## 第一話「おめでとうが言えない日」
# 人の幸せを喜べなかった僕へ
## 第一話「おめでとうが言えない日」
「結婚することになった」
その言葉を聞いた瞬間。
俺――藤崎悠人は、笑顔を作った。
「お、おめでとう!」
口ではそう言った。
ちゃんと言えた。
ちゃんと笑えた。
でも。
胸の奥が痛かった。
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相手は大学時代からの親友、
高橋直人。
俺と同じように就職して。
俺と同じように悩んで。
俺と同じように恋愛が苦手だった男。
そう思っていた。
なのに。
気づけば。
直人には恋人がいて。
結婚が決まり。
新しい人生が始まろうとしていた。
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居酒屋の帰り道。
一人で歩く夜。
春なのに少し寒い。
スマホを見る。
グループLINE。
『直人、おめでとう!』
『式はいつ?』
『絶対行く!』
祝福の言葉が並んでいる。
俺も送った。
『おめでとう!』
たった五文字。
送信。
既読。
それだけ。
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なのに。
なぜだろう。
涙が出そうだった。
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「最低だな……俺」
親友の幸せだ。
喜ぶべきだ。
祝福するべきだ。
それなのに。
心のどこかで。
羨ましいと思ってしまった。
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駅前のベンチ。
缶コーヒーを買って座る。
夜風が冷たい。
自販機の光だけが妙に明るい。
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「何やってんだろ」
三十五歳。
独身。
派遣社員。
貯金は少し。
夢は途中。
恋人なし。
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直人が幸せだから苦しいんじゃない。
違う。
本当は。
自分が幸せじゃないから苦しいんだ。
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その事実に気づいた瞬間。
胸が締め付けられた。
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「俺も……」
ポツリと呟く。
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「俺も幸せになりたかったな」
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夜空を見上げる。
星は見えない。
だけど。
その言葉だけは、
誰にも聞こえないように、
静かに夜へ溶けていった。
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### 次回
## 第二話「嫉妬は悪者ですか?」
親友の結婚。
祝福できない自分。
そんな悠人の前に現れたのは、
いつも屋上で本を読んでいる不思議な女性だった。
彼女は言う。
「嫉妬できる人は、まだ夢を諦めていない人ですよ」
止まっていた心が、
少しだけ動き始める――。




