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治癒魔法の間違った使い方~戦場を駆ける回復要員~  作者: くろかた
第十一章 最終決戦、魔王都市ベルハザル
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第二百七十二話

昨日、殴りテイマーの更新先を治癒魔法と間違ってしまい申し訳ありませんでした。

今後、このようなことがないように念入りに確認をして更新していきたいと思います。


とりあえず、詫び更新します(!?)


第二百七十二話です。

 頭上に吹き荒れる嵐。

 室内にも関わらず雷が轟き、肌を刺すような雨と風が吹く。


『ネア、電撃への耐性! フェルムは右腕を盾に! ウサトは目視で防御!』

「僕だけ指示が雑ゥ!!」


 ネアの耐性の呪術が込められた右腕の盾を、上へと掲げ雷へとぶち当てる。

 盾に弾かれ、地面へと跳ねるように分散していく電撃を目視しながら先輩とカズキの安否を確かめる。


「……いた!」


 カズキは風の中でボードを操り、嵐の中心に立つ魔王へと向かって行っている。

 それに合わせて先輩も電撃を纏いながら刀を振るっているが、そのどれもが魔王に届かない。


「僕も援護に向かう!」

『無策で行くとさっきの二の舞だぞ!』


 そんなことは分かっている。

 だけど、ここで足手まといになるわけにはいかない。


「カズキの光魔法を消し去るのなら! ネア、拘束・治癒魔法乱弾だ……!」

「ちょっとなにするつもり!?」

「カズキ!!」


 僕が声を張り上げると、空から魔王に光線を放っているカズキがこちらを見る。

 僕の手元の魔力弾に気付くと、彼は力強く頷いてくれる。

 意図は届いた! ならば、後はこれをぶん投げるのみ!!


「いっけぇ!」


 めいっぱい助走をつけて治癒魔法乱弾を投げつける。

 それらは風にあおられながらも、真っすぐ魔王へと飛んでいく。


「こういうことだな! ウサト!!」


 カズキも同時に大量の魔力弾を魔王に向かわせる。

 同時に放たれたそれらを防ぐべく魔術を展開させるが、その魔術はカズキの光魔法だけを防ぎ、僕の魔力弾を素通りする。


「む……!」


 魔王に拘束の呪術が施されてた治癒魔法弾が直撃する。

 風の鎧により、直前で治癒魔法弾は弾かれてしまったが、それに付与された魔術は魔王の風の鎧ごとその体を拘束する。


「治癒魔法は通さないが、魔術は通る! この隙に叩く!」

「コンビネーションだね!」

「これなら防がれないはず!!」


 先輩もカズキの攻撃に合わせて、連撃拳を放つべく殴りかかる。

 拘束はすぐに解けるだろうが、数秒の隙さえあれば―――、


「ッ、ウサト! 離れなさい!」

「どうして!?」

「魔王は私の魔術(・・)も知っているのよ!!」


 瞬間、魔王の動きを止めていた拘束の呪術が、はじけ飛ぶ。

 ―――解放の呪術。

 当然持っているとは思っていたけど、こんな一瞬で防がれるのか!?


「光の勇者……少しばかり面倒だな……」


 魔王が掌を上へ向けると、魔術によって引き起こされていた雨雲と風が彼へと集中する。

 彼が雨雲に閉じ込められたことを確認した魔王は、自身の手元を見る。


「ふむ、しかし、私が魔術を当てられるとはな」

「食らえ……!」

「治癒連撃拳!」


 雷獣モード2の状態の先輩と、腕を巨大化させた僕の攻撃が魔王に迫る。

 僕の拳を身体を僅かに動かすだけで回避した魔王は、続けて先輩の攻撃を正面から腕で受け止めながら、逆に腕を掴み取りそのまま上へ放り投げる。


「くッ」


 魔王が空を舞う先輩に魔術を向ける。

 攻撃が来ると予想したのか、空中で迎撃の態勢に移ろうとする。


「遅速の呪術」

「———なっ!?」


 空間が振動する音と共に、先輩の動きが鈍くなる。

 彼女から発せられる電撃すらもスローモーションになったことで、魔王が先輩の周辺だけの時間を操作したことを理解する。

 魔王が、僕に放った熱線を先輩に放とうとしている。


「さっ、せるかぁ! ネアァ!」

「いけるかどうか分からないけど!」


 僕の作った魔力弾にネアが耐性の呪術を付与してくれる。

 それを目視せずに、先輩へ向かって魔力弾をぶん投げる。


「オラァ!」


 放たれた魔力弾は、時間を操作された空間に飛び込み―――その影響を受けることなく先輩へと直撃する。


「ぐへぇ!?」


 女子らしからぬ悲鳴を上げて吹っ飛ぶ先輩だが、先ほどまで彼女の頭があった場所を熱線が通過する。

 あ、危なかった……!


「また貴様か、ウサト」

「何度だって邪魔してやりますよ!!」


 こちらへ身体を向けた魔王と相対する。

 迂闊に下がると、何をされるか分からない。

 なら、魔術を使う暇もないほどの近接戦に持ち込むしかない!!


「弾力付与……!」


 足に移動した弾力付与させた魔力で加速し、一気に魔王に肉薄する。

 僕の身長を優に超える大男―――以前戦ったオーガほどではないが、それ以上の威圧感に呑まれかけながら、それでも睨みつける。


「皆、腹括れよぉ!」

『ここまで来たら一緒だよ!』

『やっちまえ! ウサト!』

『グァァー!』

「いやぁぁぁ!? めっちゃ怖いんですけど!?」


 一人だけ泣きごと言っているけど、行くしかない!!

 弾力付与を回しながら、魔王へと格闘戦を仕掛ける。


「面白い……戯れに付き合ってやろうじゃないか」


 治癒魔法を使った攻撃は逆に魔王を回復させてしまう!

 ならば、僕の動きを全力で補助させる方向で魔力を使う。


「治癒加速拳!」


 肘、足、拳から魔力を暴発させながら魔王に拳を繰り出す。

 それに対して、彼は軽く両腕を掲げ、僕の拳を風の鎧で防いでいく。


「格闘に、治癒魔法と魔術の合わせ技。無害に見えて中々どうして……」

「そのすまし顔を歪ませてやるぞォ……!」

「二重人格かなにかか?」


 ———先ほどの戦闘からして分かっていたが、魔王は魔術だけではなく身体能力もありえないほど高い。

 あのヒサゴさんと互角に戦っていたんだから、不思議な話ではないけど……これで全盛期から衰えているっていうんだから化物だな……!


「フェルム! 腕を増やしてくれ!!」

「デビルウサトをご所望よ!」


 そこまで言ってない!!

 しかし、フェルムはネアの要望通りに、僕の背中に手のついた翼を生やす。


『な、なにこれ、ウサトがとうとう怪物になっちゃった!?』

『翼が生えただけだ! 落ち着け!』

『た、たしかに、いつものウサトと変わらない……』


 アマコ、それで納得するのもおかしいからなぁ!?

 だが、僕の背中から四つの翼が生えたところを目にした魔王は愉快気に笑った。


「ハッハッハ、いいぞ。なんだその姿は、まさしく悪魔ではないか。いや、私の知る悪魔以上に悪魔らしい見た目をしているぞ?」

「やったわねぇ! ウサト! 魔王のお墨付きよ!! お返しをしてあげなさい!!」

「もう、皆敵だぁぁ!!」


 なぜにこんな戦いの最中に化物だ悪魔と言わなきゃいけないんだ、この野郎。

 一番の化物は、貴方の方だと声を大にして言いたい……!

 怒りを全て魔王にぶつけながら、自身の腕と背中の四本の翼で魔王に殴りかかる。


「ふっ……」


 魔王は自身の周囲に浮かべた魔術を盾代わりにし翼の攻撃を受け止め、威力の強い僕の拳を自身の両腕で捌いていく。

 雷獣モード2の先輩の動きを目で追えるんだから、僕の動きもそりゃ先読みできるか……!

 それに、多分僕のこの姿を魔王は、使い魔か何かを通して見ている!!


「だからって、ここで怖気づく理由は、ない!!」


 上からハンマーのように振り下ろした腕を叩きつける。

 それを正面から受け止めた魔王の足元に、亀裂が入ったところで彼の表情が変わる。


「魔力の暴発による衝撃波と、加速か」

「ッ、治癒破弾拳!!」


 隙ありとばかりに繰り出した正拳突きを、受け止められる。

 拳に籠められた弾力付与を目にした魔王は、感心したような声を漏らす。


「これは魔力に弾力を持たせているのか? 封印される以前は見なかった技術だ。魔力の暴発といい、これはリングル王国で一般的な技術なのか?」

「……。そうだ!!」

「なんでそこで嘘つくの!?」


 ここで精神的に強く見せなきゃ駄目かと思って……!

 拳から魔力を暴発させて、拳を引くと―――次の瞬間、魔王が繰り出した手が迫る。

 微かに見えたのは、掌に浮かぶ魔術―――、


『受けちゃだめ!』

「やっぱりか!」


 アマコの声を聞き咄嗟に身体を傾けると、肩に手が掠る。

 すると、触れた部分の闇魔法の魔力が霧散し、白色の団服が露出する。


『闇魔法が溶かされた!?』


 フェルムの焦る声。

 続けて迫る手をギリギリで避けながら、魔王を睨む。


「魔蝕の呪術……魔力を蝕む魔術だ。貴様の纏う闇魔法の防御も意味をなさないぞ?」

「なんでもできますね、貴方は!」

「これでも、力の七割ほど封印されているがな」


 絶望的な情報、どうもありがとうございます!

 魔王は一転して魔術を織り交ぜた格闘を仕掛けてくる。

 このままじゃ削られるだけだ! ならば……!


「ネア、もういけるか(・・・・)!?」

「ええ! もう十分に見れたわ!」

「なら、捕まってろよォ!!」

「え、貴方なにするつもり―――」


 右手を後ろに隠すように前のめりに突撃する。

 魔王の突き出した手を一旦、左肩で受けながら―――ネアが施した解放の呪術を纏わせた左手で、魔王に触れる。

 それにより、魔王の身体を覆っていた風の鎧はガラスのように砕け散る。


「……!」

「この距離なら、防御できないだろ!」


 隠していた右手には、治癒爆裂弾。

 それを右手に握りしめたまま、無防備となった魔王に叩きつける。

 同時に僕の身体は闇魔法の魔力に包まれ、破裂した治癒爆裂弾の衝撃波から身を守る。


「———ッ、ようやく一撃か」

「貴方バカじゃないの!? 自爆とかバッカじゃないの!? もっと私を大切にしなさいよ!?」

「ごめん、後でいくらでも埋め合わせはするから……目の前に集中してくれ」


 すぐに魔力の鎧を解除し、魔王がいた方向に目を向ける。

 そこには、掌を前に突き出し、驚きの表情を浮かべている魔王の姿があった。

 ……一泡吹かせられたが、応えた様子は微塵もない。

 依然として、この場には魔王が作り出した嵐と雷が吹き荒れている。

 このままアレをなんとかしなければ、カズキも―――、


「ウサト君! 一人で戦わせてごめんね!!」


 そう叫びながら、僕の前に飛び込んできた先輩が掌から電撃を放ち魔王をけん制する。

 彼女はこちらを振り返ると、この場にそぐわない笑顔を見せてくれる。


「さっきの中々に効いたけど助かったよ!」

「え、ええ……」

「あれが愛の鞭ってやつなんだね!」


 とりあえず貴女がいつも通りだってことは分かった。

 だけど、カズキは風と雨雲に囚われたまま抜け出せていない。

 それにさっきは魔王と格闘戦をしていて気にならなかったけど、空からの電撃に気をつけなくちゃならない。


「ウサト君、このスズネ。雷に対する秘策を見つけたのだよ」

「……はい?」

「今、実践してみせよう!!」


 何やらおかしなことを言いながら、刀を掲げて跳躍する先輩。

 ……いやいやちょっと待て! あのままじゃあの人、雷に打たれるんじゃ……!?

 そう思った次の瞬間、案の定先輩に雷が落ち、彼女の姿が光に包まれる。


「せ、せんぱーい!?」

「何やってんのスズネ!?」


 僕とネアの悲鳴を他所に、光の中から先輩の高笑いが響く。


「ふははは! 魔王! 私相手に雷とは、悪手極まれり!!」

「……なに?」


 雷に打たれながらも、先輩の姿は無傷であった。

 いや、それどころか彼女の刀には溢れんばかりの電撃が込められており、それを両手で握りしめた彼女は空中で一回転しながら、眼下の魔王へ特大の電撃を放った。


「ぶっつけ必殺技! 電撃犬上落としだぁ!」


 センスの塊みたいな技名と共に、落とされた電撃は一瞬にして魔王の姿を呑み込んだ。

 その光景に呆然としていると、僕の傍に着地した先輩は今日何度目か分からないドヤ顔を見せてくる。


「フッ、雷を統べてこそ私」

「……いや、なんというか、流石ですね……」


 やっていることは本当にとんでもない。

 普通に頼れるんだけど……なんだかなぁ。


「———ここまで来るとあってか、曲者揃いだな」


 先輩の放った雷により雨水が蒸発し、水蒸気が立ち込める場所から魔王が出てくる。

 彼の手は僅かに煤汚れており、手傷を負っているように見える。


「攻撃が通じることは分かっただけでもよしだ」

「です、ね」


 でも僕と先輩の二人だけでは、押し切ることができない。

 魔王を警戒しつつ、カズキが閉じ込められている雨雲を見上げると―――不意に、雨雲の隙間から光が漏れ出していることに気付く。


「……あちらの勇者も貴様らに劣らず、派手にやるようだな」


 魔王がそう口にすると、雨雲から極太の光線が放たれる。

 それらは空を覆う術式を破壊しながら、ぐるりと一回転し掻き消える。

 一瞬にして、全ての天嵐の呪術を破壊してみせたカズキは、左腕の籠手から放熱するように煙を放ちながら僕達の元へと降りてくる。


「ごめん、手古摺った」

「いや、こっちは大丈夫」

「良かった……」


 安堵するように胸を撫でおろした彼は、鋭く魔王を睨みつける。


「戦ってみて分かったけど、俺の魔法は魔王に対策されているようだ」

「ああ、ヒサゴさんも光魔法を使っていたからだろうね」


 系統強化は違えど、光魔法は同じなはず。

 あの遺跡のゴーレムのように光魔法の消滅に対抗する魔術を持っていても不思議ではなかった。

 それを理解したのか、カズキは複数の魔力弾を放出し円盤状にさせる。


「俺は、ウサトと先輩のサポートに回る」

「そうした方がいいみたいだね。私も、出し惜しみせずに叩きに行く」


 なら僕は、先輩が攻撃しやすいようにネアと一緒に魔術を破壊していくか。

 それぞれの役割を確認した上で、今一度魔王と相対する。

 戦いはまだ始まったばかりだ。

 依然として魔王の力は底がしれないけれど―――ここにいる全員で協力して戦えば、きっと活路を見出すことができるはずだ。



味方を助けつつ回復させるという、ウサトが想定していた治癒魔法弾の正しい使い方。

なお、助けられた先輩は衝撃で吹っ飛ぶ模様。


今回の更新は以上となります。

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― 新着の感想 ―
[一言] ウサトに忠告です。 嘘をついても自分を騙すことは出来ないんですよ。
[一言] SEKIROで見た 雷攻撃はボーナス攻撃( ・ㅂ・)و
[一言] 世界で最も優しいフレンドリーファイアの一種※痛くないとは誰も言ってない 同種の代表例:狂った金剛石 三割で底なしなら全開だとどうなるのよブラックホール? ヒーロームーブなのに支援に回る不…
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