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ついにボス部屋へ

「美羽、なんだよな?」

 俺は、小さく誰にも聞こえないように呟いた。

 遅れて、三人が入ってくる。

「嘘……。美羽ちゃん!!」

 寧子が叫んで美羽のところへ走っていく。

「寧子!待て……!」

 俺が寧子を引き留めようとした時、寧子が走っていた地面から緑色の触手が出てきた。

 寧子は叫ぶ暇もなく、触手に捕まって頭を下にして宙に浮く。

「ひゃあああぁぁぁぁぁぁ!!ちょっと!スカートが捲れちゃうじゃん!!」

 ……心配するところそこじゃないでしょ。

 寧子は、身体をバタつかせながら何とかしてスカートの裾を押さえようとする。

「はしたなく見えるですよ」

「そんなこと言わないで助けてよーー!」

「仕方ないですね。それじゃあ、動かないでくださいです」

 美沙紀が俺たちの一歩前に出て、耳と尻尾を出す。

 すると、美沙紀が立っていた地面が盛り上がる。

 美沙紀は、盛り上がった地面からすぐ空中に離れる。

 しかし、触手が地面から出てくると、異常なスピードで美沙紀との差を詰める。

「しまっ……!」

 美沙紀はすぐに触手から離れようとしたが、右足が触手に捕まってしまい、一気に身体に触手が絡まる。

「……っ!油断したです」

「大丈夫か、美沙紀」

「はい、何とかです」

 ボスの姿がないまま、二人が触手に捕まってしまった。

「美羽を助けに行こうとしても、力を出しても触手が襲ってくるのかよ」

「そうみたいだね。どうする?」

「ちょっと待ってろ」

 俺は、目に力を注ぎ込んで地面を見る。

 サーモグラフィーのように見える地面の下には、びっしりと触手があった。

 しかし、俺と紫園が立っている扉の前には、触手がなかった。

「どうやら、扉の前なら力を出しても触手は襲ってこないみたいだな」

「そうなの?じゃあ、遠慮なく来い、村正!」

 紫園が叫ぶと、おなじみの日本刀が握られる。

 俺も、右腕に力を注いで狼の腕に変化させる。

「ここから一歩でも出たら、触手が襲ってくるんだよね」

「そうだな。紫園、二人の救助を頼む。俺は、触手の気を引きながら触手の心臓部分を探してみる」

「わかった」

 紫園は、俺に向けて親指を立てる。

「すみませんが、そろそろ助けてほしいです。この触手、どろどろの液体が付いてて、服が少しずつ溶けていくです」

 美沙紀と寧子を見ると、確かに二人とも半分以上服が溶けていた。

 だから、美羽も裸でいたのか。

 さらに目のやり場に困るぞ。

「そういうことみたいだから、そっちは頼んだぞ」

「はい、頼まれました」

 紫園は、敬礼して俺を見る。

 俺は苦笑しながら、美沙紀より先に触手のある地面を走る。

 触手たちは地面から出てくると、猛スピードで俺の後を追ってくる。

 俺は、触手を切り裂きながら、心臓部分を探す。

 しかし、心臓部分になるようなものがなかなか見つからない。

 暫く辺りを探すが、姿すらない。

「くそっ!どこにあるんだよ!!」

 やみくもに探しているわけではなかったが、なかなか見つからず、つい大きな声が出てしまう。

 心のどこかで焦りが出てしまい、イラつきが溜まり始める。

 その時、地面の中から触手に混じって丸いものが見えた。

 周りの触手は動いていたが、丸いものは動かずにその場に鎮座していた。

 もしかすると、これが触手の心臓かもしれない。

 俺は、丸いものがあるところまで走っていく。

 丸いものがある地面の上まで行くと、俺は地面を殴る。

 地面を殴ると、そこからひびが入って地面が吹き飛ぶ。

 吹き飛んだ地面を見ると、赤い水晶みたいなものがむき出しになっていた。

 赤い水晶からは、何か恨みのようなものを感じた。

「これが破壊できれば……っ!」

 俺は、水晶に向かって大きく腕を振りかぶった。

 しかし、触手が俺の動きを止めるように右腕に絡みついてきた。

 ぬるっとした感触が俺の腕に伝わる。

 俺は、触手を引き千切ろうと力づくで力を入れる。

 しかし、触手は俺が抵抗できないように腕を締め付けてくる。

 骨が砕けるような感覚が伝わる。

 俺は痛みに耐えながら、何とか触手を引き千切ろうとした。

「あと少しで届くのに……!」

 俺は、腕にさらに力を注いで触手を千切ろうとする。

 しかし、触手が俺の脚や身体に絡みついてきて、水晶から離そうとする。

 俺は触手の行動で、これが触手の心臓だと確信を持つ。

「くっそおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 俺が叫ぶと、腕に絡みついていた触手が千切れた。

 俺はその勢いを使って、水晶を殴る。

 水晶は、殴られたところからひびが入って割れた。

 すると、俺に絡んでいた触手が植物のように急激に枯れていき、砂のように粉々になった。

 俺は、その場で落とされる。

「はぁ……はぁ……ふぅ」

 俺は仰向けになって、息を整える。

 ある程度息が整ったところで、起き上がって紫園の方を見る。

 寧子と美沙紀は、無事に助け出せたみたいだった。

 しかし、そこに美羽の姿がなかった。

 俺は、三人のいる扉の前まで歩いて行く。

「あ、海斗君。怪我はない?」

「ああ、なんとかな。皆も無事か?」

「はいです。でも、来ていた服が溶けてしまったので……その……」

 寧子と美沙紀は、長い時間触手に捕まっていたので、下着以外は溶けてしまっていた。

 それに気づくと、急に目のやり場に困ってしまう。

「とりあえず、これでも着とけよ。寧子も紫園から借りとけよ」

 俺は美沙紀を見ないように目を逸らしながら、着ていた上着を渡す。

 美沙紀は、それを受け取って羽織る。

「海斗さんの服、少し大きいです」

「仕方ないだろ。我慢してくれ」

 俺は周辺を見渡した。

 扉の正面には、未だに触手に捕まっている美羽の姿がある。

 どうやら俺が破壊したものは、美羽の捕まっている触手とは違ったようだった。

「紫園、美羽も助けに行ったんだよな」

「行ったよ。だけど、触手が固かったというか、私の村正でも切ることができなかったよ」

「そうか。厄介な触手だな」

 俺は、もう一度美羽を見る。

 そこで、俺はある異変に気付いた。

 昨日捕まったばかりなのに、少しだけ顔が痩せているように見えた。

 それに、触手から小さく細いものが身体の至る所に刺さっていた。

「三人はここで待っててくれ」

 俺は、三人を置いて美羽のところまで歩いて行く。

 美羽は、息はしていたものの意識がないみたいだった。

 俺は、試しに触手を爪で引っ掻いてみた。

 しかし、紫園が言っていた通り、触手には傷すらつかなかった。

「この触手、固いわけじゃないのに何で傷がつかないんだ」

 その時、地面が小さく揺れ始めた。

 俺は一旦美羽から離れて、皆がいる扉の前に行く。

「紫園が言った通り、傷が全くつかないな」

「それよりも、少しずつ揺れが大きくなってない?」

 不安そうに寧子が言う。

 確かに、段々揺れが大きくなってきている。

 地震でないことは感じていた。

「地震じゃないみたいですね」

「だよな。だとすると、この揺れはいったい……」

「ねえ、あそこ!」

 寧子が奥の方を指さす。

 指さした方を見ると、赤い二つの光がこちらに近づいてきていた。

 俺は、目に力を注いで奥の方を見る。

 そこには、兎とは言いがたいほどの大きさの獣がこちらに近づいてきていた。

「兎……なのか?」

「兎がこっちに近づいてるのですか」

「ああ。でも、結構大きいぞ。見た目だけでも、二メートルは軽く超えてる」

 だから、洞窟の入り口や扉の大きさが三メートルもあったのか。

 兎は、少しずつ俺たちのところに近づく。

 それに従って、姿も見えてきた。

「あれが……兎の……ボス……」

 言葉を失ってしまうほどに大きい。

 言葉にするのがやっとになるほど、俺たちは圧倒されていた。

「これは、流石に大きいね」

「ミサちゃん、勝算はあるの?」

「わからないです。最低でも、美羽さんを救うことができれば撤退するってことも」

「まあ、どのみち美羽を救うには、こいつを相手にしないといけないってことか」

 俺たちは、耳と尻尾を出して戦う態勢に入る。

 俺たちの本当の戦いは、これから始まろうとしていた。

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