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工房作り

「次はどこ行く?」


パン食べて、服買って、串肉食べてー何か食べてばっかりだな。


「魔水晶とか見たいなーって思ったり?」


私とソフィーなら大体のものが作れるが、確かにお店のものも見ておきたい。


「いいよ、行こう!」


魔水晶を取り扱っている店は多くはない。

治癒魔法が使えない人必須の《回復》等は露店で売っていたりもするが、作るのが難しいため、流通量は少ない。



「結構いろいろある…のかな?」


着いた店には《回復》はもちろん、《閃光》や《火球》《水球》等、一般的なものが売っていた。

…まぁ、品質の方はあれだが、私達が持ってるものが異常なだけだから気にしないでおこう。


「うわ…結構高いんだね…」


普通の品質の《回復》が1個2,500メルク。

高品質のものに関しては1個10,000メルクだ。

それでも、最高品質には遠く及ばないが。


「どうする?買う?」


「いや、ちょっと…」


「私も遠慮しておきます…」


まぁ、そうだよね。


「出よっか」


2人がちょっと落ち込んだ表情を浮かべていたので、「少しなら作れるよ」っと囁いた。

その途端、ぱぁぁと明るい笑顔になった。

わかりやすいな、と苦笑しつつ通りに出る。


他にも、魔石や素材、装飾品などを見て回ったが、結局作った方がいいということで寮に戻ることにした。


「いやー、でも楽しかったね!」


「うん!服とか片付けたいし、また夕食の時にね!」



それぞれが自分の部屋に入る。


「ノエル、ごめんね!出て来ていいよ!」


ソファに座って、指輪に呼びかける。


『ん、お帰り、ティア』


「ただいま。ノエルとネージュにお土産だよ』


収納魔法から、串肉を3本取り出す。


「えっ!?ティア、いつの間に?」


『ありがとー!』


『美味しそう!』


串に刺さった状態では食べ辛いかと思ったが、前足を器用に使って食べているので安心した。

収納魔法に入れておけば冷えないし腐らないし…便利だな!


「あとさ、素材とかたくさんあるし、工房的なの欲しいよね」


「あー、それ思ったー!でも、空いてる部屋なんてないしね…」


勉強机は寝室に置いてあるし、他にはリビングやお風呂があるが、工房にするのはちょっと…


「今更増やせないし…工房付きの設計なんてなかったけど」


うーん…と考えていると、


『宝箱から出たものの中に、空間を作れるやつがあったよ』


『空間拡張魔法を使えばいいんじゃない?』


ノエルとネージュから思わぬアドバイスが。


『例えば光・風・氷で幻覚魔法が使えるみたいに、属性を合わせれば空間魔法も使えるんだよね。まぁ、2人には関係ないけど』


私達は全属性だから、出来ないことはほとんどないだろう。


『魔石は…1番は氷属性かな〜。《空間》の魔水晶もあったけど…』


魔水晶は1度使えばそれっきりだ。

幸い、最高品質の魔石があるし、作ってみるか。


『ティアとソフィーは何回も工房を使うだろう?魔法石を作った方がいいよ』


『それもそうだね。じゃあ、その方向でやろうか』


魔水晶は1度使えば壊れてしまう。

その代わり、自分の使えない魔法でも魔力があれば使えるというメリットがあるわけだが、今はデメリットの方が大きい。

常に動かしておきたい魔法、例えば結界などは魔石に魔法陣を刻み、魔石に魔力を注ぐことで起動するという方法を取る。

便利な魔法石だが、その分作るのが難しいのだ。


『じゃあ、今回はボクが場所を作るよ。ネージュ』


『うん!また後でね』


私達が口を挟む間も無く、ノエルとネージュが前足を上げた。

その先に光が集い、私とソフィーを包み込んでいくー


気がつけば、私は何もない真っ白な空間にいた。


「ノエル?」


傍らには、いつも通り空中に立つノエルが。


『うん?さて、仮工房ってことだから…机はいるか』


ノエルがそう呟くと、目の前に大きい机が現れた。


『他に何か必要なものある?』


「んー、大丈夫じゃないかな」


これが精霊魔法によるものだということはわかる。

だが、空間魔法はとても難しい(人間基準)し、創造魔法も無詠唱で行うというのは…大精霊の偉大さがわかった気がする。

まぁ、ここはノエルの好意に甘えさせてもらうことにして、収納魔法を開く。

魔石、《空間》の魔水晶、魔力ペンなどを取り出して机の上に並べる。

その間にノエルは、『真っ白だと面白みが無いよね』と、空間に色を付けていて、顔を上げると空間は工房のような景色に様変わりしていた。


『ティアにには不要な気もするけど、一応説明しながらやるね。まず、魔水晶をかざしてみて』


透き通った水色の魔水晶を透かして見ると、刻まれた魔法陣が読めた。


『それが空間の魔法陣だから、それを魔石に刻むよ。魔石は染め終わってる?』


「ん、ちょっと待ってね。ほとんど空の状態だったから、もう少しで終わるはず」


魔法石を作る場合、魔石に自分の魔力を流し込み、自分の魔力で染める必要がある。

その工程を怠ると、魔石の魔力と反発し、上手く魔法陣を刻むことが出来ない。

先程から手の中に握っていた、最高品質の氷属性の魔石に目をやる。

もう少しで終わるはずだ。

流していた魔力の量を増やすと、魔石がかっと光った。


「終わったよ」


『お疲れ様!じゃあ、魔水晶に刻まれている魔法陣を写そうか』


魔力ペンを取り出し、魔石の1㎝程真上に魔法陣を描く。

緻密で繊細な魔法陣を、正確に描かなければいけないのだ。

集中力も必要だし、何より、魔力の扱いに長けていなければ、細かい線を描くことが出来ない。


『座標位置固定、中心部を魔石にしておけば、持ち運び可能な工房になるよ』


「うん。簡易的な結界も組み込むつもり」


魔水晶にはなかった部分を、アレンジで加えていく。

下手をすると、魔法陣自体が成り立たなくなってしまうので、慎重に慎重を重ねて描き進める。


「…よし、後は魔石に刻んでっと」


ここから先はイメージだ。

完成した魔法陣を魔石にコテで焼き付ける、魔力を糸に見立てて縫い付ける、等個人によって違うが、魔力を込めてしまうと魔法陣が発動してしまうので、気は抜けない。


「…ふぅ」


刻めたら、魔石自体を強化出来るような素材を探す。

ー今回はこの金属で良いだろう。


そうして加工すること約1時間。


「ー出来たっ!」


薄い金属で装飾が施された、水色の球体。

その中には金色の魔法陣が浮かび上がっている。


『すごいね、ティア!とても綺麗だ。じゃあ、魔法を解除するよ』


ノエルがふっと前足を上げると、目の前の机が光の粒に変わって崩れていく。

いや、机だけではない。

周りの景色、空間そのものがさらさらと崩れ、消えていくー


光の奔流が収まった時、周囲は寮の自室に様変わりしていた。


「流石だね、ノエル」


『そう?じゃ、早速工房の中に入ってみようよ』


出来上がったばかりの魔法石に、魔力を流す。

魔法陣に光の線が走り、はっきりと浮かび上がった。


魔法陣の光に包まれたかと思うと、そこは工房(今は空っぽだが)だった。


「なんか今日、移動してばっかり…」


創造魔法で、机や棚などを創っていく。

ノエルが手を貸してくれたので、だいぶ丈夫なはずだ。

収納魔法から魔石や素材等を取り出して並べれば、工房の完成だ。


「うん、結構いい感じ!」


そういえば、リア達、魔水晶欲しがってたな。

土属性の魔石ならあるので、《回復》は作れるだろうが、他は足りないかな。


「…またダンジョンに行くか」


いろいろな魔物がたくさんいるお手頃なダンジョン、ないかな?



工房の魔法石を収納魔法に仕舞い、リビングでソフィーを待つ。

ノエル曰く、もう少しで終わるとのことなのだが…


「ねぇ、なんでソフィーの様子がわかるの?」


『ん?ボクは、ネージュの状態が何となくならわかるからね。そこから推測したんだ』


すごいな、ノエル。

その台詞が終わるや否や、光と共にソフィーが現れた。


「ソフィー、出来た?」


「うん!後は確認だけだから、ちょっと待っててね」


ソフィーの手に握られている魔石は、金属の意匠こそ違えど、私とそっくりだった。

今度は魔法陣の光に包まれたソフィーを見送りながら、ノエルに「《星降夜》なんだけどさ」と話しかける。


「あれ使ったら、どんなことになると思う?」


『使うって、王都でかい?どれだけ魔力を注ぐかにもよると思うけど、中心部の壊滅は免れないだろうね。全力でやったら王都と周辺の領は滅びるんじゃないかな?…国を滅ぼす気になったの?』


「いやいや!そんなわけないじゃん!ただ、威力が気になっただけ。でも、それだけ強いなら使うのは控えた方がいいのかな?」


『うーん、ダンジョン内だったら問題ないと思うよ。あそこは基本、外とは隔絶されている空間だからね。魔物の殲滅なら《流星群》でも問題ないと思うけど』


じゃあ、今度ダンジョンで使おうかな。


『国を滅ぼしたくなったら言ってね。世界ならともかく、この国だったら精霊王様も怒らないと思うし』


後ろでノエルがぶつぶつと不穏なことを言っているが、本気ではないだろう。



工房の確認を終えてソフィーが戻って来た。


「お帰り。ね、ダンジョン行かない?」


「今から!?まぁ、いいけど…エマとリアとすれ違っちゃったらどうしよう?ご飯、一緒に行くって」


「あー、そうだね。じゃあ、私と交互に…はダメか」


1人で行くことは禁止されてるんだった。

正確にはノエルもいるので1人ではないのだろうが…その言い訳が通用するとは思えない。


「一応メモ残して…いや、直接伝えてから行こう」


なぜ今日にこだわるのかと言うと、明日から1週間が始まるからだ。


「じゃあ、私はエマの方行くから、ティアはリアに伝えて来て」


「了解!」


リアの部屋の扉をノックすると、今日買ったばかりの新品の服を着たリアが顔を出した。


「あれ、ティア?どうしたんですか?」


「その、ご飯なんだけど…もしかしたら私とソフィーが部屋にいないかもだから、もしいなかったら先に行っててくれる?」


きょとん、と首を傾げるリア。

だが、余計な詮索はせず、「わかりました!エマと行きます!」と答えてくれた。


「ありがと、ごめんね」



ダンジョンの入り口に移動する。

前回とは違う場所だ。


「…で、今日はここにするの?」


「うん。いろんな属性の魔石が欲しいなって思って」


面倒な届けを書きながらソフィーの問いに答える。


「そっか。ティア、もしかしてあの魔法試そうとしてる?」


あの魔法、というのは宝箱から取得した魔法のことだろう。


「やっぱ1度は使ってみたくない?」


「うんうん!あ、じゃあさ、提案があるんだけど…」

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