第38話 対決オークキング②
「くくく。もしかしてその程度で俺に勝てるとでも思ったのか?」
「……この程度が私の限界だと思ったら大間違い」
「何?」
私は剣に力を込めて、連続突きを繰り出した。
「『アクセルスティング』」
両手の剣で何十もの突きを喰らわせる。
数発は包丁で食い止めたが、ほとんどの突きがオークキングの体に突き刺さっていた。
ジワリと突き傷からは血が滲んでいる。
「……これが私の全力……このままお前を倒す」
私はさらに『アクセルスティング』を発動し、オークキングを仕留めるために追撃した。
だが――
オークキングは私が左手に持つ剣をその大きな手で握り、剣の動きを止める。
ゾクッと悪寒を感じた私は剣を離し、距離を取った。
「……やっぱりその程度か。もう一度聞く。その程度で俺に勝てるとでも思ったのか?」
「くそっ……」
オークキングは私の剣に傷は負ったものの、大したダメージは受けていないようだった。
これは想像以上だ。
今の私ならもっと戦えると思っていたのに。
「私はお前を倒せない……だけど隙を作ることはできる」
『俊迅』を発動し、オークキングの周りを駆ける。
「む……」
私の速度にオークキングは反応できていないようだった。
キョロキョロするだけで、私を捕えることができていない。
背後から斬撃を繰り出し、相手が振り返ると再度背後に回り剣を突き刺した。
「ちょこまかと」
それを何度か繰り返しているうちに、オークキングの苛立ちが募っていくのが分かった。
冷静さを欠け始めている。
「この……女め!」
「女は円ちゃんだけじゃありません!」
「!」
オークキングが私に向かって包丁を振り回した瞬間、由乃が距離を詰めて斧を振りかぶる。
「『ハイパーチャージ』……『バスタースマッシュ』!!」
由乃の斧を赤く燃えるオーラが纏い、力強い一撃が振り下ろされた。
「硬気功」
しかし、オークキングの左腕に、ゴインッと硬い物を殴ったかのようにはじき返されてしまった。
「なっ……」
「お前でも俺には勝てない」
隙ができている由乃の腹部にオークキングの拳が突き刺さる。
「あ……」
オークキングの周りを駆けまわっていた私だったが、由乃がやられたことに動揺し、雨でグチュグチュになっていた地面に足を取られてしまった。
「くくく。もう抵抗はしなくていいのか」
なんて情けない……
仲間がやられたぐらいで、雨が降ったぐらいでこけてしまうなんて。
私はまた奴の周りを走ろうと立ち上がろうとした。
だが、オークキングの振り回した包丁の背に頭を殴られその場に倒れ込んでしまう。
「う……ううう」
グワングワンと世界が回る。
力が入らない。
服が泥水を吸って重くなっていく。
朦朧とする意識の中、憎悪のままにオークキングを睨み付ける。
「悔しいだろ? でも何もできないだろ? くくく。俺はそういう顔が大好きなんだよ。死ぬほどムカつくのに何もできない。強者に対して向ける、そんな弱者の顔がな」
ふと、オークキングが遠くの方に視線を向けた。
「……どうやら仲間も限界のようだぞ」
「……大和……」
仲間を必死に守っていた磯嶋さんだったが、敵の数が多すぎて大和たちと分散させられていた。
数多くのオークに取り囲まれている大和たち。
磯嶋さんは少し離れた場所で孤立していた。
「大和ぉ! 逃げろ!」
「む……無理ですよ……こんなの逃げれっこないです」
ガタガタ震え、手に持っていた弓を落とす大和。
そしてオークたちに取り押さえられる。
「は……放せ……放してくれよ……」
大和は抑え込まれて、泥水に顔を突っ込んでいる。
「俺は……俺は司と一緒に強くなるんだ……」
雨か涙かもう区別がつかないぐらいグチャグチャな顔をしている。
「大和ぉ!!」
「大和くん!」
磯嶋さんの声も由乃の声もむなしく――
「もっと強く――」
大和の首は、オークの手によって切り落とされてしまった。
赤い血が雨水と混じり合って広がっていく。
「大和ぉ……」
全部、あの日と同じだ。
落とされた首は、槍に突き刺されてオークキングの下へと運ばれて行く。
「大和ぉおおお!!」
絶望が漂うこの空間を、磯嶋さんの叫び声がこだまする。
磯嶋さんはオークキングとの距離を全力で詰めようとしていた。
だが、4匹のハイオークに阻まれ、その動きを封じられてしまう。
「どけや! この雑魚が!」
「その雑魚に足止めされているお前は何だよ」
殺意を覚えるぐらい憎たらしい笑みで磯嶋さんを見下すオークキング。
私は今すぐにでも飛び掛かってやろうと考えたが、体が動かない。
「くそっ……」
涙が溢れてくる。
何もできなくて悔しくて。
「助けてくれー!」
「磯嶋さん!」
「島田ぁ!!」
次々と仲間たちが殺されていく。
それでも何もできない。
「くそおおおおおおおお!!」
私は声の限り叫びただ涙を流していた。
それ以外、何もできないから。
もっと力があったら……
こいつを倒す力が……欲しい。
オークキングは私の前に立ち、何かをドボドボとかけ始めた。
これを私は知っている。
雨でも消えない油。
奴はそれを、私と由乃に惜しみなく降り注いでいく。
「楽しそうに踊ってくれよ。くくく」
オークキングが手に持ったタイマツに火を点けるオーク。
そしてオークキングはそれを私の頭上から手放す。
タイマツが、私に向かって自然落下を始めた。
その光景はがまるでスローモーションのように見える。
ああ。
私はこの火に焼かれて死んでいくんだ。
酷く冷静な頭で、私はそう考えていた。
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