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【感謝!1000万PV達成!】45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: コバチ
第12章 王立学院三年 一学期

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第198話 王立研究所からの連絡

 三年Sクラスに入ってから、しばらく経った。


 座学、応用課題、実戦演習。


 その繰り返しの日々は、思っていた以上に忙しい。


 三年の授業は、やはり一年Sクラスとは違う。


 それでも、少しずつ慣れてきた。


 最初は距離のあった三年生たちとも、今では自然に言葉を交わすことが増えている。


 ライオネルも、以前ほど硬い表情でこちらを見ることは少なくなった。


 完全に認められた、とはまだ言えない。


 だが、同じ課題をこなし、同じ演習で動く中で、少しずつ三年Sクラスの空気の中に入っていけている。


 そう感じていた。


 ◇


 その休日。


 俺はセレナ、ガイル、ナディアと一緒に、冒険者ギルドへ向かった。


 久しぶりの四人での冒険者活動だった。


「今日も森の手前だけにしよう」


 俺が言うと、ガイルは短く頷いた。


「分かっている」


「本当に?」


 セレナが少しだけ疑うように見る。


 ガイルは真顔のまま答えた。


「分かっている」


 その言い方に、ナディアが小さく笑った。


 以前なら、ガイルはもう少し奥へ行きたそうにしていたかもしれない。


 だが、今は違う。


 三年Sクラスでの演習を通じて、目的を見失わないことの大切さは、ガイルにもかなり染み込んできている。


 今日の目的は、あくまで軽い討伐依頼だ。


 王都西南の森の手前に出る小型魔物の討伐。


 以前、黒い魔石片を持った死んだ魔物が現れた森でもある。


 森へ向かう馬車の中で、そのことを少し思い出した。


 あの時は、ただの異常事態だと思った。


 だが、今でも何となく引っかかっている。


 誰かが、死んだ魔物を動かしていた。


 それが偶然のはずはない。


 ◇


 森での討伐は、特に大きな問題なく終わった。


 小型魔物が数体。


 依頼書にあった範囲内だ。


 ガイルが前に出て、セレナが動きを抑える。


 ナディアは周囲を見ながら、抜けてくる魔物に備えていた。


 俺も綻びの目で周囲を確認する。


 今回は、妙な表示はない。


 死んだ魔物が動いている様子もない。


 ◇


 午後、王都へ戻り冒険者ギルドで依頼の報告を済ませる。


 受付の職員は討伐証明を確認し、いつものように報酬の処理を始めた。


 だが、途中で少しだけ表情を変えた。


「リオンさん、少しお時間をいただけますか」


 俺はセレナたちと顔を見合わせた。


「何かありましたか」


 職員は声を少し落とした。


「以前提出していただいた黒い魔石片の件です」


 その一言で、空気が変わった。


 セレナの表情が引き締まる。


 ガイルも黙って受付を見る。


 ナディアも、わずかに背筋を伸ばした。


「こちらへお願いします」


 職員に案内され、俺たちはギルド内の応接室へ向かった。


 ◇


 応接室には、すでに二人の大人が待っていた。


 一人は、ギルドの幹部。


 もう一人は、見覚えのない女性だった。


 年齢は三十代くらいだろうか。


 整えられた髪に、無駄のない服装。


 机の上には、数枚の書類と小さな封筒が置かれている。


 彼女は俺たちを見ると、静かに立ち上がった。


「王立研究所のリディア・フォルンです」


「リオン・ハルです」


 俺たちも順に名乗る。


 リディアは、机の上の封筒へ視線を落とした。


「以前、あなた方が王都西南の森で回収した黒い魔石片について、解析結果の一部がまとまりました」


 ギルド幹部が続ける。


「完全な解析ではない。だが、冒険者ギルドとしても無視できない内容だったため、発見者である君たちにも共有することにした」


 リディアは封筒から紙を取り出し、俺たちの前へ置いた。


 表題には、こう書かれていた。


 黒色魔石片に刻まれた死骸駆動術式について。


 死骸駆動。


 その言葉だけで、嫌な感じがした。


 リディアが説明を始める。


「まず、あの魔石片は、魔物の体内で自然にできたものではありません」


 セレナが小さく頷く。


「やはり、外から埋め込まれたものですか」


「はい。胸部付近に外部から埋め込まれていたと見て間違いありません」


 俺は、あの中型魔物の胸を思い出す。


 綻びの目が示した、異物。


 あれは、間違っていなかった。


「魔石片の表面には、ごく小さな術式が刻まれていました。

かなり粗いものですが、目的ははっきりしています」


 リディアは一度言葉を切った。


「死んだ魔物の肉体を、一時的に動かすための術式です」


 部屋の中が静かになった。


 ガイルが低く呟く。


「死んだ魔物を、動かす……」


「はい」


 リディアは冷静に頷いた。


「生き返らせているわけではありません。

肉体に残った筋肉と骨格を、魔石片を核にして強引に動かしている。

そう考えるのが近いです」


 ナディアの表情が少し曇る。


「だから、痛みに反応しなかったのですね」


「おそらく。すでに生命活動は停止していたのでしょう。

痛覚も、恐怖も、通常の反応もない。ただ、与えられた術式に従って動いていただけです」


 セレナが書類を見る。


「胸部を破壊した瞬間に止まったのは、術式核が壊れたからですか」


「その通りです」


 リディアは、俺たちを見る。


「あなた方が胸部を狙って止めた判断は、結果的に正しかったと言えます」


 俺は少しだけ息を吐いた。


 あの時は綻びの目で見えたから判断できた。


 普通に戦っていたら、かなり厄介だったはずだ。


 ギルド幹部が口を開く。


「問題は、これを誰が何のために森へ放ったのかだ」


 重い声だった。


「王都西南の森の手前。街道にも近く、冒険者の出入りもある場所だ。

偶然そこへ出てきたとは考えにくい」


「試していた、ということですか」


 俺が聞くと、ギルド幹部は頷いた。


「その可能性はある」


 リディアも言った。


「魔石片の術式は、完成度が高いとは言えません。

長時間の駆動にも向かない。むしろ、試験的に動かしたものと見るべきです」


 試験。


 その言葉に、胸の奥が冷える。


 あの森で、誰かが死んだ魔物を動かす実験をしていた。


 そういうことになる。


「この術式は、王立研究所でも知られているものなんですか」


 俺が聞くと、リディアは首を振った。


「少なくとも、一般的に共有されている術式ではありません。

死骸を動かすという発想自体は、古い禁術や軍事研究の記録に断片的に出てくることはあります。

ですが、今回の術式はそれらとも完全には一致しません」


「作れる人間は限られますか」


「はい。冒険者や一般的な魔法使いが、その場の思いつきで作れるものではありません」


 セレナの表情が険しくなる。


「相応の魔法知識を持つ人物、ということですね」


「そう見ています」


 リディアさんは書類を一枚めくった。


「今後、同じような魔物に遭遇した場合、可能であれば魔石片を破壊せず回収していただきたい。

ただし、無理はしないでください。危険を冒してまで回収する必要はありません」


 ギルド幹部も続ける。


「君たちは学生でもある。異常な魔物を見つけたら、まずは戻って報告。

それで十分だ。追跡も独自調査も不要だ」


「分かりました」


 俺は頷いた。


 セレナが尋ねる。


「この件は学院にも共有されるのですか」


「はい」


 リディアが答えた。


「王立学院にも報告を入れます」


 ◇


 説明の後、リディアは簡易レポートの写しを俺たちに渡した。


 本来なら学生に渡すものではないらしい。


 だが、俺たちは発見者であり、報告者でもある。


 セレナが紙面に目を通す。


「死骸駆動術式……」


 その言葉を、静かに読み上げた。


 便利な魔法ではない。


 人を助けるための魔法でもない。


 死んだ魔物を、もう一度動かす術式。


 それが王都近くの森で試されていた。


 俺は、福嶋亮太の本のことを一瞬だけ思い出した。


 あの本に載っていた魔法とは違う。


 亜空間収納や転移のような、理論の方向とも違う。


 だが、学院で学んできた普通の魔法とも違う。


 この世界には、俺がまだ知らない術式がいくつもある。


 その中には、明らかに悪用を前提にしたものもあるのだ。


 ギルド幹部が最後に言った。


「今回は王都西南の森だった。だが、同じようなものが別の森に現れないとは限らない」


 その言葉に、俺はハル領の西に広がる森を思い浮かべた。


 もし、あそこにこんなものが放たれたら。


 村や街道に、死んだ魔物が現れたら。


 想像しただけで、嫌な汗が出る。


 ◇


 応接室を出た後、俺たちはギルドの食堂の端に座った。


 誰もすぐには口を開かなかった。


 最初に言ったのは、ガイルだった。


「死んだ魔物を動かす、か」


 低い声だった。


「普通の魔物より、ずっと気味が悪いですね」


 ナディアが静かに言う。


 セレナはレポートを見ながら、眉を寄せていた。


「便利な魔法ではないわね。明らかに、誰かを傷つけるための術式だと思う」


「ああ」


 俺も頷いた。


 誰が。


 何のために。


 王都西南の森で、死んだ魔物を動かす実験をしていたのか。


 まだ分からない。


 だが、ただの異常な魔物ではなかった。


 黒い魔石片。

 死骸駆動術式。


 胸の奥に、冷たいものが残った。



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― 新着の感想 ―
AIを使ってる? 同じ文章が繰り返されていて、同じ話かと勘違いする
亜空間収納だけでも何とか誤魔化して使えないかな。
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