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見習い騎士だって大変なんです。  作者: 先輩.


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第五話 見習い騎士の徹夜。

挿絵(By みてみん)


「まだお休みになられないのですか?」

時間は深夜を回っていた。


「もう少し資料に目を通してから休む。先に休んでくれ。」

アルゼル守護騎士が資料に目を離さず答える。

関係者への調査を終えて黒羊騎士団本部に帰ってきてからも資料と向き合い、

随時される報告を聞き。休んでいるところを見ていない。


「では、私もお手伝いいたします。」

私の提案を聞いてアルゼル守護騎士が動きを止める。


「先に休め。シオン。命令だ。」

「はっ。出過ぎたことをしました。申し訳ありません。」

上官の命令に逆らうことはせず素直に従う。


「精が出ますな、指揮官殿。」

入り口からする声に私たちは視線をやる。


「ヌーク守護騎士殿。」

私たちは同時に頭を下げる。

階級はアルゼル守護騎士と同じだが、年はかなり上だ。


「寝ずにやるつもりですかな?あまりこんを詰めない方がいいですよ。」

「ご忠告感謝いたします。私のような経験の無い若輩は多少無理をしないと上手く出来ませんので。」

「ほー。アカデミー首席でわずか三年で守護騎士になった優秀な貴方も苦労なさるんですか。」

生涯守護騎士になれない人が殆どの世界で

三年で守護騎士になった アルゼル守護騎士は中央騎士団でも異質な存在だ。


「はい。なのでヌーク殿のような経験豊富な方に補佐に入って頂けると心強いです。」

「アルゼル殿。一つ勘違いをしております。」

ヌーク守護騎士が間髪入れず言葉を発する。


「私は君の補佐ではなく。査定を任されている。」

査定…?私は言葉の意味を掴めていなかった。


「査定ですか?」

アルゼル守護騎士の反応も同じだった。


「君を城塞騎士に任命するかどうかの査定だ。」

城塞騎士。守護騎士の一つ上の階級。 重要都市の治安維持や重要任務の指揮官を任される。

現場騎士の最高位とも呼ばれている。


「君は若いが優秀だ。そして、中央には君を押し上げたい勢力がある。」

守護騎士までの昇進も異質だが、この年で城塞騎士となると前例は数える位しかないだろ。


「アルゼル守護騎士、事件解決だけに力を注ぎなさい。そうすれば貴方は高みにいける。

…失敗は許されないよ。」

ヌーク守護騎士は呟くように言葉を残して去って行った。


「城塞騎士ですか。すごい話ですね。」

私は思わぬ話に少し高揚していた。

だがこの人は。


「事件解決してからの話だ。今は気にはしない。」

全く動揺している様子は無かった。

この人はもっと上に行く。 その力がある。

私は信じ切っていた。


***


「…眠い。」

さっきからその一言しか出てこない。

私たちが夜警の任務から解放されたのは朝方だった。


「とりあえず仮眠して、本部で会議か。」

アレクが平然と言うがもう数時間しかない。


「はぁー。肌荒れ、ヤバい。」

この睡眠時間で荒れない方がヤバいか。


「そういえばシドは?」

私がいつの間にかいなくなった先輩騎士の所在を尋ねる。


「あー。向かい酒で一杯だけって言ってぞ。」

どうかしてる!一刻も早く眠りたいこの状況で。

いよいよあいつには着いていけない!

早く正騎士になってこのチームから抜けないと私も身を滅ぼす。


「カトレアー!」

私が自分の身を案じていると私の名前を呼ぶ声で意識を戻す。


「あっ!ルィン!」

オッスと笑顔で挨拶してくる青年。

私の同期である見習い騎士ルィンが先輩騎士といた。


「久しぶりだなーカトレア!元気してたかー?」

「…元気じゃないわよ。夜警明けよ。」

元気な同期とは対照的に私の声は沈んでいた。


「そっかー、俺も徹夜でギャレッジ子爵の護衛だったから寝てないぞー。」

じゃあ、なんでそんな元気なのよ。


「ジアルさんお久しぶりです。」

アレクがルィンの先輩騎士に挨拶していた。


「アレク。久しぶり。」

ジアルさんが和かに返す。


「シドはどうしたんだ?」

ジアルさんが片割れを探しながら言う。


「一杯いっちゃいましたよ。」

「ハハ。相変わらずだな。」

どっちかと言うと人見知りのアレクが和やかに話していた。

どういう関係だ…?


「ジアルさんはシドさんとアレクさんと元教育係だよ。」

怪訝な顔をしていた私の顔見てルィンが答える。

じゃあ、私の先輩の先輩か。


「ジアルさん初めまして。見習い騎士のマナ・カトレアです。」

「おっ。君がマナちゃんか。

初めまして。ジアル・フォルシアだ。」

挨拶の後、軽く握手をする。


「二人のところは大変だろ?」

「えぇ。とても。」

私は即答するとジアルさんが笑った。


「そうだろうなー。でも二人とも優秀だからな。

俺のとこ来て一年たたずに正騎士なっちゃったからな。」

「先輩の教えの賜物ですよ。」

アレクの軽口にジアルさんはよく言うよと返していた。


「だから、マナちゃん。二人のところで頑張ればきっといい騎士になれるよ。」

ジアルさんがこっちに向き直り告げる。


「はい。」

私の返事にジアルさんは嬉しそうな表情を浮かべていた。


「今度また誘ってくれよ。」

ジアルさんがアレクに言う。


「えぇ。シドも一緒に。」

「それは、楽しみだ。」


「ルィン。あんた先輩がまともそうで羨ましいわ。」

「おー。優しいんだぜー。…カトレア!お前は死ぬなよ!」

「縁起でもないこと言うな!」

こいつは出会った時から空気が読めない。

誰かさんに似てるな。



「優しそうな先輩ね。」

二人の背中を見送りながら私が呟く。


「あー。いい先輩だよ。」

アレクが目を細めて言う。普段あまり見ない柔らかい表情だった。


「つまり、その先輩に教育された俺たちもいい先輩って事だ。」

私がその表情を見てるのに気づいたのかいつも表情に戻って軽口を叩く。


「その論理は残念ながら破綻してるわ。提言者は私。」

「うるせっ。」


アレクの軽口を聞きながら。私の意識はもう一人の先輩に向いていた。


***


「ちっ、んだよー。気持ちよく寝てたのに。客の事殴るか?普通。」


店閉めるからささっと出ていけと店主殴り起こされた。


「あの店もう使わないぞ。クソっ。』

早足で路地を歩いていたら。人とぶつかりそうになる。


「おっと。」

すかさず避ける。


「すいません。大丈夫ですか?」

ぶつかりそうになった男から声を掛けられた。


「こっちもどーもすいません。ちゃんと歩けてなかったす。」

「いえいえ、騎士様に怪我がなくて良かった。」

「恐縮ですー。」

「これからお仕事ですか?」

「えぇ。騎士はハードワークがモットーなので。」

「そうですか。お仕事頑張ってくださいね。」

「ありがとさん!」

そのまま黒髪の騎士は立ち去って行った。


「騎士がこんな時間に酔っ払ってるって、

騎士大国が聞いて呆れるな。」

どこからかする声は唐突だった。


「いや。奴が私を避けた時の反応。重心がずれずに直ぐにこちらを向き直していた。」

そうすれば標的を視線から外すことはない。戦いのプロに見られる特徴だ。


「まぁ、お前に敵うとは思えないけどな。

…それより今夜だ。」


「…あぁ。了承した。」

そう答えると声は気配すら無くなり消えた。






挿絵(By みてみん)

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