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不死身の少女とSCP  作者: 白髪 九十九
カオス・インサージェンシー編
38/80

Case36 腐食性カタツムリ


「そういえば」


白い光が反射する廊下を歩いている最中、シャネルさんは唐突に切り出した。


「友梨はSCP-053と仲いいって聞いたけど」


SCP-053…マーガレットのことだ。


「はい、仲良いですよ」

「SCP-120-JP-2とも仲良いんだったよね?」

「ええ、まあ」

「我は認めてないがな」


アイリの話となった瞬間、急に話に割り込んでくるSCP-120-JP。

それはそうと何だろう、急に。


「SCP-105ともだよね」

「アイリスですよね。仲良いと思いますけど」

「さっきの女の子にもやけに優しく接してたね」

「そうですかね」


……なんか言いたい事がわかってきた気がする。


「友梨ってロリコ……」

「違いますからね?!」

「白髪の女!!貴様アイリをそんな目で!!」

「見てないから!!」


やめろ。やめてくれ。

確かに私の周りには小さい女の子が多いなとは思ってきていたが!!


「いや!私そもそも女ですし!」

「同性間での恋愛なんて今は普通だと思うけど」

「そういう問題じゃないんですよ!?」


違うんだ!

せめて小さい子が好きとか言ってくれ。

ロリコンって言われるとアイリにどんな顔して助けに行けばいいかわからなくなる。


「別に否定しなくてもいいよ。私はそういうの変に思わないし。性的趣向の一つでしょ?」

「私が気にするんです!!」

「我も気にする!!」


その時だった。

私達の数メートル先に設置された扉からガタッと物音が聞こえた。


「……友梨」

「はい」


私達は扉へと警戒心を向ける。

私の頭の中に先程の久馬さんの言葉が蘇る。

殺すか殺されるか。

私の銃を握る手に力が篭る。


やがて、扉がゆっくりと開き……。

……部屋の中から10代頃の女の子が出てきた。


「やっぱロリ……」

「いや関係ないですし違いますし」



********************



「この道しかないみたいですね」


東攻略組。

彼らは、大きく開けた入り口の影に隠れていた。

巨大な部屋の中には両手程のサイズの巨大なカタツムリが10匹ほど壁を蠢いている。


「うぇ……カタツムリってどうにも受け付けねぇ。これを食うドイツ人の気が知れねぇよ」

「エスカルゴはフランスの料理ですし、普通に美味しいですよ」


……ブロアがこの時抱いていた感情は恐怖であった。

あのカタツムリに対する恐怖ではない。

ブロアの恐怖心は星影に対するものであった。


侵入直後、星影の部隊はリーダーである彼を残して全滅した。

別に彼を責めるつもりはない。

仕方なかった。

あれは想定できない。

そうやって声をかけようとした矢先。


「……ああ。思ったより早く死んでしまった」


彼はそう呟いたのだ。


そうだった。

こいつはこういう性格だった。

指令を遂行する為ならなんだって犠牲にする。

……人の命さえも。


当然、それを表に出すような事はしない。

頼れる優しい上司。

彼の部下は皆、口を揃えてそう言うのだ。

だけどそれも士気を下げない為に過ぎないのだろう。


「どうしました?」

「あ…いや、何でもねぇ」


ブロアはハッと我に返り、今の現場を再確認する。


全ての道のほとんどは行き止まり。

唯一奥に進む道は大量の巨大なカタツムリ。

その一匹一匹がその図体からは信じられない速さで床や壁を這いずり回っている。


そして、何より着目すべきなのが奴らが這いずり回るたびに排出している液体。

先程から鋼鉄の建物が溶け出し、経験した事のないくらいの音と匂いを撒き散らしている。


「あの液……喰らったらひとたまりもないだろうな」


この特注の防護服でさえも数秒耐えられるかどうか。

間違いなく、軽装の星影では即死だろう。

ここは俺が奴らの気を逸らし星影と俺の部隊で進んでもらうのが一番いい。

……不安はあるが、それしかない。


そして、立ち上がろうとするブロアに声をかける人が八、九人。


「隊長、俺らが囮になります」

「なっ……!?」


覚悟を決めた顔だった。

死んでも構わないという覚悟の顔。


「お前達…!?そんな!?」

「確かに、防護服の着てる彼らがあのカタツムリの気をひいて、僕とブロアさんが先に進む方のが一番いい策ですね」


……一切の迷いのない星影の言葉。

緊張や焦りが一切感じられない。


「星影さんの言う通りです!隊長!」


確かに、星影の言う通りだ。

それが一番いい。

だが、部下を囮にして先に進んで……それでいいのか?


「隊長!」


俺はエージェントだ。

俺はこの組織を潰す為にここに来た。

それは、そうする事で沢山の命が救われるからだ。


「わかった……」


だから、俺ができる事は一秒でも早くここの親玉を叩く事……!


「お前ら、絶対死ぬなよ!!」

「はい!!」


その返事とほぼ同時に彼らは部屋へと突入する。

カタツムリは彼らを見つけると明らかに不自然な速さで接近し始めた。


「行きましょう」

「ああ」


鳴り響く怒号と這いずり回るカタツムリの端で俺たちは先へと進んだ。

*御館 友梨のSCP勉強のコーナー*


「このコーナーでは、私、御館 友梨が画面の前の皆様と一緒にSCPを勉強していくコーナーです!今日の先生はこちら!」


「こんちは!美郷やで!」


「流さん!よろしくお願いします!」


「任せとき!今回紹介するのはSCP-1753「めまい」や。オブジェクトクラスはSafe」


「めまい……?現象系のSCPですか?」


「いんや、SCP-1753は油絵のSCPで、ヨセミテ国立公園のエル・キャピタンか描かれているんや。更に"空を飛ぶ時"("time to fly")という文言が岩の上に書き加えられとる」


「……ヨセミテ?」


「カリフォルニアにある自然公園や。人間がこの文言を理解すると目眩に襲われる。それが最初の異常性」


「だからオブジェクト名が「めまい」なんですね」


「それだけちゃうで?被曝者はこの12〜14時間後にとある症状が起こり始める」


「症状って……?目眩がひどくなるとか?」


「そんなもんやない。このSCPの異常性が発現すると、僅かな段差でも数千メートルの高さに感じるようになるんや」


「なっ……それ高所恐怖症からしたら地獄じゃないですか」


「さらに実際本人が絶壁と認めるところから飛び降りた場合、30秒間ほど空中に留まり地面に叩きつけられる。即死クラスのスピードで」


「それって本人視点だと飛び降りてるってことですか?」


「そゆことやろなぁ……。にしても、空中に留まるってなんかバグみたいやな」


「バグという言葉に若干のトラウマがあるんでやめてください……」


SCP-1753

『めまい』



「SCP-075の腐食性カタツムリ」はAelanna作「SCP-075」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-075 @2008


「SCP-1638-JPのイタチごっこ」はVideoGameMonkeyMONO作「SCP-1638-JP」に基づきます

http://scp-jp.wikidot.com/scp-1638-jp @2019


「SCP-1753のめまい」はEnresshou作「SCP-1753」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-1753 @2013


「SCP-053の幼女」 は Dr Gears作「SCP-053」に基づきます。

http://www.scp-wiki.net/scp-053 @2008

また、作品進行の都合上仮の名前をつけさせていただいております。


「SCP-120-JPの世界で一番の宝石」はZeroWinchester作「SCP-120-JP」に基づきます。

http://ja.scp-wiki.net/scp-120-jp @2014


「SCP-105のアイリス」はDantensen作「SCP-105に基づきます」

http://www.scp-wiki.net/scp-105 @2008

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