第三百六十六話
お待たせしてしまい申し訳ありません。
第三百六十六話です。
今回は一話だけの更新となりますが、ちょっとだけ長めとなります。
魔力感知で感じ取れる反応からして相手は魔物の群れ。
それもかなり多く、戦闘は避けられない。
……魔力の節約をしなきゃな。
系統劣化で節約しても減るものは減るからな。
確認ついでに肩にいる子ライオン状態のルーネに話しかける。
「ルーネ、僕の手に炎を纏わせることってできるかな?」
「無理。燃えはしないようにできるけど熱はある」
「じゃあ、この籠手には?」
肩の子ライオン、ルーネにそう尋ねると彼女のいる僕の肩から炎が走り、右手の籠手へと火が灯される。
……籠手をつけている上なら大丈夫そうだ。
「近くでよく見ると炎の色は青っぽい黒なんだな」
昼間に見たから真っ黒に見えていたけど暗闇の中で見ると青っぽい色が混ざっているのが分かる。
子ライオン状態のルーネも同じ色だ。
「あとはお前の……いや、キーラの黒いひらひらした服」
『私の闇魔法のこと?』
「ああ。それにもつけられる」
そう言うとキーラの闇魔法のマントにルーネの闇魔法の炎が走り縁が燃えるように火がついた。
背中で固定されていたハンナさんはパニックになりながら後ろから僕の頬を叩く。
「ちょ、ちょちょちょ!? 私もいるんですから燃やさないでください!!」
「あ、ごめんなさい。」「……でも心配するな。お前を避けるようにさせておいた」
「ルーネちゃんは気にしなくていいですよぉ」
情緒不安定かよ。
ルーネにでれでれしながら僕の頬をぺちぺちと叩くハンナさんにため息をついた僕は一度炎を消してもらい、アウルさんへと振り返る。
「アウルさん。とりあえず敵の状況を説明します」
「まずは君の今の状況の説明の方が先では?」
「フッ、見てのとおりです」
「う、うわぁ、見た結果脳が理解を拒んでしまうー……」
本当にこれだけしか言えないんですけどね。
見た目通り即興のチームワークみたいなものだから。
「それで、敵ですけど」
「はい」
「とりあえずたくさんいます」
僕の言葉にアウルさんが首を傾げる。
抽象的すぎてうまく伝わらなかったのだろう。
「え、どれくらいですか?」
「壁にも地面にもたくさんです。ここから先は一本道なので避けて通ることも難しいでしょう」
「……えーっと、魔物ですか?」
「恐らくは」
姿形はよく分からない。
この遺跡が湖の中にあるということでそれに関係する魔物なのは間違いないだろうが、恐らくは群れ。
「あっちは僕たちに気づいて殺気立っています。もしかしたら……嗅覚が優れている魔物かもしれません」
「温厚でもないってことですねぇ……どうします?」
「道を引き返すわけにもいきませんのでこのまま強行突破します」
ブルリンがいればよかったんだけど、あいつは今はアマコの方にいるからな。
———ん?
「一体だけこっちに来てます。地面を這う……蛇の魔物か?」
「斥候っすかね?」
「恐らくは。まずは相手の正体を知りましょう」
すごい速さでこっちに近づいてくるので、接敵する前に眼前の通路の壁に粘性のある治癒魔法弾を打ち込む。
治癒魔法の緑の光で通路を照らすことで視界を確保する。
「ね、ねえ、ウサト君。やっぱり私がもらった魔力弾色が薄くないですか?」
「敵がきますから集中してください」
「え、あ、ごめんなさい……やっぱり薄いんだよなぁ……」
勘が鋭いあたり本当に流石だ。
系統劣化させた治癒魔法弾そのものは無害そのものなんだけどなぁ。
……っと、来るか。
「なにが来るかな……!」
感知範囲で近づいてくるのは一体だけ。
明確な形はでっかい蛇。
それが治癒魔法の明かりが照らされた通路に勢いよく姿を現した瞬間———鋭利な牙をのぞかせる口を大きく開きながら僕目掛けて飛び込んできた。
「ヴァァァァ!!!」
『「きゃああああ!?」』
現れた魔物の鳴き声とハンナさんとキーラの悲鳴。
僕はさほど動揺せずに噛みついて来ようとする大きな蛇のような魔物に裏拳を繰り出す。
「ふんっ」
「ヴァギィ!!?」
横っ面を殴りつけられ、一瞬で白目を剥いた蛇は壁に頭から叩きつけられそのまま気絶してしまう。
「……よし」
「な、なんでウサト君は動じてないんですか?」
「今更、でかい蛇程度でビビるわけがないですから」
「無駄に頼もしくて腹立たしいですね……」
理不尽では?
そもそもバルジナクや邪龍とも戦ったことがあるからね。
僕をビビらせたければローズか先輩かルーカス様を連れてきてほしい。
ローズはいわずもがな、先輩とルーカス様は魔王よりも何をしてくるか分からないから。
「それで、この魔物はなんなんですか?」
気絶した魔物を見てみれば、ただの大きな蛇じゃないことが分かる。
蛇の体表、というより竜を思わせる鱗をしているし、その色も綺麗な青色だ。
大きさは……3、4メートルくらいか。
魔物としては平均的な大きさだけど、この先で待ち受けている数が尋常じゃない。
「す、水竜です。海では海竜……シーサーペントと呼ばれる種らしいですけど……こんな異常な数の群れを作るなんて聞いたことありません」
「うわぁ、海竜なんて初めて見ましたよ。私が隊長の部隊に居た時でさえ、もう絶滅したものとばかり思っていましたけど……やっぱり秘境にはいるもんなんですねぇ」
「こいつ珍しいのか? 割とそこらの川とかにいるぞ」
ハンナさんとアウルさんは珍しがっているようだけど、ルーネにとってはそこらにいる魔物のようだ。
もしかすると人間の領域には滅多にいない魔物なのだろうか?
たしか、僕が読んでいた魔物の本にはそんなことが書いてあったような気がしたけど。
「こいつは群れの下っ端っすね」
「分かるんですか?」
「ある程度賢い魔物はこうやって下っ端を先に行かせて獲物の力量を計ろうとするんです。この場合、私達が獲物ってわけです」
僕達からすれば相手の正体が分かっただけなんだけどな。
治癒感知で僕は相手以上の情報を持っているはずだ。
変わらず強行突破して先に進んで行こう。
「まずは魔法で蹴散らします。キーラは背中の守りを。ルーネは炎で補助。ハンナさんは接敵次第魔力弾で援護。アウルさんは僕と共闘して水竜の群れを突破します」
「……」
「アウルさん?」
驚いたように僕を見るアウルさんに声をかけると彼女はハッとした様子で頭に手を置いた。
「なんというかちゃんと副隊長……副団長しているんだなって思ってしまって。本当に、君は私と似ているんだなって」
「貴女にそう言われて光栄です」
「やめてくださいって。私なんて道半ばで死んじゃったんですから」
アウルさんは自嘲気味な笑みを浮かべる。
「私は時代に取り残された屍なんです。だから君に尊敬される人間でもないし……」
「でも生きてるじゃないですか」
「……あ、あの、もしかして私の状況とか分かっていませんか?」
ここまで話してみて思ったけど、アウルさんの場合は死んでいるとかそういう話じゃない。
ちゃんと理性もあるし話すこともできるんだ。
「こうして話せるくらいに正気があるなら生きているのと変わりませんよ。団長の前に連れて行って話もさせられますからね」
「……君ってよく頑固だって言われません?」
そういう意味では頑なにローズと合わす顔がないと思っている貴女も頑固者だろう。
これに関しては僕は絶対に譲らない。
僕を見て苦笑した彼女は次に気合を入れるように自分の頬を両手で叩き、暗闇の先を見据える。
「さーて、気を取り直して先に進みましょうか」
「ええ!」
水竜はまだ動き出していない。
ある程度まで近づき、襲い掛かられるギリギリまで詰めたところで僕は掌で作り出した治癒爆裂弾を背中にいるハンナさんに見せる。
「ハンナさん、これに幻影魔法を」
「はいはい」
「名付けて治癒幻影爆裂弾……!!」
「はいはい、かっこいいかっこいい」
なぜか子供をあやすように言われてしまった。
まずは先制とばかりに幻影魔法が込められた治癒爆裂弾を放り投げようとすると、アウルさんも僕と同じような魔力弾を作ろうとしていることに気づく。
「私の系統は衝撃魔法ってのは覚えてますよね?」
「え、ええ……アウルさん、それはまさか……」
「衝撃に類するなら私も君と同じことができるってことです」
アウルさんの手の中に集められた紫色の魔力が球体へと変化する。
その際に魔力弾を作り出したアウルさんの手に裂傷が刻みつけられるが、それもすぐに時間が巻き戻るかのように傷が塞がれてしまう。
……亡骸にかけられた魔術か? いや、それ以前にアウルさんのこの技は……。
「系統強化の暴発も、痛覚も死んでいる私にとってはデメリットなしでできちゃうわけです」
「アウルさん……!」
「いや、普通に生きてるのに系統強化の暴発をぽんぽんやってる君にそんな顔されるのは複雑な気持ちになるんですけど」
コーガと同じようにアウルさんも強くさせてしまった感が……。
いや、今の状況的に彼女の魔法が強くなることはいいことだから気にしないでおこう。
「では僕と合わせて投げつけましょう」
「ええ」
「せーのッ!!」
僕とアウルさん、二つの爆発する魔力弾が暗闇へと投げつけられる。
真っすぐ飛んで行った魔力弾は水竜の群れのいる広間の中央付近でぶつかり破裂し、周囲に衝撃波と治癒魔法———そして幻影魔法の粒子をまき散らした。
『『『『『ヴァァァァ!!!』』』』』
『わぁ、綺麗ですね!』
「魔法でこんなことができるのか……」
まるで花火のように光をまき散らし、暗い広間の空間を明るく照らす治癒魔法と衝撃魔法の魔力の粒子を見て感嘆とした声を零すキーラとルーネ。
下は幻影魔法で混乱する水竜が暴れている地獄絵図なわけだけど。
「行きますよ!!」
「極力殺さないようにお願いします!!」
「恨まれると厄介ですからねぇ!! 了解っす!!」
アウルさんに続いて僕も飛び出す。
背中のハンナさんと双子の妹さんをしっかりと固定し、暴れる水竜の群れへと飛び込む。
広間の床は膝下ほどまで水が溜まっており、ばしゃりと着地すると同時に一斉に水竜の敵意がこちらへ向けられる。
「数多くないですか!?」
「そう言ったでしょう!」
「程度ってものがあるでしょう!? こ、これ群れとかそんなレベルじゃないですよ!?」
たしかにこの広い空間にぎっしりと詰め込まれるようにたくさんの水竜が暴れまわっている。
多分、最初に僕が水竜の形を把握できなかった理由がこれだろうけど、その上でも突破できない障害じゃない!!
「消耗は避けていく! ハンナさん!!」
「わ、分かってますよぉ!!」
系統劣化で消費を押さえているとはいえ、いくらでも魔力を使えるわけじゃない。
この先に待っている悪魔や想定外の事態に備えて魔力を節約していく!!
「守ってもらう分には働きます!!」
背中のハンナさんが魔力弾を周囲に浮かばせるように停滞させながら、水竜へと向かわせていく。
僕はアウルさんと距離を離さないように気を付けながら、肉弾戦でこちらに向かってくる水竜の対処をする。
「ルーネ!」
「火を灯す。自由に使え」
ぼうっ、と籠手に宿る青みを帯びた黒い炎。
それは僕が腕を軽く振るうと鞭のように伸縮し、水竜の身体を打ち付けた。
「ギャン!?」
鞭を受けた水竜はその場でもんどりうつようにその長い身体をのたうちまわす。
見たところ火傷はしていないようだ。
「火傷はしない。手負いにしたくないならそれでいけ」
「助かる!!」
でも過信はするべきじゃないな。
あくまで一つの手段として考えて使っていこう。
そう考えながら左拳で殴り、右の籠手の鞭で対処していきながら少しずつ先へ進んでいく。
「ヴァァァ!!」
「なんだ!?」
なにか飛ばされたのでその場を飛ぶと高速で放たれた水が地面に当たる。
水竜はビームみたいに水を吐き出せるのか……!?
「「「ヴァァァ!!」」」
『ウサトさん! 水竜さんたちが水を吐いてきます!!』
「ならば!!」
複数の水竜により放たれるブレスが濁流のように僕たちへ迫る。
それに対し、青い炎が灯された右手を大きく振り上げた僕は勢いのままに目の前の空間に手刀を叩きつける。
伸びた炎の鞭は大量に吐き出された水を真っ二つに叩き割り、背後へと流れていく。
「ぬぅん! 黒炎治癒飛拳!!」
次のブレスを防ぐために籠手に纏った炎を治癒飛拳で打ち出す!!
熱を伴った魔力は水竜の一体に直撃、拡散するように周囲に炎と治癒魔法の魔力を飛ばした。
「やりますね! じゃあ、次は私の番です! ウサト君!」
アウルさんが僕に紫の魔力を纏わせた左の掌を向けてくる。
これは……!
「思いっきりお願いします!」
「……なるほど!!」
すぐに彼女の意図を察した僕は振り向きざまに彼女の左手に拳を叩きこむ。
瞬間、僕の打撃を吸収した魔力が、アウルさんによって衝撃波へと変換され複数の水竜をまとめて吹き飛ばした。
「ウサト君がいれば少ない消費ででっかい衝撃波が出せて楽ですねぇ!!」
味方なら本当に頼もしい人だ!
襲い掛かる水竜の首に手刀を叩き込みながらそう思っていると、今度はルーネが僕に語り掛けてくる。
「ウサト、手を敵に向けろ!」
「え!? こうか!?」
肩のルーネの言う通りにすると僕の右手の籠手に黒い炎の魔力が凝縮するように集まる。
「ッ、待て待て待て!!」
これはマズいだろ!!
その魔力が放たれる前に僕は掌を水竜から天井の方へと向ける。
瞬間、僕の掌から炎が爆発するように噴出し、天井の高さにまでに上る青色の火柱を作り出した。
「ビィ!? ギィィ!?」
「これはッ!」
そのあまりの炎に水竜の群れも怯んだ様子を見せるが、それ以上に僕は彼女が行った危険な魔力の暴発に驚愕した。
いくら熱だけとはいえ、こんな威力の技くらったら魔物でもただじゃすまないぞ!?
「ルーネ!? 今、なにをした?!」
「え、お前と同じことだぞ」
この子は僕やアウルさんとは事情が違う。
いくら闇魔法だからってこんな危険なことをやってどうなるか分かったもんじゃない。
焦る僕にルーネは首を傾げる。
「お前と同じ魔力の使い方だろ」
「危ないから真似しちゃ駄目!!」
「真似じゃない。元から使えてる。普段は森を燃やして危ないから使わないだけだ」
系統強化の暴発を元から覚えていた……?
確かにさっきのはやけに手慣れていたが……。
「誰に、教わったんだ!?」
「母から。私のような魔法を持つやつは皆覚えるって言ってた」
闇魔法の特性を逆手にとった技術を既にここの人たちは編み出していたってことか?
閉ざされた文明圏で発展した技術……!!
ますます奇妙な場所だなここは!!
「ヴァァァ!!」
「ふぅん!!」
怖気づきながらも襲い掛かってきた水竜を殴り返す。
このまま地道に進んでいっても時間がかかる!! おまけに足元は水浸しで移動もしにくい!!
「ルーネ、マントを伝って同じように炎を破裂させることはできるか?」
「えっ、できると……思う」
「よし!! アウルさん!!」
「はい、なんでしょうか!!?」
衝撃を纏わせた剣の鞘で水竜を吹き飛ばしているアウルさんに声をかける。
「このまま強引に突破します!! この闇魔法のマントに掴まってください!!」
「果てしなく嫌な予感がするんですけど!? え、こ、断ってもいいですか!?」
「快く承諾してくれてありがとうございます!!」
「そういう強引なところも隊長そっくりぃぃ!!?」
その危険察知能力も無視してしまえば意味なし!!
マントで無理やりハンナさんのいる背中に引き寄せ、ベルトで固定させる。
「ようこそ地獄へ。うふふふ」
「君のお仲間さん目が虚ろなんですけど!? 妹さんと同じ死んだ目をしているんですけど!? あれ!? 私を含めて死人が三人ですかこれ!!?」
水竜の追跡を躱しながら飛んで逃げるのは厳しいと思っていたけど、ルーネの炎による加速力が加わるなら話は別だ!!
『ウサトさん!!』
「ぬ!?」
マントを変形させている僕の背後から水竜の尾が槍のように突き出してくる。
身体を横にずらし避けた僕は尻尾を掴み取り思い切り引き寄せる。
「ふぅん!」
「ヴァァァ!!?」
そのまま尻尾を掴んだまま思い切り振り回す!!
ジャイアントスイングのように周りにいる水竜を吹き飛ばし、最後に一際水竜が集まっている方向に掴んでいる水竜をぶん投げた後に———僕はマントによる飛行の準備へと移るべく地面から1メートルほど浮く。
「ハンナさん! 合図と同時に魔力を周囲にまきちらしてください!!」
「えぇ……幻覚の内容は?」
「視界を錯乱させる程度でいいです! まずは———治癒拡散弾!!」
治癒拡散弾を前方に放り投げ数秒後に魔力が拡散し、広大な遺跡の構造を魔力感知で把握する。
下手に視界が見えると邪魔だ!!
マントのフードを深く被り目元を隠しながら僕はルーネとハンナさんに合図を送る。
「今だ!!」
「やるぞ!」
「こちらも!」
ハンナさんが集めた魔力を周囲へまき散らした瞬間———マントに走る炎の魔力が暴発し、爆発と共に僕たちの身体を前へと加速させた。
加速の余波を受けて水竜たちがふっ飛ばされる。
「おおおお!!?」
ルーネの魔力の暴発による加速は尋常のものではなく治癒加速拳による魔力の衝撃波以上の加速力で、遺跡を真っすぐに突き進んでいく。
暗闇の中の構造は治癒感知で把握!!
あとは僕の反射神経と感覚を信じて最奥まで一気に突撃するだけだ!!
「わぁぁぁぁ!? ウサト君、目の前、目の前に石柱が!!?」
「大丈夫です!」
もう治癒感知で把握済みですから!!
加速はルーネが担ってくれているので僕は飛行に集中していられる。
それはつまり方向転換のための両手を自由にさせることができるということだ!!
「治癒加速拳!!」
「もう動きが変態っす!!?」
治癒感知でしっかりと石柱の存在を認識していた僕は右腕の籠手から治癒加速拳を放ち、スピードを落とすことなく石柱を回避しながら前へ前へと突き進む。
「———ッ!」
大きい魔物の反応!? 僕が森で遭遇したバルジナク並みの大きさだ……!!
この水竜たちのヌシか!?
運悪く僕たちが向かっている先はヌシの後ろ……ここは突っ切るしかない!!
「キーラ、ルーネ! 止まらずに行く!! 僕を信じてくれ!!」
『はい!』
「ああ!」
「私たちは!? 私たちに了解を取らないんですか!?」
「ねえ、またなにかするんですか!? ウサト君!? ウサト君!!?」
二人の返事を聞き、僕は一気にヌシの目の前にまで接敵する。
大きな体躯。
バルジナクを思わせるような長い身体に鋭利な牙。
だがここで悠長にこいつの相手をすれば後ろの水竜に追いつかれる!!
なので一気に押し通らせてもらう!!
「邪魔だァ!! 治癒爆裂飛拳ッ!!」
治癒飛拳で打ち出す超高速の爆裂弾。
この速度に対応する技を即興で編み出し、一瞬で放たれたソレは水竜のヌシであろう個体の顔面に直撃———その巨体を大きくのけぞらせた。
「グギャァァァァ!?!」
「きゃぁぁぁ!? なんの悲鳴ですか!? なにかとてつもなく大きななにかの気配がしたんですけどぉぉ!?」
「ぎゃぁぁぁ!? 死ぬ!? 死んでますけど死んじゃう!?」
「……ッ!? ……!!?」
ヌシの叫び声と背中から聞こえるアウルさんとハンナさんの悲鳴。
それに加えた双子の妹さんの三人の存在をしっかりと感じながらも、僕はこの広間の最奥にある下の階へと通じているであろう狭い階段へと飛び込む。
「アウルさん! 逆噴射お願いします!!」
「ぎゃ、ぎゃくふんしゃ……!? と、とりあえず魔法を使います!!」
僕と合わせて前方に衝撃波を放ちスピードを落としながら地面に着地する。
……水竜は完全に引き離したようだ。
一安心しながら背中の三人を下ろす。
「た、隊長、あんたとんでもない後継者育てましたねぇ……」
「生きた心地がしなかったです……」
「……っ! ……っ!!」
ものすごい疲れているアウルさんと、闇魔法の妹さんと抱き合いながら小鹿のように震えているハンナさん。
……よく見れば妹さんの方も震えているように見えるけど気のせいだろうか?
「楽しかった。もう一回やりたい」
『いいチームワークでしたね!!』
こういう時、子供の方が強いとはよくいったものだけど本当のようだ。
ルーネは子ライオン状態のまま上機嫌に跳ねているし、キーラはマントを楽しそうにはためかせて意思表現していた。
闇魔法の炎で戦闘機みたいな加速をし、幻影魔法で姿をくらます治癒魔法使いウサトでした。
……ジェットウサト?
今回の更新は以上となります。




