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永遠福音コンフェッティーナ!  作者: ハリエンジュ
第一話『灰塵に帰す・後日談』
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その1 ひっきりなしに、鐘が鳴る

★永遠福音コンフェッティーナ! 

第一話『灰塵(かいじん)()す・後日談』

その1 ひっきりなしに、鐘が鳴る





 鐘が、鳴っていた。


 自分の頭の中で鳴り続けるその音が、ずっと不思議で仕方なかった。

 自分の傍に鐘などないのに。


 友は、言った。


「君が聴いたのは終戦の合図さ。君が倒れていた場所の近くに鐘塔があってね。今も平和を知らしめる為にそりゃもうガンガン鳴らされてる。平和の証に利用されてんのさ」


 そう語りながら友は何がおかしいのか、にたにたと笑っていた。

 思えば友は、よく笑う男だった。


「鐘からしたらガンガン殴られてたまったもんじゃないだろうがね。とりあえず今はだいたいのもんが幸せだが鐘だけ幸せじゃない、そんな世界になったわけだ」


 鐘塔の位置を友から聞いて、自分はまず疑問を感じた。

 位置関係、距離を考えると今の自分に鐘の音など聴こえるはずがない。

 だが自分の脳からは鐘の音が鳴り止まない。

 その理由がわからない、と。


 それを聴いて、友はまた違う笑い方で、笑った。


「君の記憶野に音が刻みついちゃったみたいだねえ。君はほら、色々脳まで弄られちゃってるけどまだナマの部分もちゃんとあるのさ。君のそのちらっと残ったヒトの部分は、その鐘の音をどうもお気に召したらしい」


 お気に、召した。

 その意味が、良くわからなかった。


「……ああ、意思確認がまだだった。鐘の音は好きかい? 戦闘用サイボーグ・灰塵(かいじん)=グリズリーくん」


 その問いに、当時の自分は『わからない』と答えた。

 それは今も変わらない。

 だけど自分の代わりに友が推察した答えは、こうだった。

 友に初めて出会って、しばらく経ってからこんな話をされた。


「――鐘の音の話、覚えてるかい? あれ、今も聴こえてるんだろう。あの話だけど、こういうのはどうかな。君は鐘の音を気に入ったんじゃない、聞き逃せなかったんだ」


 友の言い回しに、確か自分は違和感を覚えた。

 だから自分は、まず友の話に耳を傾けた。


「オレの話は覚えてるかい? 鐘だけ幸せじゃないねえ、っていう。君はそれに気付いた。その悲鳴を聞き逃さなかった。君は世界のどこかで誰かが助けを求めていたら、ちゃんと気づける、そういうやつだよ。声に応えるかは君次第だがね」


 友は笑っていた。あの頃より、今までより、ずっとずっと楽しそうに。


 そして。


「カイジン。君が聴こえる鐘の音は鳴り続けるよ。どこに居たってそれは鳴る。どんな意味でもそれは鳴る。例えばオレが死んでも鐘は鳴るよ。オレたちが辿り着いたのはそういう街だ」


 平和の街、リングアベル。

 大きな鐘が鳴る時計塔がそびえ立つ街。

 自分と友が、戦の後の定住地とした街。


「確かどこかの詩人の言葉で――ああそうだ、鐘は自分の為に鳴るんだよ、カイジン。オレが死んだ時に鐘が鳴らされたとしても、その音はそれを聴いている君のものだ。その詩はもっと別の意味を持っていた気がするけど、オレが言いたいのはまた違う。そしてオレの主張はずっと変わらない」


 友の言葉に乗った友の思想、価値観。

 自分には無いそれらを聞くその時間を、自分は恐らく、必要としていた。


「鐘の音を聴いた、その後は君の自由だよ。いつ鳴らされても何をもって鳴らされても、それを聴いてどう思うか何をするか、全部君の自由だ。君の世界の全部が君のもの、思い通りだ。ワクワクするだろう?」


 ワクワクという感覚を、自分は知らない。

 友のように自分は笑えない。

 自由にはまだ慣れてない。

 それでも、自分は一つだけ友に訊ねた。


「ん? 助けを求める声に応える人、かい? ああ、色々いるよ、色々いるけど――君が求めている答えはきっと――」





 友は、その名を口にした。

 それがずっと、忘れられない。

 

 鐘はあれから幾度も鳴った。

 祝福の日も災害の日も祈りの日も、友が亡くなったあの日でさえも。


 それら全てが、忘れられない。


 だから。


「おい! 早くしろ! あのデカブツロボットまだ追いかけてきやがる!」


「くそっ、そっちはだめだ! さっきのガキが追ってきてる! 厄介な武器を持ってやがったから近づいたらマズい!」


「挟み撃ちにされろってか!? ……なんなんだよ、この街は! なんなんだよ! お前は!!」


 モニターが、眼下の男たちが乗り込む車の車種を割り出す。

 確か古い型だった。

 追跡過程で随分と痛めつけてしまったが、自分の相棒ならその手の修理が得意なはずだ。


 追い詰めた彼らに、警告の意を込めて機体の銃砲を突きつける。

 確認の意を込めて、彼らの情報を唱える。


「――窃盗団『ジュトゥヴ』。リングアベルの街に1220侵入、1316に宝石店で強盗行為からの逃走。情報に間違いは――」


 彼らは返事の代わりに自分に、正確には自分の乗り込む機体に銃を向けた。

 ならば自分のやることは一つ。


「確認した。これより貴君らを街の脅威として捕縛する。――任務遂行準備。正義の味方・カイジン=グリズリー。愛機・『コンフェッティーナ』と共に、参る」


 友は言った。

 助けを求める声に応えるのは、ヒーローだと。

 だけど、どの声に応えるかどうかは自分の自由だと。

 自分はそれを見極めたくて、何故自分が声に応えたいのか知りたくて、心というものを知りたくて。

 だから自分はここにいる。

 自営業・正義の味方。

 それが自分が選んだ生き方。

 自分が生きる、今の日々。


 ――鐘はまだ、鳴り止まない。



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