水晶
俺とウェンが奥にたどり着くとそこには2人の男が立っていた。片方は前回見たノランのボス、ランだ。もう1人は見覚えがないが、かなりの強者ではあるだろう。
「早かったね。」
「貴方がダーリンが言っていたノランのボスなのかな?」
「その通りだよ。僕はノランのボス、ランだ。」
「…隣のやつは何者だ」
「…俺は秘書のようなものだ。」
「秘書か…」
見たらわかる。ランよりもう1人の方が強い。それもほんの少しの差じゃない。
「ウェン、さっさと片付けるぞ」
「わかってるよ」
「さぁ!かかってこい!」
俺とウェンは同時に前に出る。ウェンは秘書の方を俺はランの方だ。もう少しで射程距離内というところで俺とウェンの動きが止まった。否止められた。何かが俺たちを止めていた。
「…魔眼か」
「答える義理はない」
「そういうこと。じゃあ死のうか」
ランが大量の針を作り出し、俺たち目掛けて飛んでくる。身体はいまだに動かない。
「邪魔だ!」
俺も魔眼を使って針を反転させる。だが針は2人に当たる直前で停止した。その代わり俺たちの動きを止めていた何かがなくなった。
「なるほど…」
もう1人に関しても何となくわかった。なるべく早く終わらせたい。
「ウェン、合わせろ」
「りょーかい!」
俺は全速力で距離を詰める。だがさっきと同様に身体が停止する。
「無駄だよー!」
ウェンが魔眼を発動、俺は2人の頭上に転移。俺がナイフを投げつける。もちろん、そのナイフは止められる。だが想定内だ。俺は魔眼を使って転移前にまで戻る。既に射程距離内。ナイフを止めるために能力を使っている。
「ッ…さすがですね!」
無数の針が俺に襲いかかるが関係ない。全ての針が俺を通り抜けていく。
「チェックだ!」
「それはどうでしょうか?」
俺が蹴りを放とうとした瞬間、横から強烈な衝撃が襲う。そのまま俺は吹き飛び壁に激突した。
「はぁ…ペッ…なんだ?」
「もうわかっているだろう?俺の魔眼…」
「…透明な壁を出す能力だろ?」
「そうだ。だが弱点がある。それは一つしか出せないこと…」
ナイフはいまだに上空に止まっている。なのに何故…
「何故…」
「教える義理はないな…死ね」
再び針が俺を襲う。魔眼を発動させたいが、さっきのダメージがかなり来てる。死を覚悟した瞬間だった。俺はウェンの隣まで転移していた。
「ダーリン…いや、スノーさん!このままじゃ僕たちが負けます!」
「わかってる!本気で行くぞ」
俺とウェンはほぼ同時にもう一つの魔眼を発動させる。瞬間、地面は歪み、亀裂が走る。
「それが貴方のもう一つの能力ですか!」
「僕の方も忘れないでくれるかな」
ウェンはゆっくりと歩いていく。俺の魔眼による亀裂はあたかもウェンを避けているようだった。
「そんなものでは僕たちには届きませんよ」
「どうかな?」
ウェンに向けて針が襲いかかる。だがその針たちはウェンを避けていく。もう1人の透明な壁もウェンには当たらず、奥の壁に激突した。
「何が起こって…!ッ」
俺の魔眼はただ地割れを起こすだけじゃない。空間が歪み、それはブラックホールのようにありとあらゆるものを吸収していく。
「これは予想外ですね…マハタ!撤退です!」
「させないよ」
ウェンはランを思いっきり蹴りとばし、俺のブラックホールに吸い込まれた。
「…クソが!」
もう1人の男がランを救おうと能力で足場を作るが、一瞬にしてそれも分解される。
「なっ!」
「もう終わりだ」
空間はさらに歪み、時空間にすら影響を及ぼし始めた。俺はもう一つの魔眼でそれを修復していく。流石にここまでやったのは初めてで目から血が溢れてくるが、関係ない。数分で2人ともブラックホールに呑まれて消え去った。
「ふぅ…」
それを見届けた俺は即座に魔眼を解除してその場に横になった。
「お疲れ様、ダーリン」
ウェンもいつもと同じ話し方に戻っていた。
「ウェン…まだ完璧に終わってはいない。アルの妹がどこかに囚われているはずだ。探して解放してほしい。そうすればアルもこっちに戻ってくる。避けられる戦いは避けるべきだ」
「はぁ…私的にはもう少しダーリンと二人きりの時間を楽しみたいんだけど、流石に今じゃないよね。じゃ、行ってくるけど…一人で大丈夫そう?」
「大丈夫だ。俺を誰だと思っている?」
「…そうだね!じゃあ行ってくるね!」
そう言ってウェンはその場から離れていった。ウェンの前だったから少し意地を張ってしまったが、流石に体力の限界が来ていた。久しぶりに片方の魔眼をあれだけ使った。それにこっちの魔眼はまだ自分で調整するのが難しい。だから加減をするのが大変だった。それも相まってすでに俺は立ち上がるどころか指一本動かすこともできなくなっていた。
「はぁ…流石に綺麗に勝ち切るってのは難しかったな…」
予定では去来の魔眼だけで終わらせる予定だった。だが予想以上にノランのボスが強かった。
「まだまだ鍛えるべきってことだな…」
俺がそんなことを言った直後だった。近くに置いてあった水晶がコロコロ転がる。まるで俺に引き寄せられたかのように俺の目の前で止まり、眩いほどの光を放つのだった。




