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第19話 コボルトキング③

「ぬふふ。負けた方は死ぬんだぞぉ。頑張れ頑張れ」


 折れた木々が左右に並んでいる細い通路。

 そこで女性を人質に取ったコボルトキングは、不愉快極まりない顔で笑っている。

 今にも飛び出して殴りつけてやろうかと考えたが、俺は思いとどまった。


 人質の女性と、なぜか競争をさせられている男性が3人。

 計4人が生存していることは把握した。

 だがそれ以外の人たちは……

 

 地面に転がっている人々の死体を見て、腹の底から怒りが沸いてくる。

 まだだ。

 4人を安全に助けられるタイミングを見計らう。

 あいつを倒すのはそれからだ。


 周囲はコボルトが取り囲んでいて、逃げ出すことはできない。

 となると、あの人たちが逃げ出すための道を作るか、俺の近くで守るか。

 そのどちらかしかなさそうだ。


 今はコボルトキングの出方を窺おう。


 息を切らせながら走っている男性たち。

 もう何週も同じところをぐるぐると走らされている。


「ギャハハハ!」「ハシレハシレ!」


「…………」


 コボルトたちの笑い声が癇に障るが、俺は自分が取る行動を冷静に決断していた。

 この人たちがコボルトキングから一番離れた時……校内の一番奥側に到着するぐらいに仕掛ける。


 今彼らはちょうど半分ぐらいの場所を走っていた。

 俺は火の中級術を起動し、彼らがもう少し離れるのを待つ。


「おーい。死んじゃってもいいのかぁ? 殺しちゃうよぉ?」

「ひ……」


 そして彼らがそこそこ離れたのを確認し、遠くにいるコボルトの後方目掛けて『ファイヤーナパーム』を放り込む。

 男性たちを巻き込まないようにできるだけ遠くにだ。


 ズドンと爆発を起こしたナパームは、数匹のコボルトを炎上させた。


「なっ!?」


 コボルトキングはポカンと爆発を眺めている。

 何が起こったのか理解しておらず、固まったまま動かないでいた。


 俺は潜伏したまま、奴に近づき――


 女性を掴んでいた左腕をボキンとへし折った。



「ぎゃああああああ!?」


 痛みと目の前に現れた俺に、驚愕の表情を浮かべるコボルトキング。

 俺はサッと女性を抱きかかえ、男性たちの下に走る。


「さあ。向こうに逃げて」

「え? あ、ああ」


 4人は急に現れた俺を、戸惑いと喜びが入り混じった顔で見ていた。

 だが俺の言う通りにこの場を去って行く。

 

「な、なんなんだお前は?」

「人間だよ。お前たちが痛めつけた人たちと同じな」


 俺はクロスボウを顕在させ、探索スキルでコボルトキングのレベルを確認した。


 コボルトキング

 LV40


 レベル40か。

 どれぐらいの強さかは分からないが、普通の人じゃ太刀打ちできないぐらいだろう。

 だけど、俺には十分勝てる相手のはずだ。


 油断するつもりはないが、できるだけ距離を取って戦おう。

 背中の大きな剣を背負っているところを見ると、まぁ接近戦が得意なタイプで間違いないと俺は考える。

 ブラフという可能性も無きにしも非ずだが、その時はその時でまた対処法を考えれば良い。


「お前たち、あいつを殺れ!」

「オオオオオオ!!」


 痛みに耐えながらコボルトキングは、仲間たちに命令を下す。

 一斉に駆け出すコボルトたち。


 俺はジャンプし、時計台のすでに時間を刻んでいない時計のすぐ真下、少し出っ張っている足場に着地する。

 

「ナ! ニゲルノカ!」

「逃げるわけないだろ。俺はお前らを赦すつもりはないんだからな」


 ギャーギャーうるさいコボルトに、俺は矢を撃ち出した。

 頭部は破裂したが体は直立したままになっている。


 矢は一瞬でリロードされ、端から順番に狙い撃っていく。


「ア、アイツツヨイゾ!」「バケモノダ!」「アンナニンゲンミタコトナイ!」


 数匹のコボルトは逃げ出そうとしている。

 だがコボルトキングの遠吠えに、体を震わせてピタリと足を止めていた。


「死にたくなければ、あいつを殺してこい!」


 コボルトキングの命令に、モンスターたちは校舎を駆け登ろうとしていた。


「お前らはアホか。そんな中途半端な跳躍力で、校舎を上ろうとしたら――」


 必死に上ろうとしていたコボルトをクロスボウで撃ち落とす。


「こうなるに決まってんだろ。せめて階段を上がって来いよ」


 だが、俺は階段を上がらせるつもりなどない。

 連続射撃で敵を殲滅していく。


「な……な……」


 あっという間にコボルトたちを全滅させることができた。

 それを目の当たりにしていたコボルトキングは、俺には勝てないと悟ったのだろう。

 恐怖に満ちた顔で、ジリジリと後ずさっている。


「司くん!」

「!」


 その時だった。

 由乃がこの場所に駆け込んで来る。


 走って来たのはいいが、由乃はコボルトキングの顔を見た瞬間に恐怖に顔を歪ませていた。


「コボルト……キングっ」


 ガタガタ震えながらも、怒りを募らせていく由乃。


 コボルトキングは由乃を見て、ニヤリと笑い彼女の背後に回る。

 恐怖で身動きが取れない由乃に、素早い動きのコボルトキング。

 彼女は簡単に捕まってしまう。


「う……うううっ」

「こいつが死んでもいいのかぁ? 嫌なら俺の言う通りにしてもらおう」


 俺の体を怒りが熱く支配していくが、頭はキンキンに冷えていくのが分かった。

 冷静に、冷酷に、コボルトキングを見据える。


「お前。どこまでも腐った奴だな」

「腐ってても生きてる方がいいんだよ」

「まだ生き残れるとでも思っているのか?」

「な、なんだと?」


 俺は骸骨の仮面を取り出し、静かにそれを被る。


「お前は、ここで葬る」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] このタイミングで飛び出してくるのはアホの子では済まない。せめて魔物の群れに追い立てられてとか出て来ても仕方ない状況にして、主人公も咄嗟に助けられない状況にしないと。無理やり動かした感が…
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