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楓花は、エルに促されホワイトジャイアントの魔石を取り出して見せた。
「これでいいかしら?」
『はい、そちはディアマンテです。泉の結界に触れさせて祈りをささげてください。』
「祈り?」
よくわからないけれど、泉の周囲にある金色の結界に石を触れさせた。薄く結界全体に行き渡らせるイメージをしていく。
結界が輝いたので、手を放すと透明だった石はただの石になっていた。
成功なのかな?
『おかえりなさいませ。ご主人様。』
「ただいま。結界は強化されましたか?」
『はい、あと200年は持ちます。』
なんだろう、こそばゆい。
ご主人様なんて柄ではないけれど、普段なら名前で呼んでというのだけど、この子にご主人様と言われるのはなんだかいい。
こんな何もない場所で非現実的なところだからかな?
だって、あの三角の耳!エルフっぽい美少女に言われるのは…うん、よき。
『お飲み物は、何がお好みでしょうか?』
「キッチンを見てもいいかしら?」
『もちろんです。どうぞ。』
案内されたキッチンは、現代的なキッチンだった。
大き目な600Lの冷凍冷蔵庫があった。
キッチンの奥には、4.5帖ほどの細長いパントリーがあり、パントリーの棚には時間停止がかけられていた。その奥には引き戸もある。
棚から取り出すと、時間停止が解除されるのか。
一番下には小麦粉の10k袋がずらっと並んでいた。
砂糖や塩などから様々な野菜までかなりの充実ぶりだ。
これも遺産の一部ということか…。
鍵は。ウエストポーチにチェーンをつけて入れておく。
茶葉類も結構な種類があった。
キッチンの棚には食料が並んでいるけれど、こちらは何の細工もないようだ。つまりは普通の棚だった。すぐに使う分だけ出してくる感じで使う方がよさそう。
ラングドシャを細長く巻いた菓子が置かれていた。
まだ食べられそう。
「ねえ、妖精さんのお名前を聞いていなかったわね。私は楓花よ。お名前は?」
『名前?メイドです。』
「それは、役割で名前ではないでしょう。無いならつけてもいいかしら?」
『はい!』
え?なんだかわくわくされている気がする。
変な名前を付けたら怒られそう。どうしよう。
エルフみたいな耳と透明感のある姿…家の妖精って言っていたけれど、ハウスキーパーってことだろうし…だめだ、思い浮かばない。
エルフの上2つでエルって許してくれる?
「エルはどうかしら?」
「エル!私はエルです。家の妖精でメイドのエルです。」
それまで頭に響くような声から、普通の声になった。
先ほどまでとは異なり、地に足の着いたような様子に変化していた。
「エル、妖精の姿に戻れますか?」
「はい」
『ご主人様、これでよろしいでしょうか?』
「ああ、よかった。メイドに戻っていいですよ。」
「はい、ご主人様。」
「コーヒーとこのお菓子を出して欲しいの」
「かしこまりました。ご主人様。」
やだ…もう、なんだか変な気分になる。
お姫様気分というかお殿様気分というか。
ソファーに座って、現状の確認を頭の中でしていた。
泉の結界が強化できていた。よくからないけれど、これが必要なら、私が使っているガードも、ここのガードも必要なのでは?
あ…。そうだ!
・聖なる物を守るための結界にはディアマンテ、守護壁にはクリスタルやアメジストなどが向いている。
たしか、どこかにそう書いていた。
楓花は、エルが運んできたコーヒーとラングドシャを味わった。
「エル、教えて欲しいのだけど、家の外って誰か整備しているの?」
「家の外の果樹園の辺りは、私の分身が管理します。収穫した果物は、食物庫に入れます。」
「そうなのね。あるのは果樹園だけ?畑はないの?」
「畑ですか?家の裏から果樹園の間にあります。収穫したので今は何もありません。」
「そうなのね。では、種とか苗とか持ってきたら育つのかな?」
「はい、育てます。」
「わかったわ。ありがとう。」
楓花は一旦、外に出た。
「この守護壁はどのくらい保つの?」
『泉の家の守護壁:残保持期間199年11か月。』
「なるほど…保持期間はほぼ200年ね…これを使ったらどうなるのかな…」
手に持っているのは、親指程のクリスタルだ。
大量にあるので、ウサギから取れたのだと思う。
先程使ったホワイトジャイアントの魔石とは全く違うだろう。
『クリスタル:泉の家の守護壁を1年程度伸ばす。』
「1年…以外と短いのね。」
楓花は、持っていた5つのクリスタルを使ってみた。薄く薄く補強することをイメージした。
「さて、どうかな?」
ひとつ使う度に確認していく最終的にもう一度見た。
『泉の家の守護壁:残保持期間205年9か月。』
例えば、今後50年ここに来るとしたらこちらの時間で150年だ。なかなかに長い時間になる。205年というなら、私が100歳まで生きたとしても、その間は安泰だ。
この辺りは、これから冬になる。
どのくらい寒いのかはわからないから、後で確認してみよう。
育つ野菜もあるかもしれない。
守護壁範囲内で林の中へ入ってみる。
なるほど…露草に癒し草、薬草がいろいろとあるようだ。聖なる泉から延びる川沿いにはヒールベリーの木が生えていた。
ここがポーションを作る拠点だったのかもしれない。
家へ戻り、エルの案内で家を歩いた。
家を歩くと言っても、1階にはリビングとダイニング、キッチン、お風呂などの水回りがある。それと客間が1つだ。
2階には、主寝室と書庫。それからベッドルームが1つあった。
「エルのお部屋は?」
「部屋はありません。御用がないときには実態を持ちません。」
「なるほど…そうなのね。」
2階の主寝室には、マントとロングTシャツのような服があるだけだった。
アイテムバックで持ち歩くなら、あまり必要もないのだろう。
お風呂場と脱衣室があり、脱衣室の奥には洗濯室もあった。なんと洗濯機と乾燥機が置かれていて、どうやら太陽光で動いているらしい。
キャンピングカーがあれば十分だと思っていたけれど、ここならゆっくりと過ごせそう。
いいかも…。
虹湖もいいけれど、獣が多すぎるところがあった。
でも、アートンはともかく、ヒルストンにはお肉を届けないと冬場は厳しいだろう。芋だけで冬を越すのは、かなり厳しい。
書庫の本は、草花図鑑のようなもののようだ。
翌日の昼間、楓花はアートンへ行き天龍と共に虹湖で過ごした。
どうやら、初級ポーションよりも下のポーションがあるらしい。
いくつかのレシピがあるようなので、それを試していく。
材料は、癒し草と清水、それにレシピによって入れる果物が異なる。いづれにしても、固い物がないからミキサーでもよさそうだと思い、ミキサーにかけた。
ちょっとうるさいけれど、出来上がるまでの時間がかからない。
生のままミキサー、煮てからミキサーなどいくつかのパターンを試した。
一番効果があるのは、癒し草をミキサーにかけてから煮る。それを濾して、2/3になるまで煮詰め日止め前にリリカの汁を加えるのがよいようだ。
試しに120mlのペットボトルに入れてみた。
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