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再び洞窟

 寧子が仲間に加わったものの依然としてピンチに変わりはなかった。

 上には、いつでも襲えるとばかりに威嚇をしている兎たち。

 周りにも、飛びかかりそうな態勢で警戒している兎たちが構えている。

「寧子、俺たちを巻き込まないでこいつらを倒す方法とかあるか」

「ううん、何も思いつかないよ」

 首を横に振る。

 寧子でも、何も思いつかないみたいだった。

 さて、どうしたもんか。

 その時、俺の頭の中に寧子が兎たちを吹き飛ばした光景が出てきた。

 あの時、寧子が兎たちを吹き飛ばした時、兎たちは次の行動に入るまでに数秒のロスがあったような気がした。

 そのロスがあったから、寧子は俺たちのところに来れたのだ。

「そうか。もし、そうだったら……」

 俺はある作戦が一つ出てきた。

 これなら倒せるかもしれない、という確信が俺の中にあった。

「海斗君、どうしたの」

 ちょうど、紫園が俺に話しかけてきた。

 俺は、紫園に俺が考えた作戦を伝えてみる。

「なるほどね。それならうまくいくかもしれない」

「そうか。なら、この作戦を実行してもいいか」

「というか、ダメ元でやらないと先に私たちが殺られるよ」

 紫園の言う通りだ。

 ここで殺らないと俺たちが逆に殺られることになる。

「寧子、美沙紀、ちょっといいか」

 俺は残りの二人を呼び寄せる。

 そして、紫園に伝えた作戦を二人にも伝える。

「わかったです。それを実行しましょうです」

「そうだね。やってみる価値はあるかもね」

 二人も俺の作戦に乗ってくれるようだった。

 俺たちは、兎たちが囲んでいる円の中心に集まって一塊になる。

 そして、俺はみんなよりも一歩前に出る。

「それじゃあ、俺の言った通りに動いてくれよな」

 俺は後ろにいる三人を見る。

 三人は頷く。

「それじゃあ、始めるぞ!!」

 俺は右腕に力を込めて、狼の腕に変化させる。

 そして、目の前にいる兎たちに向かって突っ込んでいく。

 それに反応して、いくつかの兎たちも俺に向かって飛び込んでくる。

 しかし、俺の方が動くタイミングが早いこともあり、俺が地面に向けて一発殴った。

 兎たちは、地面に叩きつけられて頭が粉々に吹き飛んだ。

「寧子、美沙紀、今だ!!!」

「うん!」

「はいです!」

 俺は、二人に動くようにタイミングを出す。

 耳と尻尾を出していた寧子と美沙紀は、素早く兎たちとの間にできた隙間を通った。

 それを見てから俺も二人を追うように、兎たちの間を通る。

「紫園、後は頼んだ!!」

「オーケイだよ。任せてよ!来い、村正!!」

 紫園が叫ぶと、右手に日本刀が握られる。

 その力に気付いた兎たちが一斉に紫園に向かって飛び込んでいく。

「作戦通りだね。それじゃあ、全てのものを闇に葬れ!妖刀・村正!!」

 紫園が日本刀を地面に突き刺す。

 そこから紫色の魔法陣が現れる。

 魔法陣の上にいた兎たちは、ぐったりして元気を失くしていく。

 天井にいた兎たちも天井に張り付く力がなくなったらしく、次々に落ちてくる。

 紫園が日本刀を地面から抜くと、兎たちが次々に破裂していく。

 地面でぐったりしていた兎も、天井にまだ張り付いていた兎も、落下途中の兎も血を撒き散らしていた。

 薄暗かった洞窟が一瞬にして血の海と化していた。

「ふぅ、これで掃討完了、と」

 紫園が額の汗を拭う。

 しかし、全身血まみれの身体だったので、血を血で拭っているようにしか見えなかった。

「また派手にやらかしたですね」

「だな。被害がこっちまで来たよ」

「うー、服が血まみれだよー……」

 それぞれが紫園に批判の声を揚げる。

 もちろん、紫園はその批判に不満を持っていた。

「えー、せっかく人が倒したのにその態度はないと思うよ」

「そうだな。そもそも、俺が提案した作戦だしな」

「そうだよ。少しは責任を持ってよ」

「でも、どう責任を取ればいいんだよ」

 紫園は、口元に指を当てながら考えた。

「そうだね。なんなら頭を撫でてくれれば許そうかな?」

「頭を撫でる、か」

 俺は、紫園のところに歩いて行く。

 そして、紫園の前に立つと頭に手を置いて撫でる。

「ん……。男の子だから乱暴に撫でるのかなって思ってら、やさしく撫でてくれるんだ」

「女の子にそんなことできるわけないだろ」

「そう、なんだ」

 紫園は、目を潤ませながら俯いた。

 俺は、紫園の反応に違和感を感じていた。

 俺が紫園の頭を撫でていると、後ろから鋭い視線が刺さってきた。

 紫園の頭から手を離して後ろを向くと、寧子と美沙紀がジト目でこちらを見ていた。

「な、なんだよ。二人とも、微妙な顔をして」

「別に。それにしても、ウミ君は少しフラグを立てすぎじゃない」

「そうですね。まあ、本人があの感じなので言っても無駄でしょうけど」

 二人でこそこそと何かを話している。

 俺には何のことだかさっぱりだった。

「とりあえず美沙紀ちゃん、この血を落としてほしいな」

「仕方ないですね。皆、その場から動かないでください」

 緑のオーラが俺たちを包み込んで、服に付いていた血を消していく。

 流石に地面に付いた血は多かったのか、もしくはしなくてもいいと思ったのか消さなかったようだ。

「さて、これで後はボスを倒して美羽を助けるだけだな」

「そうだね。あと少しか」

 寧子の表情が強張る。

 それを見て、俺も自然と身体に力が入る。

「というか、半日もしないうちにボスのところって大丈夫なのですか」

「あれれ、美沙紀ちゃんは怖いのかな?大丈夫ですよ。お姉ちゃんがいるからね」

「何がお姉ちゃんがいるですか。バカにしないでほしいです」

「もう、デレ屋な妹が!」

「誰が紫園さんの妹なんですか!私はそんなものになった覚えがないです!」

 隣では、美沙紀と紫園が話していた。

 今まで美沙紀を見てきたけど、学園の中ではいじられ役なんだな。

 最初のイメージとは、全く違うな。

「何をジロジロ見てるんですか」

「え、い、いや、何もないけど」

 いかん。

 美沙紀のことを無意識に見てしまっていた。

 そんなことを考えると、顔が熱くなっていくのがわかった。

「もう、何やってんの。もうすぐなんでしょう。早く助けに行こうよ」

「ああ、待ってくださいです。走ると危ないですよ」

 寧子が駆け足で奥の方へ走っていく。

 美沙紀も寧子の後を追って走っていく。

 俺はそれを見ていると、紫園が隣に並んでくる。

「昨日一人だけ集合の時に来なかったのに、なんで指揮を執ってるんだろ」

「あいつは、俺たちとは違って今回の遠征には特別な意味を感じてるんだよ」

「特別な……意味……ね」

 紫園は、笑顔で寧子のことを見ていた。

 しかし、俺は紫園の笑顔が悲しそうに見えた。

「紫園、大丈夫か」

「うん、大丈夫だよ。それよりも私たちもついて行かないと置いてかれちゃうよ」

「そうだな。行くか」

 俺と紫園は、前の二人を追って走っていった。


 暫く走ると、三メートルくらいの大きさの石造りの扉が俺たちの前に立ちはだかった。

 周りには、他に道らしき通路がなかった。

 ここがどうやら、最深部みたいだった。

「ここがボスの部屋でいいのか」

「そうみたいだね。ここから不穏なにおいがすごいするよ」

 紫園が鼻を動かしながら、答える。

 俺には、においまではわからなかったが、今までとは違う雰囲気がするのはわかった。

「なんだか嫌な気配がビンビンするですね」

「扉の前に立ってるだけなのに、鳥肌が立つよ」

 寧子が腕を擦って鳥肌を立たせないようにしている。

「この中に美羽も一緒にいるのか」

「そうだね。てことで、扉を開くタイミングはリーダーに任せるよ」

 紫園は俺の肩を軽く叩いてくる。

 俺は、一瞬だけきょとんとしてしまう。

「え、俺がリーダーなのか?美沙紀じゃないのかよ」

「美沙紀ちゃんはリーダーっていうよりも指示役って感じだからね」

「なんか釈然としないですけど、確かに先ほどの作戦を考えたのも海斗さんでしたし、それに海斗さんは人を引っ張っていけるものを持っていますからね」

 人を引っ張っていけるもの……か。

 俺は、そんなことを意識した覚えはないけどな。

「それじゃあ、俺のタイミングで扉を開けてもいいんだな」

 俺は、後ろを向いて皆に聞いてみる。

 三人とも、俺の顔を見ながら頷く。

「それじゃあ、開けるぞ」

 俺は、扉の前まで歩いて石造りの扉に手を置く。

 そして、重い扉を少しずつ開けていく。

 扉の隙間からは、白い光が射してくる。

 途端に、扉が石とは思えないほどに軽くなる。

 俺は、軽くなった扉を勢い任せで一気に開いた。

 あまりの眩しさに、目を開けれなくなって目を瞑る。

 次に目を開けると、俺の目の前に衝撃の光景が目に入ってきた。

「な、なんだよ……これ」

 俺の目の前には、裸で手足を拘束されて壁に張り付けにされていた美羽の姿があった。

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