エピローグ
兵庫県にある阪神甲子園球場。
全国の高校球児が夢見る舞台である。
春夏に行われる全国大会は、野球に興味がない人でもテレビで観てしまうほどの盛り上がりをみせる。
その夏の全国大会が開幕した。
開会式は夏のうだる暑さの中で、見る者に暑さを忘れさせてしまうほどの溌剌とした高校球児たちの姿を披露した。
そして現在はその開幕戦が行われていた。
ブラスバンドの軽快な音楽、高校生たちの声援。
高校野球ファン達の地響きのような大声援。
そんな中で、一人の打者が天高く打球を打ち上げた。
阪神甲子園球場特有の浜風に乗って打球は外野スタンドめがけて伸びていった。
打球が外野スタンドに近づくにつれて、大物歌手のライブの登場時のような盛り上がりになっていった。
そして打球が外野スタンドに吸い込まれると、そのボルテージは上がり、更に打者がファーストベースを越えたあたりでホームランを確信し、天高くガッツポーズをすると割れんばかりの歓声に包まれた。
アルプススタンドでは、野球に興味が無いであろう学生達までもが飛び跳ねて隣の生徒と抱き合って喜んでいる。
そして、打者はホームベースを踏んだところで立ち止まった。
そして上空を見上げると、何言かつぶやき、涙を流しながらベンチに帰って行った。
喜ぶ選手たちとハイタッチをし終えた打者はベンチに下がると、ユニフォームの胸を押さえジッと目を閉じたのであった。
『祝!全国高校野球選手権大会優勝!』
西条高校の校舎の外壁にはこれでもかというくらいの大きな幕が垂れ下がっていた。
西条高校は亮太郎の爆発的な活躍もあり、西条高校史上初の甲子園優勝を果たした。
その活躍にプロ野球のスカウト陣も大慌て。
甲子園記録に並ぶ本塁打数を記録した亮太郎には多くの取材が舞い込んでいた。
しかし、活躍がこの大会を通じてのみだったこともあり、プロ入りできるかは不透明な状態であった。
亮太郎はプロに行けなくても大学では続けるつもりであったし気楽なものであったが、周りが大騒ぎ。
櫻に至っては、今のうちにと言って、亮太郎を多くの人が集まる全国のテーマパークを連れまわした。
そして、十月。
運命のドラフト会議が行われた。
亮太郎は取材等も含めて学校で結果を待つことになっていた。
櫻や両親は蓮の家でテレビ中継で待つことにしたようだ。
蓮の仏壇の前で結果を待つ。
ドラフト会議が始まり一位指名から行われるも亮太郎の名は呼ばれず。
ドラフト前の予想でも、亮太郎は呼ばれるとしたら三位以降というのは分かっていたので、期待していなかったが、十二球団が指名し終わると、どこからともなくため息が聞こえる。
少し時間を終えて二位の指名が始まる。
ここからは流れるように指名されるので行きつく島もない。
二位の指名が始まって三球団目であった。
『二巡目選択希望選手、千葉ロッテマリーンズ』
櫻達は三位まで無いだろうと、まだ談笑していたので、聞いていなかったが、大きなどよめきで何事かとテレビを見ると亮太郎の名前が映し出されていた。
櫻達は驚きと喜びで皆抱き合って喜んだ。
学校で観ていた亮太郎は信じられない様子で喜ぶ学校関係者を尻目に目を点にしていた。
その後、テレビや雑誌の取材、球団からの電話での挨拶を終え、帰宅した時には既に夜の十時を回っていた。
帰宅しても誰もいない我が家に蓮の家でドラフト会議を見ていたことを思い出し、蓮の家に行くと外にまで聞こえるような声で盛り上がっていた。
「近所迷惑でクレーム来るぞ」
独り言ちながら玄関の呼び鈴を鳴らすと、すごい勢いで扉があき、櫻が抱き着いてきた。
「やったね!お兄ちゃん!プロ野球選手だよ!」
「分かったから中に入ろうぜ」
先に櫻を戻らせた亮太郎は蓮の家を眺めみて言った。
「ここからが本当の勝負だ。きつくなったら助けてくれよ」
微笑むと亮太郎も蓮の家へと入っていった。
その背後の空には亮太郎の問いに応えるかのように無数の星が輝いていた。




