第二百四十二話
第二百四十二話です。
昨日に引き続きの更新です。
前話を見ていない方はそちらをー。
ようやく皆との合流を果たしたわけだけど、状況はそこまで好転してはいない。
カンナギが出した多数のゴーレム。
それら各々が武装しており、機械的な音と動きをしながら天井に空いた穴のある場所に集まるように、動き出していた。
「落ちてきた先はゴーレムだらけのロマン空間か!」
「こんな時に軽口を言っている場合ですか!」
「ようやく、この騒動の終わりが見えてきたな……!」
天井の穴から先輩、カズキ、レオナさんと、ブルリンの背に乗ったアマコが降りてくる。
彼女達が無事だったことに安堵しながら、今まさに襲い掛かろうとしているカンナギへと意識を切り替える。
「ああぁぁぁ!!」
目から涙を流しながら振り下ろされた刀を、盾に変形した腕で受け止める。
「ウサト! 今度は一体なにをやらかしたの!」
「彼女は魔族を憎んでいる! なので僕自身が魔族になった!」
『全く意味が分からないんだが!?』
詳しい事情を話している暇はないので、なんとなく察してくれ!
カンナギの巫女服に似た服装の腰の部分から、黒い魔力で構成された何かが出現する。
その数、八本。
それは彼女自身の尻尾と酷似した形状をしていた。
「尻尾!?」
「なにあれキモッ」
『ボク、タコとか嫌いなんだけど!』
驚くのも束の間、彼女の腰から伸ばされた八本の尾は鞭のようにしなりながら一斉に僕目掛けて襲い掛かってきた。
「ネア、拘束の呪術! フェルム、剣モード!」
「ええ!」
『おう!』
左腕から伸ばした拘束の呪術付きの剣で、次々と襲い掛かる尻尾に対応する。
手数は多いけど、一つずつ拘束していけばまだ対応できる。
問題は、カンナギ本体が振るう刀……!
「君は、魔族じゃないのに……! どうしてそんな悍ましい姿をしているんだ!!」
「魔族自体が悍ましい訳じゃないでしょう!」
動きを先読みされながら繰り出される突きをなんとか籠手で逸らす。
すると、カンナギの声に反応してネアとフェルムが反論してくれる。
「そうよ! こいつの生態の方が悍ましいわよ!」
『そうだぞ! ボク達に比べたら、こいつの方が悍ましいぞ!』
君達はいったいどっちの味方なのかな……!
なぜか味方にディスられつつ、後ろに後退しカンナギと距離を取る。
彼女は、八本の黒い魔力で構成された尻尾を小さくさせ、警戒を露わにしている。
その視線の先にいるのは僕ではない。
『あああー! 私の身体ー!』
「っ、え、カンナギがもう一人!?」
向けられているのは、僕のすぐ隣。
フワフワと浮いている、カンナギと瓜二つの外見をした少女。
『か、勝手に……!』
「……誰も入ってなかったら、いいじゃないか……」
『意識取り戻した瞬間に私を閉じ込めておいて、よくそんなこと言えるね!? というより、私の身体に変なモノ生やさないで!?』
わなわなと震えながらカンナギに怒りをぶつけているカンナギ。
駄目だ、どっちも見た目が同じだから訳が分からなくなってくる。
すると、ネアが浮いている方のカンナギを翼で指し示しながら話しかけてくる。
「ウサト、こいつが本物のカンナギよ」
「……それじゃあやっぱり、僕が相手にしているのは別人だったってことか」
僕が予測していた通り、彼女は先代勇者の刀に芽生えた自我。
そして、ネア曰く、僕に声を送り今まで警告してくれていたのは、この人だという。
とりあえず本物のカンナギは、“カンナギさん”と呼ぼう。
「カンナギ、さん。彼女は……」
『君とは沢山話したいことがあったけど、それは後だ』
カンナギさんの視線は刀を構えているカンナギへと向けられる。
『ウサト、あの子は邪龍の影響を受けて魔族への憎しみが高められてしまっているんだ。止めないと、魔族だけの被害じゃ済まなくなる』
「なら、止めます。貴女は下がっててください」
『……うん。分かった』
こちらを見て、何かを懐かしむようなそんな顔をしたカンナギさんだが、すぐに真面目な表情に戻るとアマコとブルリンの元へと下がっていく。
今のカンナギの力を考えると、僕だけの力じゃ足りない。
だけど、先輩達はゴーレムに足止めを食らって……いや、来れるのだろうけど、カンナギとの乱戦を考慮したのか、足止めに回ってくれているのか。
「数だけは揃えているようだね!」
「先輩! キーラをお願いします!」
「うわぁ! こっちのウサト君! すっごい久しぶりに思えてくるよ!!」
こっちの僕? いつも以上に意味の分からないことを言ってますね……。
とりあえず返事をし、カンナギと向き合う。
カンナギさんがその場を離れたことで、彼女は僕へと視線を移し、強く睨みつけていた。
僕が魔族の姿をして立ち塞がっている限り、彼女はキーラ達に攻撃を仕掛けることはできない。
「ウサト……!」
「すっごい目が血走ってるわよ……。大丈夫なの、あれ」
「……なんとかするしかない」
今は戦うしか手がない。
戦いながら、彼女を止める手を探していかないとならない。
「相手はジンヤさんとは比べ物にならないほどの予知魔法の使い手! 意外性で攻める!!」
「具体的には?」
「さっきは新技を連続して叩き込んで隙を作ったけど、今度は真っ向から彼女の予知を上回ってやる」
「シンワザを、レンゾク?」
なぜかネアがカタコトになっているけど———、ッ!
一瞬のうちに接近し、斬りかかってきたカンナギの刀を躱す。
「危な……」
「もうさっきと同じことはさせない! もう君の新技はこりごりだからね!」
「やっぱり新しい技作ってたわね!? 吐きなさい! いくつ作ったの!?」
今はそんなこと言っている場合じゃないだろ!?
先読みして繰り出される攻撃を、必死で目を追って対応しながら立ち回っていく。
さっきよりもずっと動きに無駄がない……!
右目だけの視界にも、戦いにも慣れてきてしまったようだ……!
「魔族と同化なんて気持ち悪い。そいつは、君にひっついて喜んでいるだけじゃないか……! どうせその同化ってのも下ご―――」
『ウ、ウウ、ウサトォ! こいつをぶっ殺せぇぇぇ!!』
「フェルム!?」
ぐねぐねと左腕を変形させ、禍々しい剣を作り出そうとしているフェルムを押さえながら、治癒弾きを用いて攻撃をさばいていく。
……ッ、フェルムを怒らせて僕達の連携を崩そうとしているのか?
「ネア、君も同じだよ!」
「んー?」
「ただの使い魔が随分と思い上がっているじゃないか! 君はどうせ、どこまでいっても人ですらないただの魔物だ!」
「なに、羨ましいの?」
「は?」
今度はネアを挑発しようとするカンナギ。
しかし、一方のネアは余裕の表情のままだ。
「生憎、私は今の立場に満足してるの。ただの武器風情の貴女にとやかく言われる筋合いはないわ」
「お前……ッ!」
「でも、許してあげるわ。子供の癇癪に付き合うのも大人としての役割ですものね」
待って、あまり挑発しないでもらえるかな?
攻撃に苛烈さが―――いや待てよ。攻撃の速さと威力は増したけれど、予知魔法による先読みによる攻撃はなくなった。
つまり、ネアの言葉にカンナギが動揺したってことか。
「ならば食らえッ! 大強化治癒目潰し!」
「わっ!?」
「私までぇ!?」
腕を顔の前で交差させ、上半身で魔力の衝撃波を放つことで、さらに効果範囲を増した治癒目潰し。
それにより、カンナギの虚を突き、無理やり隙を作り出す。
「ここだぁ!!」
腕を巨大化させてカンナギの胴体を掴み取る。
ようやく我に返った彼女は、ものすごく嫌そうな顔をする。
「は、離せ! 魔族が私に触れるな!」
「ネアァ!」
「うぅ……目がチカチカする……」
ネアから巨大化した腕へ向かって拘束の呪術が流れ込んでいく。
しかし、それが到達する前にカンナギの腰の魔力が動き出し、巨大化した腕を切り刻んでしまう。
「チィ……!」
『厄介だな』
「コーガの魔法だ」
『あいつ魔法とられたのか? ざまぁないな!! いい気味だ!!』
「気持ちは分かるけど、喜んでいる暇はないぞ!」
カンナギが腰の尻尾を蛇のように揺らめかせ、その先端を槍のように変化させている。
「手数で切り刻んでやる……!」
連撃で僕の防御を突破しようとしているのか。
予知魔法で予測しながらのゴリ押しは非常に厄介ではあるけど、僕としては逆にやりやすい。
肩と背中から黒騎士の籠手に見立てた四本の腕を生やし、拳を構える。
「全部読み切って押さえ込む! フェルム、背中の腕の操作は任せたぞ!」
『ああ!』
僕とカンナギが同時に走り出し、攻防を交わす。
カンナギが跳ね、四方から延長された黒色の尾が襲い掛かる。
拳が地面を砕き、鋭利な尻尾が壁や天井を切り裂く。
「そこだ!」
「クッ」
カンナギの猛攻、その最中に繰り出される先読みされた一撃が僕の胴体へと叩きつけられるが、それは魔術の紫色の文様に弾かれる。
「な……!」
「耐性の呪術よ!」
「やっぱり、厄介なのはお前か……!」
「あら、今更気づいたのかしら! 私が一番ウサトをサポートできるのよ! 一番!!」
なんでそこで煽るのかな!?
ネアの言葉に、カンナギが憎悪ともとれる目を向ける。
魔族へ向けるものとは違う、彼女自身の意思で向けられた敵意。
「ネアァァ……!」
カンナギの敵意に反応するかのように、彼女の操る八本の尻尾が一斉にネアへと向けられる。
当のネアは、フッ、と笑みを零している。
「ウ、ウサト、助けてぇぇぇ!」
「後悔するなら最初から煽るなって、の!」
『バカかお前!』
フェルムの操る腕と、僕の振るった両手がネアへと向けられた攻撃を防いでいく。
カンナギの怒りの表れか、肩のネアばかりを狙う攻撃に僕は前に出られない。
「そこ!」
「させッるか!」
カンナギの繰り出した刺突を咄嗟に腕で受け止める。
刃は闇魔法の魔力を貫通し、僕の腕に突き刺さる。
「痛ッ」
「そいつを守っても君が傷つくだけだよ!」
「それで、僕が引くとでも!」
蹴りを繰り出し、無理やり刀を引き抜かせる。
このまま攻撃に移れば、確実にネアはやられる……!
『———仕方ない……ッ!』
「フェルム、どうした!?」
攻勢に出れないでいると、内にいるフェルムが声を発する。
『ネア、動くな!』
「動くなって、こんな状況じゃ元から動けな―――」
瞬間、ネアのいる右肩から重さが消えた。
「———ネア?」
その異変に気付き、自身の肩に目を向けると、いつもいるフクロウの姿はどこにもなく、ただ彼女の綺麗な黒色の羽だけが宙を舞っていた。
振り切られた黒い尻尾。
姿のないネア。
舞い落ちる黒い羽。
それを認識したその瞬間、これまで抱いたことすらない形容しがたい感情に支配される。
自分でもその感情がどんなものか分からないまま、カンナギへと全力の攻撃を―――、
『な、何なのよこれぇ!?』
———仕掛ける直前に、僕の内側からネアの声が響く。
一気に頭が覚めた僕は、後ろに飛び下がる。
「ネア、無事だったか!? てっきりやられたもんだと……」
『ネアも闇魔法に同化させて取り込んだ。これで狙われても大丈夫だ』
『なにここ、不思議!』
いやいや!? 同化したって、つまり今僕とフェルムとネアが同化しているってこと!?
驚いている僕の両手に、拘束の呪術の文様が浮かび上がる。
『ウサト、ここからでも魔術を施せるわ。むしろこっちの方が効率がいいわよ!』
「……はぁぁぁ……」
なんだか心配して損した。
でも、無事で本当によかった。
安堵に胸を撫でおろしていると、次にフェルムが話しかけてくる。
『この際、アマコも呼べ! あいつも同化させる!』
「え、なんでアマコも……」
『あいつがいればカンナギとも戦えるだろ!!』
確かにそうだけど、どう考えても同じ予知魔法を持つカンナギが妨害して———、
「ウサト、今向かってる!」
「グルァー!」
って、もう予知したアマコがブルリンと一緒にこっちに来てる!?
ゴーレムの動きを予知したアマコがブルリンに指示を出しながら、こちらへ近づいてきている。
……! こうなったら、もう引けないな!
「来い、アマコ!」
「うん!」
「させるか!!」
カンナギがその尾を伸ばして、ブルリンの背にいるアマコへと襲わせる。
それに対してアマコは、その軌道を予知しながらブルリンに進む方向を指示していく。
予知魔法と予知魔法。
アマコとカンナギの予知の精度が同程度なら、条件は一緒。
違いがあるとするなら―――、
「アマコに手は出させないよ!」
僕以外にもアマコを助ける仲間がいるってことだ。
紫色の電撃と共に現れた先輩が、一瞬のうちにカンナギの伸ばした八本の尻尾をバラバラに切り刻む。
「スズネェッ!」
「怒るケモミミも乙なものだねぇ! カンナギ!!」
珍しくあくどい顔をしている先輩に、カンナギは怒声を上げながら、こちらへ走ってくる。
一方でカンナギの攻撃を逃れ、僕の近くにまでやってきたアマコは、ブルリンの背から僕の元へと飛び掛かってくる。
アマコと一瞬だけ視線を交わした僕は、迷いなく彼女を両腕で受けとめる。
「フェルム!」
『ああ!』
団服から伸びた黒い魔力がアマコを包み込み、僕の身体へ沈み込む。
闇魔法“同化”による、僕を中心とした合体。
『これで、私も足手まといじゃない……!』
『獣人、魔族、魔物、人間、名付けてキメラウサトね!』
『できれば、あのバカ軍団長に見られないところで出したかったが、しょうがない!』
フェルムの闇魔法、ネアの魔術、アマコの予知魔法。
これでようやく今のカンナギと条件が同じになった。
あとは、彼女を止めるだけだ!
キメラウサト爆誕。
フェルムの認識としては、ネアは悪友、アマコは信頼といった感じですね。
なにげに、人間(?)、獣人、魔族、魔物を合わせた形態となります。
今回の更新は以上となります。




