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【感謝!1000万PV達成!】45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: コバチ
第12章 王立学院三年 一学期

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第193話 三年Sクラス

 春休みが終わり、今日から俺たちは三年生として学院に通うことになる。


 寮を出て校舎の廊下を歩いていると、新学年らしい少し浮ついた声がある。


 廊下の途中で、セレナたちと合流した。


 セレナはいつも通り背筋を伸ばしている。

 エドガーは静かに周囲を見ていた。

 ナディアは少し緊張しているようだが、表情は落ち着いている。

 ガイルは前を見ている。

 ヴィクトルは少しだけ肩をすくめた。


「本当に三年生になっちゃったな」


「今さら戻れないだろ」


 俺が言うと、ヴィクトルは苦笑する。


「戻りたいとは言ってないよ。ただ、気持ちが追いついてないだけ」


「それは少し分かるわ」


 セレナが言った。


 彼女がそう言うのは珍しい。


 つまり、セレナも平気なわけではないのだろう。


 エドガーが短く言う。


「行こう」


 俺たちは三年Sクラスの教室へ向かった。


 ◇


 三年Sクラスの教室の前に立つ。


 一年Sクラスの教室とは、なんとなく空気が違う様に感じられた。


 扉の向こうから聞こえる声は、思ったより静かだ。


 入学したばかりの一年生のような騒がしさはない。


 俺は一度だけ息を整えた。


 そして、教室に入る。


 その瞬間、視線が集まった。


 教室にいた三年生たちが、ほぼ一斉にこちらを見る。


 騒ぎはしない。


 だが、その静けさが逆に重い。


 俺たちより一年上の生徒たち。


 たった一年。


 そう思うかもしれないが、この年頃の一年は大きい。

 背も、体つきも、顔つきも、一年生の時とは違う。


 中学三年生の教室に、中学二年生が数人だけ混ざったような違和感があった。


 もっとも、前世で四十五年生きていた俺からすれば、

目の前の三年生たちも十分子どもに見える。


 だが、そんなことを考えたところで、今の俺はリオン・ハルだ。


 この世界では、同じ学院に通う年下の飛び級生でしかない。


 そして、この教室にいる三年生たちの視線は、明らかに俺たちを品定めしていた。


「あれが飛び級組か」


「アルスレイン殿下もいるのか」


「ヴァレスト公爵家に、ベイルン家の嫡男もいるな」


「ハル家のリオンって、あいつか」


 小さな声が流れる。


 露骨な敵意ではない。


 だが、歓迎とも違う。


 一年Sクラスでは、俺たちはいつの間にか中心にいた。


 でも、ここでは違う。


 俺たちは、後から入ってきた年下の六人だった。


 ◇


 俺たちが空いている席の近くに立ったところで、教室の扉が開いた。


 入ってきたのは、体格のいい男性教師だった。


 年齢は四十前後だろうか。


 背筋がまっすぐで、歩き方に無駄がない。


 教師というより、訓練場で部隊を率いていた人間に見える。


「席につけ」


 低い声だった。


 大声ではない。


 だが、その一言で教室が静まった。


 三年生たちは慣れた様子で席につく。


 この先生が、このクラスを長く見てきたのだと分かった。


 男性教師は教壇に立ち、俺たち六人を見た。


「今日から、この六人が三年Sクラスに加わる」


 教室の空気が少しだけ動く。


「私はベルンハルト・レイグ。このクラスの担任だ」


 ベルンハルト先生。


 元騎士団の人間だと聞いていた。


 騎士団での出世より、教師になる道を選んだらしい。


 この三年Sクラスの生徒たちは、一年の頃から彼に見られてきたという。


 ベルンハルト先生は、俺たちを見ながら続けた。


「飛び級で来たからといって、特別扱いはしない」


 声は淡々としている。


「逆に、年下だからといって見下すことも許さん」


 教室の視線が少し変わる。


「この教室では、結果と姿勢で判断する」


 その言葉は、俺たちだけでなく、元からいる三年生たちにも向けられていた。


 厳しい。


 でも、公平だ。


 俺はそう感じた。


「では、六人。名乗れ。長い挨拶はいらん」


 ベルンハルト先生に促され、最初に俺が立った。


「リオン・ハルです。よろしくお願いします」


 教室の一部がわずかに反応した。


 俺に関する情報は、すでに広まっているのだろうか。


 続いてセレナが立つ。


「セレナ・ヴァレストです。三年生として学ばせていただきます。よろしくお願いいたします」


 ヴァレスト公爵家の名前で、空気が少し締まる。


 次にエドガー。


「エドガー・アルスレインです。よろしくお願いします」


 王家の名が出ても、教室は騒がなかった。


 ただ、視線の質が変わる。

 さすが三年Sクラスというべきか、露骨に動揺する生徒はいない。


 ガイルが立つ。


「ガイル・ベイルンだ。よろしく頼む」


 その体格と家名に、実技系の生徒らしき何人かが反応した。


 ナディアが続く。


「ナディア・セルヴァンです。よろしくお願いいたします」


 静かで丁寧な挨拶だった。


 ナディアは隣国セルヴァン王国の王女だ。

 三年生たちの中でも緊張が走っている。


 最後にヴィクトルが立つ。


「ヴィクトル・ローデンです。よろしくお願いします」


 いつもの軽さは少し抑えていた。


 初日から妙に浮くつもりはないらしい。


 全員が名乗り終えると、教室の前方にいた男子生徒がこちらを見た。


 背が高く、落ち着いた雰囲気の生徒だ。


 彼はゆっくりと立ち上がった。


「クラウス・レインフォードだ」


 教室の生徒たちの反応を見る限り、彼はこのクラスの中心に近い人物なのだろう。


 クラウスは俺たちを見て言った。


「話は聞いている。飛び級で来た六人だろう」


 声に嫌味はない。


 ただ、甘さもない。


「三年の授業は、一年Sクラスの延長ではない。ついてこられるかは、これから分かる」


 教室の空気が少し硬くなる。


 敵意ではない。


 だが、簡単に認めるつもりもない。


 それが、この教室の最初の答えなのだと思った。


「レインフォード。挨拶はそれくらいでいい」


 ベルンハルト先生が言う。


 クラウスは素直に頷き、席に戻った。


 そのやり取りだけで、彼がこの教室でどういう立場なのか少し分かった気がした。


 ◇


 ベルンハルト先生は、改めて教室全体を見回した。


「今日から君たちは三年Sクラスの生徒だ」


 今度は俺たち六人を含めた言葉だった。


 先生の視線が俺たちに向く。


「授業も課題も、二年までの内容を理解している前提で進める。分からなければ、自分で埋めろ」


 言い方は厳しい。


 だが、春休みにその準備をしてきたからこそ、俺はまっすぐ受け止められた。


「ただし、聞くなとは言わん。分からないことを隠すな。遅れを放置するな。

このクラスで一番困るのは、できないことではなく、できないことをごまかすことだ」


 その言葉に、少しだけ意外さを覚えた。


 厳しいだけの教師ではない。


 現場で人を見てきた人間の言葉だ。


「以上だ」


 ベルンハルト先生は教卓に手を置いた。


「ついてこい」


 短い一言。


 それで教室の空気が決まった。


 ◇


 俺は席に着きながら、教室を見回した。


 三年Sクラス。


 俺たちは飛び級してここに来た。


 だが、それはこの教室に受け入れられたという意味ではない。


 年上の生徒たちの視線。

 新しい担任の言葉。

 これから始まる三年の授業。


 どういう一年になるのか、少し楽しみでもあった。



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― 新着の感想 ―
1年3学期という章から3年に変えないといけないのではないでしょうか?
飛び級したら問答無用でSクラスなのでしょうか あるいは他の三年生と較べてもSクラス相当と言う判定? だとしたら二年生時にSクラスだったけど飛び級6人のせいで降級した生徒もいた?
>「今日から、この六人が三年Sクラスに加わる」 二年から進級組と一年から飛び級組、どちらも「今日から」三年Sクラスだから「加わる」という表現は違うのでは?
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