1-4 昼休み
会場は昼休憩だ。
僕は、席を立ちこそこそ会場裏へ。
角の方の静かな席で、1人考えこんでいるような我利山田くんが。
土が付いているが、水泳してる彼はとてもキレイに日焼けしており、スジスジの筋肉をしていて、結構なイケメンでもある。まあ、頬は痩けているが。
そんな我利山田くんにひと声かける。
「我利山田くん頑張ってね」
こちらをぽかんと見上げた我利山田くん。
笑顔で「ありがとうございます」と応えてくれた。
「近くで見ると筋肉あるし、絶対勝てるから」
というと、
「いや、オレ細すぎてヤバイです。勝てる気しません」
「確かに細いかも知れないけど、水泳で鍛えた筋肉でいつか勝てるって」
「そう言ってもらえるとありがたいです。諦めずにがんばります」
そう言うとシニカルな笑みを浮かべてくれた。
「あ、ちなみに、私と腕相撲してみてくれませんか?力士の方がどんなに鍛えたのか知りたくて…」
「ハハハッ、オレで良いならやりますよ」
2人、影に隠れて誰も見ていない中で腕を組む。
『細い!』
私は、我利山田くんのあまりの細さに驚く。私のさほど鍛えてない腕と、スジスジコンガリ日焼けした我利山田くんの細い腕。
では、『レディー Go!』
歯を食い縛っている我利山田くん、しかし、その右腕は全く動かない。
正直私が勝てそうだが、ここで自信喪失させてはならないと思い、私も必死感を出し……あ、勝ちそう…なので少し力を弱めジワジワ負けていった。。。
「あー、やっぱり力士として出る君は強いよ」
「ギリでした。素人さんとの勝負でも勝てて嬉しいです。スゴく強かったです」
我利山田くんは右腕を振りながら疲れを癒している。
私が言えることは、素人ながら、
「重心落として相撲取ったら、その体重の軽さを少しはカバー出来るかもね」
「そうですね。オレすぐに吊り出されそうになったりするので気を付けてみます」
じゃあ頑張ってと去るとき、ペコリとお辞儀してくれた我利山田くんなのだった。