第526話 勝ち残った八人
新連載スタート!
《剣聖》になった弟に家を追い出された俺のスキルは《会員》でした
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お手すきの際に是非!
試合場を出て選手用の待機場所へ戻ると、ガイルがすぐに近づいてきた。
「リオン! 最後のやつ、すごかったな!」
「ありがとう」
「朝の訓練で使ったやつだな!」
「うん。なんとか勝ててよかったよ」
「そうか!ダメージなさそうでよかったな!」
ガイルはなぜか嬉しそうだ。
「準決勝まで来いよ! また俺にも使え!」
「その前にガイルも二回勝たないとね」
「分かってる!」
相変わらず自信満々だ。
そんな話をしているうちに、第二試合の選手が入場してきた。
リゼット・カルナ。
A級冒険者。
俺が一回戦を勝ったことで、この試合の勝者が次の相手になる。
「見ていくか」
「もちろん」
ガイルと一緒に、選手用の観戦場所から試合場を見る。
反対側から出てきたのはマルクス・エヴァン。
ヴァレスト公爵領騎士団所属の騎士だ。
二人が王族席へ礼をして、それぞれ武器を構える。
マルクスは剣を正面に構えた。
さっきのダリウスと似ている。
重心を崩さず、相手の動きを見ながら対応する騎士らしい構え。
それに対して。
「……あれ?」
リゼットは剣先を下げている。
構えているようにも見えるけど、隙が多い。
「始め!」
審判の合図。
先に動いたのはマルクスだった。
真っ直ぐ踏み込み、剣を振る。
リゼットが身体を傾けてかわした。
かなりぎりぎりだ。
そこから普通なら剣を返す。
でも。
「え?」
リゼットは身体を低くしたまま、マルクスさんの横をすり抜けた。
同時に風魔法。
身体が横へ一気に流れる。
マルクスが振り返る。
そこへ剣を振りぬく。
受ける。
リゼットが離れる。
今度は正面から走った。
また真っ直ぐ?
そう思った瞬間。
火魔法。
狙ったのはマルクスではなく、その横。
「俺と同じ戦い方?」
反射的にマルクスが身体をずらす。
そこへリゼットが潜り込んで剣を振る。
マルクスに受けられる。
リゼットはすぐに身体を回す。
今度は蹴り。
マルクスが下がった。
「何でもありだな」
ガイルが楽しそうに言う。
「うん」
俺も同じことを思った。
騎士のように、決まった形から剣を出すわけじゃない。
姿勢が崩れていても攻撃する。
剣を振った直後に魔法。
魔法を使ったと思ったら、低い姿勢から一気に懐へ入る。
綺麗じゃない。
「すごく戦いにくそうだな」
「ああ!」
マルクスも対応している。
剣だけなら、おそらくマルクスの方が上だ。
だけど攻防を重ねるうちに、少しずつ動きが後手に回り始めた。
リゼットが地面へ水魔法を放つ。
「これも俺と同じ」
マルクスが足元を警戒する。
その瞬間、リゼットは自分から濡れた場所へ踏み込んだ。
「なっ!」
滑る。
でも転ばない。
滑った勢いのまま身体を低くし、マルクスの横へ抜ける。
そのまま剣を脇腹へ。
バシッ!
「ぐっ!」
マルクスが膝をついた。
審判が間へ入る。
「そこまで! 勝者、リゼット・カルナ!」
観客席から歓声が上がった。
リゼットは剣を肩へ乗せ、何事もなかったように試合場を出ていく。
「俺と同じ戦い方で勝ったか」
「次はあいつとやるのか!いいな!」
「ガイルが戦うわけじゃないよ」
ただ、俺も少し楽しみになっていた。
さっきのダリウスとは、全然違う。
騎士とは違う戦い方。
冒険者として実戦を重ねてきた人の戦い方なんだと思う。
次は、あの人だ。
◇
「ガイル・ベイルン選手。準備をお願いします」
「おう!」
第三試合。
今度はガイルの番だ。
「じゃあ、行ってくる!」
「頑張って」
「勝ってくる!」
大剣を肩に乗せ大きな足音を立てながら、ガイルが通路へ消えていった。
少しして試合場へ現れる。
「ガイルさん! 頑張ってください!」
観客席からナディアの声が聞こえた。
ガイルにも届いたのか、大きく手を上げる。
対するのは王宮魔術士、エルマー・ディーン。
二人が王族席へ礼をする。
そして試合開始。
「始め!」
エルマーは開始と同時に大きく後ろへ下がった。
まあ、そうなるよね。
ガイルと近距離で戦う必要はない。
「行くぞ!」
ガイルが走る。
すぐに火球が飛んできた。
「おっ!」
横へかわす。
次は風刃。
真正面から受け、少しガイルの身体が押される。
でも止まらない。
「まだまだ!」
距離を詰める。
エルマーはさらに下がりながら水魔法の弾を放つ。
ガイルがかわす。
また火球。
今度はかわしきれない。
ドンッ!
胸に直撃した。
「ガイルさん!」
ナディアが立ち上がる。
煙が上がり、観客席もざわついた。
でも。
「効いたぞ!」
煙の中からガイルが出てきた。
普通に走っている。
「……あれで?」
思わず声が出た。
エルマーも一瞬動きが止まった。
そこへガイルが進む。
「風刃!」
また正面から受けた。
「ぐっ!」
身体が一歩下がる。
それでもまた進む。
次の火球は肩へ直撃。
なのに止まらない。
「おおおおっ!」
ガイルが一気に距離を詰めた。
「なっ!」
エルマーが慌てて魔法を使おうとする。
遅い。
「捕まえた!」
「え?」
ガイルが身体ごと抱えた。
「ちょ、待――」
「ふんっ!」
そのまま持ち上げる。
そして。
「おりゃあ!」
投げた。
「うわあああっ!」
エルマーの身体が宙を飛ぶ。
そのまま試合場の外へ落ちた。
一瞬の静寂。
審判が場外を確認する。
「そこまで! 勝者、ガイル・ベイルン!」
会場が一気に沸いた。
「ガイルさん! おめでとうございます!」
ナディアが満面の笑みで拍手している。
ガイルが気づくと、大きく手を上げた。
やっぱりガイルだ。
何をするかは、すごく分かりやすい。
近づき、捕まえ、投げる。
なのに、分かっていても止められない。
俺とは全然違う。
◇
第四試合。
グレゴール・バイス。
王宮騎士団。
対するのはB級冒険者、ラウル・ゼイン。
ラウルはリゼットほどではないけど、やはり騎士とは違う動きをした。
剣の振り方。
間合いの取り方。
突然身体を低くしたり、左右へ大きく動いたりする。
でも、グレゴールは崩れなかった。
追いすぎない。
慌てない。
一つずつ攻撃を受け、少しずつ間合いを詰めていく。
最後はラウルの大きな一撃を受け流し、そのまま懐へ。
胸元へ木剣を叩き込んだ。
「そこまで! 勝者、グレゴール・バイス!」
派手ではないが強い。
◇
「グレゴールもよく鍛えているな」
王族専用席。
国王が満足そうに言った。
「はい。相手の動きに付き合わず、自分の間合いを崩しませんでした」
アルフレッド第一王子も頷く。
「日頃の鍛錬がよく出ています」
「こういう騎士が増えるのはいいことだ」
国王はもう一度、試合場へ目を向けた。
◇
第五試合。
アルベルト・グランツ。
王宮騎士団第三隊隊長。
今大会の優勝候補筆頭。
対するのは。
「フェルナンドさん!」
観客席からミラの声が聞こえた。
フェルナンド・ロイス。
ハーウェイ侯爵領騎士団。
ミラも知っている騎士らしい。
「頑張ってー!」
「ピー!」
ピコも一緒に鳴いている。
フェルナンドも、その声が聞こえたのか軽く手を上げた。
試合開始。
フェルナンドが先に踏み込んだ。
鋭い。
木剣がアルベルトへ迫る。
でも。
「え?」
アルベルトは半歩動いただけだった。
剣が横を通る。
そのままフェルナンドの手首付近へ木剣を当てる。
「っ!」
握りが緩む。
アルベルトが前へ圧力をかけるとフェルナンドが体勢を崩す。
次の瞬間には、木剣がフェルナンドの首元へ止まっていた。
「そこまで!」
早い。
本当に。
ほとんど何もさせていない。
「勝者、アルベルト・グランツ!」
大きな歓声。
観客席。
「えぇ……」
ミラが呆然としている。
「フェルナンドさん……」
「ピー……」
ピコまで少し元気がない。
気持ちは分かる。
フェルナンドが弱かったようには見えなかった。
それでも、あの差だった。
◇
「さすがだな」
国王が言った。
「前回準優勝は伊達ではない」
「はい」
アルフレッドが頷く。
「無駄がありませんね」
「二十二歳で第三隊を任されているだけのことはある」
「今大会の優勝候補筆頭という評価も、大げさではなさそうです」
国王が小さく頷いた。
◇
第六試合。
エリオット・バーンズ。
宮廷魔術師。
対するのはヴァレスト公爵領騎士団のロイド・バルガス。
試合が始まってすぐに、さっきまでとは違う展開になった。
エリオットは剣を使わない。
ひたすら魔法。
ロイドが近づこうとする。
エリオットは風刃で押し戻す。
ロイドはもう一度前へ。
今度は大きな火魔法を放つ。
なんとか避けるロイド。
そこへすかさず水の弾丸を飛ばす。
「くっ!」
ロイドが身体を捻る。
でもエリオットは止まらない。
火。
風。
水。
一つの魔法が終わる前に、次が来る。
「すごいな」
隣でガイルが言った。
自分の試合を終えたあと、また俺の隣へ戻ってきていた。
「うん」
俺とは違う。
俺は魔法と剣を混ぜる。
エリオットは、魔法だけで相手を動かしている。
ロイドも何度か距離を詰めた。
でも、最後まで剣は届かなかった。
火を避けた先へ水。
体勢が崩れたところへ風。
「ぐっ!」
ロイドが地面へ倒れる。
すぐに起き上がろうとする。
そこへ、さらに火球が目の前へ。
ピタリと止まった。
あと少し進めば直撃する距離。
「……参った」
ロイドが木剣を下ろした。
「勝者、エリオット・バーンズ!」
魔法だけで、最後まで自分の距離を保ったまま勝った。
◇
王族専用席。
セレナは何も言わずに拍手していた。
表情もほとんど変わらない。
ただ、エドガーが横から小さな声で言う。
「ロイドも悪くなかった」
「分かってるわ」
「何度か間合いには入っていた」
「ええ」
セレナが試合場を見る。
「それでも負けたのは悔しいけど」
「そうだな」
「次はもっと強くなってもらうわ」
エドガーが少し笑った。
「ヴァレスト家らしいな」
「当然でしょう」
セレナは前を向いたまま答えた。
◇
第七試合。
カイン・ロッソ。
王宮騎士団。
ディート・ハーゲン。
傭兵。
俺とガイルは、その試合も並んで見ていた。
最初に押したのはカインさんだった。
速い。
剣筋も綺麗だ。
ディートさんは後ろへ下がりながら受けている。
「王宮騎士の方が強そうだな」
ガイルが言う。
「今のところはね」
でも、何となく気になる。
ディートは押されているのに、慌てていない。
ぎりぎりで受ける。
一歩下がる。
また受ける。
必要以上に動かない。
カインの木剣が肩へ届きそうになる。
ディートがわずかに身体をずらす。
完全には避けない。
木剣が肩をかすめた。
その瞬間。
「なっ!」
ディートが前へ出た。
近い。
カインが剣を振り切った直後。
懐。
肩がぶつかる。
体勢が崩れる。
そこへ木剣。
脇腹。
バシッ!
「ぐっ!」
カインが下がる。
ディートは追わない。
「……」
「リオン」
「うん」
ガイルも気づいたらしい。
「あいつ、強いな」
「俺もそう思う」
派手じゃない。
でも、相手がどう動くかをずっと見ている。
必要なら自分も多少の攻撃を受ける。
その代わり、一番欲しい位置を取る。
戦い慣れてる。
騎士とも冒険者とも違う。
これが傭兵の戦い方なのかな。
その後もカインが攻める。
ディートは受ける。
かわす。
時には浅く食らう。
でも少しずつ、カインの方が焦っていった。
大きく踏み込んだ瞬間。
ディートが半歩横へ。
木剣を流す。
カインの身体が前へ出る。
その背中へ。
ドンッ!
木剣が入った。
「そこまで!」
審判が手を上げる。
「勝者、ディート・ハーゲン!」
観客席がどよめいた。
王宮騎士が負けた。
それだけでも驚きなんだと思う。
「覚えておこう」
俺が言う。
「俺も!」
ガイルが嬉しそうに答えた。
◇
「カインが負けたか」
国王が少し残念そうに言った。
「最後まで攻めてはいました」
アルフレッド第一王子が答える。
「ああ。カインが悪かったわけではない」
国王がディートを見る。
「ハーゲンという傭兵が上だったな」
「実戦経験がかなりありそうです」
「負けは負けだ。相手が強かったのなら認めるしかあるまい」
国王はそう言って、ディートへ拍手を送った。
◇
一回戦最後の第八試合。
ロベルト・クレイン。
サリオス伯爵領騎士団副団長。
対するのは宮廷魔術師、ミレーヌ・アスター。
この試合は。
「すごいな……」
ほとんど一方的だった。
ロベルトが前へ出ようとするが、ミレーヌは魔法で一切近づけさせない。
それでもロベルトは何度も前へ出た。
身体強化で距離を詰めるも風で押し返される。
「くっ!」
足が止まる。
そこへ強い風魔法。
ロベルトが地面を転がった。
起き上がろうとしたところへ、火球が三つ浮かぶ。
「……降参だ」
ロベルトが手を上げた。
「そこまで! 勝者、ミレーヌ・アスター!」
最後までほとんど何もさせなかった。
一回戦最後の試合が終わった。
◇
全八試合。
十六人いた選手は、半分の八人になった。
休憩を挟んだあと、更新された対戦表が選手用の掲示板へ貼り出される。
■第二回戦 第一試合
リオン・ハル(王立学院代表)VSリゼット・カルナ(A級冒険者)
■第二回戦 第二試合
ガイル・ベイルン(王立学院代表)VSグレゴール・バイス(王宮騎士団)
■第二回戦 第三試合
アルベルト・グランツ(王宮騎士団第三隊隊長)VSエリオット・バーンズ(宮廷魔術師)
■第二回戦 第四試合
ディート・ハーゲン(傭兵)VSミレーヌ・アスター(宮廷魔術師)
「俺とリオン、次も勝ったらだな!」
隣のガイルが嬉しそうに言う。
「うん。準決勝」
「絶対勝てよ!」
「ガイルもね」
「当たり前だ!」
対戦表を見る。
その前に、まずは次だ。
リゼット・カルナ。
さっきの戦いを思い出す。
騎士みたいな規則正しい動きじゃない。
何をするか分からない。
俺の一回戦と同じような戦い方。
他人とは思えないな。
「リオン・ハル選手。リゼット・カルナ選手。準備をお願いします」
「はい」
木剣を持つ。
「行ってくる」
「おう!」
通路を進み、試合場へ出た。
観客席から、また大きな歓声が押し寄せてくる。
反対側からリゼットも出てきた。
近くで見るのは初めてだ。
二十歳。
俺より少し背が高い。
長い髪を後ろでまとめ、木剣を片手に持っている。
俺を見つけると、そのまま真っ直ぐ歩いてきた。
「リオンだな?」
「はい」
リゼットが右手を差し出す。
「よろしくな。子供だからって手加減はナシだからな」
俺も手を出した。
「お手柔らかにお願いします」
「食えない子供だな」
そう言いながら、リゼットさんは楽しそうに笑った。
握手をして手を離す。
何となく、思っていた通りの人だ。
「両者、王族席へ」
審判の声。
二人で並び、王族専用席へ向く。
国王陛下。
王妃殿下。
アルフレッド第一王子。
第一王子妃。
エドガー。
セレナ。
揃ってこちらを見ている。
俺とリゼットは同時に礼をした。
それぞれの位置へ戻る。
リゼットが木剣を構える。
でも、やっぱり騎士とは違う。
剣先が低い。
身体も少し斜め。
今にも動きそうなのに、どこへ動くのか分からない。
審判が俺たちを交互に見る。
「規則は一回戦と同じだ。両者、準備はいいな?」
「はい」
「いつでも」
俺も木剣を構える。
観客席の音が少し遠くなった。
審判が手を上げる。
「第二回戦第一試合――」
一拍。
「始め!」
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