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剣道(善)

新人教師がどの教科を担当したいか聞かれる。


「わ、私はぶ…美術がいいです」


(緊張して噛んじゃった…)


「武術?華奢なのにすごいね。なんの武道?」


「ちがくて…やばい面倒なことになっちゃう(心の声が盛れる)…」


「面胴?あっ、剣道ね!それなら今日の午後体育でやるからお願いできるかな?体育の先生体調不良でさ」


「いや……違うんです……」


「じゃあ頼むね!」


先生は去っていった。


憧れの教員人生は予期せぬ自体となった。


「えっと…今日は私が代わりに担当します。…じゃあ防具をつけてください」


(みんな合ってるのかなぁ…質問されたらどうしよう…)


「じゃあ、2人1組になって」


「試合開始ー!」


準備運動も基礎練習もない。

投げやりだ、適当すぎる。


2人の試合を見に行く。


左の学生は肩に背負うように竹刀を構える。


「どっからでもかかってきな!」


右の生徒は竹刀を地面と平行にさせ、高く持ち上げる構えを取っている。


「これが俺の2つ目の構え、"滅"だ!!」


めちゃくちゃだ。


左の生徒は呼吸を整える。

竹刀に緑のオーラが纏わりつく(ように見える)


右の生徒は竹刀を振る。


「遅いんだよ!」


竹刀は空を切った。


先生はやんわりと注意した。


「試合中はあんまり挑発とかしないようにね…」


別の2人は激しい打ち合いをしている。


竹刀と竹刀のぶつけ合い。


ありえない。


間合いに入っているなら面、小手、胴を狙えばいい。


入らなかったら鍔迫り合いになるはず。


チャンバラというより茶番だ。


別の試合では走り回り、後ろに周る生徒。


「俺のスピードについて来れるか?」


後ろに回って面を打つ。


「……っ!やるな。」


そんなことやるな。


有効打なわけが無い。


別の試合では鍔迫り合いをしていた。


激しい火花が散っている。

(ように彼らには見えている)


そして蹴りを入れる。

サッと避ける。


「ふーん、やるじゃん」


そんなことやるな。


明らかな反則。


ゲーム、漫画の見すぎだ。


しかし何も知らない先生は応援するしか無かった。


正しい構えは誰も知らない。


体捌き、攻め方、守り方も。


生徒たちの礼儀作法は互いを挑発し、攻めるとはカッコイイ技名と共に回転しながら、防具に傷をつける行為だった。

(防具以外のとこに竹刀が当たると激痛がして変な空気になるからだ)


「食らえ、俺の剣術を!」


ベシッ…という音。


太ももに当たったらしい。


「いってぇ…」


試合は中断された。


「ご、ごめん、胴狙ったんだけど。保健室行く?」


「大丈夫……。」


ほれみろ。


アツい戦いは一瞬で冷める。


先生は困惑する。


(みんななんか違う気がする…)


しかし、どうするのが正解なのか指導できない。


(これが現代の剣道なのかなぁ?)


永遠とも感じられる試合は、授業の終わりを告げるチャイムと共に終了した。


満足そうな生徒たちが教室へ帰っていく。


しかし、1人の生徒だけ残っている。


「防具は乾かさないといけないけど、直射日光は良くないんだよ。ここは良くない。それに何本か竹刀がささくれてる。刺さって危ないから交換しないとダメだよ先生。」


「えっ……う、うん。ありがと。」


誰もいない体育館。


彼は入口で軽く礼をして、教室へ帰っていった。


職員室。

あの生徒について担任に聞いていた。


「あの子ってもしかして…」


「剣道3段だよ。高校生が取れる最高段位。」


「えぇ!?でも授業の時は……」


「彼控えめだからね。能ある鷹は爪を隠すってね。」


(これが武士道精神…)

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