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Case19 ゴリラ戦

「んー!美味しい!」


私の前でアイリが美味しそうにケーキを頬張っている。


「あんまりケーキ食べると太るよ?」

「太らないもん!」


彼女はハムスターのように頬を膨らませている。

端的に言って可愛い。


「けど、こんなにケーキ食べてていいの?」

「いいよ。何故か無料だから」


ここのケーキは何故か無料である。

しかし、絶対に残してはいけないという決まりはあるが。

…………まあ、深く考えるのはやめておこう。

まさか、体に悪いということはないだろう。


「ね!ユリ!この後ゲームしない?ヤドカリさんと通話繋げて」

「あーごめん。私この後やんなきゃいけないことがあってさ」


実はこの後、夏華さんに呼ばれているのである。

ていうか、そう簡単に通話って繋げられるものじゃないんだが。



…………SCP-120-JPによって引き起こされた事件から既に2ヶ月が経過していた。

SCP-120-JPは予定通り別の収容施設に移動され、オブジェクトクラスも変わらずEuclidのままである。

アイリの世話は変わらず私に振り当てられ、今でも少し狭くなった部屋に二人で暮らしている。


「えー、じゃあすぐに終わらせて!」

「うーん。すぐには無理かも」


私はこの二ヶ月で数多くのSCPオブジェクトに触れた。

あるものとは仲良くなり、あるものには殺されかけ………。

まあ、前よりもSCPの実験に多く呼ばれるようになったのは事実だ。

今日は夏華さんだから、そこまで危険なものではないと思うが時間はかかるだろう。


「じゃ、そろそろ戻ろうか」


私とアイリは食器をカウンターへと戻す。


「じゃあ!早く帰ってきてね!」

「うん、わかってる」


この子も偶に通話はしているものの、SCP-120-JPと離れ離れになり、寂しいのだろう。

中学生なんて本来ならまだ親に甘えている時期だ。


頑張って早く帰ろう。

そんな気持ちを胸に食堂を出たのだが…


「……!、アイリ!しゃがんで!耳を塞ぐ!」


アイリはすぐさま頭を抱えてしゃがみこむ。

廊下は煙幕に包まれていた。

私は、アイリが耳を塞いだことを確認すると、私も耳を押さえる。

すると、次の瞬間廊下に小さな爆破音が鳴り響く。


私はポケットから小型のナイフを取り出すと、体をかがめて近くに手を伸ばす。


「あった。これだ」


私は床に貼られている糸を見つけると、ナイフで切断し立ち上がる。

少しづつ晴れてきた煙に、視界の端に映る人形……


2……いや3匹。


私は人形に向かって手を伸ばす。

人形はこちらに気づいていなかったのか。

糸が張られていることに慢心していたのか。


案外呆気なく捕まってしまった。


「「「……………」」」

「やっぱまたあんたたちね」


私が捕まえているのは3匹のゴリラの人形。

いや、3匹のSCP-3092-Aだ。


SCP-3092。オブジェクトクラスはEuclid。

とあるクレーンゲームだが、この中から出現した人形(SCP-3092-A)は自我を持って動き始める。

悪戯好きでゲリラ戦法を得意とするため監視の隙を突きよく収容違反を行なっている。

また、他の人形に触れることでその人形を自らに変化させ増える。


「また星影さんに連絡しないと……あ、アイリ!怪我はない……」


アイリはどこからか現れたゴリラの人形を抱きしめていた。

いや、体をジタバタさせ逃げようとしている。

SCP-3092-Aだ。どこかで増やしてきたのだろう。


「………気に入ったの?」

「うん!」


ここ2ヶ月を過ごしてわかったことがある。

この子意外とわがままなのだ。



********************



SCP-3092-A-23。

ヘルメット……彼らの中ではそう呼ばれている。


三匹のSCP-3092-A、それぞれYシャツ、ちょび髭、ジージャンと呼ばれる彼らは天井裏から部屋を見下ろす。


部屋には二人の少女がベッドで眠っている。

片方は白髪の女。

今日我々が不覚ながら捕まってしまった奴だ。

硬い胸の感触を覚えている。


そして、もう一人のワンピースの女。

まるで胎児のように丸く眠っており、その腕の中には我らが同胞、ヘルメットの姿がある。


Yシャツは思わず声を出しそうになってしまうちょび髭の口を抑える。

気持ちはわかる……だが、ここは抑えるんだ……とも言いたげに。


Yシャツが指示を出すと、ジージャンはロープを床に垂らす。

ちょび髭とジージャンはそれぞれロープをギュッと握るとYシャツにグッドサインを送った。


四匹で帰ろう。


彼らの間に言葉はいらなかった。


Yシャツは垂らされたロープをしっかりと掴み、ゆっくりと降りていく。

一方、ヘルメットも彼らの存在に気づいたようで、ゆっくりとYシャツに手を伸ばす。


あと30センチ……20……10……。

ようやく、二匹の手が重なる。


Yシャツはほっと息をつき、上の二匹へ合図を送る。

その時だった。


「んっ……ん……」


ワンピースの女の手がヘルメットの足を掴んだ。


ヘルメットは慌てて手を引き剥がそうとするも、離れない。

それどころか、ロープがギシギシと揺れ、上の二匹が真っ赤な顔をしている。

Yシャツはヘルメットを落ち着かせようとするが、時すでに遅く……



********************


「ふわぁぁぁぁ……ん?」


私は横に眠っているアイリを見る。

というかアイリのベッドは別にあるのだが。

まあ、それはいつものことなので置いといて。


「一匹じゃなかったっけ?」


アイリは4匹の困り顔のSCP-3092-Aを大切そうに抱きしめて、可愛い寝顔を見せるのだった。



…………いや、収容違反!!!

*御館 友梨のSCP勉強のコーナー*


「このコーナーでは、私、御館 友梨が画面の前の皆様と一緒にSCPを勉強していくコーナーです!今日の先生はこちら!」


「どーも!雛染荒戸です!」


「げっ……最近見てないと思ってたのに」


「最近僕も忙しくてさ、君なんかに構ってる暇ないんだよ」


「(イラッ)」


「さて、今回紹介するのはSCP-338-JP『これはシャーペンです』オブジェクトクラスはEuclid」


「This is a penってやつですか?」


「シャーペンはpenじゃなくてmechanical pencilだけどね。そんなのもわかんないの?」


「このやろう……」


「ま、気を取り直して。SCP-338-JPは文字通りシャーペンのSCPだよ。その異常性はそのペンで性質を書くと、その性質がペンに付与されること。例えば、これは火を噴くシャーペンですってすると芯の代わりに火が出るのようになる」


「なるほど。便利でもあるけど使い方を間違えたら危険物にもなりますね……」


「そゆこと。でも、悪戯には最適だと思わない?」


「また夏華さんに言いますよ」


「なんか対応がスマートになってきたよね」



SCP-338-JP

『これはシャーペンです』



「SCP-3092のゴリラ戦」はHunkyChunky作「SCP-3092」に基づきます。

http://www.scp-wiki.net/scp-3092 @2017


「SCP-338-JPのこれはシャーペンです」はtonootto作「SCP-338-JP」に基づきます。

http://ja.scp-wiki.net/scp-338-jp @2015

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