第34話 排除する者①
シンジュクに移動した次の日の曇り空の朝、俺と由乃と円はみんなから少し離れた場所でオークキングのことで話し合いをしていた。
「元アジトからオークキングの所まで移動して……司がいれば正面からぶつかっても大丈夫だと思う」
「大丈夫どころか、圧勝だと思いますよ」
「俺はできる限り安全に行きたいんだけど。みんなで潜伏しながら奇襲かけるか、もしくは遠くからチクチク攻撃するか」
「司くんってすっごい強いのに、そういう慎重な部分ありますよね」
だって俺は慎重派だもの。
雑魚相手ならともかく、オークキングはエリアマスターだ。
できるなら確実に倒したい。
こちらが一方的に攻撃を仕掛けられて、相手は一切反撃できない状況。
そんな理想的な展開で俺は戦いたい。
夜討ち、闇討ち、不意打ち、楽に勝てるならなんでもありだ。
「まぁ負けはしないだろうけど……念には念をってね」
「私はあいつを倒せるならどちらでもいい。やり方は司に任せる」
「というかさ、俺から見れば由乃が猪突猛進すぎる気がするんだけど」
「猪突猛進ぐらい真っ直ぐの方が、司くんに気持ちが伝わるでしょ?」
「話がなんかおかしくなってる! 恋愛事の話じゃなくて戦いの話ね」
「恋愛も戦いですよ。駆け引き何て私にはできません」
「そ、そうか……とにかく、円はどんな戦いかたでもいいんだよな」
視線だけで俺の言葉に肯定する円。
「戦場に向かうのは、俺たち3人だけでいいよな? 他のみんなはここで未来に向けて頑張ってもらって――」
「オウ! 俺たちも行くぞ!」
「……磯さん」
3人だけで出発しようかと考えていたが、磯さんが大和を筆頭に5人の仲間を引き連れて俺たちの下へと近づいて来る。
「司。お前のおかげでみんな平穏な生活が手に入ったんだけどよ……何もかも全部、お前に任せちゃおけねえよ」
「大和……でも、お前たちはこれからここで生活していくんだろ?」
「そうだとしても……トシマは取り戻したい。磯さんも言ってたけどさ、やっぱ苦労しないで手渡されるだけの平和より、自分たちの力で平和を掴みたいんだ。だから俺もトシマを取り戻す為に戦いたい。頼む……足手まといにならないように頑張るからさ、俺も連れてってくれよ」
「……分かった。じゃあ、みんなでトシマを、オークから取り戻そう!」
「「「おお!!」」」
◇◇◇◇◇◇◇
俺は元アジトまでの扉を開き、みんなと共に空間移動をした。
「……ひでーな」
一日留守にしただけだったが、そこはすでにオークたちに侵略されていたようで、校舎内もボロボロになっていて、グラウンドも荒らされ放題だった。
「いつも囲まれてたしね。オークキングには当然居場所がバレてたってことだよな?」
「オウ! そう考えて間違いないだろうな」
まぁ過ぎたことを考えても仕方がない。
今はこれからのことを考えないと。
俺は鷹の目を発動させ、オークキングたちの居場所を探った。
「……ここから1キロ先、北の方角に大勢モンスターが固まってるみたいだ」
「そこにオークキングがいるの?」
「……ああ」
普通のオークと比べて巨大な体躯の持ち主。
赤い皮膚に大きな牙。
あれが、オークキングか。
「よし。速攻で勝負をかけよう。今から潜伏で奴らに近づいて背後からドーンだ」
「ドーンと行ってガーンと倒してパーッといきましょうか」
「だな。でも、くれぐれも注意は怠らないようにしてくれ。あいつがどれぐらいの実力を秘めているのか――っ!?」
「……司くん?」
急に寒気が走る。
ゾクゾクといつまでも止まらぬ寒気。
まるで地獄の底から悪魔がこちらを覗き込んでいるような。
死を予感させる、けた違いの能力者がこちらに視線を送ってきている。
肉眼では確認できない距離にいる……だけど俺がここにいることを理解していて、遠くから殺気を放ち挑発しているようだ。
俺はいまだかつてない、ピリピリとした緊張感を覚えていた。
俺に対して攻撃的な視線を送ってきている人物……
化け物だ。
こんな肌で危険を感じることなんて、今まで無かったのに。
「どうしたんですか?」
「い、いや……」
これからオークキングを討伐しようって時に……
いや、もしかしたらこのタイミングをうかがっていたとでも言うのか?
どちらにしても、これを無視してオークキングの下に行くのは得策だとは思えない。
先に叩いておいた方がよさそうだ。
ただ、大きな問題が一つある。
それは……俺が勝てるかどうかだ。
叩きに行くのはいいが、逆に返り討ちに合うかもしれない。
だが、逃げることも不可能のように感じる。
結局のところ、俺はこいつと戦わなければならないのだろう。
「……悪いけど、用事ができた」
「え、用事って……?」
「生死に関わる大事な用事だ。悪いけど、みんなはここで待機しておいてくれ!」
「つ、司くん!」
由乃が俺の名前を叫んだが、相手に気づかれないようにこまめに瞬間移動して敵に近づいていく。
ドンドンと心臓が太鼓を叩くように鳴り響いている。
俺は初めての強敵との戦いになるであろうことを考え、少し不安を覚えていた。
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