いマントの人を見た。
すると黒いマントの人は男を、漆黒に塗られていた顔から突然現れた深紅の目で睨んだ。その目は先程男が見たグランから感じた恐怖の目と同じである。
男はそれを見た瞬間、身体中に冷や汗を滝のように流して、男は狼狽える声を張り上げ尻もちを付き扉に向かって後ろ向きで逃げて行った。
男は震える両手を地面につけ粗い息で黒いマントの人を見上げながら男は話した。
「お、お前、その視線その目をやめろ。やめろやめろやめろやめろやめろやめろーーー!その目だけやめてくれぇ〜!!」
男は狼狽える声を上げながら、額を床に押し付けて懇願している。
黒いマントの人は男の後頭部に付くんじゃないかというほどに顔を近づける。顔が髪に触れるぐらいまで近づいていて、鼻息が髪に触れる。男は鼻息が掛かった途端、体を一瞬『ビクッ』と体を震わせたが黒いマントの人はそれを気にしない感じで話した。
「私はあなたにある用があって、あなたの前に現れました。」
そう言うと、男は身震いがさらに酷くなっていく。
それに加えてグランのような男の声が聞こえてただけで、さらに震えが増していく。
男は震えが止まらなくて焦っていると、黒いマントの人はまたゆっくりと声で話した。
「あなたは誰かに勝ちたいもしくは殺したいと言う気持ちが襲ってきているのではないでしょうか。」
「な、何故そんなことが言い切れるんだよ!」
「私には見えるのです。あなたの心の中を見る事が。」
男は固唾を飲み込み恐る恐る訊く。
「それであんたは何をしてくれるのさ。」
「認めたのですね。」
「うるさい!」
「ふん。まぁいいでしょう。私はあなたにこの薬を差し上げに来ました。
黒いマントの人は男に薬の入った小瓶を手渡す。
「その薬を飲む事で魂に眠っている力を呼び起こす事が出来て、どんな人間でも倒せるようになるでしょう。それにこの薬さえあれば世界一なんて容易く取れることでしょう。」
男は震える身体を抑えながら首を縦にブンブンと振る。
「貰う!貰う貰う貰う貰う!これを飲めば最強になれるなら飲みます!」
「えぇ、もちろんなれるとも。その薬を飲めばね。」
その言葉に希望を持ったのか、黒いマントの人から渡された瓶のコルクの蓋を開ける。
瓶の中にはカプセル錠剤と同じ形をしている薬で全体が白くなった薬である。
男は瓶の中から一粒だけ入った薬を右手のひらに取り出し、もう一度黒いマントの人のことを見て訊く
「ほ、本当に、本当にこれを飲めば俺は世界一最強になれるだろ?」
「はい、なれますとも。それを飲めばですがね。」
男はその返答を聞いた時、男はほっとして肩の力を抜く。その途端、男は肩を震わせて笑い出した。
その笑いは伝染したように黒いマントの人もフードで隠れた口をニコリと不気味な笑みを浮かべる。
男は右手のひらに乗せた薬を口に運んで一気に飲み込む。
すると薬の効果がすぐに出始めた様で、急に服がビリビリと破るような音を立てて男の全身の筋肉が次第に大きく太くなっていく。ある程度大きくなるのが止まったのか服が破れる音は止む。
男は薬の効果で何倍にも太く大きくなった筋肉を見て感激したようで、大きな手のひらでペタペタと身体に触れる。
男は今の自身の筋肉の状態について一人でに語り出したが、黒いマントの人は構わず笑みを向け両腕を男を崇めるような形で上げて話す。
「さぁこれで、あなたは世界最強となったのです。これなら思う存分に楽しめるでしょう、この世界を!」
「あぁ〜ありがとう。あんたには感謝している。これであいつをボコボコに殴り飛ばすことが出来る!気に食わない奴も全部!」
男はそう言い、喫煙ルームの扉の方へ振り返って扉を開こうとする。だがあまりにも大きくなりすぎてしまった筋肉のせいで扉を開くことすらままならない。
男は自身の筋肉のあなりのデカさを見て鼻で笑い、右手で握り拳を作り、後ろに向かって振り絞って右ストレートの体制で扉に向かって構える。
それを見た黒いマントの人は少し驚いた顔で「おほ〜、まじか」と言った瞬間、テレポートしたかのようにチリ一つ置いて行かない形で消えた。
男は構えた拳をフルスイングで扉のある方向に向かって殴る。その殴った勢いで扉どころか壁すらも一瞬にしてズタボロに壊され、店内には壊れた壁や扉の破片が飛散している。男は自分の拳で殴ったとは思えないほどの威力が出たことに歓喜し、そして勝ち誇ったような笑みで笑った。
その頃店内では、「お手洗い横にある喫煙ルームの壁が壊れて巨人が出てきた」と騒ぎとなっている。
グランや従業員はいち早く被害を最小限に抑えるべく避難誘導をしている。
その行動を見ていたかのように巨体となった男がグランたちの方に近づいていく。
店内に残っていた従業員と客は男の巨体っぷりを見て目を丸くし、身体は動きたいのに動けずに固まり口をあんぐりと開け、額から大量の冷や汗をかいて男を見上げる。
店の出入り口から一番近かった客が倒れ込むようにして悲鳴を上げて店内から立ち去って行く。
グランたち従業員は恐怖の感情を押し殺し、避難誘導を続ける。
そんな中、全員が逃げたはずの店内で一番奥にあるファミリー席の隅の方で、しゃがんで泣きじゃくる少女が残っている。グランは少女を助けるべく避難誘導を他の従業員に任せて走って救出に向かう。だが男はグランよりも二秒ほど早く気づいていたようで、二歩ほど歩いて少女に届いた。男は少女の服を摘み上げて持ち上げる。そして自分の顔の真上まで持ち上げ、ギッチリと閉まっていた口を唇、前歯、奥歯の順にゆっくりと開ける。男は少女を掴んだ指を離そうとした途端、少女を助けにきたグランが男の懐に入り込み、男の筋肉で固めらた鉄の板のような硬さへと変貌した腹を殴る。
グランの手からは血が滲んできているが、絶えず殴り続ける。
「やめろ!その子を離せ!その子が一体あんたに何したって言うんだ!」
男はその言葉に苛立ちを覚え、少女を掴んでいる手とは逆の右手の甲でグランを薙ぎ払う。
その薙ぎ払った威力は普通のビンタとは比べ物にならないもので、あまりの強さのグランは身体ごと吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。グランは壁に穴が出来るほどの威力で壁に激突し血を吐いて倒れ込む。男は薙ぎ払ったグランの方のことを睨みつけた。
「うるさい!お前のせいで俺の大切な時間が奪われるんだよ〜〜〜!?分かってるのか!?俺は今度こそ邪魔されはしない!この少女はその犠牲だ!お前のせいで一人の少女の命が犠牲になるんだ!よ〜くそこで『目』かっぽじって見てろ!」
そして男は先程よりも高く少女を持ち上げる。少女は泣きじゃくっいて足を空中でジタバタとしている。
それを倒れ込んだグランは見上げるように見る。グランは自身の行いで招いた罰だと情けない気持ちが湧いてくる。他の従業員たちは避難誘導を終わらせてグランの元に駆け寄ってくる。従業員たちはグランの状態を確認した後、男に飛び交ってくる。だがその様子は男も見えていて従業員たちが届く前に少女を持ち上げいる手を離そうとする。
グランは絶望視して目を瞑ろうとした、その瞬間だった。
突然、従業員たちが走っているさらに奥、店内の入り口から何か黒い影と赤い何かが飛んでいく。その黒い影を確かにグランは見切った。
その影は人間であった。
それもその人間は背中に伝説として語られている不死鳥のような赤い翼を広げて羽ばたかし、左腰につけている刀を抜刀、店内に設置されたLEDライトの光で煌びやかに輝かせ、即座に少女を掴んだ男の左手を手首から切り落とした。
その後、落ちていく少女を抱え込み即座に着地。
僅か一秒ちょっとだけの動作であった。
男は自分の手が切れたのに気づくのに二、三秒有している。
男は自分の手が無くなったことに痛みをもがいていて、巨体を床でゴロゴロと動かしている。
飛び込んで来た人は抱きかかえていた少女を下ろし、出入り口の先にいる両親の元へと送る。
その人はとても小柄で現代とは思えない西洋な服装で羽織みたいなものを羽織り、後ろには赤いマントそして左腰にさっき振るっていた刀がある。
刀は頭の部分に青と金が主体で出来た組紐で結ばれたピン球ぐらいの大きさの紫水晶が付いている。目貫の部分の紐は鉄紺と言う黒に近い紺色の紐を使って捻り巻きと言う巻き方で撒かれ、鍔は紫陽花型に形どられている。鞘は黒に色鮮やかな藤が彫られており、刀身の波紋は焼詰め《やきづめ》と言うものになっている。そしてその人は男とは思えないほどに伸びている赤い長髪で男を鋭い眼光で見つめる。
その眼光は男を軽視する目とも見えてしまう。だけどグランは「いつでも殺せますけど」と力の差を見せつけるような圧力をかける目に見える。
グランはそんな訳もわからない人を見ていると背中のマントのロゴに意識が行く。
そのロゴにははっきりと『DOS』と言う文字が記されている。
グランはどこかで彼のことを見たことあると思い、記憶の奥底に眠っているであろう記憶の本棚をあさる。そうしていると一つだけ彼にヒットする記憶を見つけた。彼は世界政府公認武装組織『DOS』特務隊一番隊隊長『佐久本竜之佑』である。
彼の実力はまさに最強と呼ばれるほどで入団当初からかなりの成績を残しており、団内ではトップクラスの実力者で、自身の中に秘められた力『真の力』を使って人々を救っている。その『真の力』は『不死鳥』だそうで、そのなの通り不死鳥のような赤い金蘭でまさに輝いて見える羽を羽ばたかし、その羽で人々を癒すという。ネットではよく『不死鳥ヒーロー 佐久本竜之佑』と称されている。
そんな彼の活動範囲は多岐に渡っており、こんな事件はよくあるから来ないだろうと思えてしまう。それにここ地球圏15番地は地球圏の中でも辺鄙中の辺鄙で、なかなか他の地域から来る人はいない。そんな所に来てくれた事にグランは少し喜びを覚える。
グランは遅れて助けに来てくれた同僚の手を借りて起きる。同僚によると、通報したのは同僚だそうで通報してからたったの五分ほどで現場に到着したようだ。
グランは竜之佑にお礼をと思い近づく。だが竜之佑は近づくなと指示する意味で右手で『止まれ』とハンドサインを送る。
その意図はすぐに読み取りグランは足を止める。
そうしていると男が痛みに耐えながらもゆっくりと立ち上がっている。
男は顔と言うより全身を真っ赤に彩らし、大きな歯を食いしばんでいる。その様子から「余計な介入をしやがって」と怒っているご様子だ。
竜之佑は男の方を見て「呆れた」と言わんばかりにため息を溢し問う。
「お前、こいつらが何をしたって言うんだ!?こいつらは客のために毎日欠かすことなく仕事をしているただの善人な人間だと思うんだが?それに壊したってなんもないぞ!」
すると男は口から唾を撒き散らしながら怒鳴った。
「こいつは俺様の楽し〜〜い時間を、奪ったんだよ!!だから俺はここをぶっ壊す!全部を喰らう!お前もお前もお前もぜ〜ぶんだ!!」
竜之佑は正面切って、黙って男の話を手を組んで聞いている。
グランはそんな竜之佑の後ろ姿を見ていたら初対面なのに謎に嫌な予感が襲ってきた。
竜之佑は沈黙の後、ニコリと笑みを浮かべて男に向かってありえないことを言った。
「いいぞ、食べて。食べてみろ!」
竜之佑は自信満々な笑みでサラって言っているがグランは当たってしまったと後悔する気持ちと、仕事をちゃんとしろとツッコむ気持ちが湧いて口をあんぐりと開けてしまう。
男もその返答を予想していなかったようで大きな口がぽかーんと開いており、ダラダラと床に唾が垂れている。
グランはバキバキに壊れた身体をなんとか動かして竜之佑の方へ近づこうとするが、健康体の同僚の方が圧倒的な力の差があって近づけない。同僚はそんなグランを竜之佑に近づけさせないと必死である。
そんな様子を見ていた竜之佑はグランにわざわざ近づいていく。
「大丈夫、絶対に食べさせないから」
そう言った途端、竜之佑はグランの服の襟元を掴んで男の頭上に向かって思いっきり投げつける。
グランは災厄な人生だったと振り返り、人生の終わりを宙を舞いながら思う。一緒に居た同僚は竜之佑の両肩を掴んで前後に揺さぶって「何をしているんだ」と怒っている。
男は謎行動を真っ直ぐに受け取る形でグランの落下地点へと入り、口を限界まで開ける。
その一瞬を狙っていたようで、竜之佑はグランの同僚の両手をどかして、「離れて」と一言。
同僚は言われたとおりに離れる。竜之佑は同僚が離れるのを見てから左足を後ろに下げ全力で踏み込み、左手は鞘に添え鍔には親指が触れる位置に手を置き、右手は柄の部分にスッと置いてから握り締め体の重心を下げ、刀を構える。
僅か0.5秒の行動でそれには男も気づいておらず、食べる気満々である。
竜之佑は溜め込んだ力を放出するように、踏み込んだ左足を前に持っていく。すると竜之佑の身体が空中を低空飛行し始め床をスレっスレで飛ぶ。それと同時に背中には不死鳥の羽が生え、鞘からは漏れ出る赤く燃えたぎる炎が宿っている。
竜之佑は男の足元まで回り込み刀を抜く。その刀には炎を纏ってあり同僚の位置からも熱を感じるほどで、そんな灼熱の刀を竜之佑は男の両足を斬りつける。男の足はみるみるうちに傷が付いていく。
とうとう立てなくなり男は足から崩れる。男は自身の身に何があったか分からず困惑している。
竜之佑は空中でグランを救出し同僚の元に持っていく。グランは一瞬の出来事に驚きを覚えた。
竜之佑は倒れ込んだ男に向かう。男の口の中には禍々しいほどの歯がびっしりと並んでいる。それを見ていたら無理やり口を閉じられる。
竜之佑は跳び上がり口元を斬りつけて無理やり歯を露出させる。
歯が露出したのを確認した竜之佑は最後の一撃のために力を溜め込む。
右手に持った刀には赤く燃えたぎる炎から更に火力を上げて紅色のような炎へと変え、背中の翼は更に大きくさせて人間の目では追えないほどの速さで羽ばたかせる。
そして竜之佑は男の歯に向かって赤い炎の剣で斬りつける。
『赤刀剣 一重字』
攻撃が入った瞬間、衝撃波がグランたちを襲う。だが瓦礫などが一切飛んで来ない。よく見ると大きく広げた不死鳥の羽で壁を作って瓦礫を届かせないように工夫しているようだ。
衝撃波が無事に止むとあたりは瓦礫だらけで店内の原型を留めていない。
男の方は竜之佑が無事に倒したようで、何がなんだか分からないが元の人間サイズに戻っていて傷は見られない。今は気絶している様子で動く様子がない。
竜之佑はそんな男を縛り上げている。
グランは同僚の手を借りて竜之佑にお礼を言いにいく。
「あのー。あ、ありがとう、ございました。」
そうグランが言うと竜之佑は縛り上げる事が出来たようでグランの方へ振り返る。
「あ〜。いや、これは仕事だから。それより怪我は?」
「あーえっと、肋骨と背骨、それから腰を痛めてしまって。いや、ほんとありがとうございました!怪我ぐらい自分でやりますから。」
「いや!それはだめだ。怪我人を出す事はあまりしたくないんでね。」
そう言って小さな羽を生やし一枚だけ羽を抜く。そしてその羽を竜之佑は真顔でグランの心臓辺りに平然と突き刺す。
同僚はその行動を見て仰天して声を荒げる。
「お前〜〜!!何してくれてるの!?ただでさえ怪我をしたやつに追い打ちをかける奴がいるかよ!!それにあんた政府の奴だろ!そんな事して……」
「ちょっと待った。治ったぞ!治った治った。腰や背中の痛みが消えたし動けるぞ!」
そう言って同僚の支えから抜けて飛び上がっている。
竜之佑はそれを見て、ふんと鼻を鳴らして縛られた男を引きずって店内の外へと持って行こうとしている。
それを止めるようにグランはもう一度お礼を言う。
「改めてありがとうございました!怪我まで治してくれて!」
「礼はいいよ。仕事をやっただけだから。」
「あ、あの!お名前を訊いても?」
「名乗るほどではないが、いいだろう。俺は世界政府公認武装組織DOS特務隊第一番隊隊長の佐久本竜之佑だ。別名は『不死鳥』かな。」
そう言ってニコリと笑みを見せる。それと同時に竜之佑は真の力を発動させて背中に不死鳥の煌びやかな羽を生やす。店内は不死鳥の羽で彩られ、事件などなかったようなほどに綺麗で見惚れてしまう。
「じゃあまたどこかで」
そう言って豪華に彩った男は立ち去って行った。
後日、この二人が巡り会うのはまた今度……
本書を読んで頂きありがとうございます。
ファンタジー要素多めと言うのと文字数の多さに頭がパンクしてしまうかもしれませんが最後まで読んで頂いた方、本当にありがとうございます。
今後とも頑張って参ります。




