ニケ伝説 (16) 条約締結
帝国軍のマトにされてしまったニケだが……
アタシはニケ。15歳。
今、とても困ってる。
それというのも……
「うおお! 術師部隊! 水砲の陣だ! 撃て撃てぇ!」
帝国との戦いが始まって以来、なんだか術のマトにされてるみたいで。
今も大勢が一斉にビュオッと放ってきた大きな水の槍みたいなのが飛んできてる。
でも、アタシのアイギスは安心安全だから……
ぱしゃぁって感じで水を防いでた。
あ、虹だぁ。虹ができたぁ。
そういえば、アタシ、レイと一緒に虹の橋を渡ったんだよねぇ。綺麗だったなー。
「な、くっ! ば、馬鹿なっ! 次! 雷撃陣用意! 撃てぇ!」
ピカッと光った眩しい何かがバリバリっと音を立てながらすごい速さで襲ってきた!
けど、アイギスがやっぱりぱちって感じで防いでた。
「がーっはっはっは! 上ばっかに気ぃ取られてていいんかぁ? 帝国兵はお気楽だなぁ~! がはは! やれぇ! 野郎ども! なるべく殺すなよ!」
「「おおう!」」
「あーっははは! あんたらぁそれでも男かい! ザコどもが! この海賊姫ゼラセ様に泣かされときなぁ!」
アタシがマトにされてる間、下はすごく盛り上がってるみたいだった。
まぁ、なるべく無傷で捕まえるんだっけ? たしか。
無傷で捕まえるとか、レイが好きそうだな。
んー。レイならこんな時はどうするかなぁ……?
あ、そうだ。時にはおーばーに演技、だっけ。
よし。すらりと腰の剣を抜いた。そして空に掲げる。
「勝利の剣! お願い!」
アタシを中心に光の刃が空を埋め尽くしていく。
「んな……?! しょ……書簡の内容は……じ、事実なのか?!」
「あ、あれは……本当に神なのか……」
「マズイぞ、マズイマズイマズイ……」
「チカームのような偽物かと思ったが……」
帝国兵たちが、ざわざわしながら動きを止めていた。
兵たちは隣同士で話してるみたいだった。
話し合いは大事ってレイも言ってたから、たくさん話したらいいと思う。
「こ、降伏だ! 海賊王ドン・ベッテュル! 交渉の機会を!」
「がーっはっはっは! 最初っからそうしといたらよかったんだよ! がはは!」
どうやら終わったみたい。
「よーし! 野郎ども! 交渉が済むまでは全員捕虜だ! 縛っとけ!」
「「おおう!」」
「おーい! 女神サマよう! ちぃと来てくんなぁ!」
ドン・ベッテュルに呼ばれた。あんまりいいことではないんだろうなぁ。
とは思ったけど、これも仕事だし、ドンについていった。
「ほれ、これにサインだ。」
「ぐっ……このような不平等条約など……」
「なぁーに言ってやがる。俺が出した書簡に最初っから同意しときゃあよ、賠償金まではなかったんだぜ? そりゃ、そっちの判断ミスだろぉが。」
ドンは、高そうな鎧の人に紙にサインをさせていた。
アタシはまた、じーっと立って見てるだけ。
「よっしゃ! 書けたな? んじゃ、払うもん払ってもらったら、俺らは出てくからよ、さっさと金の用意するこったな! がはは!」
ドンはすごく上機嫌だった。
不平等条約を結ばせることに成功したようだった。




