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鍵を握るシャル

ネビール王国の国境を越えてすぐ私はクリスが用意してくれたワンピースに着替えた。普段着ているドレスよりずっと軽い。乗馬の時にズボンをはくけれどそれ以外の洋服は着たことがなかった。動きやすいけれどこれじゃ庶民ね。あ、そうゆう体で過ごすのだったわね。これもクラークのため。

それで、話は戻るけれど、クリスが用意してくれたワンピースは淡いピンク色の足首までの丈のもの。刺繍が襟や裾にされていてウエストよりも高い位置が少し細くなっている。



「よくお似合いです、ね、、、。」


「なあに?」


「いえ。似合っていると申し上げて良かったのかと、、、。」


「いいわよ。この生活のスタイルに馴染んでるってことでしょう。」


「は、はい。」


「ところでまずどうするの?」


「ここはリューク王国です。ここにはまあいないでしょうね。旅に必要最低限の食料などは用意してありますし先を急ぎましょう。王族の関係者はニーナ様のことを知っていますから王宮には近づかないようにして、それからまちにも歩いているかも知れませんから注意は必要です。」


「わかったわ。」



私たちは出来るだけ人の多い場所を避けるため、市場を通らず農村地帯をまっすぐ進んでいった。




「クリス。あの黒い物体はなに?」


「はい?黒い、、、ああ、って、えッッ!?」


「大丈夫?」


「私よりニーナ様の方が心配ですよ。あれは犬ではないですか。野良犬ですね。」


「犬!?真っ黒で、あっ、泥?」


「そうですね。先程のニーナ様のように泥沼に入ってしまったのでしょう。」


「親近感があるわ、、、どうしましょう?」


「あ、あちらに都合良く井戸がありますよ。」


「本当ね。クリス、あの犬を洗ってあげて。」


「はい。おいで、わんちゃん、、、来ましたね。警戒しないのですね。あら?」


「私の方に来ちゃったわ。」


「ニーナ様の方が良いようすですね。」


「私が洗うの!?」


「私が寄っても逃げてしまいますし、、、困りましたね。」


「放っておく、、、?」


「よろしいので?」


「うーん、私は王女なのよ?」


「そうですね。では先を行きましょうか。」


「クーン」


「あら、鳴いた。困ったわね、、、。」


「以前のニーナ様でしたら迷わず洗っていましたのにね。」


「え?」


「いえ。なんでもありません。(まだ時期ではない。そう王妃様が、、、。)」


「とりあえずここは2人でどうにかしましょうか。」


「そうですね。このわんちゃんにはニーナ様も一緒にということで折れてもらいましょう。そうゆうことで良いですか、わんちゃん?」


「ワン!」




私がお座りと待てを命令すると言う通りにしたのでクリスが井戸から水を汲んでクリスが水をこのわんちゃんにかけた。



「わー、真っ白ね!!このこが鏡をみたらきっと驚いていたわね。本当に別犬だもの。」


「そうですね。それにしても野良犬なのに全く人を警戒しないですね。」


「元々飼われていたからではないの?」


「それはそうですが、飼われて捨てられたのなら人のことを怖がったり警戒したりしてもおかしくはありません。」


「捨てられても人が好きなら喜んで寄ってくるのではない?何か気になるの?」


「はい。少しこのわんちゃんを連れて誰かに話を聞いてみましょう。」


「?わかったわ。」


「あ、あそこの家から人が出てきましたね。――すみません。」


「ん?なんだい?おや、見ない顔だね。」


「はい、旅をしているんです。あの、この犬を見たことはありませんか?」


「え?あー!!シャルじゃないか!!」


「知っているのですか?」


「知ってるよ。ずっと捜していたのにどこに行ってたんだ。」


「黒い犬なら見かけたのではないですか?」


「ああそうだな。シャルがいなくなってしばらくしてから黒い犬をこの辺りでよく見かけるようになったんだよ。」


「その黒い犬がこのわんちゃんなんです。泥まみれになっていたんです。誰が飼っていたか知っていますか?」


「ミシェルという女の子だよ。もうこの国にはいないんだがね。」


「―クリス、この話がなにか私たちに関係があるの?」


「―今女の子と言ったではないですか。」


「―だから女の子を捜しているわけではないじゃない。」


「あの、その女の子というのはいくつぐらいなのでしょうか?」


「20歳だよ。おや、女の子って歳じゃないね。ごめんねえ、お嬢さん、小さい頃から知っているもんだから。」


「いいえ、良いんですよ。その女性は今どこに?」


「それがわからないんだよ。実はこの国の王子様と国外に出ていってしまったんだ。家族も一緒に。」


「えっ?それって!?」


「大変な騒ぎになってねえ。国王様はシャルなら飼い主の匂いがわかるのではないかとシャルを捜していたんだがみつからなくて。そうかい、真っ黒な犬になっていたのか。ははは。」


「国王様に伝えなくて良いんですか?」


「ん?そうだね、良いんじゃないかな?」


「なぜですか?」


「幸せになって欲しいんだよ。王子様も度々こんな小さな農村を訪れて私たちの話を聞いてくださっていたし、だから2人には幸せになって欲しい。」


「そうですか。ではこのシャルは私たちが引き取っても良いですか?」


「え?ああ、良いよ。よく見たらそっちのお嬢さんはミシェルに雰囲気が似てるしね。シャルがよくなついてるわけだ。」


「ありがとうございます。ミシェルさんはニーナ様に似ているんですか?」


「ニーナ様?」


「い、いえっ!あ、えっと、、、様と聞こえましたか?私はニーナさんと言ったつもりだったんですが。」


「聞き間違えか。おじさんもう耳が悪くてねえ。」


「いいえー。あはははは。」


「まあ顔とかがというんじゃなくて、なんとなく、そう、意思の強さや強い憂いの感情みたいなのが、かな。」


「わかるのですか?」


「長く生きていればなんとなくね。でもよく知った仲ならそういったことはわかるんじゃないかな。」


「そうなのですか。」


「ありがとうございました。それでは私たちは失礼します。」


「ああ。気をつけてね。」


「はい。」



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