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不死身の少女とSCP  作者: 白髪 九十九
カオス・インサージェンシー編
33/80

Case32 世界で一番の宝石③

本日、過去の設定を一部書き換え改めて投稿させていただきました。

ご迷惑おかけして申し訳ございませんでした。

2020年 2月 26日

会議が終わり、それぞれが明日への準備を整える頃。


私はシュレンさんに睨まれ続けていた。


「………」

「えっと……なんでしょうか?」


私は困惑した顔で首を傾げるが、シュレンさんは私の目と鼻の先で睨み続けるのをやめない。


「……なんであんたが」

「へ?」

「なんであんたが久馬様に手を握ってもらえるの!」


シュレンは悔しそうに地団駄を踏んでいる。

一体なんだというのだ。

確かに倒れた私を起こしてもらう際に手を握ったが……。


「いい?久馬様の指紋にはね!無限大億円の価値があるの!」

「無限大億円ってなんですか無限大億円って!」

「うるさい!とにかくそれくらいの価値があるって言ってるの!」


なんなんだこの人。

気持ち悪い!


「やめないか」


シュレンの背後からやってきた久馬がシュレンの首筋を猫のように摘む。


「きゅ……久馬様!?」

「その様っていうのもやめてくれ……恥ずかしい」

「ひゃ……ひゃい」


急に塩らしくなるシュレンさん。

さっきまでの威勢が嘘のようだ。


「すまないね。うちの友人が迷惑をかけて」

「いえいえ……。そういえば久馬さんって日本人ですよね。どうしてヨーロッパの支部にいたんですか?」

「ああ、それはね。私とシュレンは同じ師匠に育てられてね。その人がヨーロッパの人だったんだ」


師匠……。

初めて聞くワードだ。


「エージェントになるには師匠に……その…弟子入りするのもなんですか?」

「いや、そうとは限らない。普通は養育施設で学ぶんだが、私らやクリスは少し特殊なんだよ。それとクリスもかな」

「クリスも?」

「ああ。彼も師匠がいたんだよ」


『いた』か。


「シャネルは師匠はいなかったんだけどちょっと境遇が特殊でね」

「どういうことですか?」

「彼女は要注意団体を制圧した時に見つかった子供なんだよ。なんでも洗脳される直前だったらしい」


シャネルさん。

あのスピリチュアルな感じの人か。

確かにあの人は他のエージェントに比べて異質というか変な雰囲気を纏っていた。


「まあ、その時に財団に救われてウチに……って感じらしいね」

「そういうのもあるんですね」


洗脳されそうになったところを助けられたって凄い過去だな……


「そうだ。私達の他にもシャネルとブロアと王は初めましてだろう?挨拶してきたらどうだ?」

「王もですか…?」

「あー。まあ、悪いやつじゃないんだ」


初見で首を切ってくる人を悪い人じゃないと言われて信じる人がいるだろうか?

いや、いるわけがない。


「え?なになに?僕の話してる?」


無視する気だったがどうやらあちらから来たようだ。

これではしょうがない。


「王!お前!久馬様に馴れ馴れしく近づくんじゃねぇ!」


怖い。

さっきまで私に対して我慢していた感情が爆発したみたいだ。


「あ、君誰だっけ?」

「シュレン・マスチットだよこの野郎!」

「あ、久馬の金魚の糞の…」

「久馬様を金魚などというチープな魚と一緒にするな!」


糞には怒らないのか。


「やめろ王」

「……まあ、いいや。用があるのはこっち」


そう言って王は私の方に視線を向ける。


「君、名前なんて言うんだっけ?」

「………御館友梨です」

「みたて、ゆり、なるほど。よろしくね」


どの口が?!?!

そういうと、王さんはフラフラと手を振って出て行ってしまった。


「なんなんですかあの人」

「……悪いやつじゃないんだ」


さっきより声が小さいですけど。


とにかく。

次に私はブロアさんの元へと向かう。

シャネルさんより話しやすそうだし。


久馬の情報を元に私は食堂へと向かった。


「なんかすごい大騒ぎしてるな」


廊下からでも聞こえてくるような馬鹿騒ぎ。

私が恐る恐る中を除くと、そこにはブロアさんを中心に酒を煽り大騒ぎしているエージェント達の姿があった。

そしてそこには肩を組まれ捕まっている星影さんとクリスの姿もあった。


「え、何してんですか」

「お?!不死身の嬢ちゃん!お前も飲むか?」


当たり前のように未成年に飲酒を勧めてくるSCP財団。


「あ、私未成年なので」

「固ぇな……ほら、クリス飲め!」

「いやだから俺も未成年だって……」


あのクリスが弱腰になっている!

珍しい!写真撮りたい!

アイリス呼んでこようかな?


そういえば、周りで騒いでいる人達は見たことがない人達ばかりだ。

筋肉質な黒人。

きっとブロアさんの機動部隊の人たちなのだろう。


「今日は朝まで飲むぞ!!」

「飲むわけねぇだろうが!!」


ちなみに星影さんは隙を見て逃げ出していた。


「……また後でにしようか」


あそこに巻き込まれるのは辛い。

その時、後ろから美郷さんとヴァルトさんがやってきた。


「あれ?友梨やん。どしたのこんなとこで」


美郷さんは元から小柄と言うこともあってヴァルトさんの横に並んでいるとより小さく見える。


「初めて会ったエージェントの方に挨拶に行こうと思ったんですけど、あんな感じで」


流はチラリと食堂の中を覗く。


「あー。そっか。ヴァルトっていつもどっか行く前はこうするねん」

「え、いつもですか?」

〔いつ最後の晩餐になるか分からないからって〕


ヴァルトさんがノートをかざす。

最後の晩餐……そっか。

皆、死ぬ気で臨んでいるんだよな。

少し平和ボケしていたかもしれない。


「まあ、そんな暗い顔せんといてや。あいつは死ぬ時も笑っていようがモットーなんやから」

〔ブロアはいつも笑ってるんだよね〕

「そうなんですか」

「うちらは今から混ざろうと思うけど。友梨は?」

「あ、私はシャネルさんのところに行こうかなって」

「あ、シャネルなら3階から行ける屋外施設に行くって言うてたで。星が見たいとかなんとか」


星……やっぱりどこか変わった人だな。

私は二人に感謝を述べると屋外施設へと向かう。

そこには数個の望遠鏡と丁寧に育てられているであろう花々。

そして、その花壇に腰掛けるシャネルさんの姿があった。

星の光を受けて、彼女の数々のアクセサリーは幻想的に反射していた。


「……綺麗」


シャネルさんはそう呟く。


「あ、シャネルさん」


私が声をかけるとシャネルさんは飛び上がり、すぐに私から遠ざかる。


「な、何かしら?貴方と馴れ合うつもりはないのだけれど」

「えっと、挨拶にでもと思って。初めましてですし」

「あ、そう。ならもう十分でしょ?帰って」


そう言われたらしょうがないと思い帰ろうとする私だったが、彼女に背を向けると再び声がかけられる。


「いや……違うの。ごめんなさい。意地悪が言いたいんじゃないの」

「え?」


私が振り向くと、そこには先ほどまでの威圧的な様子はなく、どこか申し訳なさそうにおどおどしているシャネルさんの姿があった。


「私、人に強く当たってしまうの……悪いことだっていうのはわかってるんだけど。ごめんなさい」

「いえ、気にしないでください。あ、私も星見ていいですか?」

「ブロアのところに行かなくていいの?」

「私、今日はああ言う気分じゃなくて」


私はシャネルさんの隣に腰掛ける。


「……ミア博士は元気?」

「ミア博士ですか…?元気ですよ。だけどどうして?」

「私がどうやって財団にやってきたかは知ってる?」

「確か……要注意団体から引き取られたって」

「そう。助けてもらった私を面倒見てくれてたのがミア博士なの」


そんな話、彼女からは聞いたこともなかった。

やはり彼女は人間にもSCPにも優しいのか。


「でも、それなら会いに行けばいいじゃないですか?」

「いや。喧嘩しちゃっててね……色々あって」

「喧嘩?それなら尚更!」

「ううん、いいの。ありがとね」


彼女の声は小さかったが、そこには確かな覚悟があった。


「……見つけました」


その時、カインさんが屋外施設に入ってくるのを私達は目撃する。


「あ、カインさん」

「御館様、実は貴方に渡したいものが」


そういってカインさんが差し出したものは小さな貝……。

いや、これは。


「また会ったな。白髪の女」


……SCP-120-JP?


「な、なにやってるんですか!勝手に連れ出したら!」


カインさんはニコリと笑うと私の口を人差し指で塞ぐ。


「立派な収容違反ですが。これは」

「今回は見逃してくれませんか?シャネル様」

「……まあ、いい。貴方は信用してる」


そういうとシャネルさんは特になにもいうことなく再び座り込んだ。


「えっと…それでなんで私を?」

「深き海とそびえる山を統べる偉大なる王様が貴方についていきたいと」


深き……?

ああ、こいつの名前か。


「ついていきたいのではない。ついていってやると言ったのだ」

「あぁ、それは失礼しました」


小さな貝に頭を下げるいい大人。

なんとも不思議な光景だ。


…こいつもアイリが心配なのだろう。

見た目も声の調子もいつもと変わらないが、どこか元気のないように見える。


「ということだ、白髪の女。いざとなったら暴れてやる」

「んなことされたら困るんですけど」


馬鹿なのだろうか。


「でも……ありがとうございます。少しだけ不安だったんです」

「うむ」


私はカインさんからSCP-120-JPを受けとる。


「でも、どうするの?他の人に見られたらマズイと思うけど」

「あ、ポケット入れときます」

「ポケ……!」


何か口うるさいことを言われる前にSCP-120-JPをポケットにしまう。

幸い、私相手だとSCP-120-JPは異常性を発生できない。


「じゃあ私はこれで。無事に戻ってきてくださいね」

「カインさん、ありがとうございました」


私とシャネルさんはカインさんを見送ると、また花壇の縁に座り込む。


「明日、死ぬかもしれないね」


唐突にシャネルさんはそう呟く。


「私は死なないですけどね」

「あ、そうか」


私達は何が面白かったのか互いにクスクスと笑い合った。



……やがて、夜が明ける。

*御館 友梨のSCP勉強のコーナー*


「このコーナーでは、私、御館 友梨が画面の前の皆様と一緒にSCPを勉強していくコーナーです!今日の先生はこちら!」


「こんにちは。シャネル・カールよ」


「シャネルさん!よろしくお願いします!」


「えぇ。今回紹介するのはSCP-811『沼女』よ」


「あれ?豚の塩漬けは?」


「あれはまた今度。SCP-811は細長い手足とわずかに膨らんだ腹部を持つ人間の女性によく似た生物」


「人間の女性によく似た生物って……」


「まあ、体の構造が人間とは違うからね。SCP-811は皮膚から常に粘着性のある液体を排出している。まさに沼女ってわけ」


「えっ……ちょっと気持ち悪いですね。それは」


「……元は人間だったみたいだけどね」


「え?」


「SCP-811は何者かによって実験であのような姿に変えられた人間……という説が濃厚」


「……私とても酷いこと言ったんじゃ」


「後で謝っときなさい。そういえば、沼女といえばシャロット博士が呼ばれると思ってたわ」


「え?なんでですか?」


「ほら、沼 (にはまった)女だから」


「アニメのってことですか?確かに!言えてるかも!」


「……聞こえてるわよ」


「「え」」


SCP-811

『沼女』



「SCP-073のカイン」はKain Pathos Crow作

「SCP-073」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-073 @2008


「SCP-120-JPの世界で一番の宝石」はZeroWinchester作「SCP-120-JP」に基づきます。

http://ja.scp-wiki.net/scp-120-jp @2014


「SCP-811の沼女」はPig_catapult作「SCP-811」に基づきます

http://www.scp-wiki.net/scp-811 @2009

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