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①はじめての朝

ほとmacaronと申します。

小説を書くことにまだ慣れていないため、ミスがあります。暖かく見てもらうと嬉しいです。

 俺は東雲琥珀

 一ヶ月前に中学校を卒業した。

 そして、あと三日で高校生になる。

 ……なのに、完全に気が抜けた。

 漫画を読んで、ギャルゲーをやって、気づいたら何日か経ってた。

 日付を見る。入学まで、あと三日。

「……やだなー」

 思わず声が出る。そのままソファーに倒れ込む。

「……何してるんだ、俺」

 頭を押さえる。

 しかも生活リズムまで完全に終わってる。夜起きて、朝寝るやつ。

「……終わってんな」

 そのとき。

「琥珀くん、またそんな死にそうな顔して。寝れてないでしょ?」

 後ろから声。振り向くと、璃子が立っていた。

 親同士の再婚で家族になった義姉だ。現在大学三年生。美人だけど、たまに変なものを作る、ちょっと油断ならない姉貴。

「まぁな……」

 璃子がローテーブルにコツンと缶を置く。黒いエナジードリンク。

「それ飲めば寝れるよ」

「いやどう見てもエナドリだろ。目がギンギンになるやつじゃねぇか」

「見た目だけ。大丈夫、カフェイン無しだから」

「怪しすぎるって。これ何も書いてないぞ。どこで買ったんだよ」

「私が作ったの。早く効果を試してみて欲しくて」

「今、実験台にしようとしたろ」

「気のせい。ほら、眠れないのはマジで辛いでしょ?」

「……まぁ、寝れないのはマジなんだよな」

「でしょ」

「……一回だけだからな」

「うん」

 パキッと開ける。一口飲む。

「……なんか変な味する。ちょっと甘くて、妙にドロッとしてるというか……」

「気のせい」

「いや違うだろ、絶対怪しいって……」

 まあいいか、と喉が渇いていたこともあってそのまま飲み干す。

「……もう寝るわ」

「おやすみ。良い夢をね」

 部屋に戻って、ベッドに倒れる。

「……眠……っ、あ、これ、マジでヤバいやつ……」

 そのまま意識が深い闇に落ちていった。

 ――朝。

「……ん……」

 ゆっくりと体を起こす。

「……寝たな、めちゃくちゃ」

 少し体が軽い。あの怪しい飲み物、意外と効果があったらしい。

「……ってか、なんか変だな」

 ベッドから足を下ろした瞬間、妙な違和感を覚える。床が遠いというか、着ているスウェットが妙にブカブカで歩きにくい。

 首を傾げながら、顔を洗うために洗面所へ向かう。

 冷たい水で顔を洗う。

 ふぅ、と息を吐いて、顔を上げた瞬間。目の前の鏡を見て、俺の思考が完全にフリーズした。

「……誰だよ、お前」

 止まる。そこにいたのは、知らない女子だった。

 白く透き通るような肌。少し丸みを帯びた大きな目。肩までサラリと伸びた、綺麗な黒髪。どこからどう見ても、普通にかなり美少女の部類に入る女の子だ。

 恐る恐る手を動かす。鏡の中の奴も同じように動く。

「……俺、か?」

 自分の頬を触る。いつもあったはずの男らしい硬さはなく、信じられないほど柔らかくてモチモチしている。

「……いや待て待て待て、何が起きてんだこれ!!!」

 そのとき、洗面所のドアがガチャリと開いた。璃子だ。

「……これ、お前の仕業だよな」

「うん。大成功。やっぱり私の計算に狂いはなかったね」

「軽っ! お前さらっと恐ろしいこと認めたな!?」

「ちょっとした実験」

「ちょっとで済むか! 俺の性別どこいったんだよ!」

「まあ今回はちゃんとしてるから」

「“今回”ってなんだよ! 過去に何人犠牲者出してんだよ!」

「前より安定してるし」

「おい、話を聞け」

 一歩近づく。

「戻せるのか? これ」

「理論上はね」

「……は?」

「時間かかるけど」

「いや一番大事なところだろそこは!」

 激しい頭痛を覚えながら、ため息をつく。

「……はぁ。ここで騒いでも無理か」

「うん」

「だよな……クソッ」

 璃子が新しい服を差し出してくる。

「とりあえずこれ着て」

「……マジで? スカートじゃねぇかこれ」

「そのままだと服がブカブカで動きにくいしね」

 璃子が琥珀を上から下までじっくりと見る。

「女の子になっただけじゃないからね?」

「……まぁ、なんとなく自覚はある」

「身長も縮んでるよ。男の時170㎝くらいだったでしょ?」

「まあ……」

「今は156㎝くらいかな。可愛いサイズだね」

「まじかよ……」

 手渡された服を見る。ニットに、ひらひらしたスカート。

「……無理だろこれ、男のプライドが死ぬ」

 でも、このブカブカスウェットのままいるのも無理だ。

「……はぁ。分かったよ、着りゃいいんだろ、着りゃ!」

 諦めて着替えることにした。

 自分の部屋に戻り、着替えを終えて鏡を見る。

「……俺、だよな、これ」

 もう一度、自分の頬をツンツンと触ってみる。柔らかい。

「……全然慣れねぇ」

 しばらく、鏡の中の美少女をじっと見つめる。

 ふんわりしたニットに、ひらりと揺れるスカート。サラサラの黒髪。

「……いや、待てよ」

 ごくり、と唾を飲み込む。

「……これ、ちょっと、いや、普通にめちゃくちゃ可愛くね……?」

 一瞬、時が止まる。

「……って何言ってんだ俺!!! 自分の姿にときめいてどうする変態か俺は!!!」

 そのとき、リビングの方から璃子の声が聞こえた。どうやらスマホが鳴ったらしい。

「ん、ちょっと電話。あー、うん。問題ない。今んとこ普通にいけてるよ」

 どうやら誰かに実験の報告をしているらしい。少しの間。

「琥珀君、自分でも眺めててねー」

 璃子はそのままリビングの奥へと戻っていった。

「……“眺めてて”ってなんだよ。自分の体でギャルゲーしろってか」

 静かになった部屋。

 中身が男の琥珀は、じわじわと湧き上がる衝動を抑えきれなくなっていた。

 自分の部屋。誰もいない。義姉は電話中。

「……いないよな、よし」

 小さく息を吸う。

 中身が男子中学生(卒業生)の琥珀は、今朝からずっと気になっていた「女の子のポーズ」を、どうしても自分の体で試してみたくなった。RPGの可愛い女キャラや、ギャルゲーのヒロインを必死に思い浮かべる。

 胸の前で拳を握り、片足をきゅっと内側に入れて、首を少し傾げる。

 そして、アニメで見た一番カッコいいポーズをキメた。

「インフィニティフォーム起動ぉっ……!」

 その瞬間。

 背後に、とてつもない視線を感じた。

 心臓がドクンと跳ねる。ロボットのようにゆっくりと、ドアの方へ首を回した。

 ドアが、ばっちり全開になっていた。

 そこには、スマホを片手にした璃子が、真顔で立ち尽くしていた。

「なにしてるの」

「っ!?!?!?!」

 顔面がカッと沸騰する。

「違うから! 今のは断じて違うから!!!」

「いや、今のはどう見ても違くないでしょ」

「違うって言ってんだろーが!!! 見るな忘しろ!!!」

「インフィニティフォーム起動!」

「言うなアアアアア!!! 黒歴史を復唱するな!!!」

「ねぇ、何を起動しようとしてたの? お姉ちゃんに教えて?」

「うるせぇ引きこもるぞコラァッ!!!」

 リビング。

 精神的に大ダメージを負った琥珀は、ソファーの隅で小さくなっていた。

「終わった?」

「……まぁ。ライフはゼロだけどな」

 璃子がじっと琥珀を見る。

「なんか変だね」

「何がだよ」

「だって、中身は琥珀くんなのに、見た目はこんなに可愛い女の子だし」

「誰のせいだと思ってんだ」

「それにさ、外で『琥珀君』とか『弟くん』って呼ぶの、周りから見たら変じゃない? こんなに可愛いんだから」

「……あ。確かに、外見女子なのに男の名前はヤバいか……」

 璃子が何かを思いついたように、ニヤリと顔を上げる。

「じゃあ、『琥珀ちゃん』でいいね」

「勝手にちゃん付けで固定すんな! 百歩譲って呼び名はいいとして、お前その呼び方楽しんでるだろ!」

 一通りのツッコミを終え、二人とも少し黙る。琥珀のお腹が、きゅ〜っと可愛らしい音を立てた。

「……じゃ、ご飯食べよ?」

「う、うん。腹は減った……」

 ダイニングテーブル。

「……なんか、変な感じだな」

「なにが?」

「こういうの。お前と二人で普通に飯食ってんのとか」

「まあ、親同士が再婚して一年ちょっとだしね。まだそんなにベタベタな家族ってわけでもないし」

「……まぁな」

「しかも、親は揃ってタイミングよく海外赴任だしね」

「……あー、それな。マジで放置されてるわ」

 少しの間、スプーンを動かす音が響く。

「それにしてもさ、春休み中だし、本当に暇なんだよね」

「……お前、大学生のくせに普段何してんだよ」

「色々。怪しい薬作ったり、怪しい実験したり」

「やっぱりろくなことしてねぇじゃねぇか! 警察呼ぶぞ!」

「さあね」

 璃子はクスリと怪しげに微笑んだ。

 こうして、俺の普通じゃない生活が始まった。

 ……いや、マジで普通じゃない。これから俺、一体どうなっちゃうんだよ……。


2話も読んでくれたら嬉しいです。

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