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第1話(五) 【平穏はやって来ない】
そんな馬鹿をやっている内に南河駅に着いた。
「うげ……」
一年経った今でもまだ慣れない。
南河高校は別に進学高と言う訳でも凄い特色がある訳でも無い為、生徒数は並程度なのだが、それでも小さい南河駅のホームを埋め尽くすには十分なのだ。
下手をすれば、全員が降りきらない内にドアが閉まるなんて悲劇も起こりかねない混雑ぶりである。
そんな中。
身動き一つ出来ない人の波を縫う様な早さで抜けていく一人の少女が居た。
捺莉である。
持ち前の体の小ささで、さらに体を折り畳めばどんな僅かな人の隙間にも割って行けるのである。
捺莉はそのまま先頭集団に追いつくと、改札を抜けていった。
俺はと言うと。
「うおぉぉぉぉ」
……人混みに揉まれていた。
死にもの狂いで改札を抜け、地獄から解放される。
今から二十分かけて高校まで歩く事を想像すると、回れ右して帰りたくなる。
「おやおやっ。お疲れの様だね、ゆー君?」
涼しい顔をした捺莉がムカつく笑みを浮かべて、俺の顔を覗き込んでくる。
駅が混雑する度にこれなので言い返す言葉も気力も無い。
「ほらほら~早く行かないと遅刻しちゃうぞ~」




