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Case31 戦いの火蓋-O

SCP-2934の回収から一日。


私の部屋は乱雑に荒らされていた。


部屋のテレビや机はひっくり返されている。

まるで、何かから逃げようとしていたように。


「アイリは……?」


そこには勿論アイリの姿はない。


代わりに何人かの職員が指紋のような者を取っている。


「友梨様……ご無事ですか……」


シロツメさんが部屋の奥から現れた。


「私はさっき帰ってきたところだったから…それよりこれは?」

「……SCP-120-JP-2……アイリ様が…誘拐されました」


誘拐……?

アイリが誘拐……?


「だ、誰に?!」

「……恐らく、カオス・インサージェンシーのものかと」


カオス・インサージェンシー……SCPを私利私欲のために利用する要注意団体……!


「だったら助けに……!」

「お待ち下さい」

「だってほっとけないでしょ?!」

「お待ちください……と言っています。もうすぐ話し合いが……終わるはずです……」


その時、夏華さんが廊下から歩いてくる。

彼女の強い足音には怒り、そして覚悟がこもっていた。


「夏華さん……私……!」

「友梨ちゃん。貴方にカオス・インサージェンシーの日本支部の攻略の手伝いをしてもらいたいの」


私の言葉に被せるように夏華さんは言った。


……私の答えは決まっている。


「当たり前です。参加させてください」



********************


 

財団施設 地下 機密会議室


そこへ入ったの初めてだった。

というか存在さえも知らなかった。


「あの……御館、友梨です」


私の声が虚しげに響く。

エージェントの中には勿論見知った顔もいるのだが、今は皆が私を観察しているように思える。


「本部外の人は初めてだよね。挨拶だけでもして」


夏華さんが口を開き、ようやくエージェント達は観察をやめた。


「私は久馬(きゅうま) (れん)。ヨーロッパの支部にシュレンと一緒にいた。君の力は頼りにしている」


その女性は武士という言葉が相応しかった。

久馬さんはこいつと言って左隣の派手な女性を指差している。

日本人なのにヨーロッパ…?

まあ、クリスやヴァルトさんも日本にいるからおかしな話ではないか。


「はーい。シュレン・マスチットでーす」


シュレンさんは私には一切興味がないようだ。

手をひらひらと振り、足を組みこちらを見下している。


「ブロア・バッヂだ。アメリカにいた。肉体で抑えられるものならどうとでもなるが、精神的なものにはお前の力が必要になるだろう。よろしく頼む」


ブロアさんはサングラスを傾けて緑色の目をこちらに覗かせている。

肉体で抑えられる…というのはあながち冗談ではないだろうという事は彼の肉体が物語っている。


「私はシャネル・カール。ロシアで働いてる。正直SCPの力を借りる事はよく思ってない。けど作戦が上手くいくなら手伝ってもらう。それだけ」


随分とズバズバと言う人だな。

シャネルさんと全体的に呪術的な格好をしており如何にもミステリアスと言う感じだ。


「僕は(ワン)軍陵(グリョウ)。中国支部の方で色々やってたよ。よろしくね」


王さんは椅子から降りてこちらへと近づくと手を差し出してきた。


「あ、よろしくおねが…」


私が差し出した手を握ろうとしたその時。

首に痛みが生じる。


「ぁぇ…?」


私は言葉にならない声を上げる。

首が冷たい。


「王!?何やっとんの?!」

「あれ?、こいつ死なないんじゃないの?」


美郷さんの声でようやく私は理解する。

刃物を持った王さんが目に映る。


私は思いっきり後頭部を床に叩きつける。

痛い。

めちゃくちゃ痛い。

死ぬほど痛い。


喉が血で満たされる感覚。


「はぁ……!はぁ……!」


死なないが、この感覚はとても慣れるものではない。


「へー。本当に死なないんだ」

「王!」

「わかってるって。もうしない」


夏華さんの怒り声に王さんは適当に頷き、席に戻ろうとする。


「ゲボッ……ゲホ……」

「ま、いいでしょ。SCPだし。精々利用させてもらうよ。化け物の餌にさ。昨日盗られた化け物と仲よかったんだろ?なら命を賭けて協力してくれるね」


口から血を掻き出す。

首に手を当てる。

傷はもうない。


怒り。強い怒り。

でも、そんなのどうでもいい。

私はアイリを助けたい。


「待ってください」

「ん?」


私は振り向いた王に思いっきり殴りかかった。


「私は実験動物じゃない!!御館友梨だ!!友達を助けにいくんだ!!」


私の声が部屋に響く。

私は勢い余って床に倒れ込んでしまったが、それは殴られた王も同様であった。


私はSCPだ。

だからといってそれが何だというんだ?

私は友達を助けにいくだけ。

それだけだ。


「私はいい。ただ、アイリを化け物呼ばわりするのは許さない」


アイリもマーガレットもアイリスもカインさんも。

そりゃあ少し特殊な人かもしれない。

だけど皆人間だ。

SCPだけど心がある。

皆私の友達だ。

それを化け物と言われるのは許せなかった。


「……ガハハハハハ!!やられたら王!」


ブロアさんが手を叩いて笑う。

隣でシャネルさんもクスクスと笑っているようだ。


「いくら油断していたとはいえ、お前が顔を殴られるとな!」


床に座り頰を抑えている王は拗ねたようにプイとそっぽを向いた。


「いいね。爽快だったよ」

「久馬様?!」


倒れ込んでいる私に手を差し伸べたのは久馬さんだった。


「不死身だとしても首を切った相手に即座にやり返せるのは勇気がいるからな。なかなかに見込みがあるね」


……なるほど。

どうやら私が観察されていたのは勘違いじゃなかったらしい。


「そうだね。それじゃあSCP-________……もとい御館友梨をカオス・インサージェンシーの襲撃に参加してもらうものとする。異論ある人は?」


夏華さんはエージェントの顔を伺う。

クリスは少しばかり嫌な顔をしているが、仕方ないといった様子だ。

シャネルさんも多数決で決まったら文句がないといったように頷いている。

シュレンさんは私がどうこうというより久馬さんが私を気に入った事が気にくわないらしい。

王は相変わらず拗ねた感じだ。


「決定ね。実行は明日。戦力は最高クラスエージェント9人にそれぞれをリーダーする機動部隊。それにSCP-________」


機動部隊……確かカインさんに話を聞いた気がする。

機動部隊とはそれぞれの専門に特化したエージェント組織。

その中でもリーダーは9人のエージェントをはじめとする実力者で組まれるという。


「あれ?実行は一週間後じゃありませんでしたか?」

「シャロット博士が通信を盗聴したところ、今から三日後にSCPの大型取引が行われる。だからそれまで時間がないの。それに、取引の日が近付けば近づくほど商談相手がカオス・インサージェンシーの施設に来る可能性が高い。ただでさえ相手の戦力がわからない以上出来る限り早く攻めた方がいい」


異議を唱える声はない。


「それじゃあ決定。明日、カオス・インサージェンシーの日本支部を潰す」


「このコーナーでは、私、御館 友梨が画面の前の皆様と一緒にSCPを勉強していくコーナーです!今日の先生はこちら!」


「……私だけど」


「えっと…シャロット博士です」


「シュレンとかシャネルとかシャロットとか。作者はサ行に思い入れでもあるの?」


(あ、だから機嫌悪いのか)


「とにかく。今回紹介するのはSCP-001を紹介するわ」


「SCP-001って最高機密なんじゃ……」


「まあ、こっちの世界は色々と緩いから」


(それでいいのか?!)


「SCP-001 別名「初見殺し」は沢山のSCP初心者を葬ってきた最悪のSCPよ」


「もしかして第4の壁越えた話してます?」


「そう。画面の前の貴方に紹介してるの」


「うわ、この人今日なんでもありだ」


「SCPを何かしらの方法で知った多くの人物は、まずSCP-001に手をつけるわ」


「まあ、最初から見たいですしね」


「だけどそこにあるのは難解な文章とSCPの知識をある程度知っていないと読めないような鬼畜の所業!」


「……シャロット博士?」


「あれを見てSCPを難しいものと決め付けて、離れていくのがいるのが私は悲しい!」


「……シャロット博士?!」


「SCPを見たい知りたい感じたいという方にはSCP-002から見ていくか、評価順に見ていくのをお勧めするわ。後はアニオタwiki。解説動画なんかもおすすめよ」


「というか、結局SCP-001とは何なんですか」


「自分で調べて!」


「何この人怖い!」


SCP-001






「SCP-2934のマジかよ、ンドレッツ・ゲガ最低だな」はButtfranklin作

「SCP-2934」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-2934 @2016


「SCP-120-JPの世界で一番の宝石」はZeroWinchester作「SCP-120-JP」に基づきます。

http://ja.scp-wiki.net/scp-120-jp @2014

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