第二百七十四話
お待たせしました。
第二百七十四話です。
最初はカズキ視点からとなります。
先輩が、魔王の攻撃によって戦闘不能に追い込まれた。
今はウサトが彼女を連れて、治癒魔法と解放の呪術での治療を行おうとしているが、魔王の口ぶりからしてそれは難しい話なのは嫌と言うほど理解させられてしまっている。
「ハァァ!」
左腕に浮かばせた魔力弾を腕を振るうと同時に向かわせる。
散らばり、別々の動きをしながらミサイルのように向かってくる魔力弾を前にして魔王は、周囲に浮かばせた魔術から電撃を放ち相殺させる。
「今度はこちらから行くぞ?」
「……ッ」
光魔法で作ったボードを急停止させ、旋回と同時に嵐のように叩きつけられる魔術の嵐を回避する。
「———ッ、うぉぉぉ!!」
加速と急停止を交互に繰り返し、無理やり方向転換させる。
遠心力で全身が軋む感覚に苛まれながら、右手に握りしめた剣の柄に、籠手に包まれた左手を添える。
「系統強化!」
剣に系統強化により進化した光魔法を纏わせる。
黄金色の輝きを放ちながら延長された光の刃を振るい、真正面から俺を迎え撃とうとする魔王へと突撃する。
俺の持つ光魔法は魔王に対策されている!
だけど、それでいい!!
突撃と同時に、背中に隠していた魔力弾を解放する。
「!」
そのまますれ違うと同時に、魔力弾を合わせた全方位攻撃を叩きつける。
光の刃を霧散させながら振り返ると、肩から煙を放っている魔王がこちらに笑みを浮かべている。
「ッ、ハハハ! やるではないか!」
「俺に足りないものは、既に教えられている!」
以前の戦いの時、ファルガ様に教えられた!
俺に足りないのは、ウサトと先輩のような誰の予想をも超える行動と、思い切り!!
「無効化するなら、してろ!」
魔力弾を放ち続けながら、光魔法のボードから飛び降りる。
落下に合わさせて、ボードを槍へと変形し魔王へと投げつけ―――当たる寸前に籠めた魔力を暴発させる。
「光滅!」
相手を消滅、視界を阻害する攻撃。
魔王がそれらの対処をしている隙にブロックに着地し、剣で斬りかかる。
「雷の勇者とウサトに対応する私に、近接戦闘を挑むか」
「やってみなくちゃ分からない!」
目くらましすらも効かなかったのか、剣をひらりと避けた魔王が掌から魔術を作り出す。
魔術から剣の柄のようなものが伸びると、魔王はそれを手に取り抜き放ち、俺が振るった光魔法を纏わせた剣をはじき返した。
「剣!?」
「使わないとでも思ったか?」
その手に握られたのは長剣———それも、魔術が流し込められたものだ。
だが、それがどうした!
力の限りに握りしめた剣を操り、魔王と剣で打ち合う。
「はぁぁ!」
魔王からの魔術を俺が光魔法で消滅させ、俺からの魔法を魔王が消滅させる。
これでは、勝負がつかないけど! それが諦める理由にならないことを、俺は学んでいる!!
「覚悟を決めているようだな」
「そうでなくてはこの場にいない!」
剣を受け止めた魔王が話しかけてくる。
鍔迫り合いのような形で拮抗状態が続く。
「俺は、戦いなんて嫌いだ! 本当は誰も傷つけたくないし殺したくもない!!」
「ならば、戦いを生み出す私を殺すか!」
「お前がこれからも沢山の人の命を危険に晒すなら! 俺は、俺の務めを果たす」
この世界に呼ばれたその意味を果たす。
その後のことは先輩の言葉通りに後に考える!!
「いいだろう! ならば、その覚悟に応えねばならないな!」
剣をはじき返した魔王が、手を翻し複数の魔術を放とうとする。
後ろに下がりながら、掌に魔力を浮かばせ対処しようとしたその瞬間———視界の端で、金色の光が走った。
え、なんだあ―――、
「オラァ!」
「!?」
見えた金色の光は真っすぐに魔王に突っ込むと、とてつもない勢いで拳を叩き込む。
身体を覆う魔術により攻撃は防がれたが、その衝撃で魔王の身体は横へ吹き飛ばされる。
「ふぅぅぅ……!」
「う、ウサト!?」
バチバチで電撃を纏いながら、拳を突き出しているのは先ほど先輩と共に安全な場所に移動したウサトであった。
その身体に先輩のような電撃を纏い、左手には逆手に握った刀を装備している。
先輩の姿はどこにもいない。
だけど、電撃を纏っているということはつまり―――!!
「ク、クハハハ! なるほど、考えたな!!」
楽しそうな声を上げた魔王が先ほど発動させかけた魔術を放つ。
視界全てを覆わんばかりに放たれる電撃、火炎を含む攻撃を目にしたウサトは、小さく深呼吸をした後に短く声を発する。
「先輩、アマコ!」
『ふぉぉぉ!』
『スズネ、その鳴き声やめて!』
『ブルリンいなくなったのに、どうして鳴き声がするんだよ!?』
ウサトの身体から新たな声が聞こえると同時に、電撃が発せられる。
ボードに乗りその場を離れると同時に、魔術がウサトの元に殺到していく。
「ウサト!」
爆発の間に、ジグザグに走る閃光。
壁を蹴り、魔力の暴発で空中を移動しながら殺到する魔術を全て回避してみせた彼は、魔王の眼前に停止してみせる。
「先輩の力が、ウサトに……!」
あれほどフェルムに拒否られていた先輩が、ウサトとの同化を果たした。
それはつまり、先輩の力をウサトが使えるということ。
『ウサト君の魔力の暴発による空中移動と私の電撃による高速移動が合わさって、もう止められないよ! しかも、私と違って肉体の負担を気にする必要がないから、ずっと雷獣モードを使い続けられる!!』
『スズネうるさい!!』
『どうしよう、今からでも追い出したくなってきた……!』
そんな大声がウサトの身体から発せられた次の瞬間、目にも止まらぬ速さで移動したウサトが魔王の胴体に蹴りを入れる。
「———行きます!」
『雷獣モード3』
『私が予知する!』
『ガチガチの戦闘形態でやってやる!』
ウサトの四肢が黒騎士を思わせる籠手と脚甲に包まれ、紫色の電撃に包まれる。
瞬時にその場から掻き消えたウサトに、魔王が全力で防御を固めるが―――防御に回した魔術が全て一瞬で破壊される。
驚愕に目を見開いた魔王が、その手に持った剣でウサトの攻撃を防ごうとするが、それはウサトが振り下ろした手刀が砕いてしまう。
「魔法ではない、単純な腕力か……!」
そのまま無防備になった魔王の腹部にウサトの拳が突き刺さる。
「ッぐ」
「雷電・治癒破弾拳」
拳から電撃が溢れだし、魔王の身体を覆う魔術の鎧を揺るがす。
そのまま後ろに一歩下がったウサトは腕を交差させる。
「真・治癒目潰し!」
「またか貴様!!」
衝撃波と電撃による目くらまし。
さすがに魔王も苦々しい顔で、衝撃波から顔を守っているが、その間にウサトの視線がこちらへ向けられる。
一旦、下がれってことか!
ウサトが再び電撃と共に移動するのを目にしながら、俺もボードを操りその場を移動する。
「二人の力が一つになった……!」
その事実だけで、敗色濃厚だった戦いに希望が見えてきた。
心の奥底から力が湧いてくるのを感じながら、俺は一旦ウサトと合流すべく最寄りのブロックに着地するのだった。
●
先輩との同化はちゃんと成功した。
僕の身体は雷獣モードを完全な状態で発揮させ、圧倒的な速さで動けるようになったし、先輩が使うような電撃による攻撃もできるようになった。
魔王に攻撃を加えてから一旦、その場を離脱した僕とカズキは、少し離れた場所で合流していた。
すぐ隣に着地した僕を見て、カズキが目を輝かせた。
「ウサト、先輩と同化したんだな!」
「うん」
『その通りだよ、カズキ君……ッッッ!!』
無駄に語尾の強い先輩の声。
同化してもなお身体が動かないはずなのに、ものすごく元気だ。
『もう、この視点ちょう凄い。周りの景色が浮かんだ空間をアマコとフェルムと一緒にぷかぷか浮かんでるんだよ……! これはあれだね、ウサト君というロボットのパーツになった気分だよ……! 強いて言うなら、アマコがパイロットでフェルムは装備! そして私は動力炉だね!』
『うっせぇぞ魔力タンク』
『そうだよ、うるさいよ魔力タンク』
『フフフ! 今やその罵倒すらも誉め言葉にしかならないのさ!』
「ははは……」
一層に騒々しくなった僕の内の声にカズキが苦笑する。
とにかく、まずは態勢を整えなくちゃならない。
「まだこの動きに慣れてないから一旦離れたんだ」
「そういうことか。まあ、先輩の速さだからな……」
速すぎることもそうだけど、この雷獣モードにも欠点がある。
それに気づいたのは戦っている最中。
常に一緒に戦っているはずの“あの子”がいつの間にか肩から消えていることに気付いたので、一旦魔王から距離を取ることにしたのだ。
「ちょぉぉっと!」
後頭部になにかが体当たりしてくる。
それを甘んじて受けて振り返ると、涙目のネアが懸命に翼をはためかせている。
「貴方が飛び出した瞬間に吹っ飛ばされたんですけど! もう速すぎて戻れないし、大変だったんですけど!」
「……ごめん。自分の変化に戸惑ってて気づけなかった」
実際、肩からネアがいないことに気付き戸惑ってしまっていた。
彼女がいないと魔王の魔術を攻略することはできないからな。
本気で怒ったわけじゃなかったのか、翼でごしごしと目元を拭ったネアが僕の肩に飛び乗ってくる。
「でもどうするのよ? このまま貴方にしがみつくのは無理よ?」
「カズキの魔法に君の魔術を付与させるのは?」
「解放の呪術は実際に触れなきゃ効果がないからあまり良い手とも言えないわよ?」
僕の雷獣モードの動きにネアがしがみついていられない。
魔術に関しては、アマコの予知による指示でどうとでもなるけど、常に僕がネアを抱えている訳にもいかないしなぁ。
思い悩んでいると、不意に僕の襟にあたる位置から黒い魔力が勝手に動き出しネアの小さな体に巻き付いた。
『なら、こうすればいいだけじゃないか!』
「先輩!?」
「え、ちょ、スズネ!? なにするつもって、フェルム! 止めなさい!」
『なんでこいつ、初めてなのにこんなに操れるんだ!?』
先輩のそんな声と共に僕の身体から伸びた闇魔法がネアを絡み取り、胸の部分に引き寄せる。
滅茶苦茶パニくっていているネアを覆った黒い魔力が胸当てのように変化し、デフォルメ化されたフクロウの顔の形になる。
「なにここ牢獄!?」
『これで振り落とされる心配もないから、大丈夫だね』
『逃げられないの間違いじゃないかな……』
マスク? の目の部分に空いた穴から、ネアが外を覗き込みながら驚きの声を上げる。
これならネアにも危険はないし大丈夫だろう。
先輩のファインプレーだな。
「なんだか胸に顔というかマスクがあるみたいだ。……かっこいいな!」
「え? そう?」
『ふふん、やはりこういうところでセンスが出ちゃうんだよね……!』
カズキの言葉に照れながらも、戦闘準備を整える。
そろそろ魔王が僕達の位置を補足する頃だろう、その前に今一度連携を確認しなくちゃならない。
カズキに声を掛けようとすると、不意に彼の身体がふらついていることに気付く。
「カズキ!」
「……っ、さすがに、魔王相手に魔力を使いすぎたみたいだ」
慌てて支えて治癒魔法をかけるも、彼の表情は良くならない。
魔力切れの兆候が出ている……!?
たった一人で魔王を足止めしていたから、そうなってもおかしくはない。
「大丈夫、まだ戦える」
「ああ、分かってる。でも、今度は僕達が前で戦う」
カズキに肩を貸して、立たせる。
僕の言葉に、彼はいつもの爽やかな笑顔を浮かべる。
「なら俺は、さっきと同じようにサポートだな」
「頼りにしてる」
「それは、こっちもだ」
目の前のブロックが動き出し、魔王が姿を現す。
先輩の攻撃で魔王も決して浅くない傷を負っているが、こちらも消耗している。
「そのような隠し玉があったとはな」
「ほぼほぼ偶発的なものですけどね」
カズキの前に歩み出ながら、魔王に言葉を返す。
そもそも僕と先輩が同化する必要はほとんどなかった。
殺傷力を抜いた単純な戦闘力でいえばこちらの方が高いかもしれないけど、一人より二人で戦った方が効率がいいし、連携を考えると同化するメリットの方が少ない。
それに加えて―――、
「この刀が地味に邪魔なのがなぁ」
『私の武器なのに……?』
今も尚、籠手と共鳴するよう電撃が走っている刀。
右腕の籠手も同じような現象が起きていることから、共鳴ではなく拒絶反応なのかもしれない。
とにかく、かっこよくはあるが僕の戦い方とは絶望的に噛み合わない武器だ。
「勇者に、刀か。なんとも懐かしい姿を思い起こさせてくれるじゃないか」
「これで貴方をぶん殴ります」
拳を向けると、魔王はおかしそうに笑みを堪えた。
「まさか、最後に私の前に立つのは勇者でもない人間だとは……。これはさすがに奴すらも予想していなかったことだろう」
魔王は両手に魔術を浮かび上がらせ、それらを合わせ融合させた。
崩壊した術式が一つの新たな魔術として形成される。
「複合魔術、加速・遅速の呪術」
魔王を中心に何か圧のようなものは発せられる。
それを認識すると同時に電撃を纏いながらその場を跳び出し、魔王へ殴りかかる。
雷獣モードを用いての攻撃。
しかし、それは魔王が突き出した掌により受け止められる。
「なっ!」
「大人げない手ではあるが、今の貴様はそれだけの脅威に値する“敵”だ。ウサト」
魔王の拳が迫る。
———ッ、さきほど以上に速い!? 先輩と同等以上の速さだぞ!?
「フェルム、腕を増やせ!」
『おう!』
背中から四つの大きな腕が飛び出し、魔王を捉えようとするが、それすらも驚異的な速さで避けられてしまう。
先ほどとは動きがまるで違う!
「ウサト! 周囲の時間を遅くしているんだと思うわ!」
「なら、遅くなったのは僕達ってことか!」
「ええ! しかも魔王は別の魔術で、自身の時間を加速させている!」
ええい、本当に出鱈目な人だな。
速さで上回れるはずだったのに、条件をほぼ五分にされてしまった。
迫る魔術を左手の刀を雑に振るって叩き割りながら、魔王へと接近を試みる。
「ウサト! 俺の魔法を使え!」
「ありがとう、カズキ!」
僕の周囲を囲うように放たれた魔力弾を足場にする。
足場の光魔法の魔力弾。
雷獣モードの速さ。
空中での魔力の暴発。
闇魔法のラインを利用した移動法。
その全てを組み合わせて突っ込んでやる!
「……敵ながら、恐ろしい挙動をしているな」
「ウォォォ!!」
呆れた様子ながらも魔王は攻撃の手を緩めない。
『ウサト、地面に設置型の魔術が施されてるから気を付けて! フェルム、近くのブロックに身体を引き寄せて!』
『任せろ!』
『耐性の呪術よ!』
『……う、ウサト君がんばって!』
カズキと僕の内にいる仲間達の助けを借りて、ようやく魔王の目前までに到達する。
電撃を纏わせた右拳と、魔術を浮かべた掌が激突する。
ギャリギャリと耳障りな金属音を響かせながら、力任せに魔王の魔術を破壊する。
「そういえば、最後まで聞いていなかったな!」
「何を!」
放たれた魔術を左手の刀で壊しながら、蹴りを繰り出す。
魔王はそれを軽くいなし、お返しとばかりに魔術が込められた拳を突き出してくるが、それは右腕の籠手で受け止める。
「貴様の覚悟を!」
「———ッ!」
先輩の登場によって口にすることのできなかった僕の覚悟。
それは今でも変わってなんかいない。
———なら、真正面から魔王と相対しているこの時に、言葉にするべきだ。
「ああ、言ってやるさ!」
『ウサト君!?』
拳を叩きつけながらも声を張り上げる。
今から口にすることは、とても難しく、実現するか怪しい理想にすぎない。
だからこそ、ここで宣言してやる。
もう後戻りできないように!
「人間と魔族は分かり合えない! そう言いましたよね!!」
「ああ、人間と魔族の間にある因縁は深く、とうてい埋めることのできないものだ」
いくら過去のそれよりも、その残虐さは失われたとしても、人間が亜人を虐げている事実は変わらない。
魔族達が人間に対して抱く敵意も、人間が魔族に対して抱く恐怖も理解している。
「だけど、僕は知っている! これまで出会ってきたこの世界の人間も、魔族も悪い人たちばかりじゃなかったことを!」
「それがどうした! 貴様だけが分かったとして、周りが理解を示すとでも思っているのか!」
魔族だって戦いたくて戦っている訳じゃない。
キーラ達のような貧しい土地で必死に生きている魔族達もいる。
「だからこそ、覚悟を決めた!」
「ならば、どうする!」
力の限りに突き出した拳が、魔王の腕に叩きつけられる。
衝撃のあまり後ろに下がった魔王に、大きく息を吸って核心的な言葉を叩きつける。
「僕が人間と魔族の間に立つ!」
その声に僕の内にいる先輩達も驚愕の声を上げる。
魔王は、驚きの表情を浮かべる。
「———なんだと?」
「無理だと、不可能だと言われようが僕はもう決めた! 元の世界には帰らない!! 魔族と人間の間に埋まらない溝があるのなら、僕が架け橋になる!! この人生の全てを賭けてでも!!」
指をつきつけ、そう宣言する。
これが僕が選んだ選択。
荒唐無稽で、叶えることすら難しい理想。
当然、魔王は怒りを籠めた瞳で僕を睨みつける。
「本気で、そのような世迷言を口にしているのか? これまで、私が口にしたことを聞いていなかったのか?」
「知らないんですか? 僕は救命団なんですよ」
命を救うのが救命団だ。
そして、僕がローズから教えられたこともずっと心に刻み込まれている。
「理想を語ってこそ僕達だ」
魔族と人間がすぐに互いに歩み寄れるようにするなんてことは言わない。
だからこそ、僕が先駆けとなり、後に続く人たちの道しるべになる。
団長にそうしてもらったように……!
『ウサト、刀から光が!』
「ん?」
瞬間、僕の左手に握りしめられている先輩の刀が光を放つ。
その光に驚くと、内にいる先輩が声を上げる。
『も、もしかして、ウサト君と私が同化しているから、刀そのものもウサト君に適した形に変わろうとしているのか!?』
一瞬、球体へと変化した刀が僕の左腕を覆う。
その輝きが収まった時、左腕には右腕と同じ銀色の籠手が存在していた。
籠手からは電撃が走っており、元からあった右腕の籠手にも同じような現象が起きている。
「ッし!」
ガチン、と両拳を打ちつけると電撃が迸る。
僕の覚悟に呼応してくれたのかは分からないけど、これで思う存分に戦える。
「ファルガの武具が貴様の意思に応えたのならば、その覚悟は偽りのない本物だということは理解できた。だがな……」
地面を大きく踏みしめ、構えをとった魔王が魔術を周囲に浮かばせる。
「この私も魔族の未来を背負っている身だ。おいそれと貴様に託してやるほど、甘くはない」
「なら、方法は決まってますね……?」
「ああ、貴様の願いを通したければ―――」
肌で感じるほどの殺気。
それを前にして、僕も両腕の籠手を構える。
「この私を討ち倒してみろ……!」
「上等ッ!」
正真正銘の最後の戦い。
もう語ることはない。
あとは、ただ殴り合うだけだ……!
もう、ウサトは止まれない。
先輩が同化するだけで、超高速でボコボコにしてくる要塞ができあがる理不尽。
しかも、先輩以上に小回りが効いてしまうのもえぐい。
今回の更新は以上となります。