1-11 魔法を発動させるためには
「それで、どうやったらできるんですか?」
画面を介さない【領域調整】の必要性は理解した。
だが、初心者の僕にはそのやり方がまったくわからない。
「そういえば、タケル様は魔法のない世界の出身なんですよね」
「そうだね」
「そんなところでまともに生活できるんですか?」
イスティさんが怪訝そうな表情になる。
魔法で発展してきた異世界だからこその反応だろう。
「結構発展はしていると思うよ。夜でも外出できるほど灯りがあるし、食材も選り好みしなければ不足はしないな。あと、普通に歩いたり走ったりするより何倍も早く移動できたりもするな」
「タケル様の同郷の方々がそのような話をしていたという情報がありますが、本当なんですね。今まであまり信じられていなかったようですが、ここまで一緒なら信じざるを得ないですね」
「信じられてなかったんですね」
過去に僕と同じような立場の人がいたのに、信じられていなかったのが意外だった。
だが、この魔法が当たり前の世界で科学技術が発展した世界の話は信じにくいのかもしれない。
僕にとっての魔法も同じである。
この異世界では当たり前のものだが、僕にとっては信じられないファンタジーの技術なのだ。
「とりあえず、魔法を学び始める子供と同じレベルでよろしいですか?」
「それでいいですよ。初心者だから、仕方がない」
僕のプライドとか考えてくれているのだろう。
だが、その程度で怒りを覚えるほどプライドなど持ち合わせていない。
伊達に引きこもりをしていない。
「では、さっそく始めましょう」
「よろしくお願いします」
「魔法を使うのに必要なモノは何だと思いますか?」
「魔法に必要なモノ? 魔力ですか?」
イスティさんの問いに少し考えて答える。
魔力の存在はすでに説明を受けている。
なので、問題なく答えられた。
「その通りです。しかし、実はもう一つ必要なモノがあります。想像力です」
「想像力?」
予想外の内容に思わず聞き返してしまった。
なぜそれが必要になってくるのだろうか?
疑問に思っているのが分かったのだろう、イスティさんは説明を続ける。
「魔力とはただのエネルギーです。色のついていない水のようなものですね」
「色のついていない水?」
イマイチ想像ができない。
どうしてそのような話をするのだろうか?
「もし、魔力に色がついていると仮定したら、どうなると思いますか?」
「え? 別に普通に魔法を使えるんじゃないですか?」
質問され、僕は思ったことを口にする。
魔力があるのなら、魔法を使えるのが普通だろう。
しかし、イスティさんは首を横に振る。
「1種類の属性ならそれで問題はないです。ですが、2種類以上の属性を使う者の場合はどうでしょうか?」
「それでも、体内で魔力を作れば・・・・・・あっ!」
ここで問題点に気づいた。
魔力に色──つまり、属性があった場合に起こりうることに。
「2種類以上の属性を使う場合、当然体内でその数の魔力が生成されます。その場合、魔法を使うときにそれぞれに合わせた魔力を使う必要があります」
「それは面倒ですね」
聞いているだけでやりづらそうだ。
魔法を使い分けるためにいちいち使う魔力を変えるのは明らかに手間だろう。
「その点、魔力に属性がないのなら、使い分けをする必要がありません。一つの魔力で様々な種類の魔法を使うことができます」
「理屈としてはわかったよ。でも、一つの魔力で様々な種類の魔法なんて使えるの?」
「それが想像力です」
「む?」
ここまでの説明は理解したつもりだが、想像力の必要性がわからない。
どうしてここで想像する必要があるのだろうか?
「例えば、タケル様が【領域調整】を使う際、呪文を唱えるだけでできると思いますか?」
「え? できるんじゃないの?」
「では、モノを動かす作業と領域の構成を変えたりする作業を同じ呪文でできますか?」
「それは・・・・・・無理なのかな?」
できると思った作業も改めて考えると難しいのかもしれない。
たしかに同じ【領域調整】でできることだろうが、同じ呪文で発動できそうにない。
「大事なのは魔力をどのように変化させるのかを思い浮かべる力です。そうすることで思うように魔力を魔法に変化させられます」
「だから、想像力が必要になってくるのか」
ようやく理解できた気がする。
ここまで長かった。
しかし、これがこの世界の子供が習う内容か。
意外と難しくて、驚いてしまった。
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