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事件を嗅ぎまわるとするか

32




玉石で舗装された道、周りは尖塔の目立つ建物が左右に並んでいる。





旧文明のアーカイブで見たゴシックの建築様式の建物に似ているな。



それにしても王都と呼ばれるだけあって、往来は人だかりの山だ。







あれからこの世界についてわかったことがある。



少なくともこの世界は、俺の元居た世界の旧文明時代より格段に魔法技術が発達している。





だから魔法を扱える奴は多い。




それなりに練習する必要はあるけどな。





この国の文明レベルは一見すると、地球の近代ヨーロッパ辺りに見えるけど、部分的には旧文明末期に匹敵する技術も存在するようだな。



結構面白い世界だよ。





パラレルワールドとしては、元の世界と重なるような歴史とか発展背景があるんだろうな。



文明のハイブリット感があるよな。




ああ、そうそう、それと祝いの宴だったけど結構盛り上がったぜ。





デール家の今の当主はモランっていう細身の四十男なんだが、随分とめかし込んでたな。




胸元にフリルがついたシルクのシャツと、黄金に輝く刺繍の入ったスーツを着て客をもてなしてたよ。





俺とレッドアダーは何をしてたかって?





俺は切り分けられた肉を食って果実の蒸留酒を飲んで、レッドアダーは客を眺めていたよ。






あいつは強そうだとか弱そうだとか、金を持っていそうだとか品定めに忙しそうだったぜ。





客層は地元の名士から農民まで実に様々だったよ。




デール家は周りから慕われてるようだったな。





客の中には俺に触ろうとする奴もいたが、そういう時は低く唸って追い払ってやったよ。




知らない奴にベタベタ触られるのは嫌だからな。







そんな俺はレックスとエリスを背に乗せて、物見遊山と来たもんだ。







ちなみに領地からの移動手段は、王都に続く街道をひたすら馬車で進むだけ。




もっともただの馬車じゃない。




時速80キロでぶっ続けで数時間走れる馬車だ。




一日で1000キロの距離を走行できる。






中国の伝説に出てくる一日で500キロの距離を走る汗血馬も真っ青だぜ。



あと馬車とは言ってるが、これは便宜上のものだ。




厳密には馬に似た生物、レッドアダーの調べではDNAは地球上の馬とは別物だ。




馬型モンスターと言ったほうがいいだろうな。






ちなみにこいつは貴族用の馬車で、庶民が乗る馬車とは異なる。



庶民用の馬車は一日百キロの距離が限界だ。




それでも地球の旧文明時代の馬車の走行距離が一日40キロ程度だったのを考えると十分すぎるけどな。




それで王都を目指して1300キロの距離をひたすら進むわけだ。



緑豊かな風景はのどかだが、砂埃は酷かったよ。







地球ならニュートーキョーからカゴシマまでの距離の道中、貴族なら一日ちょっと、庶民なら13日か。




まあ、俺だけなら一時間足らずで到着できるけどな。



無理をすれば30分足らずで行ける距離だぜ。





俺は地球の回転速度を超える速さを手に入れたのさ。



やっぱり進化するってのは良いもんだぜ。





レックスが俺の首筋を撫でた。



良い気持ちだ。




「流石は王都だね、この国の繁栄の象徴だよ」



通りを眺めていたレックスが呟く。




俺の目前にはエメラルドグリーンのステンドガラスが飾られた大聖堂が厳めしくそびえていた。




「そうね、珍しい物ばかりあるわ。どれもとっても素敵よ」





無邪気に笑い合う二人を尻目に俺は軒先で吊るした肉を売っている屋台の前で立ち止まると、俺は鼻を鳴らして食い物を催促した。







33




俺たちは広場の中央にある噴水で休憩を取った。



レックスとエリスがブドウに似た果物を口に含んでいる。




俺は骨のついた肉にかぶりつき、咀嚼する。


喉を鳴らして肉を呑み込む。



突然、爆発音が響いた。




粉々に砕け散るステンドガラスが通行人に降り注いだ。




悲鳴が上がった。




横たわった死傷者、一瞬で血に染まった通り。



何が起こったんだ。




事故か、それともテロか。






俺は二人を背に乗せると広場からさっさとずらかった。





俺とレッドアダーだけならともかく、今はレックスとエリスがいる。




今の俺にとって、こいつら二人は最優先で守る対象だ。





負傷した通行人を助けたり、犯人を捜さないのかって?





俺は英雄でも聖人でもねえぞ。




死んじまった奴には悪いが、運がなかったと思って諦めてくれ。





34





泊まっている高級ホテルに二人を避難させてから、俺は夜が訪れるのを待った。




人気のない路地裏に潜み、影を縫うように静かに移動する。







それから屋根に飛び移ると、俺は破壊された大聖堂を見下ろした。



辺りにはまだ瓦礫やガラスの破片やらが散乱し、血痕が残っている。




流石に死傷者の姿は見えないが。




役人と衛兵が現場で何やら話し込んでいる。



今回の事件の手がかりを調べてる様子だな。




連中、何を調べてるんだ?






興味が湧いてくる。




俺は野良犬だ。




なんにでも鼻を突っ込んで漁るのが俺の習性って奴だ。






湿り気を帯びた夜の闇に紛れると、俺は役人と衛兵の会話に聞き耳を立てた。




周囲にいた怪しい人物や、爆発物は何が使われていたのか気になったからな。







使用されていたのは魔術を使った時限式の爆発物、魔法に精通した人物が犯人だろうと連中は言っていた。




犯人は爆発物の材料をどこで仕入れたんだろうな。





そいつの指紋やDNA、あるいは爆発物の残留から何か犯人の手がかりは残っていないのか。




爆発物の触媒には何が使われたんだ?



現場には他に何が残されてる?





俺はレッドアダーに現場に残っていた思念を記憶させると、周囲の匂いを嗅いだ。




35





爆発の設置場所は後方に並んだ椅子の裏側、ここが一番被害が大きかった。



爆心地と見て間違いない。





俺は現場に残された爆発物の煤、それから毛髪や衣類の繊維の欠片を採取した。




証拠になりそうだからな。




爆発物に使われた容器も保管場所から隠れて持ち出した。




指紋は検出できなかったが、容器に使用されていた革袋は中々上等そうだ。






レッドアダーに解析させながら、俺は革職人を当ってみることにした。




職人街は王都の東側に位置していた。




赤レンガの工房が居並ぶ通りをフードを被って二本足で歩きながら、俺は人間のフリをして聞き回った。




それでようやくこの革袋を造った職人が判明した。





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