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のんびり暮らしたい情報処理技術者、村の防衛網をアップデートしたら鉄壁の要塞都市になった件  作者: GenerativeWorks


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第30話:再起動(リブート)と新たな契約

暗闇に沈んだ世界に、一晩中、悲鳴と怒号が響き渡った。

魔導街灯が消え、防衛結界が霧散し、物流が完全に停止した「メンテナンス・ナイト」。


人類は、たった一人のエンジニアがへそを曲げるだけで、自分たちの文明がいかに脆く崩れ去るかを嫌というほど思い知らされた。


「……さて、リーナさん。そろそろ『タイムアウト』だ。みんな、十分に反省したみたいだな」


サトウが管制塔の窓を開けると、そこには涙目で塔を見上げる各国の指導者たちがいた。

かつての威厳はどこへやら、泥にまみれ、震えながら「再起動」を懇願している。


「サトウ殿! 頼む、独占禁止法は白紙だ! 我が国の国家予算の三割を『保守管理費(サーバー維持費)』として毎年献上する! だから、どうか……明かりを!」


「……三割? 少ないな。五割だ。あと、開発の邪魔をする『行政介入』は一切禁止。……これが、新しい『利用規約(Ver 3.0)』だ」


サトウが石板コンソールを操作すると、空中に再び巨大なホログラムが出現した。

そこには、以前よりもさらに強固で、エンジニアに絶対的な権限(特権)を付与する条文が並んでいた。


「……同意(Accept)するか?」


「「「同意します!!」」」


迷う者は一人もいなかった。

サトウは静かに、石板のメインスイッチを『ON』へとスライドさせた。


『System Rebooting... 10%... 50%... 90%...』


『Welcome to Mana-OS v3.0 "Eternal Stable".』


シュン……!


ナノハ村から放たれた青い閃光が、地脈を伝って世界中を駆け巡る。


消えていた街灯が一斉に灯り、止まっていた転送陣が唸りを上げ、押し寄せていた魔物たちが結界に弾き飛ばされていく。


「……あ、繋がった……。サトウさん、世界中の『死活監視ピン』が緑色に戻りました!」


リーナが歓声を上げる。

世界は救われた。


だが、それは以前の世界とは違う。


王でも神でもなく、「システム」がすべてを統治し、その鍵を一人の男が握る「完全管理社会マネージド・ワールド」の誕生だった。


「……ふぅ。これでようやく、まともな『運用フェーズ』に入れるな」


サトウは塔のテラスに出て、昇り始めた朝日を眺めた。

 

その後。


ナノハ村は世界の「中央サーバー」となり、サトウは史上最高の聖者、あるいは史上最悪の支配者として歴史に名を刻むことになった。


だが、本人は相変わらず、村の小さなテラスでリーナが淹れたコーヒーを飲み、時折届く「バグ報告(苦情)」に毒づきながら、石板を叩き続ける日々を送っている。


「……サトウさん、隣の国から『パスワードを忘れた』って連絡が来てますよ」


「……再発行手数料、金貨十枚って伝えといて。……ったく、ユーザー教育(ドキュメント確認)が足りないんだよな」


エンジニアの朝は早い。

世界の平和を守るということは、終わりのないデバッグを続けることと同義なのだから。

あとがき:デバッグの終わり、運用の始まり

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


本作は、現代のIT現場でエンジニアたちが日々直面している「技術負債」「無理な納期」「現場を無視したトップダウン」「セキュリティの甘さ」といった切実な問題を、ファンタジーという皮を被せてデトックス(?)することをテーマに執筆しました。


サトウが最終的に手に入れたのは、全能の力ではなく「全権限(Root)」でした。しかし、管理者の座に就くということは、世界中のバグ報告に24時間365日対応し続けるという、終わりのない運用保守の始まりでもあります。


現実世界のエンジニアの皆様。

 私たちの住むこの世界も、誰かが書いたコードと、誰かが支えるインフラによって、今日この瞬間も「安定稼働」しています。もし、あなたの周りで当たり前に動いているシステムがあったら、その裏にいる「サトウ」たちの苦労に、ほんの少しだけ思いを馳せていただければ幸いです。


それでは、また次のプロジェクト(物語)でお会いしましょう。

 願わくば、あなたのコードにバグがなく、明日の休日が「オンコール」で潰れませんように。


著者:サトウの背中を見守るログ監視ツールより

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