1-9 【領域調整】の訓練を開始する
「じゃあ、さっそく練習しましょう」
「いきなり? まあ、いいですけど」
急に練習が始まって驚いたが、あっさり納得する。
この世界に来て、僕ができることは練習以外ないだろう。
少しでも早く【領域調整】を使いこなせるようになるべきだ。
「では、まずはこれです」
「箱?」
イスティさんが取り出したのは箱だった。
何の変哲も無いただの箱。
一体、何をするつもりなのだろうか?
彼女は箱をその場におく。
「この箱をここから部屋の端に移動させてください」
「それぐらいなら」
言われたとおり、箱を動かすためにその場にしゃがみ込もうとする。
だが、頭を棒で止められる。
いつのまにか、イスティさんは指し棒を持っていた。
「違います。【領域調整】を使って、移動させてください」
「そりゃそうか」
【領域調整】の練習なのだから、それを使うのが当然である。
僕は昨日と同じように【領域調整】の画面を映し出す。
部屋の見取り図を確認すると、彼女の目の前に箱があった。
だが、ここで一つ問題が起こった。
移動のさせ方がまったくわからなかった。
とりあえず、画面を触ってみるか?
(ヒュッ)
「おっ!」
画面に触れた瞬間、箱を表わしてた部分がひっついた気がした。
指を軽く動かすと、それに合わせてついてきた。
現実の箱も同様だった。
どうやらこの方法でできるようだ。
そのまま箱を部屋の隅に移動させる。
「よくできました。まさか一発でできるとは思いませんでした」
「簡単でしたよ。画面を操作すればよかったので」
「画面? 何を言ってるんですか?」
イスティさんが反応する。
彼女こそ何を言っているのだろうか?
「僕の目の前にあるでしょう。この部屋のことがわかる画面が・・・・・・」
「何もないですね」
「えっ⁉」
こちらが驚く番だった。
僕の目には明らかに画面が見える。
それなのに、イスティさんは何もないと言っている。
一体、どういうことなのだろうか?
「ふむ・・・・・・おそらくタケル様にしか見えない状態なのでしょう。【領域調整】の使用者だからでしょうか」
「ああ、そういうことか」
すぐに疑問は解決した。
僕にしか見えないのは、僕が【領域調整】の使用者だからか。
改めて考えれば、当然のことだろう。
「ちなみにその画面にはどんなことがありますか?」
「えっと、この部屋の間取りと何が置いてあるのかですね」
「それだけですか。おそらくできることが映し出されているのでしょうが、ルーキーのタケル様はまだそこまで大したことができないわけですね」
「・・・・・・すみません」
「謝る必要は無いですよ。いくら魔王の才能があっても、初めは誰しもそんなものです」
謝罪をすると、イスティさんは気にしないように言ってくる。
もっと最初から期待されるものだと思っていたが、意外とそんなことはなかったようだ。
まあ、僕としてはありがたい話である。
「ちなみに部屋の間取りはどんな風に見れますか?」
「どんな風に、ですか? とりあえず、上から見ている感じですね。部屋が四角で表わされて、どこに何があるのかがわかります」
「なるほど」
僕の説明を聞き、イスティさんが少し考え込む。
そして、何か閃いたようで、近くにあった大きめの棚を移動させる。
「では、今度はあの箱を反対側の隅に移動させてください」
「それぐらいなら簡単──」
「ただし、その際にこの棚の上を越えてください」
「了解です──あれ?」
彼女の言われたとおりに箱を動かそうとした。
だが、箱は棚を越えることができなかった。
棚の真ん中辺りにぶつかってしまった。
「一旦、棚を下ろしてください」
「・・・・・・はい」
イスティさんの言葉に従う。
いきなり思った通りできなかったことにショックを受ける。
「心配しなくても大丈夫です。こうなると予想していましたから」
「え?」
あっさりと告げるイスティさんの言葉に驚きを隠せなかった。
彼女は先程、【領域調整】の画面についてまったく知らない様子だった。
それなのに、この事態を予想できていたのだろうか?
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